[文書名] 日本経済団体連合会夏季フォーラム2023 岸田内閣総理大臣講演
皆様、こんにちは。本日は経団連夏季フォーラム2023。こうして多くの日本経済界を代表する皆様方を前にお話をさせて頂く機会をいただきましたことを心から感謝を申し上げます。一昨日まで、経団連の中東委員会の皆様方をはじめ、多くの経営者の皆様方とともに、中東を訪問させていただきました。御協力に心から感謝申し上げながら、中東、今の時期、気温は45度近くに上ります。それから考えますと、軽井沢は大変、涼しく感じております。大変ありがたいなと思いながら来さていただきました。今回、去年に続いて、この夏季フォーラムでお話をさせていただくわけですが、まず昨年7月の軽井沢セミナーは安倍元総理の銃撃という衝撃的な、また無念な出来事の直後でありました。ロシアによるウクライナ侵略、新型コロナとの闘い、世界的な物価高騰、半導体不足やグローバルなサプライチェーンの混乱。何十年に一度と言われる事案が次々と重なりあって襲ってくる局面に、私は総理大臣として、経済界の皆様方はそれぞれ経営者として、そうした課題に向き合い、そして対策に追われる中での軽井沢セミナー。去年のセミナーはそういったセミナーでありました。重大な事案が次々と起こるというのは、我々がまさに歴史の転換点を迎えているからですと、去年、私は申し上げさせていただきましたが、こうした時代認識は、御紹介いただきました。5月のG7広島サミットでも議論する上での当然の前提として、各国首脳が異口同音に述べていた認識でありました。経済界の皆様方、経営者のこの皆様方も、それぞれのこのグローバルなビジネス展開やネットワークを通じて同様の時代認識を持ち、危機意識を持っているからこそ、この1年間様々な御決断をいただいたものと思っております。30年ぶりとなる思い切った賃上げ、同一労働同一賃金の徹底、バブル期以来となる100兆円を超えるペースでの攻めの国内投資、海外投資家から高く評価されつつある企業体質の刷新。
この1年間、日本が歴史的難局に正面から立ち向かい、打開に向けて先鞭(べん)をつけてきたのは、経済界の皆様方の決断があってこそと、改めて敬意を表し申し上げるところです。私も内閣総理大臣の立場で、この難局を切り抜け、未来を切り開いていくためには、これまで先送りされてきた困難な課題に、一つ一つ正面から取り組む他ない。それが岸田内閣の歴史的な使命だと覚悟して一意専心職務に当たってきました。議長を務めた5月のG7サミットは、国際秩序と世界平和を守り抜くとの平和国家日本の覚悟と決意を印象深いシーンとともに、世界に発信をし、まさに歴史的なサミットであったと感じています。
緊迫する東アジア安全保障環境の中、首脳間の強い信頼関係を築き、日韓シャトル外交を本格化させ、日米韓の連携も強化していきました。また、昨年、年末には防衛力の抜本的強化やエネルギー政策の大きな転換を決断し、実行のために必要な法案を先の国会で成立をさせました。さらに、日本の最大課題の一つである人口減少、少子化問題への取り組みを抜本強化するために、社会全体の意識転換や若者世代の所得向上を視野に入れた、これまでとは次元の異なる包括的な子ども子育て政策これを取りまとめました。日本が直面する難局は、事態の進展とともに様々に形を変え続けています。これまで着手した課題への取組も、いよいよ実行段階を迎えています。まさに胸突き八丁の局面だと感じています。もちろん、それだけではなく、更に本質的な課題に我々は直面をしています。外交、経済、社会の3つに分けて、まずポイントだけ申し上げたいと思います。
まず外交においては、今、国際社会は分断から対立ではなくして協調に向けて努力をしていかなければならない。大きなこの曲がり角、大切な時を迎えていると感じています。米中の対立、これは従来から言われてきたところでありますが、いわゆるプリゴジンの乱を経て、ウクライナをはじめ、国際情勢は緊迫の度を加えています。米国の政治日程やウクライナの戦況なども睨みながら、西側の結束を弱めて世界を分断しようとする様々な動きが激しくなっている、こうしたことが懸念をされます。今、世界においては、ロシアと欧米諸国がウクライナ情勢をめぐって激しく対立をしています。日本はG7の枠組みで欧米諸国と足並みをそろえているわけですが、しかし世界の全体を見ますとロシア・欧米諸国だけではなくして、その中間にグローバルサウスと言われる多くの中間国が存在します。こういった国々は、どちらにつくというのではなく、濃淡、温度差はあるものの、自分たちの国益を考えて、世界のこの動きをじっと息を凝らして見ている、こういった状況の中にあります。こういった世界の情勢の中で、再び、国際社会は協調に向けて一致することができるかどうか、これが国際社会の中で問われています。アジアにおいても先ほど申し上げました。日韓関係さらには日中関係、こうしたこのアジアのこの外交のありようが問われている。こうした状況にあります。こういった中にあっても、分断や対立ではなくして協調を目指すことができるかどうか、これが外交においては問われているんだと思います。
