[文書名] 共同通信加盟社編集局長会議 岸田総理スピーチ
皆さんこんばんは。内閣総理大臣の岸田文雄です。今日は、共同通信社編集局長会議ということでお招きをいただきまして、ありがとうございました。
本来は昼間、もう少し昼の時間にお招きいただきまして講演をさせていただく予定でありましたが、御案内の通り参議院の予算委員会、今日日中ずっと続いておりましたので、講演でなくして、こうした遅い時間、御挨拶として駆けつけさせていただきました。もう乾杯も済んでおるようでありますので、あまり長い話をするとまた評判を落としてしまっても不本意でありますが、しかし、この編集局長会議に総理大臣お招きいただくのは久しぶりというふうに聞いております、せっかくの機会ですので、少し思いますところを申し上げさせていただきたいと思います。
まず、もって共同通信社におかれましては、全国の新聞社、そしてNHKが参加して設立された日本を代表する通信社でいらっしゃいますが、日々配信される記事、平日でも1500本を越えられると聞いております。今日、お集まりの全国の支局の皆様方、あるいは加盟社の皆様方、こうした皆様方がたゆまぬ努力で地方の事情、そして人々の暮らし、そして営みに光を当て続けておられることに、心から敬意を表し申し上げたいと思います。
そして、共同通信社ということで、私自身に一番身近に感じておりますこととしましては、毎日首相動静が発信されますが、共同通信社の若手の皆さんがかわりばんこで毎日毎日昼夜を問わず、東京地方を問わず、私のそばに張り付いて、私の動向を伝え続けてくれています。
本当に毎日のこの努力を見ておりまして、情熱そして根性、感じるところでありますし、正に皆様方のマスコミ魂を若い人も引き継いでおられるな、ということを感じております。それを一番強く意識しましたのは、今年の3月、ウクライナに極秘訪問をしたわけでありますが、それをウクライナに行くに当たりまして、これは保秘のために人数を絞り、極秘に車に乗り込んでインドからウクライナに移動したわけでありますが、毎日、情熱を持って張り付いている若手の皆さんに気付かれるのではないか。はらはらしながら車に乗ったことを大変、印象的でありました。
それ以外にも、今年夏から秋にかけて16か所の地方での車座対話など、地方訪問を繰り返しましたが、若手の記者の皆さんにも頑張って付いていただいた。こんなことも大変印象的でありました。これからも今日集まりのそれぞれの地方に、私も国会の合間を縫って、引き続き、足を運び続けていきたいと思っておりますので、今日お集まりと全国の皆様方に、心からよろしくお願いを申し上げます。
その上で少し政治について申し上げさせていただきたいと思います。今日、正に予算委員会が開かれておりました。補正予算の審議が続いてきたわけでありますが、岸田内閣として今月2日の日に経済対策、閣議決定をいたしました。これから来年に向けて何よりも物価対策、そして経済対策、これを内閣としても重視していく、この強い覚悟を持っています。
今、日本の経済はこの長いデフレの悪循環が続いてきたわけでありますが、30年ぶりに賃上げの動き30年ぶりの株価の引き上げ、また民間の投資も100兆円を超える、これは過去最高の数字でありますし、デフレギャップ50兆円と言われた、デフレギャップも今解消されつつある。間違いなく、今までのデフレの悪循環を振り返りますときに、明るい兆しが日本の経済に今感じられる2年間の新しい資本主義、賃上げ等を中心に、成長と分配の好循環を訴え続けてきた。結果として明るい兆しを今感じている。こういったところでありますが、問題はこれを来年に向けて持続することができるか、更にはデフレ脱却完全に脱却し、そしてコストカット型の経済を脱して、持続的な賃上げと、そして意欲的な投資が繰り返される、成長の循環に日本の経済を導くことができるか、今、正に正念場を迎えていると感じています。
ただ、いまは賃上げ、道半ばでありまして、現在、外生的な物価高にこの賃上げの動きが追いついていない、また、潜在成長力もまだ0パーセント半ば、潜在成長力も弱い状況にあります。ここで思い切った総合経済対策、これを導入することによって、賃上げ、来年には物価高にしっかり追い付かせなければならない。そして、賃上げの原資であります、企業の稼ぐ力供給力強化、これを今こそ用意しなければならない。こういった考え方で経済対策これをつくり上げたこういったことであります。賃上げについても、来年に向けて民間にこの賃上げへの協力を先般、政労使の意見交換の場において、お願いをさせていただいた、こういったことでありますが、民間に頼むだけでは、こうした賃上げの動きを確実なものにすることはできないということで、政府においてもこの賃上げ促進税制ですとか、成長力の強化ですとか、そして所得税、住民税の減税ですとか、あらゆる政策を動員して官民協力のもとに来年に向けて賃上げ、そしてそれによる可処分所得これを物価高に追い付かせる、物価高を乗り越える、こういった流れをつくることによって、その後の消費あるいは成長と分配の好循環に引き継いでいくことによって、完全なデフレ脱却を実現したいということを、国会の予算委員会等においても訴えさせていただいている。こういったことであります。ぜひ、あらゆる政策を動員する、そして、併せて賃上げの原資である供給力の強化、これを確実なものにする、こういったことによって、日本の経済を新しいステージに持っていきたいと思っています。そして、今日は全国からお集まりであるということでありますので、2点地方にかかわる課題として、申し上げさせていただきたいと思います。
1点目は、この全国に広がりつつある国内投資の動きということについてであります。半導体を始めとした戦略物資を皮切りに、九州から北海道まで国内投資、これに力を入れていきたいと思っています。これは、正に供給力の強化稼ぐ力、これを強化する動きであります。半導体言うまでもなく、デジタル化に向けて、そして脱炭素化に向けて欠くことのできない戦略物資です。経済安全保障にとっても欠くことができない重要な物資であると認識をしております。正に、これからの日本の産業競争力を左右するこうした重要な物資であると考えていますが、この半導体分野での大型プロジェクトによって各地域に直接的な雇用をもたらし、そして製造装置、あるいは部素材等サプライチェーンにかかわる産業全体、これを活性化するなど、日本全体の活力にかかわるこの課題であると認識をしております。ぜひ成長と、そして賃上げの好循環これを実現することに、この半導体分野を押し上げることがつながるということを期待したいと思っています。
