[文書名] UHCフォーラム2017ハイレベルオープニングセッション 安倍総理スピーチ
サル・セネガル大統領、そしてティン・チョウ・ミャンマー大統領、グテーレス国連事務総長、御列席の皆様、本日は、UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)フォーラムに御出席いただき、心より感謝申し上げます。
ちょうど2年前、日本はこの場所で国際会議を開催し、UHCの推進を力強く表明しました。この度、キム世界銀行総裁、テドロスWHO(世界保健機関)事務局長、レークUNICEF(国連児童基金)事務局長と共に、新たにUHCフォーラム2017に衣替えして、2年前を大きく上回る規模で開催できることを大変うれしく思います。
日本は、人間の安全保障の観点から、長年にわたり国際保健を重視してきました。取り分け、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの推進は、持続可能な開発目標(SDGs)の理念である、誰一人取り残さない社会の実現を図る上で不可欠な要素です。こうした考えの下、昨年のG7伊勢志摩サミットで日本は議長国として、首脳レベルで初めて危機への備えを有するUHCの推進ビジョンを掲げました。
その後も、TICAD VIにおけるUHC in Africaの発表や国連総会などの機会を通じて、日本は国際社会と共に、UHCの実現に向けた取組を呼び掛け推進してまいりました。さらに我が国は昨年、アジア健康構想に向けた基本方針を策定しました。国民皆保険制度や介護保険制度などで培った、高齢化社会におけるUHCの経験をアジア諸国に共有していきたいと考えています。
一方で、UHCの達成に向けては、まだ多くの課題が残されています。今後、UHC推進を加速するために必要な取組を、私から5つ挙げたいと思います。
1つ目は、グローバルレベルで、UHC推進のモメンタムを一層強化することです。
今月、国連決議で2019年にUHCハイレベル会合を開催すること、12月12日を国際UHCデーとすることが決まりました。モメンタム強化のための大きな一歩です。
また2020年、日本は人々の健康の基盤となる栄養分野の取組を促進するため、東京で栄養サミットを開催します。
さらに、SDGsに盛り込まれた2030年のUHC関連目標の達成を促進するため、今回のフォーラムの成果として、中間点までの目標を新たに設定することを提唱します。2023年までに、基礎的な保健サービスにアクセスできる人を全世界で10億人増加させるとともに、医療費負担のために貧困に陥る人を年5千万人削減する。この目標の達成に向け、引き続きグテーレス事務総長を始め国際社会のリーダーたちと共に、UHC推進のためのグローバルな枠組みづくりに全力を挙げてまいります。
2つ目は、国レベルでの連携の体制構築と実行です。
UHC実現のためには、保健システム強化に加え、栄養、水・衛生等も含めた分野横断的な対応が求められます。そのため、各国においてUHC推進のプラットフォームを構築・強化することを提言します。これは各国政府のオーナーシップの下、開発パートナー、民間などの関係主体が有機的に連携して、UHC実現に向けた計画策定や人材育成の推進を行えるようにするためのものです。
日本はこの提言を具体化すべく、世銀やWHO、ユニセフと共同で、東京UHC共同イニシアティブを立ち上げ、既にパイロット国において活動を開始しています。今後、こうした先進事例から得られる知見を、より多くの国や機関と共有してまいります。
3つ目は、継続的な進捗のモニタリングです。
今般のWHOと世銀によるレポートは、国連でまとめられた指標を使ってUHC進捗の測定を正式に行った画期的なものです。こうしたモニタリングの継続・発展を促す契機とすべく、日本は今後もUHCフォーラムの継続を支援していきます。
4つ目として、UHCのための持続可能な財源確保も喫緊の課題です。
保健省のみならず財務省も含めた政府が一体となって、国内資金を安定的に動員するとともに、国際的な援助と効果的に協調していくことが重要です。
最後に、イノベーションの重要性についても触れたいと思います。
アフリカにおいて、日本の技術によるドローンを活用して、これまで医療が届かなかった地域に医療を供給する革新的な取組が始まっています。TICADプロセスの下、こうした様々な知見の共有も図りつつ、保健分野の支援を推進します。
これらの総合的な取組を機動的に進めていくため、日本は今後、総額29億ドル規模のUHC支援を行うことをここにお約束いたします。これにより、各国、各機関の取組を強力に後押ししてまいります。
本日の会議には、国際保健分野を牽引(けんいん)する世界のリーダーたちにお集まりいただきました。今後のUHC推進の方向を指し示すような、有意義で示唆に富む議論が交わされることを心より祈念しております。
御清聴ありがとうございました。