データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] STSフォーラム 安倍総理スピーチ

[場所] ケニヤッタ国際会議場(KICC),ナイロビ
[年月日] 2016年8月27日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

 本日は、皆様とともに、STSフォーラムの会合に出席できたことを光栄に存じます。

 私は、フォーラムが毎年秋に京都で開く年次総会に4回参加し、日本国総理大臣としての記録保持者となりました。さらに記録を伸ばしていきたいと思います。

 私はまた、フォーラムの創設者である尾身幸次理事長の御意向を踏まえ、フォーラムの名誉会長を務めております。

 科学のための科学は、それ自体としては大切なことでしょう。しかし尾身理事長の着眼とは、社会にとっての科学、技術を考えることは、もっと重要だというものでありました。

 150年前、西洋の衝撃を受けた日本は、当初から、工学教育に力を注ぎました。科学が技術を生み、それが社会を強くする。この公式を証明したのが、日本の近代化であります。

 尾身理事長が、日本自身のそうした歩みに着目し、フォーラムを始めて12年。フォーラムは、もはや社会と科学、技術に関心を持つあらゆる人々にとって、類例のない、一つの公共財になったと言っても過言ではありません。

 フォーラムは今、TICADとともにアフリカの地を踏みました。その信念、科学と技術が社会を豊かにし、強くするという強い思いは、アフリカでこそ、大きな意味を持つことでしょう。

 なぜなら、今朝TICAD開会に当たって申しましたように、科学と技術は、アフリカの発展に、今まさに「クウォンタム・リープ」をもたらしていると、私は確信しているからであります。

 フォーラムには早くから、ケニアやジンバブエ、モザンビーク、エチオピア、ルワンダといった国々から、科学技術や教育の責任を有する大臣の方々が参加されて、今日に至ります。

 加えて今回は、日本の技術をけん引する会社のリーダーの方々に、参加していただいています。

 榊原経団連会長もここにお越しでございますが、こうした正に技術を持った日本の企業が、アフリカの発展に貢献していくことを期待したいと思います。

 アフリカというこの可能性の大陸で、日本の科学・技術が、またその教育が、人々の幸せを増すため、必ずや役立つことを信じて疑いません。

 近年、インドやタイ、マレーシアやシンガポールに開催の場を求めてきたSTSフォーラムは、いまやその意義を、世界の各地に広めようとしています。

 そしてアフリカほど、STSフォーラムが貢献できる場所はない。なぜならここは、可能性の大陸だからだと再び申し上げ、私の御挨拶とさせていただきたいと思います。ありがとうございました。