[内閣名] 第70代鈴木(昭和55.7.17〜57.11.27)
[国会回次] 第96回(常会)
[演説者] 渡辺美智雄大蔵大臣
[演説種別] 財政演説
[衆議院演説年月日] 1982/1/25
[参議院演説年月日] 1982/1/25
[全文]
ここに、昭和五十七年度予算の御審議をお願いするに当たり、その大綱を御説明申し上げ、あわせて当面の財政金融政策の基本的な考え方について、私の所信を申し上げたいと存じます。
現在、欧米先進国の多くは、依然として二けたのインフレと、それに近い大量の失業に苦しむ等、経済面できわめて困難な事態に直面いたしております。特に、失業の増大は治安の悪化を招き、国民生活を不安に陥れています。
一方、わが国の経済は、世界のほぼ一割を占めるに至り、また、物価の上昇率は、四%と先進諸国の中で最も鎮静化し、失業率も二%台と最低となっております。
そもそも政治の要諦は、平和で豊かな安定した国民生活を築くことにあります。わが国は、戦後一貫してこの目標を達成すべく、政府、国民が一体となって努力をしてまいりました。
この結果、わが国は、狭隘な国土、乏しい天然資源にもかかわらず、現在の繁栄と安定を築き上げてきたのであります。これは活力ある自由主義経済の所産であり、勤勉で資質の高い国民の英知と努力のたまものであります。
しかしながら、顧みれば、この道のりは必ずしも平たんなものばかりでなく、幾多の試練を受けてきたのであります。
昭和三十年代から四十年代後半に至るまでは、安い石油が自由に手に入るという好条件に支えられて、いわゆる高度経済成長が実現されました。
この豊かな財政のもとで、立ち遅れていると言われていた社会保障政策や文教政策が一斉に取り上げられたのであります。
しかしその反面、物質万能の風潮が一世を風靡し、ややもすれば労せずして国家財政に依存しようという政治的要素が、財政の節度をゆがめてきたことも事実であると思います。たとえば、高度経済成長以前には、国鉄も、健康保健制度も、食管制度も、いずれも収支はほぼ均衡し、健全経営でありました。だが、いまや、いわゆる三K赤字と称して、財政赤字の元凶のごとく言われるに至りました。
なぜでありましょうか。
それは、時代の移り変わりに対応する労苦を怠り、恵まれた財政によって、安易に赤字の穴埋めがなされてきたためであると思います。
だが、いつまでも安い石油の入手による経済繁栄はできなくなりました。いわゆる第一次、第二次の石油危機の到来がそれであります。
昭和四十九年以降高騰し続ける石油価格の中で、世界じゅうがインフレと不況の荒波を受けました。わが国もその例に漏れません。
しかるに、わが国経済はこれに耐え抜いてまいりました。
この間、財政は大きな役割を果たしてまいりました。特に、第一次石油危機により経済が停滞し、税収が落ち込んだ中で、財政は大量の公債発行という非常手段によって財源を作り、景気の回復と国民生活の安定を図ってきたのであります。これにより、わが国経済は、安定成長へ円滑に移行するとともに、福祉元年と言われる昭和四十八年度以降の福祉政策をさらに推し進めることができたのであります。
昭和四十八年度から五十六年度まで厚生年金の月平均支給額が二万二千円から十万七千円に引き上げられた例を挙げるまでもなく、社会保障関係費はこの間約四倍、文教及び科学振興費は約三倍になり、この結果、これらの施策の水準は、欧米先進国に比べても遜色のないものとなりました。一方、この間、税収は二・四倍の伸びにとどまり、その不足額は公債の発行で賄われてまいったのであります。
ところで、公債の発行残高は、昭和五十六年度末で八十三兆円、五十七年度末で九十三兆円程度の巨額に上り、その利払い等に要する経費の昭和五十七年度予算においては、一般会計歳出の一六%程度を占めるに至りました。これは公共事業関係費をも上回り、防衛関係費の約三倍程度にも相当いたします。
将来を展望いたしますと、わが国が世界有数の長生き国となったために、年金や医療の経費は、ますます増加が見込まれる一方、天災やエネルギー問題など、今後の経済情勢の変化にも財政は対応していかなければなりません。しかし、遺憾ながら現状のままでは、財政にはこのような課題を解決するために新たな施策を講ずる余力はありません。
