[文書名] 平成29年沖縄全戦没者追悼式における内閣総理大臣挨拶
平成29年沖縄全戦没者追悼式が執り行われるに当たり、沖縄戦において、戦場に斃(たお)れた御霊(みたま)、戦禍に遭われ亡くなられた御霊に向かい、謹んで哀悼の誠を捧(ささ)げます。
先の大戦において、ここ沖縄は、国内で最も苛烈な地上戦の場となりました。のどかな日常は、修羅の巷(ちまた)に変じ、二十万人もの尊い命が失われ、豊かな自然は焦土と化しました。多くの方々が、家族の行く末を案じながら犠牲となられ、豊かな人生を送るはずであった子供たちの輝かしい未来、多くの若者の夢や希望も無残にも奪われました。平和の礎(いしじ)に刻まれた多くの戦没者の無念を思うとき、胸塞がる気持ちを禁じ得ません。
沖縄戦から七十二年がたった今日においても、決して癒えることのない最愛の肉親を失った御遺族の皆様の深い悲しみ。そのことに思いを致し、そして、私たちが享受する平和と繁栄は、沖縄の人々の、言葉では言い表せない塗炭(とたん)の苦しみ、苦難の歴史の上にあることをかみ締めながら、静かに頭を垂れたいと思います。
我が国は、戦後一貫して、平和を重んじる国としてひたすらに歩んでまいりました。戦争の惨禍を決して繰り返してはならない。この決然たる誓いを貫き、万人が心豊かに暮らせる世の中を実現する。そのことに不断の努力を重ねていくことを、改めて、御霊にお誓い申し上げます。
沖縄の方々には、永きにわたり、米軍基地の集中による大きな負担を担っていただいており、この現状は到底是認できるものではありません。政府として、基地負担軽減のため、一つ一つ確実に結果を出していく決意であります。
昨年十二月には、二十年越しの関係者の御努力により、県内の米軍施設の約二割に相当する北部訓練場の過半、本土復帰後最大の返還が実現しました。今後、地元の皆様の御意見を伺いながら、地域振興に向けて、基地の跡地利用を政府として最大限支援してまいります。
これからも、できることは全て行う。沖縄の基地負担軽減に全力を尽くしてまいります。
沖縄は、美しい自然の中で豊かな文化を育んできました。成長するアジアの玄関口に位置し、出生率は日本一です。沖縄の尽きることのない魅力に惹(ひ)かれてこの地を訪れる人々や、寄港する外国クルーズ船の数は、近年、目を見張るほど増え続けており、沖縄は、その優位性、潜在力を存分に生かし、飛躍的な発展を遂げつつあります。私は、可能性に満ちた沖縄の、明るい未来を切り拓いていくため、先頭に立って、沖縄の振興を更に進めてまいります。
結びに、この地に眠る御霊の安らかならんこと、御遺族の方々の御平安を、心からお祈りし、私の挨拶といたします。
平成二十九年六月二十三日
内閣総理大臣 安倍晋三