[内閣名] 第77代第2次海部(平成2.2.28〜3.11.5)
[国会回次] 第120回(常会)
[演説者] 中山太郎外務大臣
[演説種別] 外交演説
[衆議院演説年月日] 1991/1/25
[参議院演説年月日] 1991/1/25
[全文]
第百二十回国会が再開されるに当たり、我が国外交の基本方針につき所信を申し上げます。
現在の国際社会は、まさに歴史的激動期の中にあります。社会主義諸国における経済の失敗と旧来のイデオロギーの衰退が見られ、また、自由と民主主義、市場経済の価値の再確認がなされております。東西関係は、イデオロギーに基づく対立関係から協調を基調とする関係へと変化するに至っております。そして、対話と協力の中で、新しい国際秩序を構築するための真剣な努力が続けられております。しかし、ソ連は国内改革に着手したものの、政治、経済、社会の各分野で混乱が見られ、改革の将来はいまだ不透明であります。また、国際社会は、過渡期に特有の不確実性と不安定性を内包しております。さらに、世界は依然として国家間の対立、紛争を惹起する数々の要因を抱えており、地域紛争が発生する可能性も少なからず存在をいたしております。
昨年八月のイラクのクウェート侵略により発生した湾岸危機は、まさにこのことを象徴的に示す事態であります。これに対し国連安全保障理事会は、イラクのクウェートからの全面撤退を実現するために一連の決議を採択し、世界の多くの国々は、国連を中心とする強い結束のもとに、湾岸の平和と安定を回復するための幅広い協力を進めてまいりました。我が国としても、総額四十億ドルに上る中東貢献策を着実に実施に移すとともに、イラク政府最高首脳部に対し国連安保理決議の速やかな履行を繰り返し強く申し入れるなど、問題の平和的解決に向けた外交努力を尽くしてまいりました。
しかし、イラクは終始、国連安保理決議やデクエヤル国連事務総長のイラク訪問を含む各国による平和的解決のための努力を無視する態度をとり続けてまいりました。今月十七日に開始された多国籍軍の武力行使は、国連安保理決議に基づいて最後の手段として行われたものであり、我が国としてもこれに対する確固たる支持を明確にしております。イラクがクウェートからの撤退をかたくなに拒否してきたために、それまでの国際社会を挙げての平和的解決のための努力が無に帰するに至ったことは極めて遺憾であります。さらに、イラクがイスラエルに対し一方的にミサイル攻撃を加えていることは、強く非難されるべきであります。
我が国は戦後、国際紛争を解決する手段としての戦争を放棄し、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、みずからの安全と生存を確保することを決意してまいりました。それだけに、公正で安定した国際秩序の維持は、我が国の生存のために不可欠であり、我が国としては、国際秩序を武力によって破壊しようとする試みを絶対に許すことはできません。また、国際秩序の維持において重要な役割を果たすべき国連の権威を無視する態度を看過すべきでもありません。さらに、湾岸地域は、世界の石油埋蔵量の六五%を占め、また、我が国が石油輸入の約七割を依存している重要な地域であり、その安定を確保すること自体が我が国にとって極めて重要な課題であります。
米国を初めとして多くの国が、国内の経済困難を抱える中で、国民の犠牲と膨大な軍事支出を覚悟して多国籍軍に参加しているときに、主要先進国の中でこの地域の石油に最も依存している我が国が、憲法に従い多国籍軍の武力行使に参加をしないというその立場について国際社会の十分な理解を得るためには、国連安保理決議の履行を確保するために、財政面の支援を初めとして我が国としてできる限りの協力をみずから進んで行うことが極めて重要であります。我が国が経済大国であるだけに、我が国が相当の経費分担を行うことについての強い期待が国際社会に存在することも否定できない事実であります。我が国が財政支援と我が国としてなし得る人的協力の両面での努力に十全を期さなければ、国際社会で孤立する方向にみずからを追い込んでいく可能性すらあると申し上げても過言ではありません。
