[文書名]　ＴＩＣＡＤＶ　人間の安全保障シンポジウム　安倍総理冒頭挨拶（案）

　本日は，ハイレマリアムＡＵ議長，サーリーフ・リベリア大統領を始め，人間の安全保障の推進に多大なる貢献を行われている皆様に出席を頂き，感謝申し上げます。

　人間一人ひとりを大切にし，人づくりを重視するのは，日本の素晴らしい伝統です。私が尊敬する幕末の思想家，吉田松陰は，「山は樹を以って茂り，国は人を以って盛（さかん）なり」と述べました。一人ひとりが国を支え，作るのです。

　私は，第５回アフリカ開発会議を主催し，改めてアフリカの国々に思いをはせる機会を得ました。アフリカは，希望の大地として，大きな潜在力を秘めています。そのようなアフリカの未来にとって，人間の安全保障はかけがえのない光を放つものと確信しています。

　弱き者に手を差し伸べ，保護する。一人ひとりを教育し，その能力強化を図る。人間の安全保障は，個人に着目することで，複雑に絡みあう様々な課題に，包括的に対処することを可能とするものです。女性も若者も，自ら課題に対処し，社会に能動的に参加することを促すものです。

　これは，私が日本の成長戦略で掲げる課題とも重なります。私は，日本経済を取り戻すため，日本の女性が活躍し，若者がどんどん能力を伸ばせるよう，全員参加の成長戦略を目指しています。

　だからこそ，私は，アフリカの皆さん，そして国際機関やＮＧＯを始めとするパートナーと共に，アフリカの人間の安全保障の実現も図ってまいりたいのです。ＴＩＣＡＤＶのテーマは「Hand in Hand with a more Dynamic Africa」です。皆で手を携えて，人間の安全保障を推進し，ひいてはアフリカ全体の発展を実現していこうではありませんか。

　本日のシンポジウムでは，保健を切り口に，人間の安全保障の有用性について議論が行われる予定です。このたび，私は，国際保健外交戦略を策定し，安倍外交の重要課題として国際保健を位置付けることといたしました。

　日本は，保健関連のミレニアム開発目標の達成に向け，更なる努力を行ってまいります。また，一人ひとりが抱える健康課題に対処できるよう，すべての人が基礎的保健医療サービスにアクセスできることを目指し，ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの推進に貢献してまいります。私自身，難病から回復して，再び日本国内閣総理大臣となる機会を得ました。私は，健康を望む世界のすべての人びとの声に耳を澄ませていく覚悟です。

　本日，実り多き議論が行われ，アフリカの，そして世界の人びとの明るい未来を照らしだすことを祈念し，私の挨拶とさせていただきます。

　ありがとうございました。

（了）