データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[内閣名] 第78代宮沢(平成3.11.5〜5.8.9)
[国会回次] 第123回(常会)
[演説者] 渡辺美智雄外務大臣
[演説種別] 外交演説
[衆議院演説年月日] 1992/1/24
[参議院演説年月日] 1992/1/24
[全文]

 第百二十三回国会が開かれるに当たり、我が国の外交の基本方針につき所信を申し述べます。

 国際社会は今日、世界史上にほとんど例を見ない、大きな変革を経験しつつあります。東欧諸国に続いてソ連においても、共産主義体制は崩壊し、ソ連邦は今や存在しておりません。東西間の冷戦は終わり、多くの国々が、民主主義と市場経済の導入に取り組んでいます。その一方で、西欧諸国は、統合に向かって協力を深めつつあります。

 アジア・太平洋地域でも、国家関係が、政治体制の違いを乗り越えて正常化しつつあり、経済面で市場原理に基づいた改革、開放が進められています。カンボジアや朝鮮半島においては、和解と安定に向けて具体的な措置がとられ始めております。

 東西間の冷戦を背景にした地域紛争は、アフリカにおいても、中米においても、急速に終わりつつあります。また、イスラエルとアラブとの間の対立抗争についても、すべての当事者が参加する話し合いが始まりました。軍縮の分野でも進展が見られています。

 これらの動きは世界人類の未来に明るい展望を開くものであります。

 しかし同時に、今日の世界は多くの困難な問題を抱えています。かつてのソ連や東欧諸国は、既に、失業、日常品の不足、インフレといった深刻な経済困難に直面しています。また、旧ソ連邦は、民族、宗教などによる対立や新旧の権力闘争を抱え、極めて不安定な状態にあります。さらに、旧ソ連邦内の混乱によって、核兵器などの大量破壊兵器やその関連技術の国外への流出や、チェルノブイリで起きたような原子力発電所における事故といった極めて危険な事態が起こる可能性も強く懸念されているところであります。

 世界的に見て今後も、民族や宗教に起因する対立、経済的な権益や領土をめぐる抗争などが地域的な武力紛争に発展する危険性は、引き続き遺憾ながら存在しております。むしろ、旧い体制の崩壊が、ユーゴスラビアに見られるように、それまで抑圧されていた対立抗争を激化させるという面も少なくありません。

 さらに、世界は、地球環境を初めとする国境を越えた問題や、開発途上国における貧困の問題に対する取り組みを迫られております。

 しかるに、頼りにされるべき多くの先進工業国では、自国の経済成長の減速、根強い保護主義圧力の台頭などが深刻になってきつつあります。

 このように大きく、かつ、激しく変わりつつある国際社会の中にあって、日本はいかに行動すべきか。今、我々はこの問いに対して、みずから答えを出さなければなりません。なぜならば、我が国の対応が新しい国際秩序の形成に、直接、間接に大きな影響を及ぼすようになってきたからであります。

 しかも、我が国は昨年末の国連総会において、安全保障理事会の非常任理事国に選ばれました。今回の選出に当たって国連加盟国の圧倒的多数が日本に寄せた期待を十分に認識しておかなければなりません。

 第二次世界大戦における敗戦から約半世紀がたった今日、日本は、世界第二の経済大国となるに至りました。しかしながら、我が国の戦後の復興と発展は、国民の英知と努力、市場経済と自由貿易という歴代政府の基本政策のもとで、米国を初めとする友好国の援助と協力があって初めて可能になったものであります。このことを思うとき、これからの日本が国際社会に対してなすべきことはおのずから明らかであります。それはすなわち、国際協調の精神のもとで、我が国の持てる力、すなわち経済力、技術力を活用することはもとより、さまざまな人的貢献や知恵をもって、新しい世界平和の秩序の構築に貢献することであると私は信じます。世界の国々における相互依存関係が深まっている今日、このような貢献を行っていくことは、我が国自身の平和と繁栄を確保していく上でも不可欠であります。