このような考えに立って、政府は、湾岸地域の平和回復活動に従事する米国を中心とする各国を支援するため、湾岸平和基金に対し新たに九十億ドルの拠出を行うことといたしました。また、国連災害救済調整官事務所が国際社会に要請をいたしました避難民救済のための初動経費三千八百万ドルの全額を引き受け、速やかに拠出をいたしましたが、今後とも避難民援助には特に意を用いてまいりたいと考えております。さらに、我が国の民間航空機により避難民を本国に輸送するとともに、必要に応じ自衛隊輸送機による避難民の輸送を行うための準備を進めてまいります。
他方、我が国は、湾岸の戦火が一刻も早くおさまることを強く望むものであります。そのためには、イラクのクウェートからの撤退が不可欠であり、フセイン大統領の早急な決断を強く求めるものであります。
なお、イラクのクウェートからの撤退が実現しても、湾岸の長期的な安定を図っていくために、経済の復興、安全保障や軍備管理などの面での国際協力が必要であります。さらに、中東地域の大きな不安定要因であるパレスチナ問題の解決なくして中東地域の安定を図ることはできず、湾岸危機の解決後、国際社会がその解決のために以前にも増して努力を強化することが必要であります。我が国としても、これらの問題をめぐる国際協力のあり方についての検討を進め、関係諸国とも協力しつつ、この地域の長期的安定のために積極的に努力をしてまいります。
今回の湾岸危機によって改めて明らかになったことは、国際の平和と安全を守る上で中心的な役割を果たし得る国は米国をおいてほかにないということであります。イラクによる国連決議の履行の期限を目前に控え私が米国を訪問したのも、このような認識に立って湾岸危機を中心に緊密な協議を行うためでありました。
日米関係は今後とも我が国外交の基軸であります。しかし近年、米国におきましては、対日貿易赤字の累積を背景に、日本の経済力を米国にとっての脅威とみなす見方も出るに至っており、さらに、今回の湾岸危機を契機として、我が国が一層の責任を果たすことを求める声が急速に高まっております。米国世論の中に見られる対日不信を克服し、また、米国政府内外に高まりつつある対日期待にこたえるため、我が国がみずからの判断において進んでその責任と役割を果たしていくことが、日米関係を将来に向かって強化をしていくために極めて重要であります。
日米安全保障体制の信頼性の向上と円滑な運用の確保のために努力するとともに、我が国の安全にとって必要な節度ある防衛力の整備を進めていくことは、日米同盟関係を強化するための不可欠の前提であります。
現行の日米安保条約は、昨年、締結三十年の節目の年を迎えました。顧みれば昭和二十七年、我が国は、当時の不安定な極東情勢の中で国の安全と復興を図るため米国との間に安全保障条約を締結し、さらに昭和三十五年、日米両国対等の立場に立って現行条約を結んだのであります。我が国が、激動する国際社会の中にあって平和を享受し、未曾有の経済的繁栄と国民生活の向上を見てきたことは、この選択が正しかったことを立証するものであります。そして、今や日米安保体制は、アジア・太平洋地域の平和と安定にとって不可欠の枠組みともなっております。国際政治の変革期にあって、国連を中心とする平和維持の努力が行われていることも事実ではありますが、この日米安保条約を堅持していくべき必要性についてはいささかの変化もありません。政府としては、このような認識に立って、在日米軍経費の負担について新たな措置を講ずることとし、所要の特別協定を今国会に提出して、御審議をお願いすることといたしております。
また、日米両国が二国間のさまざまの問題を協力と共同作業の精神で着実に解決していくことが重要であります。さらに、両国が、新たな国際秩序の構築、世界経済の運営、開発途上国の経済開発や地球環境のような国境を越えた様々な問題についての協力を含め、政治、経済両面にわたるグローバル・パートナーシップを強化していくことが重要であると考えます。そして、このような日米の協力関係の基盤となる相互理解を一層強化するため、五百億円の原資により新たに設立される日米親善交流基金をも活用し、両国国民の対話と交流を促進してまいりたいと存じます。