また、公債発行残高の累増は、金利水準の引き下げの阻害要因になるなど、金融政策の円滑な運営に大きな影響を及ぼすに至りました。さらに、大量の公債発行を続けることは、民間資金を圧迫し、経済にインフレ要因をもたらすことにもなりかねません。ことに、インフレは現に世界にその例を見るがごとく、景気を後進させ、失業の増大を招き、国民生活の安定そのものを損なうものであります。したがって、できるだけ早く公債依存の体質から脱却する必要があります。
政府は、このような考え方に基づいて、鋭意公債発行の減額に努力してまいりました。
しかしながら、公債発行の減額は、とりもなおさず財源の減少を意味します。財源が減少すれば、歳出を削減するか、他にかわるべき財源を求めるかのいずれかによるほかはありません。
ところで、歳出はきわめて多岐にわたる経費の積み上げでありまして、個々の受益者にとりましては、その歳出の削減は、月給の引き下げとおなじような苦痛を伴うものであります。特に、高度成長下の惰性で、安易に政府に依存しようとする傾向はいまだに断ち切れられていないため、歳出削減は財政再建の第一歩であるにかかわらず、総論は賛成でも、歳出削減が自分にも及ぶとなれば、各論では強い反対を示すものであります。
一方、他にかわるべき財源を求めることに対しましては、きわめて強い抵抗があるのも事実でございます。過去何年かにわたり、本来、税で負担すべきものまでも公債に依存してきた体質は、ここ一、二年でかわるものではありません。
しかしながら、国の施策により利益を受けるのも、またその費用を負担するのも、同じ国民であります。歳出の削減、たとえば補助金の一層の削減による行政サービスの低下をどこまで受け入れるか、あるいは行政サービスを維持向上させるため国民負担の上昇をどこまで受け入れるかは、まさに国民の選択すべき問題であります。
昭和五十七年度予算に関しましては、何よりも行財政の徹底した合理化、効率化によって財政再建を進めるべきであるとの世論がつとに高まったことにかんがみまして、行財政改革による歳出削減を中心として、予算編成を行うことを基本方針といたしました。
高度成長下における豊かな税収を背景に是認された施策でありましても、安定成長下の限られた財源のもとでは、改めて検討されるべきは当然でございます。また、受益者負担の原則をも取り入れ、国への要求が安易に拡大しないように工夫することも必要であります。総じて、時代の要請に応じて財政構造の合理化を図ることが必要なのであります。
このような観点から、昭和五十七年度の各省庁の予算要求に当たりましては、原則として前年度と一律同額にとどめるという予算編成上画期的な方策、すなわちゼロシーリングという制度を採用いたしました。
また、昨年春、臨時行政調査会が発足をし、七月には、歳出削減等の方策につき答申が出されました。政府といたしましては、この答申を最大限に尊重し、速やかに所要の施策を実施に移すとの基本方針のもとに、当面法律改正を要する事項について、いわゆる行革関連特例法案を昨年の秋臨時国会に提出し、その成立を見たところであります。
昭和五十七年度予算は、このような過程を経て、歳出を極力圧縮し、公債発行額を前年度当初予算よりも一兆八千三百億円減額することにいたしました。
昭和五十七年度予算は、以上申し述べました基本的考え方に立って編成いたしました。
その大要は、おおよそ次のとおりであります。
歳出面におきましては、経費の徹底した節減合理化によりその規模を厳しく抑制したところであります。特に国債費及び地方交付税交付金以外の一般会計を極力圧縮いたしました。
また、補助金等につきましては、昨年八月に決定された行財政改革に関する当面の基本方針の定めるところにより、整理合理化を行いました。
さらに、国家公務員の定員については、新たに策定された第六次定員削減計画に基づきまして、削減を着実に実施する一方、増員は極力これを抑制いたしました。この結果、行政機関等職員につきましては、一千四百三十四人に上る大幅な削減を図ったのであります。
