[文書名] G7保健フォローアップ・サイドイベント 岸田総理スピーチ
本日は、ジョシュア・ウォーカー・ジャパンソサエティ理事長を始め、皆様方にお会いできますこと、大変うれしく思っています。
日本は2000年、九州・沖縄サミット以来、国際保健をサミットの柱に据えてきました。経験から学ぶことができるのが人類の強みです。新型コロナパンデミックの教訓から学び、G7首脳は5月の広島サミットで、国際保健のリーダーとして行動し、世界全体に貢献する、こうした決意を示しました。
国際社会は、将来の健康危機への予防、備え、そして対応、いわゆる「PPR」を強化していく必要があります。ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)達成に向けた取組を進めていかなければなりません。感染症危機下においては、特に、ワクチン等の感染症危機対応医薬品等「MCM」が公平に行き渡ること、資金が円滑に動員されること、これが極めて重要です。
MCMへの公平なアクセスは、研究開発、製造、またラスト・ワン・マイル・デリバリーまでの包括的な取組が重要となります。
このために、G7は、公平性、包摂性等の基本的な考え方や原則を「MCMへの公平なアクセスのためのG7広島ビジョン」として発表し、G20(金融・世界経済に関する首脳会合)やWHO(世界保健機関)等と具体的な議論を行っています。
日本は、「広島ビジョン」に基づき、「MCMに関するデリバリーパートナーシップ(MCDP)」を立ち上げました。これは、日本が世界に先駆けて実施した、新型コロナワクチンに関するラスト・ワン・マイル支援で得た知見や教訓をいかす、こうしたものです。今後、MCDPは、デリバリーに焦点を当てた協力の枠組みとして機能することが期待されています。
円滑な資金動員については、国際協力とともに、国内の資金動員、そして、民間資金動員の拡充、そして加速が必要となります。
本日、ここに、日本の新しい円借款制度の創設を発表いたします。これは技術協力の提供と併せて、借入国による予防・備えの強化の取組に応じて支援を拡充したり、パンデミック発生時の対応に必要な資金を速やかに提供したりする仕組みです。
民間資金動員については、広島サミットで承認された、インパクト投資を通じて民間資金動員を加速させる「グローバルヘルスのためのインパクト投資イニシアティブ(トリプル・アイ(Triple I))」の立ち上げを宣言いたします。
新しい資本主義のグローバルな展開とも言える「トリプル・アイ」へ、ゲイツ財団、あるいはGSG(The Global Steering Group for Impact Investment)諮問委員会、インパクト・タスクフォース始め、関連機関からの御協力に、心から感謝申し上げます。
本年8月、JICA(国際協力機構)は、ブラジルのドトル・コンスルタ社の「医療アクセス改善事業」へのインパクト投資に調印いたしました。これは、AI(人工知能)を活用して、低中所得者にプライマリーヘルスケアを提供するものです。また、エーザイ株式会社は、国際保健におけるインパクト会計に取り組んでいます。
こうした先行例も見ていただきながら、各国企業、また機関の皆様方には、「トリプル・アイ」への更なる参画を呼びかけたいと思っています。
日本は、UHC達成とPPR強化のためのこれらの取組を、皆様を始めとする多様なステークホルダーと連携しながら、着実に進めていきたいと思います。ありがとうございました。