政府としては、このような考え方に立って、本年春に予定されているブッシュ大統領の訪日を、二十一世紀に向けてより強固な日米関係を構築する機会にいたしたいと考えております。
冷戦の終えんに至る劇的な変化は、欧州を中心としたものでありましたが、我が国が位置するアジア・太平洋地域におきましても、同じような好ましい変化があらわれつつあります。中ソ関係の改善、ソ連軍のカムラン湾、モンゴル等からの撤退開始、モンゴルの民主化はその例であります。また、韓国とソ連との間の国交樹立、中国とインドネシア及びシンガポールとの間の国交正常化といった動き、朝鮮半島における南北対話の進展やカンボジア和平交渉の進展などの緊張緩和へ向かう変化も見られます。我が国と北朝鮮が、国交正常化のための本会談を行うことになったことも、こうした前向きの動きの一つであることは言うまでもありません。
朝鮮半島に対する我が国の政策の基本は、韓国との友好協力関係の強化にあります。昨年五月の盧泰愚大統領の訪日に続き、今月、海部総理が韓国を訪問し、私も同行いたしました。今回の訪韓では、長年の懸案であった在日韓国人問題について両国間で行ってきた協議の決着を見るとともに、日韓新時代の三原則が確認されるなど、二十一世紀に向けた未来志向の日韓関係を構築する上で、大きな成果があったと考えております。
北朝鮮との間では、朝鮮半島をめぐる情勢全体を視野に入れ、その緊張緩和、平和及び安定に貢献するとの姿勢で、国交正常化のための本会談に臨む方針であります。また、この交渉の機会等を通じ、北朝鮮が国際原子力機関との保障措置協定を締結するよう強く働きかけていく方針であります。
カンボジア問題については、我が国としても、カンボジア人当事者に対する働きかけを含め包括和平の達成に向けた外交努力を一層強化してまいります。また、和平合意が達成された暁には、国連の活動に対する資金協力や要員派遣、難民や避難民の帰還に対する協力及び復興援助を積極的に行う決意であります。
ASEAN諸国は、東アジア地域の平和と安定、さらには世界経済の発展を確保する上で重要な地位を占めております。我が国としては、ASEAN諸国との間で、この地域の経済協力のみならず、アジア・太平洋の諸問題について対話と協力を深めていくことが重要であると認識をいたしております。
我が国が中国との間において良好な関係を発展させていくことは、アジア・太平洋地域の平和と安定のためにも重要であります。私は、中国が改革・開放政策を推進し、国際社会に対し一層の建設的役割を果たすことを強く期待をいたしております。そのためにも我が国は、中国の近代化努力に対し、現在、徐々に実施に移している第三次円借款を初めとして、できる限りの協力を行ってまいります。
また、我が国は、アジアに強い関心を向けつつある豪州、ニュージーランドとの友好協力関係を発展させてまいります。
さらに、アジア・太平洋地域の開発途上国に対する経済協力の推進や域内の貿易及び投資の拡大に努めてまいります。
南西アジアでは、南アジア地域協力連合を通じた域内協力を推進する動きも見られますが、他方で、カシミール問題を初めとする不安定要因があります。また、アフガニスタン問題についても、解決のための一層の努力が必要となっております。我が国としては、ネパールやバングラデシュの民主化への好ましい動きをもとらえつつ、これらの地域の安定と発展のためできる限りの協力を行ってまいります。
私は、今や、アジア・太平洋地域の長期的な安定を確保する方途について真剣に検討すべき時期に至っていると考えます。この地域においては、そのための道程が欧州と異なることは当然であります。なぜならば、この地域の地政学的な条件や安全保障上の環境が欧州とは大きく異なっているからであります。
第一に、アジア・太平洋地域では、域内の多くの国が開発途上国であることもあって、各国の最大の関心事は経済発展であり、核戦争の脅威を含む軍事的な緊張の緩和を最大の関心事項としてきたこれまでの欧州とは大いに異なっております。
第二に、従来の欧州では、NATOとワルシャワ条約機構の二極に集約された形での東西関係が存在していたのに対し、アジア・太平洋地域では、中国の存在を含めて東西関係では律し切れないさまざまな要因があり、国際政治上の力関係が多極的であります。この地域では、同盟関係は二国間のものがほとんどであり、また、各国の利害の対立及びこれに伴う脅威認識も多様であることから、全体として安全保障の構図が複雑であります。