これらの結果、一般会計予算の規模は、前年度当初予算に比べて六・二%増の四十九兆六千八百八億円となっております。また、このうち、一般歳出の規模は、前年度当初予算に対し一・八%増の三十二兆六千二百億円であります。一般会計予算及び一般歳出の伸び率がこのように低い水準にとどまったのは、それぞれ昭和三十一年度及び昭和三十年度以来実に二十数年ぶりのことであります。
歳入面におきましては、経済情勢の変化等により、昭和五十七年度の自然増収が、ゼロシーリング決定の際参考とした財政の中期展望における自然増収よりも約七千億円不足することが見込まれましたので、経済の実態に即し、この不足分を補うため次の措置を講じました。
まず、税外収入において極力増収を図ることといたしました。
次に、なお残る不足分を税制面の見直しにより措置することといたしました。すなわち、税負担の公平確保の重要性等に顧み、租税特別措置につきましては、期限の到来するものを中心に整理合理化を図るとともに、交際費課税を強化することといたしております。また、法人税については、貸し倒れ引当金の法定繰り入れ率の引き下げ及び延納制度における延納割合の縮減等を図ることといたしております。
なお、税の執行につきましては、国民の信頼と協力を得て、今後とも一層適正、公平な税務行政を実現するよう努力してまいる決意であります。
公債につきましては、さきに述べましたように、その発行予定額を前年度当初予算より一兆八千三百億円減額し、十兆四千四百億円といたしました。この減額の内容は、特例公債一兆五千六百十億円、建設公債二千六百九十億円となっております。これにより、特別公債の発行予定額は三兆九千二百四十億円となり、建設公債の発行予定額は六兆五千百六十億円となっております。
減額された公債がすべて特別公債とならなかったのは、主に次のような理由によるものであります。
すなわち、ゼロシーリングのもとでは、予算要求に当たっての経費の取捨選択につきましては、各省庁の自主的努力を尊重してきましたが、各省庁は、建設公債を財源とすることのできる施設費を削除すること等により、要求を取りまとめてまいりました。また、公共事業関係費は、前年度と同額に抑制をいたしましたが、これに充当されることとなっておる特定財源収入の増加が見込まれましたために、財源不足は少なくなり、したがって、建設公債は必然的に減額されるのであります。
こうした事情のもとにあって、特例公債だけで一兆八千三百億円を減額しようとすれば、一般歳出増加額をさらに相当程度圧縮せざるを得ません。これは、財政需要が増大する中で、前年度と同額というゼロシーリングによって要求自体がすでに厳選されているため、事実上、さらに切り込むことは実は非常に困難であり、また、その与える影響も大きいところから、とり得なかったところであります。なお、ゼロシーリングの例外としたエネルギー対策、経済協力費等については、政府の重要施策であり、さらにこれを大幅には削減しなかったものでございます。
いずれにしても、ゼロシーリングは堅持され、昭和五十九年度特例公債脱却との方針は、何ら変わるものではありません。今後ともこれを目指して、最大限の努力を傾注してまいる所存であります。
特例公債の発行につきましては、別途、昭和五十七年度の公債の発行の特例に関する法律案を提出し、御審議をお願いすることといたしております。
財政投融資計画につきましては、厳しい原資事情にかんがみ、民間資金の活用に努めるとともに、対象機関の事業内容、融資対象等を見直すこと等によりまして、規模の抑制を図り、政策的な必要性に即した重点的、効率的な資金配分となるよう努めたところであります。
この結果、昭和五十七年度の財政投融資計画の規模は二十兆二千八百八十八億円となり、前年度当初計画に比べて四・一%の増加となっております。
次に、主要な経費について申し述べます。
まず、中長期的視点から充実を図る必要がある施策については、厳しい財政事情のもとではありますが、重点的に措置することといたしております。すなわち、エネルギー対策費、科学技術振興費及び経済協力費については、その緊要性にかんがみ、充実を図ることといたしております。また、防衛関係費につきましては、わが国が置かれておる国際情勢等を考慮しつつ、「防衛計画の大綱」に基づきまして、防衛力の着実な整備を図ることといたしております。
