[文書名] 長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典における岸田総理ビデオメッセージ
本日ここに、被爆78年目の長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典に当たり、内閣総理大臣として、犠牲となられた方々の御霊(みたま)に対し、謹んで、哀悼の誠を捧(ささ)げますとともに、今なお、後遺症に苦しむ方々に対し、心からのお見舞いを申し上げます。
一木一草(いちぼくいっそう)もない焦土と化したこの街が、市民の皆様の御努力によりこのように美しく復興を遂げられたことに、私たちは改めて、乗り越えられない試練はないこと、そして、平和の尊さを強く感じる次第です。
78年前の今日、長崎で起きた筆舌に尽くしがたい惨状、そしてそれによりもたらされた苦しみは、二度と繰り返してはなりません。
我が国は、世界で唯一の戦争被爆国として、「核兵器のない世界」を実現するため、非核三原則を堅持しつつ、たゆまぬ努力を続けてまいります。これは我が国の使命であり、それは、これからも変わりません。
核軍縮をめぐる国際社会の分断が深まり、ロシアによる核の威嚇が行われる中で、「核兵器のない世界」の実現に向けた道のりは一層厳しいものになっています。しかし、こうした状況だからこそ、我が国は、G7議長国、国連安保理非常任理事国として、その実現に向け、核兵器不拡散条約(NPT)を国際社会が結束して維持・強化するよう訴えつつ、国際社会の取組を主導してまいります。
あわせて、G7広島サミットの確かな成果を土台として、国際賢人会議の議論の成果も活用しながら、「核兵器のない世界」の実現に向け、核軍縮の進展に向けた機運をより一層高めてまいります。
被爆の実相を世代と国境を越えて伝えていくことは、核軍縮に向けたあらゆる取組の原点として重要です。これからも長崎や広島を訪れる世界中の多くの人々に、被爆の実相に触れ、そして、平和への決意を新たにしていただきたいと思います。そのために、我が国は、「ユース非核リーダー基金」のプログラムなどを通じ、被爆者の方々と手を取り合って、被爆の実相への理解を促す努力を続けてまいります。
被爆者の方々には、保健、医療、福祉にわたる支援の必要性をしっかりと受け止め、高齢化が進む被爆者の方々に寄り添いながら、今後とも、総合的な援護施策を推進してまいります。特に、原爆症の認定について、できる限り迅速な審査を行うよう努めてまいります。
結びに、永遠の平和が祈られ続けている、ここ長崎市において、核兵器のない世界と恒久平和の実現に向けて力を尽くすことを改めてお誓い申し上げます。原子爆弾の犠牲となられた方々の御冥福と、御遺族、被爆者の皆様、並びに、参列者、長崎市民の皆様の御平安を祈念いたしまして、私の挨拶といたします。
令和5年8月9日
内閣総理大臣・岸田文雄