[内閣名] 第17代第2次大隈重信内閣(大正3.4.16〜5.10.9)
[国会回次] (帝国)34回(臨時会)
[演説者] 加藤高明外務大臣
[演説種別] 外交演説
[衆議院演説年月日] 1914/9/9
[貴族院演説年月日]
[全文]
諸君、外交上のことに關して諸君に御報告を申上げたいと思ふことがございますから、簡單に御話を致します、諸君が新聞紙上で英、佛、露、三國間に近日戦爭を終了する時に當つて、講和をなすこと、並に講和條件に關して恊約が出來たと云ふことを御承知になつた筈と思ひますが、それは事實でありまして、英、佛、露、三國の間に結ばれましたる恊約の主旨を、唯今申上げます、恊約文は次の如くであります
下名は各其の本國政府より正當の委任を受け茲に左の通宣言す
英國佛國及露國政府は現戰爭中は單獨に講和せさる可きことを相互に約す右三國政府は講和條件を議する場合に於て孰れの同盟國も豫め他の各同盟國の同意を經すして講和條件を要求せさる可きことを約す
右證據として下名は本宣言に記名調印す
千九百拾四年九月五日倫敦に於て本書三通を作る
此に英の外務大臣と、駐英の佛國大使、駐英露國大使三名の名前があります、英國外務大臣は右の趣を在英の我が特命大使に通告になりました、それと同時に井上大使に對して左の如き覺書を渡されました
英國政府と佛露兩國政府との間には從來何等の取極なかりしにより今次共同に從事する戰爭に關し右二國政府と恊約を締結したり日英兩國政府間には同盟恊約第二條の規定にあるか故に今更めて斯の如き恊約をなすの必要なし英國政府は講和締結及講和條件に關し佛露兩國政府と取結ひたる恊約は英國政府か既に負擔する義務たる日英同盟恊約の規定を毫も變更するものと看做すへからさること並英國政府か戰鬪及講和に關し日本と恊同し且つ雙方合意の上に於て之をなすは言を俟たさるものなることを佛露兩國政府に通告したり
此段報告致します。
〔拍手起る〕