[文書名] 2017年「海の日」を迎えるに当たっての内閣総理大臣メッセージ
四面を海に囲まれた我が国にとって、海は、古くから物資の輸送や豊かな食を得る場として欠かせない存在です。日本は世界第6位の管轄海域を誇り、それは水平線のはるか彼方(かなた)まで拡(ひろ)がっています。
この広い海がもたらす豊富な資源は、大きな可能性を秘めています。近年、我が国の海域では、メタンハイドレート等の商業化に向けた開発の取組など、新たな海洋産業の創出に繋(つな)がる海洋エネルギー・鉱物資源開発への期待が高まっています。
一方で、我が国周辺海域での外国公船等の領海侵入など、海洋を巡る情勢は一層厳しさを増しています。「海に守られた国」から「海を守る国」へとの考え方のもと、海洋の安全を確保し、海洋権益を守り、また、法の支配に基づく「開かれ安定した海洋」を次世代へと引き継ぐため、時代や環境の変化に目を凝らし、取組を進める必要があります。
本年4月、海洋基本法制定から10年が経過するなかで、次期海洋基本計画の検討に着手しました。来春に予定する次期基本計画では、海洋の産業利用などと共に、海洋の安全保障を幅広く捉え、領海警備、治安の確保、災害対策、離島の保全といった課題への取組の強化など、海洋を巡る諸状況を適切に踏まえた総合的な計画を策定し、広範にわたる海洋政策を、国を挙げて戦略的に推進していきます。
「開かれ安定した海洋」の実現には、外交面での取組とともに、最前線で対応する世界の海上保安機関の連携が重要です。特に、地球規模の環境変化に対し、地域の枠を越えた価値観の共有や力の結集が求められます。このため、本年9月、海上保安庁と日本財団が共同で、世界の海上保安機関が一堂に会する、世界初の長官級会合を開催します。
未来をしっかり見据えながら、海洋環境を守り、気候変動等の地球的課題に取り組むとともに、海洋に関する国際活動の担い手の育成も進めます。国民一人一人、特に若い皆さんに、海への関心と理解を持っていただき、海と接し、海を知っていただくことを願います。そうした機会を提供するため、全国の市町村等と連携し、海洋教育を一層推進してまいります。
「海の日」が、国民の皆様にとって、海に親しみ、海の恩恵に感謝し、海と日本の未来に思いを馳(は)せる機会となることを切に希望いたします。
平成29年7月17日
内閣総理大臣・総合海洋政策本部長 安倍晋三