[文書名] 「核兵器のない世界」に向けた国際賢人会議第3回会合 開会セッションにおける岸田内閣総理大臣メッセージ(石原総理大臣補佐官代読)
開会にあたっての岸田総理のメッセージを代読いたします。
本日、ここ長崎に「核兵器のない世界」に向けた国際賢人会議第3回会合のためお集まりいただき、誠にありがとうございます。本日は、国会日程と重なってしまいましたが、明日の閉会セッションには必ず参上します。皆様とお会いできるのを楽しみにしています。
現在、ロシアによるウクライナ侵略やイスラエル・パレスチナを巡る情勢等により国際安全保障環境が一層厳しくなっています。核軍縮を巡る国際社会の分断は一層深まり、今、世界は、冷戦の最盛期以来初めて、核兵器数の減少傾向が逆転しかねない瀬戸際に立っています。そのような中だからこそ、核兵器国と非核兵器国の双方からの参加者が、核軍縮を巡る根本的な課題に腰を据えて取り組めるこの国際賢人会議の重要性は一層増しています。
委員の皆様におかれては、先ほど原爆資料館を訪問し、築城昭平さんの体験講話を始め、被爆者や市民社会の皆様との対話をなされたと伺っています。これから始まる2日間の議論に先立って、皆様が、改めて被爆の実相について直接触れ、理解を深めていただいたことは、大変意義深いと考えています。
私は、核軍縮をライフワークとして、政治家人生を通して一貫して取り組んでまいりました。本年5月には、核軍縮の国際的な機運を今一度高めるべく、G7広島サミットに際し、各国首脳に被爆の実相に触れていただき、それを世界の隅々に向けて発信していただきました。またその上で、G7首脳との間で胸襟を開いた議論を行い、核軍縮に関する初めてのG7首脳独立文書となる「G7首脳広島ビジョン」を発出しました。
さらに、9月には、核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)ハイレベル記念行事をオーストラリア及びフィリピンとともに開催し、FMCTへの政治的関心を再び集めました。これらの取組を通じ、改めて「核兵器のない世界」に向けた関係国の決意を示すことができました。
道は険しくとも歩みを止めてはなりません。今後も、現実的で実践的な取組を着実に進めることが必要です。そのためにも、プロフェッショナルかつ建設的な議論に基づく、国際賢人会議の叡智が不可欠です。この度の国際賢人会議には、核軍縮分野における各国の第一人者である15名の委員の皆様に加え、大きな影響力を持つ世界の政治指導者の協力を得ています。本日は開会に際し、バチェレ・チリ元大統領、チャヴシュオール・トルコ元外務大臣、サム・ナン米国・元上院委員長といった世界の幅広い政治リーダーからメッセージが寄せられています。また、アミーナ・モハメド・ケニア元外務長官にはオンラインで参加いただいております。明日からは、ブラウン英国上院議員が参加予定です。そしてここ長崎からは、朝長万左男・日赤長崎原爆病院名誉院長の御参加をいただいております。
さて、今回の会合は、「核兵器のない世界」のために我々が乗り越えなければならない根本的な課題を、今日的な視点も取り入れた上でじっくりと掘り下げて議論し、2026年NPT運用検討会議に向けた、国際賢人会議としての最終成果物の検討を開始する重要な機会になると理解しております。皆様に、自由で忌憚のない議論を行っていただき、是非「核兵器のない世界」に向けた具体的道筋について、示していただきたいと思います。
長崎にて行われるこの第3回会合が、この理想に向けた努力を積み重ねていく上での更なる重要な一歩となることを切に願いつつ、私からの開会の挨拶とさせていただきます。
令和5年12月8日、内閣総理大臣岸田文雄。
(了)