データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] FIN/SUM2024 岸田総理ビデオメッセージ

[場所] 
[年月日] 2024年3月6日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文] 

 内閣総理大臣の岸田文雄です。  「FIN/SUM2024」の開催に当たり、一言御挨拶申し上げます。

 日本各地、そして世界各国の皆さんに御参加いただき、盛大にフィンサムが開催されますこと、心よりお慶(よろこ)び申し上げます。

 岸田政権では、官民の連携により、社会課題を成長のエンジンに転換する「新しい資本主義」を進めています。人口減少、自然災害、気候変動など、日本が抱える社会課題を解決し、持続可能な成長を実現するためには、「金融」と「テクノロジー」の力が必要不可欠だと考えています。

 本日は、イノベーションの担い手である、国内外のフィンテック・スタートアップの皆様にお越しいただいていると伺っております。AI(人工知能)やブロックチェーンといった新たな技術を活用した、クロスボーダー送金や資金調達サービス、スマホ・アプリを通じた便利な決済・資産運用サービスの提供など、既成概念にとらわれずにイノベーションを目指す、皆様の意欲的な取組に大いに期待しています。

 近年、こうしたフィンテックと、銀行や保険・証券会社といった伝統的な金融機関や非金融の事業会社との連携が進んでいます。金融機関や事業会社の皆様が長い年月をかけて築き上げてきた「信頼」と、スタートアップ事業者の皆様がもたらす「イノベーション」とが掛け合わさることで、真に持続可能な金融・経済システムがもたらされると考えています。

 政府としては、環境整備や支援策を用意して、フィンテックを後押しし、こうした動きを加速させていきます。

 まず、ブロックチェーン技術を活用したWeb3.0については、世界に先駆けて、昨年6月にステーブルコインに係る法制度を施行しました。また、一昨年11月に海外の大手暗号資産交換所が破綻した際には、日本政府の規制下にあった財産については早期に返還されるなど、日本の規制・監督の枠組みが有効に機能し、国際的にも高く評価されています。

 さらに、AIについては、私がG7広島サミットで提唱した「広島AIプロセス」の集大成として、昨年末に、全てのAI関係者向けの国際的な指針と、開発者向けの行動規範が合意されました。これは、生成AIの様々なリスクへの対処を目的とした初の国際的な枠組みです。

 その上で、スタートアップ5か年計画を策定し、フィンテック事業者を含むスタートアップへの投資額を、2027年度に、現在の10倍を超える10兆円規模とすることを打ち出しています。人材、資金供給、オープンイノベーションの推進の3本柱で、政策を更に強化していくこととしています。

 これからも、日本こそが、世界をリードして、利用者保護を確保しながら、イノベーションを実現しやすい環境を実装していくことをお約束いたします。既に日本で意欲的に事業を展開している方、金融分野への進出や起業を考えられている方、あるいは日本進出を検討している海外の事業者の方、皆さんの取組を強力にサポートしていきます。

 こうしたフィンテックに関する我が国の金融資本市場の魅力を広くお伝えするべく、このフィンサムを中核として、様々なフィンテックイベントを集中的に行う、「ジャパン・フィンテック・ウィーク」を本年初めて開催しています。是非、多くのイベントに足をお運びいただけると幸いです。

 第8回となる本年のフィンサムは、「幸福な成長をもたらす金融」がテーマと伺っています。このイベントが、金融の力で豊かな未来を作り上げるきっかけとなることを祈念して、私の挨拶とさせていただきます。

 ありがとうございました。