そして、2つ目のポイントとして、経済ということで申し上げるならば、経済のこのポイントを一言で言うならば、持続可能性ということではないかと思っています。今日のこの経団連のセミナー、昨日、今日のこのフォーラムにおきましても資本主義の再構築という大きなテーマで議論されたと伺っておりますが、この資本主義ということについても市場やマーケット、競争や効率に任せたままでいいのか。こうした市場任せによって、格差やあるいは気候変動といった資本主義の持続可能性にかかわる大きな課題を突きつけられている、これが今の国際社会であり、世界各国が資本主義の新しいモデルを追求している、こうした状況にあります。そういった中にあって、私は新しい資本主義ということで、こうした資本主義の持続可能性にかかわる課題にあえて投資を行うことによって、成長と課題解決、この二兎を追うことを考えていくべきではないか、こういったことを訴えさせていただいています。人への投資を行うことによって消費につなげ、そしてそれを次の成長につなげていく、成長と分配の好循環、これをぜひ実現したい。さらには気候変動、GX(グリーン・トランスフォーメーション)、こうした課題に官民で思い切った投資を集中することによって、成長と課題解決の二兎を追うことによって、資本主義の持続可能性を維持していきたい、こういったことを申し上げてきました。
そして、3点目のこのポイントとしましては、社会のありようということがあります。この社会につきましては、やはり人口減少というのが一つのキーワードになるのではないかと思っています。この人口減少という国家的な課題に取り組むためには、次元の異なる少子化対策と、そしてデジタル社会への変革、この2つを車の両輪として経済社会を変革していくことが必要であると感じています。2030年代になりますと、日本の人口、若年層の人口の減少のスピードが格段上がってしまう、こういったことが指摘をされています。2030年までが正念場だと言うことで、この次元の異なる少子化対策によって人口減少のペースに歯止めをかける一方で、この人口減少によってこの地域ですとか、経済あるいは社会保障制度をこの最低限の生活サービスすら維持することが危ぶまれることになってしまう。こういったことから、この人口減少への適応を図っていく。こういった視点からも取り組みを進めていかなければならないと感じています。この人口減少の中で、地域の創生も考えていかなければならない。地方創生につきましては、従来から多くの先輩たちが様々な努力や議論を行ってきましたが、なかなかこの成果につながってこなかった。こういったことでありますが、こうした地方創生の課題、これをデジタルの力で乗り越えることができるできないだろうか、これがデジタル田園都市国家構想というこの政策を打ち出している私の最大の狙いであります。デジタルの力でスマート農林水産業ですとか、観光や国土強靱化もこうしたデジタルの力で格段とその発信力や精度を高めることができる。また、遠隔医療ですとか、あるいはリモート教育ですとか、この地方の課題をデジタルの力で乗り越えていく。さらにはですね。今、世界的な課題として、この現代社会、国民のニーズがどんどんと多様化して複雑化していく。その中で、このニーズにしっかり応えていく。さらには新しい課題が次々と出てくる中で、これに応えようとすると、結果として、どの国においても政府がどんどんと大きくなってしまう、政府の巨大化、これもこの現代社会の大きな課題であります。こういったことでありますから、やはりデジタルの力を使って小さくて大きい政府、すなわち効率的で大きな仕事ができる政府、これを目指していかなければならない。こうしたこの発想でデジタルによる行財政改革、これも進めていかなければならない。こんなことを感じています。従来、この日本の行政組織においては、国があって県があって市町村があってと上意下達のこの仕組みであったわけでありますが、そうではなくてデジタルという発想ですと、国が全国に5G(第5世代移動通信システム)ですとか、光ファイバーですとか、海底ケーブルですとか、主要なデジタルインフラを国が責任を持ってしっかりとこの用意をし、その上にその国民に一番身近な市町村がきめ細かな行政サービスを行う。その間を都道府県がしっかりとつないでいく。