データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日中韓ビジネスサミット 安倍総理挨拶

[場所] ソウル
[年月日] 2015年11月1日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

 アンニョンハシムニカ、チョヌン安倍晋三ラゴハムニダ。本日は、お招きをいただき、ありがとうございます。総理大臣として再び、ここソウルの地を訪ねることができて大変嬉しく思います。

 先ほどまで青瓦台で行っていた日韓中サミットでは、朴槿恵大統領、そして李克強国務院総理との間で、防災、環境や青少年交流といった日韓中3か国の協力や北東アジアの地域情勢等について、率直かつ有意義な意見交換を行うことができました。

 日韓中3か国は、世界のGDPの約2割を占め、世界の成長センターとして勢いを増す東アジア地域を中心に、世界経済をけん引すべき原動力となるべき存在であります。

 私は就任以来、日本経済の再生に力を注ぎ「アベノミクス」を展開してまいりました。その甲斐あって、また、経済界の皆さんにも大いに御尽力いただいた結果、企業の経常利益は過去最高水準に達し、17年ぶりの高水準の賃上げ率や23年ぶりの高水準の有効求人倍率を達成しました。経済の好循環は着実に回り始めています。

 その「アベノミクス」は第2ステージに入っています。私はこれまでの「三本の矢」の経済政策を強化し、その上で少子高齢化の流れに歯止めをかけるため「希望を生み出す強い経済」、「夢をつむぐ子育て支援」、「安心につながる社会保障」からなる新しい「三本の矢」を発表いたしました。

 新しい「三本の矢」は、「名目GDP600兆円の達成」、そして「希望出生率1.8の実現」、「介護離職ゼロ」を達成し、活力ある日本を創り、地域と世界の成長に日本として一層貢献していくためのものであります。

 その中で、お互いに重要な貿易パートナーである日韓中が参加する日韓中FTA及び東アジア地域包括的経済連携交渉の推進は、アジアそして世界の経済成長にとって、とっても重要な意味を持ちます。

 TPPの大筋合意によって、アジア太平洋地域の更なる成長に向けた礎が築かれる中、日韓中FTA及びRCEP(東アジア地域包括的経済連携)においても包括的かつ高いレベルの協定を実現するため、日韓中3か国の協力、そしてリーダーシップが強く求められています。

 既に締結されている日韓中投資協定に加え、これらの自由貿易協定の交渉妥結により、3か国間の貿易・投資の促進を通じた経済的な結びつきを一層強固なものとし、世界の成長センターとしての東アジアの活力を、より効果的に日韓中3か国の成長戦略に取り込んでいきたいと考えております。

 また、一昨日行われた日韓中経済貿易大臣会合では、日本から3か国間のサプライチェーンの連結性向上に向けた協力を提案し、韓中両国の支持を得たと聞いております。

 アジアの経済大国である日韓中が率先してサプライチェーンの結び付きを強めることにより、アジア全体の物流の効率化、貿易の円滑化を実現することを目指していきたいと考えています。

 日韓中サミットにおいても、日韓中FTAの早期妥結を始め、様々な経済上の連携を強めていくことで意見が一致いたしました。

 経済界の皆さんが直接に対話を重ね、協力関係を強化することが、日韓中3か国間の経済的な結びつきをより強固なものにするための一番の近道であることに疑いの余地はありません。

 その観点から、3か国のビジネスリーダーの皆さんが集う、この日韓中ビジネスサミットは時宜を得たものであります。

 本日の議論の結果、日韓中3か国の経済界の関係が一層深化し、貿易・投資が更に促進され、地域全体の活性化につながっていくことに期待をしているところでございます。

 本日のお招きに重ねて御礼を申し上げますとともに、ビジネスリーダーの皆さんの一層の御活躍と御発展をお祈りし、私の挨拶とさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。カムサハムニダ。