 新しい世界平和秩序を構築するための国際協力を進めるに当たっては、これまでにも増して日本の特色を生かした外交を展開することが重要であることは言うまでもありません。このような観点から、我が国は、世界平和のための国際貢献を重視し、世界各地の地域紛争の解決や地域的安定への協力、軍備管理・軍縮の促進に取り組んでまいります。それとともに国境を越えた問題の解決や文化、科学技術に関する協力などにも力を入れてまいります。

 また、我が国は、人類普遍の原理である個人の自由、民主主義、基本的人権に配慮していかなければなりません。我が国がこのような外交を展開することは、また、国際社会の期待にこたえることになると私は考えます。

 さらに、我が国が行う国際貢献は、単に資金面での協力にとどまらず、国連憲章の精神を酌んだ我が国の憲法のもとで、最大限の人的協力を行うべきであります。我が国が、額に汗した人的な貢献を含め、幅の広い国際貢献を行うことこそが、「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたい」という平和憲法の理想を実現していくことなのであります。

 国連の平和維持活動は、国連憲章の精神にのっとり、平和を守るため、国連が実績を積み上げてきた活動であり、これまでに世界の八十以上の国が参加した国際社会に対する汗をかく人的貢献であります。継続審議をお願いしているいわゆるPKO法案は、まさにこのような活動に我が国が積極的に参加できる体制を整備しようとするものであります。国民の皆様の理解のもとに、この法案を今国会においてぜひとも成立させ、国際社会における我が国の責任の一端を果たそうではありませんか。また、同じ観点から、国際緊急援助隊法改正法案についても、今国会における成立をお願いするものであります。

 冷戦後の世界平和を一層確かなものとするための重要な課題は、軍備管理・軍縮であります。そうした中で、我が国が、原爆体験を持つ世界唯一の国家として、核兵器の廃絶を究極の目標とし、そしてまた、政府が、武器やその製造に関連する設備の輸出を慎むという極めて先進的な政策をとっていることは、国際的に誇りとすべきところであります。それだけに、世界の国々の関心が、大量破壊兵器の拡散防止や通常兵器の移転問題に向けられている今日、日本がこの分野で指導的な役割を果たしていくことが、国際的にも大きく期待されているところであります。日本が昨年、通常兵器の移転に関する国連登録制度の実現に大きな役割を果たしてきたこと、そしてまた、他の国に先駆けて、いわゆるODA四指針を決定し、政府開発援助の実施に当たって、被援助国の軍事支出の動向や大量破壊兵器やミサイルの開発及び製造の動向、そして武器の輸出入の動向などを考慮に入れることを明らかにしたことが、国際的に高く評価されたのは、その証拠であります。

 冷戦が終わったこの機会をとらえて、政府といたしましては、国際的な核軍縮に関し、一層の貢献を行うとともに、大量破壊兵器及びミサイルの不拡散体制の強化、並びに通常兵器の移転問題等の分野で、一層積極的な役割を果たしていく方針であります。特に我が国といたしましては、核兵器不拡散の分野で、現行の保障措置制度を抜本的に強化するために努力をするとともに、化学兵器禁止条約の交渉を本年中に妥結に導くよう一層尽力してまいります。

 北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国の核兵器開発問題は、我が国のみならず、アジア・太平洋、ひいては世界の安全を脅かす重大な事態であります。このような認識に立って、政府は、北朝鮮との国交正常化交渉に当たり、北朝鮮が国際原子力機関との保障措置協定を締結し、無条件、かつ、速やかに査察を受け入れるよう強く求めてまいりました。また、もし再処理施設があるとすれば、それを撤去することも引き続き求めてまいる心算であります。このような見地から、我が国は、朝鮮半島における核兵器の不存在の確認を可能としたブッシュ大統領の核軍縮措置、そして、将来にわたって核兵器及びその関連設備の不保持を宣言した盧泰愚大統領の決断を高く評価するものであります。また、韓国と北朝鮮が朝鮮半島の非核化に関する共同宣言に署名したことは大きな前進であります。

 旧ソ連邦における核兵器の管理は、世界の平和と安全に極めて大きな影響を及ぼす問題であります。我が国は、核兵器が厳格な一元的管理のもとに置かれること、及びロシア以外の新しい独立国が速やかに非核兵器国として核不拡散条約を締結し、また、そこに存在する核兵器を一日も早く廃棄し、あるいは撤去することを強く求め続けていく方針であります。