こうしたこの行政のあり方を考えていかなければならないのではないか。こうしたデジタル行財政改革も進めていかなければならない。こういったことも感じています。そして、その際に今、このマイナンバーカードにつきまして、国民の皆さんにこの御不安を招いている。このことについては、行政のトップとして本当に申しわけないことであると思います。しかし、この人口減少の中にあっても、日本がこの活力ある社会を維持するためには、そのコロナとの闘いにあって、我が国はこれほど世界の中でデジタル化が遅れているのかと痛感した。我々としては、是非、こうしたデジタル化を進めて、新しい時代に備えていかなければならない。そのためにも、マイナンバーカードの信頼回復に政府を挙げて、自治体ともしっかり協力をしながら努めていかなければならない。こうしたことを感じています。以上、これから取り組まなければならない課題、ポイントだけ申し上げさせていただきました。先送りされてきた課題、あるいは先送りできない課題、こうしたことについて申し上げさせていただきました。
しかし、昨年と今年の大きな違いは、次の時代を切り開いていこうという試みが広がってきました。昨年より、賃上げを初め、様々なこの経済の状況を見ても明るい雰囲気が出てまいりました。攻めの挑戦を行う雰囲気や、余地が出てきた点を感じています。経済界の皆様方は、次の時代を拓く挑戦をしていく上で、我々にとってパートナーであると思っています。経済界のリーダーの皆さんと将来のビジョンを共有し、国家戦略のすり合わせを密にしていくことで、この歴史の転換点を乗り越えて、次の時代にともに進んでいきたいと考えております。
以上申し上げた上で、経済と外交について、もう少し具体的にお話をさせていただきたいと思います。まず経済の方ですが、新型コロナ後の経済再生に努めなければならないわけですが、この気候変動ですとか、エネルギー問題、あるいは少子高齢化など社会課題を成長のエンジンへと転換していく。私は内閣総理大臣に就任して以来、新しい資本主義を掲げて政策を実現、実行してまいりました。この1年間だけでも、スタートアップ育成5か年計画、資産所得倍増プラン、GX実現に向けた基本方針、さらには三位一体の労働市場改革の指針など取りまとめました。まさに新しい資本主義は、政策の実現、実行フェーズを迎えつつあります。また、本年5月に新型コロナを5類感染症といたしました。感染の再拡大について注視は必要ですが、日本社会はコロナ前の状況を取り戻しつつあります。まさに今、日本経済はコロナ禍を乗り越えて、本来の力強さを取り戻す途上にあります。そして、このチャンスを逃してはならないと強く思っています。先日、お会いしました複数の世界有数のグローバルファンドのCEO(最高経営責任者)の皆さんも、この異口同音に、この30年間、毎年日本経済を注目してきたが、今が最もポジティブだと、こういったコメントをしておられた。大変印象的でありました。そして、その中で、この私自身、経済ということで力を入れてきたのが、賃上げを含めた人への投資でした。今年の前半は新型コロナ後の経済の好循環を生み出すことができるか正念場だという強い思いで臨んできました。十倉会長にも御出席をいただきました、8年ぶりの政労使の意見交換の場の開催をはじめ、経済の好循環に向けた様々な働きかけ、認識の共有を行ってきました。中小企業の人件費が円滑にこの転嫁できるように、公正取引委員会の監視機能等も活用するなど、価格転嫁対策も強力に講じてきました。こうした政策的対応とお集まりの経済界の皆様方の御決断によって、高い水準の賃上げが実現してきたと感じています。しかし、この賃上げが消費の拡大と生産性の上昇を通じて、経済成長の底上げにつながっていくものとなるかどうか、分配と成長の好循環を本格的に回し始めることができるかどうか。そのためには、この物価上昇に打ち勝つ持続的な構造的賃上げ、これが必要とされます。岸田政権では、これまで十分に進んでこなかった労働市場改革、これを着実に進めていきたいと考えています。新たな時代に合わせた学び直しを行うリスキリング、そしてその受け皿となる日本型の職務給の導入、そして成長分野への円滑な労働移動。この3つをこの三位一体の改革として進めていく。こうした労働市場改革を進めることで、構造的な賃上げを実現していきたい、こうしたことを申し上げさせていただいております。また、こうした人への投資ということを考えますときに、多様性、包摂性、これも大変重要なポイントです。女性や外国人人材が活躍できることも重要である。先日、「女性版骨太の方針2023」を取りまとめ、男女間の賃金格差の是正、いわゆるL字カーブの解消など、政府を挙げて取り組むこととしています。さらに、日本を代表するプライム市場上場企業が、2030年までに女性役員比率を30パーセント以上とすること、こうした大胆な目標を掲げました。来年、もしこの場にもう一度お呼びいただけることがあったとしたならば、これさらにより多くの女性リーダーにお会いできますことを期待しております。
