[文書名] 令和二年沖縄全戦没者追悼式 内閣総理大臣挨拶
令和二年・沖縄全戦没者追悼式が執り行われるに当たり、沖縄戦において、戦場に斃(たお)れた御霊(みたま)、戦禍に遭われ亡くなられた御霊に向かい、謹んで哀悼の誠を捧(ささ)げます。
先の大戦において、沖縄は、苛烈を極めた地上戦の場となりました。20万人もの尊い命が無残にも奪われ、沖縄の誇る豊かな海と緑は容赦なく破壊され、焦土と化しました。多くの夢や希望を抱きながら斃れた若者たち、我が子の無事を願いながら息絶えた父や母、平和の礎(いしじ)に刻まれた全ての戦没者の無念を思うとき、胸の潰れる思いです。
今日私たちが享受している平和と繁栄は、沖縄の方々の筆舌に尽くしがたい苦しみ、苦難の歴史の上にあることを、私たちは決して忘れません。沖縄戦から75年を迎えた今、そのことを改めて噛(か)み締めながら、静かに頭(こうべ)を垂れたいと思います。
我が国は、戦後一貫し、平和を重んじる国家として、歩みを進めてきました。戦争の惨禍を二度と繰り返さない。この決然たる誓いを貫き、平和で、希望に満ち溢(あふ)れる世の中を実現する。そのことに今後も不断の努力を重ねていくことを、改めて、御霊にお誓いいたします。
沖縄の方々には、永きにわたり、米軍基地の集中による大きな負担を担っていただいております。この現状は、到底是認できるものではありません。政府として、基地負担の軽減に向け、一つ一つ確実に、結果を出していく決意であります。
返還計画に基づき実現した初の大規模跡地である西普天間住宅地区では、今後の跡地利用の先行事例として、高度な医療・研究機能の拡充や地域医療の向上を目指した健康医療拠点の整備が進められており、今年度から施設の建設に着手します。
引き続き、「できることはすべて行う」との方針の下、沖縄の基地負担軽減に全力を尽くしてまいります。
美しい自然に恵まれ、アジアの玄関口に位置する沖縄の優位性と潜在力は計り知れません。本年3月には、念願の那覇空港第二滑走路の供用も開始しました。現下の新型コロナウイルス感染症による危機を乗り越え、沖縄が「万国津梁(しんりょう)」として世界の架け橋となるよう、沖縄の振興をしっかりと前に進めてまいります。また、沖縄の皆さんの誇りとも言える、首里城の復元についても、政府一丸となって全力で取り組んでまいります。
結びに、沖縄の地に眠る御霊の安らかならんこと、御遺族の方々の御平安を、心からお祈りし、私の挨拶といたします。
令和二年六月二十三日
内閣総理大臣 安倍晋三