 国際社会が大きく変化をしておるときだけに、世界経済のインフレなき持続的な成長を確保することは、これまで以上に重要であります。我が国といたしましても、そのために進んで積極的な役割を果たしていかなければなりません。また、ブレトンウッズ体制のもとで、戦後の復興をなし遂げ、世界第二位の経済大国と称されるまでに至った日本としては、多角的自由貿易体制の維持強化に積極的な役割を果たしていく責務があります。ウルグアイ・ラウンド交渉の成功に寄与することは、その重要な第一歩であります。多角的自由貿易体制の維持強化にとり極めて重要なこの交渉は、昨年暮れに最終合意文書案が提示されるという新たな展開を経て、現在最終段階にあります。仮にこの交渉が失敗するというようなことになれば、国際経済及び我が国経済に多大な悪影響を与えるものと考えられます。我が国といたしましては、この交渉が早期に成功裏に終結するよう引き続き最大限の努力を払っていく方針であります。

 自由貿易体制下で相互依存関係が強まる中で、一国だけの繁栄を長続きさせることは困難であります。そこで、開発途上国に対する支援に取り組んでいくことも極めて重要であります。特に、日本は、開発途上国が多いアジア・太平洋地域に位置しております。また、日本自身、欧米の先進諸国から技術や知識を学び、その支援、協力も受けて、近代国家として発展を遂げてきたという経験を持っております。それだけに開発途上国の発展を支援することは、国際社会における日本の使命であります。

 今国会で審議をお願いする平成四年度の政府開発援助予算について、厳しい財政事情のもと、第四次中期目標の達成に向けて九千五百二十二億円の一般会計予算を計上いたしましたのも、このような認識に立つものであります。

 今後、政府開発援助の活用に当たりましては、地球環境、難民、麻薬などの国境を越えた新しい課題に対応する努力を行っていくことが重要であります。また、第四次中期目標に沿って、援助のハード面のみならず、ソフト面も重視し、質の改善を図るほか、その一層、効果的、効率的な実施についても引き続き十分な配慮を払っていく方針であります。

 以上のような外交を進めていくに当たりましては、我が国が、自由、民主主義、市場経済といった価値を共有する先進民主主義諸国との協調を図っていくことが重要であります。

 中でも、米国との緊密な協力関係は我が国の外交の基本であります。日米安全保障体制に裏づけされた強固で広範な両国の協力関係は、アジア・太平洋地域の平和と安定を確保し、また、他国に脅威を与えるような軍事大国にはならないという日本の立場の国際的信頼性を高めるためにも役立っています。したがって、日米間の各種の摩擦、対立が伝えられる中でも、日米安保体制を中心とした両国の協力関係を一層強化するよう努力しなければなりません。

 今回、ブッシュ大統領の訪日を期して、日米両国が東京宣言を発表して、二十一世紀に向けて日米のグローバルパートナーシップのもとで、地球的、世界的な責任と役割を果たしていく決意を表明したことは、時宜を得たものであります。また、日米両国が、世界経済の安定的発展のために、できる限り協力し合うことは当然であります。我が国は、日米の行動計画にあるとおり、自由貿易の原則に立ち、一層の市場開放を含めた種々の措置を決定したところであり、今後その着実な実施に努めてまいります。

 我が国は米国のみならず、西欧諸国とも価値観を共有しており、これらの諸国とも関係を一層強化していく必要があります。特に、EC諸国は、市場統合に続いて、経済・通貨統合及び政治統合に向けてさらに歩みを進めることによって、ますます一体性を強めようとしております。このように国際社会における影響力が増大しつつあるEC諸国との間で、政策協議と政策調整の緊密化を図っていくことは、我が国の外交の重要な柱でもあります。この観点から我が国は、昨年七月に日欧関係にとって歴史的意義を持つ日本・EC共同宣言に合意いたしました。今後この宣言に基づいて、EC加盟各国との二国間関係の強化に加えて、一体としてのECとの間でグローバルな観点から幅広い協力を推進していく方針であります。