そして、もう一つ経済としてこの取り組まなければいけない、大きな課題として、官民連携による新たな産業構造への転換というものがあります。先ほど申し上げたように、世界が気候変動や格差など持続可能性にかかわる問題に直面をしている。世界各国が資本主義のバージョンアップを目指す取り組みを進めています。日本も遅れるわけにはいかない。こうしたことで新しい資本主義、新しい経済モデルの追求を行っているところです。その人への投資によって、成長と分配の好循環を実現すると申し上げましたが、成長と分配の好循環というのであるならば、成長あってこそ、これは分配ができるわけでありますから、成長もこれはしっかりと考えていかなければならない。グリーンやデジタル、地域活性化といったこの社会課題を成長のエンジンに変えていくことによって、課題解決と成長の二兎を追う、そのことによって力強く成長を続ける。そして、持続可能な経済モデルをつくっていく。こういった発想であります。こうした経済モデルの転換、これは単に市場任せではなかなか実現できない。こうしたことを我々は経験をしてきました。今申し上げました。様々なこの分野に官が呼び水となって民の投資を集め、過少投資を乗り越えていく。大胆な投資と改革を進めていく、まさに官民で力を合わせた挑戦が必要であると感じています。例えば、GXの分野においては、世界中で今、政策競争と言えるような状況が生まれています。米国においては、インフレ削減法によって、この蓄電池やグリーンケミストリーなどに対して生産量比例形で巨額の政府支援を10年間行うこと、これを打ち出しています。EU(欧州連合)においては、ネットゼロ産業法案によって官民合わせて140兆円以上の支援措置を打ち出しました。また、排出権取引市場の安定的な運用を踏まえ、炭素価格の国境調整措置の具体化、これをこの秋から始めることになっています。それに対して我が国においても、成長志向型カーボンプライシング構想の具体化によって、10年間で総額150兆円の官民投資を行うという目標を掲げました。そのための基本方針を集中的に議論をし、そしてGX推進法、GX電源法、この2つの法案を国会で成立をさせました。これによって日本も政策競争に伍していける基盤が整ったと思っています。日本の強みを生かして、1歩も2歩も先行する。こういった、具体的な政策展開、これを図っていきたいと思います。 そして、GX以外にもAI(人工知能)、半導体、バイオ、フュージョンエネルギーなど、年末に向けて予算税制規制のあらゆる面で世界に伍して競争できる投資支援パッケージこれをつくってまいります。そして、そういった中で昨今、特に注目されるのは生成AIですが、この生成AI。これは産業構造を大きく変換するゲームチェンジャーとなる技術だと思っています。AIはポテンシャルとリスクの両面があり、そのバランスをとりながら社会の中でどのように生かすか、これを考えることが重要です。AIは様々な産業分野で活用が期待されますが、裏返して言えば、AIを開発する力が競争力の源になる時代であると考えます。鍵を握るのは、計算資源と良質なデータです。政府としては、この日本の研究者やスタートアップ向けに計算基盤やデータを提供する場をつくり、日本の技術力の向上、新たな産業創出につなげてまいります。世界各国もAIとの向き合い方を模索しています。私はこのG7首脳の中でも最も早くオープンAI社のアルトマンCEOと会って、ポテンシャルとリスクについて率直に意見交換を行いました。そして、広島サミットでは、議長として「広島AIプロセス」、これを提唱し、日本が主導する形で、今まさに国際ルールづくりが始まっています。この国際ルールづくりをG7から更に広げていくことによって、国際的なルールづくりを主導していく、こうした道筋をつくっていきたいと思っています。以上、いよいよ実行フェーズに入っていく新しい資本主義の取組の一端、これを申し上げました。人への投資あるいは産業構造の転換、いずれも官がやること、民がやること、という、これまでの二元論では達成することができない大きな挑戦であると思っています。是非お集まりの経済界の皆様方の御理解と御協力を得て大胆に進めていきたいと思っています。そして、いただいた時間もう終わりに近づいておりますが、冒頭、申し上げたように経済ともう一つ外交にだけ触れさせていただきたいと思います。
