[文書名] 日本・アルゼンチン経済フォーラム 安倍総理スピーチ
本日は、「日本・アルゼンチン経済フォーラム」に出席し、両国の経済界の熱気を感ずることができ、大変うれしく思います。我々が想像していたよりたくさんの皆さんに、こうしてお越しいただいたことに重ねて御礼を申し上げます。
本年は、日本とアルゼンチンの二国間関係の新たな幕開けの年です。昨年12月のマクリ政権発足後、両国間で数多くの官民両方のハイレベルの対話や交流が行われてきました。この度、私が日本国総理大臣として57年振りにアルゼンチンを公式訪問したのは、新たな段階に入った二国間関係を象徴するものであります。
アルゼンチンは食糧資源や鉱物・エネルギー資源に恵まれ、G20のメンバー国として、メルコスールのリーダー国として、世界経済・地域経済に影響力を有する大国であります。
私は本日の日・アルゼンチン首脳会談において、マクリ大統領との間で、両国の関係を「戦略的パートナー」に格上げすることについて合意し、マクリ大統領が自由開放的な経済政策を進め、南米を牽引することを支持すると伝えました。
日本の産業界も高いポテンシャルを秘めたアルゼンチンの変化に大きな関心を有しています。本年のトヨタ、日産の動きに代表されるように様々な投資が発表されています。また、本年7月にJETROが派遣したインフラミッションや9月のアルゼンチン政府主催の投資フォーラム等に多くの日本企業関係者が参加したこともその関心の現れであります。
一方で、アルゼンチン側からは、本年5月の官民経済フォーラムや9月の交通インフラセミナー等において、日本企業によるアルゼンチンへの投資への期待と関心が表明されています。
両国の経済関係の大きなポテンシャルを実現し、両国経済界の協力と事業を後押しするために、日本政府もマクリ大統領のチームと協力して力一杯取り組んでまいります。
既に本年、貿易投資合同委員会やビジネス環境整備委員会等の官民による経済対話枠組みを立ち上げました。民間企業の意見に耳を傾けながら、両国の貿易・投資・ビジネスの環境の改善に取り組みます。交渉中の二国間投資協定を始めとする法的枠組みの整備を進め、投資環境の安定性・透明性の向上をお約束します。日本企業によるアルゼンチンへの投資が更に進むように、JBICやNEXIを積極的に活用してまいります。JETROもブエノスアイレス事務所駐在員の派遣を再開します。
1927年、ブエノスアイレスの地下鉄をお手本として日本で初となる地下鉄銀座線が開通しました。それから約90年がたち、現在日本は鉄道を含む質の高いインフラを世界中に展開しています。
日本からのインフラを含む幅広い分野への投資の促進が、アルゼンチンにおける雇用の拡大や新たなビジネスチャンスの創造につながることを確信しています。また、アルゼンチンの中小企業の生産性向上及び競争力強化に貢献するJICA(国際協力機構)による「改善(カイゼン)プロジェクト」の実施を決定しました。これらを通じて、中南米の産業人材育成に我々も取り組んでまいります。
今日この場所に立つのは、3年ぶりでありました。今から3年前、この場所でIOC総会が開かれまして、この部屋で、あのIOC・ロゲ会長の「東京」という、何とも言えないあの言葉を聞いた時の感動を思い出しているわけであります。私は人と抱き合って喜び合ったというのは初めての経験でありますが、横にいた森元総理ではなくて、その隣にいた、小谷実可子、シンクロの元メダリストと一緒に抱き合って喜んだのを思い出しているところでございます。あの時から、2020年の東京オリンピック・パラリンピックへの歩みが始まったわけでございます。そして今日、このフォーラムを出発点として、日本とアルゼンチンのビジネス分野における協力が始まると思います。それは必ずや、両国国民にとって大きな成果となって、あの時のあのフォーラムが出発点だったなと、そう思える、今日はその日になることを祈念して、私の御挨拶とさせていただきたいと思います。本日は本当にありがとうございます。