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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第2回日・アフリカ地域経済共同体(RECs)議長国首脳会合における安倍総理大臣スピーチ

[場所] 国連本部第5会議室
[年月日] 2014年9月24日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

RECs指導者の皆様、お集まり下さいまして有難うございました。何人かの方とは、再会を喜びあいました。初めてお会いする方には、お目にかかれたことを嬉しく存じます。

 エボラ出血熱が奪った尊い命に対し、心からお悔やみを申し上げます。エボラ出血熱との闘いに、日本政府は能う限りの力を尽くします。

その観点から、日本は、先般のエボラ出血熱に関する安保理決議採択を共同提案国として積極的に支持すると共に、国連エボラ緊急対応ミッション(UNMEER)の設立を支持します。忌まわしい病気と闘うため、4月、ギニアに52万ドルの緊急無償資金協力を実施したのを手始めに、各国別の支援を続けました。これまでの支援総額は約500万ドル規模に上ります。リベリア、シエラレオネには、WHOの一員として、国際感染症に関する知見、経験の豊富な医師を、4度送りました。手を緩めず、更なる人的貢献の可能性も含め様々な形での支援をこれからも続けていくことを申し上げます。

 皆様、RECsは、アフリカ地域統合の要です。日本は、これからの長い道のりを、皆様と共に歩みます。皆様と政策対話を密にしつつ、アフリカのインフラ整備に励みます。

 今日はお互い、ウィン・ウィンの関係を育て、日本とアフリカの貿易、投資を一層促進するにはどうすればいいか、忌憚のない意見を出し合いたいと思います。

 その前に、ひとつご記憶ください。明年3月、日本は第3回国連防災世界会議を、東日本大震災で大きな被害を受けた仙台市で開きます。社会の「レジリエンス」が、主要なテーマとなるでしょう。皆様には会議にお越しいただき、復興の様子や課題を、ご自身で確かめていただけたらと願っています。

 それからTICADのことです。次回の会合はアフリカで開くべきだという、皆様のご要望に応えていくつもりです。日本とアフリカ、持ち回りでできたらいいと考えています。

 さて本日は、コンゴ民主共和国からも、ご出席いただいています。

 首都キンシャサを流れるあの雄大なコンゴ川に、大きな吊り橋がかかっています。マタディ橋といって、美しいたたずまいは、ハネムーナーが写真を撮る格好の背景になるのだそうですね。

 日本の借款、技術を使って橋ができたのは、1983年のことでした。去年、それから30年経ったのを祝う記念の式典が開かれた時、日本から、元工事関係者が参加しました。「7人の侍」と自ら称するエンジニアたちです。

 自費で行ったというのです。よほどコンゴの人たちと働いた経験が懐かしかったのでしょう。両国の技術者は、橋の上で再会し、感極まって涙したといいます。「侍」たちが異口同音に言うのに、「あれから内戦があった。混乱もあっただろうに、30年も経ったとは思えないくらいピカピカだ」。

 営々と保守に努めたコンゴの人たちから1人お名前を挙げるなら、維持管理部長のンデレ・ブバ・マディアタ(Ndele Buba Madiata)さんです。日本の歌が大好きというマディアタさんの献身を抜きに、整備が行き届いた理由を語れない。事情を知る人の、一致した意見です。

 日本はインフラを作らせたら、長持ちするものを作ります。もっと大切なことに、働く喜びや、努力の尊さを、人々の心に残します。30年後の再会を、涙して迎える友情をはぐくみます。

 マタディ橋の物語は、改めてそのことを教えてくれました。いま日本は、次の世代に保守管理の技術を引き継ぐ支援を続けています。橋はコンゴ民主共和国と日本を結ぶ友情の印として、末永く生きていくことでしょう。

 港湾と道路、鉄道をパッケージで整える回廊計画、電力網の整備や、日本の技術が生かせる地熱発電、これらを広域で開発するマスタープランを、皆様と一緒にこしらえていきます。

 ケニアのモンバサ、南部アフリカ広域電力網、タンザニアの物流システム、西アフリカ成長リングなど、「戦略的マスタープラン」の検討はすでに8カ所で始まりました。

 物流こそが、アフリカ経済の成長を阻む最大の障害です。そこを突破するため、RECsと密接に協力して日本が進めているのが、ご存じのワンストップ・ボーダー・ポストです。事業は目下14地点で進んでいます。

 点から線へ、線から面へ。日本は持てる力、知見を総動員して貢献して参ります。狙いはあくまでも、RECsの広域連携を促すことです。

 ところでケニアのモンバサ港開発事業に際し、現地に足りなかったのが、高度な溶接技術でした。それがいま、ケニア人エンジニアたちが十分こなせるようになっています。工事にあたった日本の業者が、一から溶接技術を伝授したためでした。

 モノだけでなく、人を残す、地元に強いオーナーシップを育てるという、我が国ODAを貫く思想がここにもその証左を残していることをご理解ください。

 昨年のTICAD Vでは、まさにその人づくりという目的のため、アフリカの有望な若者1000人を日本に招く「ABEイニシアチブ」を打ち出しました。今月、第一陣156人が来日し、土木や工学などの勉強に励みます。

 また、日本政府は約65億ドルのインフラ支援を実施すると申しました。日本の約束に二言はありません。既に約23億ドル相当の取組を実施しています。

 強くて明るく、安定したアフリカを、人々の心の中から育てる支援、一生ものの技術を伝え、成長の喜びを分かち合うお手伝いを、日本はこれまで同様、続けていきます。

 栄えるアフリカは、アフリカ人の利益であるだけでなく、世界の利益であり、日本の利益にほかなりません。これから政策対話を密にして、アフリカの夢は日本の夢、日本の夢はアフリカの夢だといえる、強い絆を育てていこうではありませんか。

 ありがとうございました。