外交、先程申し上げたように、対立から協調に向かって努力をしなければいけないということでありますが、私は総理大臣に就任してから大きな、外交においても方針転換を行いました。ウクライナ侵略、これはポスト冷戦期を終わらせる歴史的な転換点となりましたが、その中で私は、侵攻の勃発直後にこれまでの対ロ政策、これを大きく転換をいたしました。G7の一員として厳しい対ロ制裁と、そしてこのウクライナ支援に踏み切った。同時に、欧州へのLNG(液化天然ガス)の緊急融通など、その連帯を示す取り組みを進めた、こういったことであります。ウクライナ問題、これは欧州にとどまるものではなく、世界全体の秩序に対する挑戦であり、今日のウクライナ、これは明日の東アジアかもしれない、このように申し上げてきました。こうした日本のこの対応について、日本が立ち上がったことで、ウクライナ問題はグローバルな問題になったと、こうした旨は先日のこのNATO(北大西洋条約機構)首脳会議でも、欧米首脳から重ねて謝意とともに示されたところであります。3月には、私自身がウクライナを訪問し、5月には広島にゼレンスキー大統領を招くなどウクライナ支援を訴えました。先程申し上げたように、今世界はロシアと欧米諸国が鋭く対立をしている。そして、その中間に今度グローバルサウスと言われる中間国が最大の勢力として存在している。この中で協調に向けて、今一度、一致していく方策は何なのか。こういったことを考え、私はG7の広島サミットに議長として臨みました。あのサミットにおいて高く評価されているのは、歴史的なサミットであったと評価されているのは、特にあのサミットの最後のセッション、第7セッションでありますが、あの時にG7もちろんでありますが、インドやブラジルやインドネシアをはじめとする中間国、そしてさらにはウクライナのトップも同じテーブルを囲んで国際情勢について認識をすり合わせた結果として、そのメンバーでこの議論を時間を延長してまで徹底的に議論をした結果、そのメンバーで一つの結論として、この世界のどこであっても力による一方的な現状変更は許してはならない。さらには、国際法に基づく自由で開かれた国際秩序を守っていく。こういったことについて一致することができた。このことが大きな成果であった歴史的な成果であったと評価されているのだと自負しています。世界が分断する中であって、今一度、国際社会がよって立つ根源的な理念や考え方を今一度、しっかりと打ち出していかなければならない。自由民主主義とか人権とか様々な理念がありますが、これらは国によって進み具合は様々でありますから、今一度、これで一致しろと言っても、なかなかアフリカや中東の国々はついてこない。何か一致できる理念はないか。そう考えたときに、やはり国連憲章を初めとする国際法の理念に基づいて自由で開かれた国際秩序を考える。国際法というのは、そもそも弱い立場の国のためにあるものであり、力のある者が力によって領土や主権を侵略する。こういった弱肉強食の世界に戻らないためにこそ、国際法があるんだと、国際法に基づいて協力をしようではないか。こういったことで先程言った第7セッションあのメンバーで一致して結論として示すことができた。このことが大きな意義だったと思っています。そして、それをこの間も私もNATOの首脳会議あるいは日EU首脳会合、そして中東諸国に出向いて行って、こういった考え方をみんなで今一度確認をし、こういった考え方を広めていく。こういった取り組みを進めているところです。こういった取り組みは、アジア、韓国や中国との間においてもぜひ共有していきたい考えだと思っています。こういった考え方に基づいて、今年後半もASEAN(東南アジア諸国連合)関連首脳会合ですとか、G20ニューデリーサミットですとか、国連総会ですとか、APEC(アジア太平洋経済協力)首脳会合ですとか、日ASEAN特別首脳会議、様々な外交機会を通じて思いを一致し、国際社会の協調に向けて努力をしていきたいと思っております。
少し時間をオーバーしてしまいましたが、結びに改めて申し上げます。政権発足からこの10月で2年が経過することになります。この夏は、政権発足の原点に立ち戻って、改めて様々な方々の現場の声を伺っていきたいと考えております。経団連の皆様にも、今まで様々な政策の御提言をいただいてきました。しかし、先ほども申し上げたように官がやること、民がやることの二元論の壁を超えて官と民で実現していく日本のそして世界の未来について、引き続き積極的に御提案いただければと心から願っております。共に未来を切り開いていくために、御協力、御尽力をいただきますことを改めてお願い申し上げて私の話を終わらせていただきます。まことにありがとうございました。