データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日印経済フォーラムにおける高市早苗内閣総理大臣の挨拶

[場所] デリー
[年月日] 2026年7月2日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文] 

 モディ首相、そして日印両国の産業界の皆様、こんにちは。

 本日、日本を代表する150社以上の企業の皆様とともに、このデリーの地でこうやってお会いできること大変嬉しく思います。

 2007年、安倍晋三総理は、ここインドにおいて、「2つの海の交わり」という演説を行いました。太平洋とインド洋を「自由と繁栄の海」として結びつける構想を提唱しました。

 インドは、今日の『自由で開かれたインド太平洋(FOIP)』の源流が生まれた地でございます。

 世界が保護主義の台頭や経済的威圧、地政学的緊張の高まりによって、大きな試練の時代を迎えている今、地域の「自律性」と「強靱性」を高めることが不可欠でございます。

 このため、私は本年5月、FOIPをさらに進化させ、「共に、強く豊かになる」という理念を掲げました。

 「自律性」と「強靱性」を核とするこの理念は、モディ首相の「マハー・サーガル(Great Ocean)」と深く共鳴しています。

 日本とインドは、地域を支える二大民主主義国家として、法の支配を堅持し、いかなる威圧にも屈することなく、自由を守り、繁栄を創り、そして未来を切り拓くために、より一層連携を深めてまいります。

 その中でも、エネルギー安全保障は最も重要な協力分野の一つです。

 先日のG7サミットにおいて、私は、自由で透明なエネルギー貿易の確保、備蓄の強化、そして産消連携からなるエネルギー安全保障についての3つの提案を行いました。

 そして今、私たちは、「パワー・アジア」を通じて、その具体化に取り組んでいます。

 今後、日本とインドは、石油備蓄強化を含む新たな協力を通じて、地域のエネルギー安全保障を共に支えていく、それはこうした考えに基づくものです。

 また、日印企業が年間40万トン規模のグリーンアンモニア生産事業を推進します。これが、両国の新たなエネルギー安全保障協力の象徴となることを願っています。

 さらに、私は、インド農村部に眠る、膨大な未利用バイオマス資源に着目しています。すなわち、牛ふん、稲わら、サトウキビ残渣などでございます。

 実は、この発想は新しいものではありません。モディ首相は長年にわたり、協同組合の力を活用して農村資源をエネルギーに転換する構想を推進してこられました。

 私は、この構想こそがインドの農村とエネルギーの未来を切り拓(ひら)く鍵であると確信しています。

 このため、モディ首相と私は、新たなプロジェクトとして、協同組合を活用して牛ふんなどからエネルギーを得る『日印CBGイニシアティブ』を立ち上げることで合意しました。

 今後、インド全土に1,000基ものバイオガスプラントを整備するというインドの目標達成に貢献してまいります。

 さらに、今般合意した協力趣意書を通じ、250万台規模のそのバイオガスを使うCNG車、車ですね、この市場を共に創出していきましょう。

 そして、エネルギー分野にとどまらず、こうした協力の裾野が広がっており、その担い手がスタートアップや中小企業を含め、多様化しています。

 今回の129件の民間協力文書、2兆円を超える事業機会の創出を発表することができました。

 現在、ここインドをベースにアフリカとの連携を進める日本の企業も増えています。

 日印の「新たな成長モデル」を、FOIPのイニシアティブの下、アフリカ、アジア、中南米など、グローバルサウスの国々にも展開していきます。

 日印両国が力を合わせて、「共に、強く豊かになる」。この理念の下、日本とインドは、インド太平洋、そしてグローバルサウスの未来を共に切り拓(ひら)いてまいります。

 皆様と御一緒に、頑張ってまいりましょう。御清聴ありがとうございました。