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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] UHC:万人の健康を通じたSDGsの達成 安倍総理スピーチ

[場所] 
[年月日] 2017年9月18日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

 サル・セネガル大統領、そして皆様、本日は、日本とUHC2030等が共催する「UHC:万人の健康を通じたSDGsの達成」に御出席いただき、心から感謝申し上げます。

 グローバル化の進展は人類に大きな恵みをもたらしていますが、同時に格差が拡大していくのではないかという不安や不満の声も拡大しています。また、国際社会は、気候変動、テロ、難民問題のほか、感染症、人間の安全保障を脅かす様々な脅威に直面しています。

 こうした問題にしっかり向き合い、誰一人取り残さない社会の実現という2030アジェンダの理念を実現する上で、保健、とりわけユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、略してUHCの推進は、その欠くべからざる重要な一部です。

 UHC達成に向けた国際的取組は大きく進展を見せています。アフリカのオーナーシップと国際社会のパートナーシップを掲げた昨年のTICAD VIでは、UHC達成の参考となる道筋や行動を提示するUHC in Africaという政策枠組みを示しました。本年には様々な取組の連携を図るプラットフォームであるUHC2030が発足しました。

 しかし、私たちの歩みは始まったばかりです。医師や看護師、コミュニティー・ヘルスワーカーの拡充、医薬品の供給・管理体制の構築、そして誰もが負担可能な範囲で基礎的な医療を受けられる財政制度の構築への道のりは険しく、課題は山積しています。

 私たちはこの1年間、国際保健分野に新しいリーダーを迎えました。グテーレス国連事務総長、テドロスWHO事務局長、シュタイナーUNDP総裁の着任は、今後の取組を質的に飛躍させる又とない機会であり、彼らの強いリーダーシップに期待しています。

 国際保健は、2000年の九州・沖縄サミット以来、世界のリーダーが議論すべきトップアジェンダの一つになりました。日本政府は昨年のG7伊勢志摩サミットやTICAD VIでも国際保健を大きな柱と位置づけ、UHCを推進してきました。今後とも国連でのハイレベルな場や横浜で開催されるTICAD 7などの場を活用し国際保健に関する議論を一層深めたいと考えています。

 一方、UHCを達成するためには、分野横断的な取組が必要です。都市に集中する人口、アジア諸国を中心とする高齢化といった社会の変革の中で、我々はUHCを追求する必要があります。我が国は、昨年、アジア健康構想を策定し、高齢化社会とUHCに関する我々の経験をアジアの多くの国に共有する考えです。

 更に持続的かつ包摂的なUHCのためには多くのリソースも必要です。そのためには、途上国の国内資金、国際機関やドナー国の支援に加え、民間ビジネスや市民社会のリソースを動員し、共にUHC達成に活用するための枠組みが重要なのではないでしょうか。

 日本は、本年12月にUHCフォーラム 2017を世銀やWHO、UNICEF、UHC2030などと共に東京で開催します。UHCフォーラムでは、本日の議論を基に、UHCを実践的に進めるための方策について議論を深めたいと考えています。

 UHCへの取組は、2030年、そして更にその先を見据えた未来への投資です。本日のイベント及び12月のUHCフォーラムが具体的な一歩を踏み出す機会になると確信しています。ここにいる各界のリーダーの皆様と東京でお会いするのを楽しみにしています。御清聴ありがとうございました。