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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ハイテク・GX・半導体分野における高付加価値産業創出に向けた日越協力フォーラム 石破総理挨拶

[場所] 
[年月日] 2025年4月28日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文] 

 日本国内閣総理大臣でございます。チャイムが鳴る前になんとか話を終わらせたいと思っておるところでございますが、時間を超過をいたしましたら御容赦賜りたいと存じます。

 ファム・ミン・チン首相閣下、御列席の皆様、本日は、この日越協力フォーラムにお招きをいただきまして、誠にありがとうございます。

 90年代に、日本の製造業は、ベトナムへの進出を拡大をし、ベトナムの経済成長に寄与いたしてまいりました。ベトナムの1億人の成長市場、優秀で勤勉で豊富な人材は、有望投資先としての魅力であります。私も昨日、タンロン工業団地を見学をいたしましたが、日本企業が現地の企業と共に働いている、その様子を実感をいたしたところであります。

 ただ今、世界経済の不透明性が増しておりまして、サプライチェーンで密接に結びついております日本とベトナムにとって、このような状況は、共に協力をして、産業の高度化に取り組むチャンスでもある。このように考えておるところでございます。

 ベトナムの産業を更に高度化し、外的なショックに対する強靱(きょうじん)性を高める。これは両国にとっての利益でございます。人材育成、脱炭素化を含め、ベトナム産業の高度化に我が日本国も官民一体で取り組んでまいります。

 トー・ラム書記長が掲げておられます「新しい時代」の方向性とこの取組は、軌を一にするものでございます。ベトナムが、より合理的・実務的な行政のための改革、これはチン首相が進めておられることでございますが、工業化・近代化を更に進めるために、高付加価値産業に重点を置いておられる、ということを我が日本国として歓迎するものでございます。

 このような認識に立ちまして、チン首相との先ほどの首脳会談におきまして、日本ベトナム包括的戦略パートナーシップの下、両国の経済関係をアップグレードすることで一致をいたしました。

 日本とベトナムで進行中の取組について御紹介を申し上げます。

 ベトナムが重視をしておられます半導体分野の人材育成について、日本とベトナムの象徴的な協力案件であります日越大学におきまして「半導体チップ技術エンジニアプログラム」の開設に向け準備を進めています。

 ベトナムが国家戦略として掲げておられます、半導体に関する博士後期課程学生数の育成目標、それは500名と承っておりますが、その半分に当たります250名程度の日本国への受入れや、先端科学術分野などの次世代人材の交流を強化してまいります。

 産業高度化に向けました投資拡大にも取り組みます。今後、ベトナムでの工業団地の脱炭素化、半導体サプライチェーンに不可欠な多結晶シリコンの工場建設を支援をいたしてまいります。

 財政省の国家イノベーションセンター、NICとは、協力して、スタートアップと両国を代表する企業のマッチングを進めており、その成果も現れておるところでございます。

 直近では、ベトナムのスタートアップ政策の支援を通じた社会的課題の解決や産業競争力の向上のために、NICの機能を強化する支援を開始をいたしました。国連機関でありますUNDP(国連開発計画)とも協力をいたしてまいります。

 さらには、日本ベトナム間の脱炭素・エネルギー協力として、洋上風力、連系線整備、バイオマスなどのプロジェクトが進行中であります。これらのプロジェクトを着実に実施をし、AZEC(アジア・ゼロエミッション共同体)パートナーでありますベトナムと、アジアのエネルギー・トランジションを主導いたしてまいります。

 本日、多くの民間企業の皆様方の活動をお聞きをいたしました。改めて日本ベトナム協力の可能性に限界はないということを確信をいたした次第でございます。官民協力を含め協力を更に重層化をし、日本とベトナム双方に利益がある、より強固な関係を共に築いていきたいと、このように考えております。ベトナムにおいて、活躍をしておられます日本企業の皆様、私ども日本政府は、ベトナム政府と協力をして皆様方の支援をし、日本とベトナムの関係が地域の発展のために、世界の発展のために、そして両国の発展のために更に大きな役割を果たしますことを心から確信をし、更なる発展を祈念して私の御挨拶といたします。ありがとうございました。