 アジア・太平洋諸国との関係について申し上げます。

 韓国、ASEAN諸国、豪州を初めとするアジア・太平洋諸国との間で、地域の安定、発展にかかわる政治、経済両面の課題や世界的な問題について、二国間、多数国間でともに考え、相協力して、問題の解決に当たっていくことも、これからますます重要になってまいります。また、日本が、二国間のみならず、ASEAN拡大外相会議やAPECといった多数国間の協議や協力の場に積極的に参加することは、アジア・太平洋地域の国々と日本との間の相互信頼関係を高めるためにも重要であります。この地域の国々には、過去の歴史や日本の存在感の大きさに根差す不安感が依然として残っております。それだけに、将来に向かって日本は、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないという基本方針を堅持していかなければなりません。

 朝鮮半島については、北東アジアの長期的な安定を確保するという見地から、韓国、米国、さらには中国などとも十分な連携をとりつつ、政治、経済両面において積極的な外交を展開していく方針であります。宮澤総理大臣が今般韓国を訪問したのも、このような方針のもとで、日韓両国関係の一層の強化を図るためでありました。

 また、日韓友好関係を基本としながら、朝鮮半島の平和と安定に資するような形で、引き続き日朝国交正常化交渉に誠意を持って臨んでまいります。

 東南アジア全体の安定と発展を確保していく上で、インドシナ半島をアジア・太平洋の活力ある経済発展の枠組みに取り込んでいくことが重要であります。このような観点からも、カンボジア及びベトナムの復興と発展を図っていかなければなりません。我が国といたしましては、カンボジアの和平協定を真に実効あるものとするため、その安定と復興の面で国連の活動に積極的に協力するとともに、本年、日本で、カンボジア復興のための国際会議を主催してまいりたいと考えております。

 アジア・太平洋地域の安定と発展のために重要なもう一つの課題は、アジアの友邦としての立場から、十一億余の人口を有する中国の政治と経済の両面にわたる改革、開放に積極的に協力していくことであります。本年は、日中国交正常化二十周年に当たります。これを契機に、日中間の協力関係を、二十一世紀に向けてアジア・太平洋地域の安定や世界の平和に資するものとしていくことが重要であります。私も、このような立場から先般中国を訪問し、二国間関係のみならず、軍備管理・軍縮、地域情勢、地球環境問題等各般にわたって中国の指導層と腹蔵のない意見の交換を行ってきたところであります。

 さらに、民主主義と市場経済に基づく改革を進めつつあるモンゴルや南西アジア諸国に対する支援やこれらの諸国との関係強化にも努めてまいるとともに、豪州ニュー・ジーランドなどとの協力関係を発展させてまいります。

 旧ソ連邦の国々の国内的な混乱を回避し、その民主化、市場経済導入のための努力を、これを支援し、成功に導くことは、国際政治の当面の重要な課題であります。このような認識に立って、私は、各国による対ソ支援を調整するため、去る二十二日よりワシントンで開かれた閣僚会議に出席し、これらの独立国の抱える問題の克服のために、日本が適切なる役割を果たす用意があることを明らかにしてきた次第であります。

 また、我が国は、旧ソ連邦の対外的権利義務を継続するというロシア連邦との間で、法と正義に基づいて一日も早く北方領土問題を解決し、平和条約を締結し、日本とロシアとの関係を長期的に発展させる基礎をつくっていかなければなりません。このような認識に立って政府は、民主化と市場経済の導入を定着させる方向でロシアにおける変革を安定的に促進することと、北方領土問題を解決することという二つの政策目標を達成すべく、最大限の努力を傾注してまいる方針であります。

 東欧諸国は、深刻な経済状況に直面しつつも民主主義と市場経済の導入に努力しており、我が国としても引き続き積極的に支援してまいりたいと存じます。

 中東諸国との関係強化は、我が国にとって引き続き重要な課題であります。それだけに、中東の長期的安定の確保には、日本も重大な関心を持っております。来週モスクワで開かれる中東和平問題に関する閣僚レベルの国際会議にも、国会のお許しを得て、私みずから出席し、日本の考え方を伝えたいと考えております。

