データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 国連ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)ハイレベル会合 安倍総理スピーチ

[場所] 
[年月日] 2019年9月23日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

 本日、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)に関するこの重要なハイレベル会合の開催のために御尽力いただいた皆様に感謝と敬意を表します。UHCフレンズ・グループが立ち上がり、UHCへの機運が高まり、国際的支持を得て本日の会合に至ったことをよろこばしく思います。

 日本は、第二次大戦直後の混乱と貧困を乗り越え、1961年に国民皆保険制度を導入し、UHCを達成しました。支払可能な費用で保健医療サービスを受けることが可能となり、日本の社会経済発展、健康長寿の達成を支えました。この日本の経験に根ざし、私は、これまでも世界の人々にUHCの必要性を広く訴えてまいりました。

 一方、今でも世界の約半分もの人が基礎的保健医療サービスを受けられていません。私は、人間の安全保障の観点からも、世界のUHCの実現を希求します。

 日本は、本年、G20大阪サミット及びアフリカ開発会議TICAD7を開催し、各国首脳とUHCを議論しました。その結論として、次の2点を皆様と共有したいと思います。

 一つ目は、各国政府が政策について責任を持ち、様々な援助国・機関の支援を活用しつつ、一貫した政策を推進することです。

 日本は、被援助国における人材を養成し、健康保険を拡充します。また、栄養・水・衛生等の分野横断的な取組を後押しします。そのために、民間との連携を促進し、効果・効率を高めます。

 二つ目は、UHCに必要な財政の強化です。最も弱い立場にある人々に質の高い基礎的医療サービスを提供するためには、安定的な財源、加えて、その適切な予算配分が不可欠です。

 そのため、財務当局と保健当局が連携し、政府一体となった取組が必要となります。日本の呼び掛けで、G20(金融・世界経済に関する首脳会合)で初めて財務大臣・保健大臣合同会合が開催されました。ここで、途上国におけるUHCに必要な財政の強化に関する共通理解文書へのコミットメントを確認したことは大きな第一歩です。

 UHCの推進のためには、成果の確認と国際的な説明責任の枠組が不可欠です。私は、来年のUHCフォーラムや東京栄養サミット等の機会に、各国がお互いのUHC進捗を点検し、情報共有を行うべきと考えます。

 もちろん喫緊の保健課題も忘れてはなりません。エボラ出血熱等の感染症は、多くの人を犠牲にし、社会経済的損失を生んでいます。我が国はグローバルファンドやGavi(Gaviワクチンアライアンス)に拠出し、援助からの卒業を目指した取組を支援します。こうした具体的な疾病対策を通じて保健システムを強化することも、UHCを下支えするものです。

 本日のハイレベル会合でUHC政治宣言がまとまったことは大きな前進です。世界のリーダーが協力してUHC政治宣言の約束を果たし、全ての人が、将来にわたって基礎的医療を享受できる、そのような社会を皆さん、実現しようではありませんか。御清聴ありがとうございました。