データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日・インド・ビジネス全体会合 安倍総理スピーチ

[場所] 
[年月日] 2017年9月14日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

 ナマスカール(こんにちは)。私は常々こう述べています。日印関係は世界で最も可能性を秘めた2国間関係である。強いインドは日本のためになる。強い日本はインドのためになる。そしてこう述べるとき、何よりも大事なのは経済力。経済力は国力の源泉です。私とモディ首相は確信しています。日本の高い技術とインドの豊富な優秀な人材が協力すれば、日印を起点に世界を相手にしたものづくりができる。本日多くの先人がまいた種が大きく花開き、そして果実となって実を結んでいるのに大変勇気づけられます。我が国は官民を挙げてモディ首相の進めるメイク・イン・インディアを後押しします。例えば、モディ首相がグジャラート州首相時代に、鈴木修会長と決断し、約3年の月日を経て開所に至ったスズキ新工場は、現状25万台の年間生産台数を、将来75万台へと3倍に増強する予定です。グジャラートで生産された自動車の販売は、インド国内から世界へと広がっていきます。

 モディ首相の英断により、インドは環境大国へと変貌を遂げようとしています。次世代自動車の時代の到来は、インド、そして世界で現実となりました。そして、インドは世界のし烈な競争に打ち勝つための未来への布石を打たなければなりません。その鍵を握るのが電池生産。スズキ、デンソー、そして東芝が力を合わせてインド初の自動車用電池工場の建設を、ここグジャラートで予定しています。

 高い技術を有する大企業、中小企業が熱いまなざしを向けています。本日、日系企業15社が参加し、グジャラートへの投資に関心を表明しました。そして投資環境は更に良くなります。今般の日印投資促進ロードマップにより、新たにここアーメダバードにジェトロ(日本貿易振興機構)のビジネスサポートセンターを設置すること等を通じ中小企業の進出を後押しします。

 本日、ビジネス・リーダーズ・フォーラムから大変貴重な提言を頂きました。かかる提言を踏まえ、日印双方が一層の知恵を絞れば、今後更に多くの企業が集まり、日印ものづくり新時代は必ず進化します。

 私はモディ首相のスキル・インディアにも貢献したいと思います。日本企業は即戦力となる現場のリーダー人材を熱望しています。この夏、スズキ、トヨタ、ダイキン、ヤマハによる日本式ものづくり学校4校が開校し、今後、日立建機、トヨタ通商による開校も予定されていることをうれしく思います。更に日本語教育。インド政府と協力し、今後5年間で100の大学で1000人の日本語教師を育成します。

 私は、インドの若者に言っておきたい。是非、日本式ものづくり学校に来てください。日本語を勉強してください。そして、将来インドの発展を担う日系進出企業の一員になっていただきたい。

 インド、太平洋という2つの海、これを取り巻くアジアからアフリカに至る一帯が有機的に結びつくことが、今後の世界経済発展の鍵となります。これを実現するため、アジア・アフリカ各地でインドと共に協力プロジェクトを進めます。

 最後は人と人とのつながりです。私は日本の人々とインドの人々のつながりをもっと抜本的に増やしたい。インドから日本への旅行者は5年で倍増し、昨年には12万人となりました。しかし、もっともっと日本に来ていただきたいと考えています。

 日本にはインドに起源を持つ寺社仏閣から数学、ITを活用した最新テクノロジーがあり、多くのインドファンもいます。また、自然も四季折々に見せる姿を変化させます。また、おいしいインド料理屋もたくさんあります。インドの皆さんのお越しを国を挙げて歓迎いたします。

 私もこれまでに何度もインドを訪れ、その度に成長と伝統のダイナミズムに魅了されてきました。2年前にモディ首相と共に訪問したヴァラナシに、今回、日印友好の証(あか)しとして国際会議場の建設を支援することを決定しました。国際会議場を通じて、日本とインドの人々の交流が更に深まりインドの魅力が世界に発信されることを期待しています。

 60年前に日本の総理大臣として貴国を初めて訪問したのは、私の祖父の岸信介であります。その際、ネルー首相と祖父は首脳会談を行い、そして首相官邸の前に集まった数万人の人々に対して祖父を紹介してくれました。当時日本はまだそれほど豊かではなかった。そしてその敗戦国の首相を、当時ネルー首相は、私が最も尊敬する国日本の首相だ、と紹介してくれました。そのとき祖父は感激し、自分は生涯インドの友人でありたいと、こう心に誓ったそうであります。

 昨日私がグジャラートにやって来たとき、約5万人の方々が街頭に出て私たちを歓迎していただきました。私も本当に、妻も感激しました。そして私たちも、生涯グジャラートのそしてインドの友人であろうと、こう心に誓いました。

 私とモディ首相は、今回10回目の首脳会談を行いました。これからも回数を重ねてまいります。そして友情を更に深めていきたいと思います。深い友情で結ばれ、共に繁栄の未来を進もうとする日本とインド、ここに集われた皆様は、両国関係の歴史に新たな1ページをつづる方々です。今日この日が日本、インド、そして皆様を一層結びつける機会となることを心より願います。ダンニャワード(ありがとうございました)。