第三に、欧州においては、戦後の国境問題等の解決という過程を経た上でいわゆるCSCEの作業が始められたのに対し、アジア・太平洋地域においては、依然として朝鮮半島における南北対立、カンボジア問題、日ソ間の北方領土問題などの未解決の紛争や対立が存在をいたしております。
そして、第四に、欧州ではEC統合の動きを中心として、政治的にも経済的にも統合に向かう大きな流れがあるのに対して、アジア・太平洋地域では、むしろ国家、地域の政治的、社会的、文化的な多様性や経済発展段階の相違を基礎としつつ、経済的な相互依存関係が追求をされております。
このようなアジア・太平洋地域の特徴を踏まえ、その平和と安定を確保していくためには、まず、朝鮮半島における対立、カンボジア問題、北方領土問題等の未解決の紛争や対立の解決を図り、その過程を通じて、北東アジア、東南アジア等の地域ごとに、それぞれの地域の長期的な安定を図るための対話や協力関係を強化していくことが重要であります。
より広い範囲の地域協力については、域内諸国の安定のために経済発展が重要であることにかんがみ、経済面での協力を中心に進めることが重要であります。具体的には、ASEAN、ASEAN拡大外相会議、アジア・太平洋経済協力閣僚会議、太平洋経済協力会議等の既存の枠組みを十分活用して、この地域の政治、経済両面にわたる諸問題についての対話と協力を拡大していくことがこの地域に最もふさわしい方法であると考えます。
このような考え方に立って、我が国としては、アジア・太平洋地域の長期的な安定を確保するための方途について国際的なコンセンサスを形成すべく、各国との対話を深めてまいる方針であります。
アジア・太平洋地域の安定と繁栄を確保する上で、日ソ関係の抜本的改善が不可欠であります。そのためにも北方四島の返還を実現し、平和条約を締結して、質的に新しい両国関係を構築することが必要であります。
今般、私はソ連を訪問し、ゴルバチョフ大統領やベススメルトヌイフ外相と胸襟を開いた話し合いを行いました。その中で、本年四月に予定されているゴルバチョフ大統領の訪日を、日ソ関係に新しい時代の到来を約束する歴史的意義のあるものとするようソ連側に英断を求めるとともに、我が国としてもできる限りの努力を行う旨を強調してまいりました。
他方、ソ連は現在、複雑かつ困難な局面を迎えております。経済改革は停滞し、連邦と共和国との関係にも混乱が見られます。特に、バルト諸国において武力が行使されたことは、憂慮すべき事態であり、私は今回の訪ソにおいて、その民主的、平和的解決を強く求めるとともに、我が国としては、ソ連が民主化、自由化に向けた努力を引き続き堅持することを強く期待する旨表明をいたしました。
欧州では、昨年十一月、CSCEのパリ憲章が署名され、欧州における対立と分断の時代の終えんが宣言されるとともに、ECを中心に民主的で繁栄した安定的な欧州を建設する動きが見られます。我が国としても、この機会に欧州諸国、特にECとの間で、政治、経済、文化などの幅広い分野で対話を深め、地球的規模の問題についての協力も含めて協力関係を一層強化するよう努力してまいる方針であります。
また、東欧諸国の民主主義や市場経済の実現に向けた改革の成功は、欧州ひいては世界の安定に寄与するとの認識に立って、引き続き東欧の改革を積極的に支援してまいります。
中南米では、近年、顕著な民主化の進展が見られ、また、多数の国々が市場経済に基づく真摯な改革を進めております。さらに、中米和平のための関係諸国の努力も着実に成果を上げつつあります。我が国としては、このような努力に対し、今後とも国際的な協調のもとに一層の協力を行ってまいります。
アフリカでも、多くの国が民主化や経済構造調整の努力を行っており、我が国としてもこのような努力を可能な限り支援をしてまいります。また、南アフリカのアパルトヘイト問題については、南アフリカ政府と黒人側の話し合いを通じ、平和的解決の道が開かれつつありますが、我が国としては、今後とも南アフリカ当事者との対話の拡大、南アフリカ黒人支援の強化等を通じ、このような努力を支援してまいりたいと存じます。
