[文書名] 長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典あいさつ
本日ここに、被爆七十周年長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典が執り行われるに当たり、原子爆弾の犠牲となられた数多くの方々の御霊に対し、謹んで、哀悼の誠を捧げます。
そして、被爆による後遺症に、今なお苦しんでおられる方々に対し、衷心よりお見舞いを申し上げます。
あの日投下された原子爆弾により、長崎の地が、草木もない焦土と化してから七十年が経ちました。当時、七万ともいわれる、あまたの貴い命が奪われました。惨禍の中、生き長らえた方々にも、筆舌に尽くしがたい苦難の生活をもたらしました。
しかし、苦境の中から力強く立ち上がられた市民の皆様によって、世界文化遺産と美しい自然に恵まれた国際文化都市が、見事に築き上げられました。
今日の復興を成し遂げた長崎の街を見渡すとき、改めて平和の尊さを噛みしめています。そして、世界で唯一の戦争被爆国として、非核三原則を堅持しつつ、「核兵器のない世界」の実現に向けて、国際社会の核軍縮の取組を主導していく決意を新たにいたしました。
特に本年は、被爆七十年という節目の年です。核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議では、残念ながら最終合意には至りませんでしたが、我が国としては、核兵器国と非核兵器国、双方の協力を引き続き求めつつ、「核兵器のない世界」の実現に向けて、一層の努力を積み重ねていく決意です。この決意を表明するため、本年秋の国連総会に新たな核兵器廃絶決議案を提出いたします。
八月末に広島で開催される包括的核実験禁止条約賢人グループ会合並びに国連軍縮会議に続き、十一月には、パグウォッシュ会議がここ長崎で開催されます。更に来年には、G7外相会合が広島で開催されます。これらの国際会議を通じ、被爆地から我々の思いを、国際社会に力強く発信いたします。また、世界の指導者や若者が被爆の悲惨な現実に直に触れることを通じ、「核兵器のない世界」の実現に向けた取組を前に進めてまいります。
今年、被爆者の方々の平均年齢が、はじめて八十歳を超えました。高齢化する被爆者の方々に支援を行うために制定された「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」も、施行から二十年を迎えました。引き続き、保健、医療、福祉にわたる総合的な援護施策を、しっかりと進めてまいります。
特に、原爆症の認定につきましては、申請された方々の心情を思い、一日も早く認定がなされるよう、審査を急いでまいります。
結びに、亡くなられた方々のご冥福と、ご遺族並びに被爆者の皆様のご多幸をお祈り申し上げるとともに、参列者並びに長崎市民の皆様のご平安を祈念いたしまして、私のご挨拶といたします。
平成二十七年八月九日
内閣総理大臣・安倍晋三