データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 生成AIに関するサイドイベント 岸田総理スピーチ

[場所] 
[年月日] 2024年5月2日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文] 

 コーマン事務総長、御列席の皆様、本日は御参加いただき誠にありがとうございます。

 生成AI(人工知能)は、世界を更に豊かにする重要なツールとなる力を秘めている、私はそう信じています。保健医療や気候変動などの課題の解決に向け、AIはこれまで想像もできなかったような貢献をしてくれるでしょう。

 一方で、生成AIは光の側面だけではありません。我々は偽情報のリスクといった影の側面とも戦わなければなりません。

 そうしたAIのリスクを軽減しつつ、その革新的な機会を最大化するためには、安全、安心で信頼できるAIの実現のための国際ガバナンスの形成が急務です。そのような思いで、私は広島AIプロセスを立ち上げました。AI開発者が守るべき責務である国際指針や行動規範を策定し、生成AIをめぐる具体的なリスクの低減に取り組みました。

 このような取組において、世界最大のシンクタンクとも言われるOECD(経済協力開発機構)の協力は不可欠でした。OECDにおいても、今般、AI原則の改定という具体的な成果が生み出されることを歓迎いたします。

 AIは人類全体に影響を及ぼす革新的な技術であり、多くの国が共通の認識を持つことが重要です。本日、OECDメンバーを中心に49か国・地域の参加を得て、広島AIプロセスの精神に賛同する国々の自発的な枠組みである「広島AIプロセス フレンズグループ」が立ち上がったことをうれしく思います。フレンズグループのメンバーの皆さんと共に、生成AIのリスクに対処するための国際指針や行動規範の実践に取り組み、世界中の人々が安全、安心で信頼できるAIを利用できるよう協力を進めていきます。

 AIの影の側面と戦うには、こうしたガバナンスの取組に加えて、リスクを低減するための個別の技術的措置の積み上げも重要です。日本は、GPAI(AIに関するグローバルパートナーシップ)東京センターを新設し、多様な専門家による技術実証等のプロジェクトを力強く支援いたします。日本は、生成AIがもたらす偽情報等のリスクに対処するため、発信者情報を確認するための技術の社会実装に向けた取組も支援する予定です。

 皆さん、人類の叡智(えいち)を結集し、AIの光の下に繁栄できるよう、一緒に取り組んでまいりましょう。