世界経済は、主要国間の大幅な対外不均衡、根強い保護主義圧力などの問題を依然として抱えており、さらに、最近になって先進国経済が減速する一方、湾岸危機の影響が懸念をされております。
我が国は、世界第二の経済大国として、このような状況に対処し、世界経済の健全な発展を確保するために一層積極的に貢献をしていかなければなりません。特に、ウルグアイ・ラウンド交渉については、仮にこれが失敗するようなことになった場合の国際的悪影響にははかり知れないものがあり、我が国としては、この交渉を何としても早期に成功させるため引き続き最大限の努力を行ってまいる方針であります。
また、我が国としては、サミット等を通じ主要先進諸国間の政策協調を積極的に推進をしてまいります。さらに、対外経済関係を円滑に運営するため、今後とも内需主導型の経済運営を堅持するとともに、市場アクセスの一層の改善、規制緩和を初めとする構造調整の推進などを通じて輸入拡大に努めてまいります。
以上のような諸政策を推進していく上でも、平和のための協力、政府開発援助の拡充、国際文化交流の強化を三つの柱とする国際協力構想の一層の強化が重要であり、我が国は今後ともこのための努力を行ってまいります。また、国際社会に貢献するという同じ考えに立って、地球環境、麻薬、国際テロ、難民、人権などの人類共通の問題の解決のための協力や、技術移転を含む科学技術面での国際的貢献を引き続き強化をしてまいります。
平和のための協力について我が国は、従来より国連平和維持活動に対する資金協力を行うとともに、ナミビア、ニカラグア及びハイチにおける国連選挙監視団に要員を派遣してまいりました。今後さらに、国連平和維持活動に対する協力を含め、憲法の精神にのっとり、人的貢献を一層迅速かつ効果的に行うための体制を早急に整備することが重要であります。このような観点に立って、政府としては、新たな国際協力のあり方について、できる限り早い時期に成案を得たいと考えております。
軍縮の分野においては、今般の湾岸危機を通じその重要性が再認識されつつある核、化学生物兵器及びミサイルの不拡散体制の強化や通常兵器の国際移転に関する透明性、公開性の増大などを目指す国際的な努力に、我が国としても積極的に参画をしてまいります。また、軍縮会議において、核実験禁止に関する議論の進展及び化学兵器包括禁止条約の採択のために、我が国としても一層の努力を行ってまいります。
我が国の国際協力の中心は政府開発援助であります。多くの開発途上国において経済困難が一層深刻化している中で、世界の国民総生産額の一割を超える経済力を有する我が国としては、今後とも政府開発援助の拡充強化を図っていかなければなりません。このため、現在実施中の第四次中期目標に沿って、引き続き政府開発援助の着実な量的拡充、内容の改善及び援助実施体制の強化に努力するとともに、援助の効果的、効率的実施に努めてまいります。
さらに、我が国と諸外国との間で、相互の文化の紹介や知識の交流を通じ、一層深みのある相互理解を実現すべく努力してまいります。また、世界の文化遺産の保存を図り、開発途上国との文化協力を推進してまいります。
激動する国際情勢に的確に対応し、外交活動を行っていくためには、外交実施体制の一層の強化が必要であります。また、今般の湾岸危機を通じて、その重要性が改めて認識された危機管理体制や海外における邦人の保護のための体制の強化も必要であり、これらにつき一層の努力を行ってまいる所存であります。
我が国は今後、その持てる経済力と科学技術力を十二分に活用して、世界の平和と繁栄の確保のために進んで責任と役割を果たしていかなければなりません。そうすることによって初めて、我が国は諸外国からの信頼を得ることができるのであり、この信頼なくして我が国が国際社会において名誉ある地位を占めることはできません。
政府がこのような考え方に立って多方面にわたる外交を進めていくに当たって、国民各位の御理解と御協力は不可欠であります。政府といたしましても、全力を傾けて積極的な外交の推進に取り組んでまいる決意であり、国民及び議員の皆様の力強い御支援を改めてお願い申し上げる次第であります。