[文書名] 2025年国際博覧会開催国への立候補表明文書(内閣総理大臣書簡)
私は、ここに、四月十一日付け閣議了解によって、日本が二〇二五年国際博覧会(登録博覧会)開催国に公式に立候補することを、国際博覧会条約に則り、博覧会国際事務局に届け出ることを謹んでお知らせします。
我々の博覧会は、「いのち輝く未来社会のデザイン(英語:Designing Future Society for Our Lives、仏語:Concevoir la Société du Futur, Imaginer notre Vie de Demain)」をテーマとして、五月三日から十一月三日までの六か月間、関西地域の大阪府夢洲において開催するというものです。
日本は、一九七〇年に同じ大阪において「人類の進歩と調和」というテーマを掲げ、アジアで初の国際博覧会を開催し、大成功を収めた経験があります。以降約半世紀を経て、人類は豊かな生活を享受するようになった一方、災害、食糧不足、病気、暴力といった脅威、グローバル化・情報化等の世界的現象、さらには生命・人生のありようを根本的に問い直しうる人工知能やバイオテクノロジー等の飛躍的発展に直面し、人間ひとりひとりの幸福な生き方と、それを支える社会・経済システムの未来像を問い直すべき時期にあります。日本には、長期的・持続的利益を重視する精神が根付いています。関西地域、大阪は、売り手だけではなく、買い手も満足し、社会貢献も出来る商売を尊ぶ精神の発祥地です。私は、こうした周囲を思いやる利他精神が息づく日本、そして大阪を含む関西地域こそが、国、地域社会、企業及び個人といった様々なレベルのエゴイズムを排しつつ、あるべき未来社会の姿を問う場としてふさわしいと自負しています。そこで、日本は、大阪の地に国際博覧会を再び誘致し、世界の皆さまと共に、これからの生命のあり方、生き方、ライフスタイルについて国際社会に発信することを決意しました。
大阪府を含む関西地域は、長く政治、経済、文化の中心地であり、五つの世界文化遺産を含め、歴史的建造物、伝統芸能、和食など様々な文化的遺産を擁する魅力あふれる地域です。また、博覧会のテーマに関連する健康・ライフサイエンス分野の世界的な研究機関、企業等が集積している地域でもあります。会場の夢洲は、大阪の都心から約十キロメートルの近距離にあるため、既存の都市機能が容易に利用可能です。また、会場までの鉄道延伸や道路拡幅などの整備が計画されているほか、夢洲が人工島であることから、海上アクセスの導入も容易です。
日本政府におきましては、昨年十二月に、本博覧会の誘致検討に係る関係府省庁連絡会議を立ち上げ、政府一丸となって取り組んでおります。本年三月二十七日には、経済界及び関西地域の自治体が中心となって、本博覧会の誘致委員会が設立され、その会長に、日本経済界を代表する榊原定征日本経済団体連合会会長が就任し、オール・ジャパンの誘致体制が整ったところです。
日本は、犯罪率が極めて低く、世界の中で治安が最も良い国の一つです。加えて、昨年、G7伊勢志摩サミットを無事終えるなど、国際的大規模イベントにおけるセキュリティの確保には常に万全を期しております。二〇二五年国際博覧会においても、皆さまが安心して御参加いただけるようあらゆる措置をとってまいります。
日本が二〇二五年国際博覧会開催国に選ばれた暁には、同博覧会を開催するための法人が設立されることが想定されています。日本政府は、国際博覧会条約締約国として、同条約第十条第二項にいう、当該法人による義務の履行を保証するため、必要な措置を講じてまいります。
貴殿に敬意を表するとともに、貴殿のリーダーシップの下、誘致競争が公正に行われ、選挙が透明性のある形で、円滑に実施されることを期待しております。
平成二十九年四月十一日
日本国内閣総理大臣 安倍 晋三
博覧会国際事務局 事務局長
ビセンテ・ゴンザレス・ロセルタレス 殿
※平成29年4月24日に博覧会国際事務局(BIE)のビセンテ・ゴンザレス・ロセルタレス事務局長に提出されました。