実際に熊本の例で一つ申し上げますと、御案内のとおり、半導体への投資、特に進んでいます。これによって全国より5万円ほど高い初任給が熊本においては実現をしている。また、熊本での効果、この九州7県に広がっているということで、設備投資の伸び、これについても全国平均20.1パーセントということですが、この九州7県においては61.7パーセント増、こういった数字も示されています。これは過去最高の数字であります。こうした九州全体にも投資効果が波及しつつある。
同じことがこの全国で電池や電気自動車バイオなどの分野においても起きている。こうした投資の動きが地方に広がっているということ、これは来年に向けてこの日本の経済大きな前向きな要素であると認識をしています。今回の経済対策補正予算においても、こうした戦略分野の大型投資、次世代半導体開発に対する支援合わせて約2兆円を計上しています。
更に、この投資の支援ということについても、従来の発想の支援ではなくして、すなわち初期投資だけではなくして、その後予見可能性を維持するために、こうした事業が進む継続している最中においても引き続き支援を続けていく。こうした過去に例のない投資を実現するなど、政府としても大胆な国内投資の後押しをしていきたいと考えています。
そして、もう1つ地方に関わる経済の動きとして強調しておきたいのは、サーキュラーエコノミーという課題についてであります。これはいわゆる循環経済の動きということでありますが、このカーボンニュートラル実現のために日本の強みであるリサイクル技術等を活用した上で、地域の創意工夫を生かしていく、こうした取組です。地域において、地域の様々な資源を効果的に活用する、こういった取組でもあります。新しい地産地消ということでもあります。さらに言うとレアメタルなど、特定の鉱物の供給途絶リスクこういったものを都市鉱山の開発等によって解決していく。こういった取組でもあります。正に日本が世界にアピールできる経済モデルになり得るポテンシャルを持っている、これがサーキュラーエコノミーであると思っています。このサーキュラーエコノミー、正に地方創生地域の課題解決にとどまらず、持続可能な経済モデルとして国全体、更にはアジア全体に広がっていくポテンシャルを持っている循環の環であると考えています。
こうした環の中心これは言うまでもなく、地域のアイデアであると思っています。私自身、8月に富山県を訪問させていただきました。その際に高いリサイクル技術を生かした地域に密着した資源循環の取組、これを拝見しました。そして、あわせて有識者の皆さん等と車座対話を行わせていただきました。例えば、我が国においては、服のリサイクルこれ実際、リサイクル率は1パーセントに満たない、これが日本の現実だという話を聞かせていただきました。この昔と違い、今は活用できる服であっても、日本においては捨てられてしまう。こうした課題についても、日本として大きな可能性があるんだ、こんな話も聞かせていただきました。
経済対策においても、サーキュラーエコノミーに関する研究開発、実証・実装、また、投資支援こういったものを今回の経済対策の中に盛り込んでいるところであります。今申し上げた半導体への戦略投資、そしてサーキュラーエコノミー、これは、正に地域において具体的なプロジェクト地域において、自治体や大学や企業関係者のうねりを生み出すものであり、ぜひ共同通信社の強みであります、全国の新聞社とのネットワークこれを活用していただき、この地方において行われている。こういった挑戦につきましても、ぜひ光を当てていただきまして、報道していただければと願っております。
そして、話の最後に外交について一言だけ触れます。国内においては、経済対策これを進めていく。これに強い覚悟を持って臨んでいきたいと思っておりますが、外交の世界国際社会においても来年2024年、これはまさに緊迫の1年になると感じております。ロシアによるウクライナ侵略、また、イスラエルパレスチナ情勢、これらにおいても緊迫の度を加えているわけでありますが、来年は世界の政治情勢も大きく揺さぶられる可能性のある1年であると思っています。この大きな国政選挙が全世界で続くということであります。来年は1月、台湾において総統選挙が行われます。来年2月はインドネシアの大統領選挙が行われます。4月には韓国の総選挙が行われます。また、インドの総選挙もこれはまだ日にちは確定していませんが、来年前半に行われることが予定されています。そして、11月にはアメリカの大統領選挙があるということであります。これらの選挙結果によって、この緊迫した国際情勢を大きく左右する各国の政治体制が変わっていく。こういったことが予想される1年でもあるということ。これを念頭に、我々は外交についても考えていかなければならない、こういった年だと思っております。
このように内にあっては30年ぶりのデフレ脱却のチャンス、これをものにし、来年再来年に向けて新しい日本経済のステージを引き寄せなければならないと思っておりますし。外にあっては、緊迫の1年、この外交において万全の態勢で臨んでいきたいと思っております。この内外の難局に不退転の決意で臨んでいきたいと思います。
改めて今日集まりの皆様方に引き続きまして、御理解と御協力をお願い申し上げると同時に、それぞれ皆様方におきましてもそれぞれの御地元でお元気で御活躍されますこと。そして、それぞれの大きなマスコミとしての責任を果たしていかれますことを心から御祈念申し上げまして、今日の話を終わらせていただきたいと存じます。今日はお招きいただきましたこと、改めて感謝を申し上げます。誠にありがとうございました。