 アフリカでは、多くの国が困難な状況の中で民主化や経済構造調整に取り組んでおります。我が国はこのような努力を可能な限り支援してまいりたいと存じます。先般、我が国は、南アフリカとの間で外交関係を再開しましたが、同国に自由で民主的な体制が早期に確立されるよう、働きかけを一層強化してまいります。

 中南米でも、多くの国が民主主義と市場経済に基づく改革を進めており、我が国はこれらの改革を可能な限り支援してまいります。また、我が国は、最近のエルサルバドルの和平合意を歓迎し、今後とも、中米地域の安定のために努力する所存であります。

 第二次世界大戦の反省の上に立って、恒久の世界平和を求めて、国際連合憲章が生まれ、国連が誕生しました。しかし、イデオロギーの異なる超大国の対立によって、その機能は必ずしも目的どおりには動きませんでした。しかし、ソ連邦の崩壊と政策の革命的大転換により、国連はその原点に立ち返って、活動しやすくなったと言うことができましょう。超大国間の軍縮や核不拡散が進んだとしても、残念ながら地域紛争は絶えません。難民、テロ、麻薬、地球環境汚染など、世界は克服しなければならない多くの問題を抱えています。今や、国連は見直され、大きな役割が期待されています。

 このような中で、安全保障理事会の非常任理事国に選ばれた我が国は、国際の平和と安全のため中心的な役割を果たしていくべき立場にあることを肝に銘じつつ、国連外交を強化してまいります。その際、国連が新しい時代に対応できますよう、その機能強化と機構改革を促していく方針であります。

 さらに、国際社会は、地球環境、難民、麻薬、テロなどの国境を越えたさまざまの問題を抱えており、我が国はその解決のために努力していかなければなりません。特に地球環境問題については、本年六月に、気候変動に関する枠組み条約や地球憲章の採択を目指す国連環境開発会議が開催される予定であります。政府といたしましても、公害対策などに関する我が国の経験と技術をも生かしつつ、この問題に対する国際的取り組みにおいて積極的な役割を果たしていく方針であります。

 また、全世界で千七百万人を超すと言われる難民の存在は、開発途上地域の安定に大きな影響を及ぼす深刻な問題であります。我が国としては、カンボジア避難民の帰還の促進を初めとする世界各地の難民問題について、国連難民高等弁務官事務所などの国際機関を中心とする国際協力の一層の推進を図るべく、積極的な役割を果たしていく方針であります。

 これからの外交においては、文化や科学技術の分野における交流の促進を図ることも重要であります。文化交流は、諸国民の間の相互理解を深め、信頼関係を助長し、安定的な国際関係の確立に資するものであります。政府としては、長期的な視野に立った文化交流の拡大に努めていく方針であります。また、世界の文化財の保護や伝統文化の保存等の分野でも積極的な協力を行っていく考えであります。さらに、科学技術の分野では、外国人研究者の受け入れや国際的な各種研究プロジェクトを着実に進めていくことが重要であります。

 以上に申し述べましたように、我が国が国際社会において果たすべき役割は飛躍的に大きくなっております。激動する国際情勢に的確に対応し、機動的な外交活動を展開していくためには、それを支える体制の強化が必要であります。私は、臨時行政改革推進審議会の第一次答申を受けて、国民の皆様の御理解をも得つつ、外交実施体制の強化に努めていく決意であります。

 新しい世界平和の秩序を構築していく上で、我が国は今までになく幅広い役割を果たしていかなければなりません。そのような外交の展開は、内政に直接影響をもたらすものであります。

 それゆえに、現在の国際環境における我が国の立場と果たすべき役割の必要性を国民の皆様が御認識いただけるかどうかが、与野党の外交に対する共通の立場ができるかどうかという分岐点になろうかと私は考えております。

 私は、外交を極力わかりやすいものとして国民各位に訴え、世界とともに生きるしかない我が国の国益を守ってまいる決意であります。

 道は近くにあります。誠意をもって実行していけば、至誠天に通ずといいますが、私はそれをやり遂げる決意であります。何とぞ国民各位の絶大なる御支援をお願い申し上げる次第であります。

 以上であります。