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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] インド太平洋経済枠組みの立上げ 岸田総理大臣による挨拶

[場所] 
[年月日] 2022年5月23日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

バイデン米国大統領閣下

御出席の皆様、

1 はじめに

 本日、日本において、バイデン大統領が提唱するインド太平洋経済枠組み(IPEF{アイペフとルビあり}: Indo-Pacific Economic Framework)が立ち上げられることを心から歓迎し、強く支持します。

2 「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて

 インド太平洋地域は、世界の人口の半数とGDPの約6割を擁し、世界の成長と活力の原動力です。

 日本は、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現を目指し、これまで1基本的価値・原則の定着・強化、2経済的繁栄の追求、3平和と安定の確保の3つの柱を中心に据え、米国や地域のパートナーと協力しながら、地域の安定的な繁栄に貢献してきました。

 今般、バイデン大統領がこの地域を訪問し、ここ日本で自らIPEFの立上げを宣言されたことは、この地域への米国の強いコミットメントを明確に示すものです。バイデン大統領の力強いリーダーシップを高く評価します。日本は、IPEFに参加し、米国と緊密に連携し、また、ASEAN諸国を始めとする地域のパートナーと手を携えて、新たな枠組み作りに協力して参ります。

3 実体的なメリットの実現に向けて

 IPEFが地域の経済秩序にとって有意義な枠組みとなるためには、参加する各国が必要としている分野で、できるものから早期に具体的な成果を出していくことが重要です。IPEFがサプライチェーン強靭化、脱炭素・クリーンエネルギー、デジタル経済といった項目を取り上げることは、現下の国際情勢に照らして、誠に時宜にかなっています。

 こうした分野の協力において民間セクターとも連携していくことが重要です。デジタル貿易に関するものをはじめ、地域で共通のルールやスタンダードを作り、透明性と予見可能性を向上させていくと共に、人材育成や技術支援などの協力も盛り込み、協力とルールのバランスが取れた枠組みを関係国で共に考え、創っていこうではありませんか。

4 結語

 今後、地域のダイナミズムの源泉であるASEANが、IPEFにおいても中核的な役割を果たすことが重要だと考えています。日本は、ASEANの一体性と中心性を尊重し、米国や本日御参加の他のパートナー諸国と協力して、積極的に議論に参加していきます。米国のインド太平洋戦略、日本のFOIP、そしてASEANのインド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)、インドのアクト・イースト政策など、各国が地域で推進するイニシアティブと知恵を持ち寄って、共により繁栄したインド太平洋地域を作っていきたいと思います。

 そして、本枠組みは立上げ後も新しいパートナーの参加に開かれている、包摂的で開放的な枠組みです。これからもより多くのパートナー国がIPEFの議論に加わってくることを大いに歓迎します。

 IPEFを通じて、これからのインド太平洋の持続可能な成長、平和と繁栄を実現するための経済秩序を皆で創り上げていきましょう。地域の多くのパートナーと協力する機会を心から楽しみにしています。

 御清聴ありがとうございました。