データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] TICAD VI 全体会合2 安倍総理スピーチ

[場所] 
[年月日] 2016年8月28日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

 ケニヤッタ大統領、そして各国・国際機関・市民社会代表の皆様、日本及びアフリカ企業関係者の皆様、アフリカの地で初めて開催する今回のTICADには、日本の経済界を代表する榊原日本経済団体連合会会長をはじめ、70にも及ぶ日本の経済界のリーダーがやってきました。

 経団連会長及び日本を代表する企業のトップがこれだけの規模でアフリカを訪問したことは、これまでにありません。アフリカと共に成長したいという日本企業トップの熱意の表れであります。

 TICAD Vの際、日本企業関係者とアフリカ政府関係者との自由な意見交換の機会を提供しましたが、今回は正式なプログラムとしました。

 これは、アフリカが質の高い成長を続けるためには、民間の力が必要なことは今や自明であり、そうであるならTICADの場で、日本とアフリカの官民が一緒にアフリカの発展につき議論することは、むしろ自然であると考えたからです。

 日本企業の強みは、製品品質の高さ、職業訓練を通じたスキルの高い人材育成などです。日本企業はアフリカの若者一人ひとりを育成することができます。日本企業の高い技術力は、アフリカの開発課題を解決することに資すると確信しています。

 現在、日本企業にとってアフリカ諸国でのビジネス機会は拡大しています。今回の私のアフリカ訪問の機会に合計22の企業や大学がアフリカ諸国・機関と73本の覚書に署名します。

 また、日本企業は、今般のTICADの機会にアフリカ発展に引き続きコミットしていく決意を「ビジネス宣言」として表明しました。

 御列席の皆様、日本は、アフリカの投資環境を整備するため、質の高い投資協定をこれまで以上に積極的にアフリカで推進していきます。

 今般、ケニアとの投資協定に署名したほか、コートジボワールと新たに二国間投資協定の交渉開始に合意いたしました。更に今後、アフリカ諸国との投資関連協定の締結に向けて集中的に取り組みます。

 また、アフリカ諸国との二国間の投資及び経済交流を更に促進させる観点から、各国との租税条約の締結が重要であるとの認識の下、アフリカ諸国との租税条約の締結を推進してまいります。

 御列席の皆様、アフリカがその高い潜在性を発揮し、経済成長を維持していくためには、民間企業の期待に応え、アフリカ自らが、魅力的な投資先であろうとし、また、そのために努めることが期待されています。

 日本企業が、アフリカに求めていることは明確です。それは、安全なビジネス環境整備及び自由で安定した企業活動の実現です。日本企業が活動する上で最優先課題である平和と安定の確保及び安全なビジネス環境の整備を、本日お集まりの皆様にお願いしたいと思います。

 また、過度の規制を撤廃し、必要な法制度の整備とその着実な運用を進めていただくとともに、円滑な人と物の出入りを実現していただきたいと思います。このために必要な協力を日本は惜しみません。

 このような全ての取組を日本とアフリカ双方の官民一体で進めるため、今回のTICADの最大の成果の一つとして、「日アフリカ官民経済フォーラム」を立ち上げます。

 日本政府の閣僚、経済団体や企業のトップが3年に一度アフリカを訪れ、カウンターパートと会う。

 日本とアフリカの企業がもっと一緒に仕事をするために何が必要か。ビジネスの目線で課題を特定し、官民が力を合わせて解いていきます。

 これまでのようにアフリカの各国と個別に議論するのではなく、より広域な地域経済の発展に資する計画や施策について議論を行い、日本企業のビジネス活動・投資の活発化につなげます。

 最後に、今回のTICAD VIでは、日本の経済界を代表する榊原日本経済団体連合会会長をはじめ、全てのセッションに民間企業の方々に出席していただいています。是非、日本企業のアフリカ進出に向けて、民間企業の方々との間で有意義な意見交換が行われることを期待したいと思います。

 ありがとうございました。