一方、社会保障関係費、文教費につきましては、真に緊要な施策にはきめ細かに配慮したところであります。特に、社会保障につきましては、老人保健制度の実施、心身障害者対策の充実等、給付の重点化、負担の適正化等を一層進めつつ、各種の福祉施策を着実に推進していくことといたしております。
また、公共事業関係費につきましては、引き続き前年度同額にとどめておりますが、特に住宅対策については、住宅建設融資枠の拡大など、施策の充実に努めております。
なお、地方財政に関しましては、その適正な運営に支障が生じないよう配慮することとしておりますが、地方公共団体に対しましても、節度のある財政運営を図るよう要請をいたしております。
この機会に、さきに提出いたしました昭和五十六年度補正予算について一言申し述べます。
歳出につきましては、災害復旧等事業費、農業保険費、給与改善費など、当初予算編成後に生じた事由に基づきまして、特に緊要となった事項について措置を講ずることといたしました。
歳出の追加額に必要な財源の捻出につきましては、現下の厳しい財政事情のもとにおいてきわめて苦慮したところであります。
すなわち、緊縮予算の中にあって既定経費をさらに節減するとともに、税外収入の増加等を図ることによって可能な限りの財源を捻出し、これをもって給与改善に要する経費その他、通常の追加財政需要を賄うことといたしました。しかしながら、昭和五十六年の史上最大規模の災害については、緊急にその早期復旧を図る必要があり、これに要する経費につきましては、公債の増発により、その財源を確保せざるを得ませんでした。
次に、本年度の租税及び印紙収入につきましては、物価の予想以上の安定等により、価格や取引金額に応じて課税される物品税や印紙収入が落ち込むなど、四千億円程度の減収が避けられない見通しとなりました。このような予期せざる経済情勢の変化に伴う歳入不足額につきましては、経済の実態に合わせて補正予算において補てんをすることが適当と考え、特例公債を追加発行することといたしました。
昭和五十六年度予算は、財政再建元年予算として二兆円の公債発行減額を目標に挑戦いたしましたが、経済事情の変化によりこれを一部割愛し、完全に達成できなかったことは残念なことでございます。しかし、その一方、これは、予想を上回る物価の鎮静化という国民生活の安定にとって好ましい状態の出現等の結果でもあり、やむを得ない措置であることを御理解いただきたいと存じます。
以上によりまして、昭和五十六年度一般会計補正後予算の総額は、歳入歳出とも、当初予算に対し三千三百七十二億円増加して、四十七兆一千二百五十四億円となっております。
以上、昭和五十七年度予算及び昭和五十六年度補正予算の大綱について御説明いたしました。
次に、当面の政策運営の基本的考え方について申し述べます。
最近の内外経済情勢のもとにおきましては、私は、さきに述べた財政再建に加え、特に次の二点を基本的課題として今後の経済運営に当たってまいりたいと考えております。
まず第一は、引き続き物価の安定を基本とし、国内民間需要を中心とした景気の着実な回復を促進することであります。
物価は落ちついた動きを示しております。物価の安定は国民生活安定の基本であり、今後とも財政金融政策を通じ物価の安定に努力してまいる所存であります。
景気につきましては、内需の回復の足取りは緩慢でありますが、今後は次第に改善し、明るさが増してくるものと期待されます。昭和五十七年度予算におきましては、厳しい財政事情のもとではありますが、住宅建設の促進を図るため、住宅金融公庫の融資枠の拡大、税制上の措置等の施策を講じております。公共投資につきましても、財源の効率的配分、地方単独事業の拡充、民間資金の活用等により事業量の確保に努めております。
また、金融施策につきましては、一昨年八月以降一連の記入緩和措置を講じてまいりました。昨年十二月には、第四次の公定歩合引き下げ措置がとられ、これを受けて預貯金金利を含む金利水準全般の引き下げを図ったところであります。
今後の金融施策の運営に当たりましては、物価、景気、海外経済情勢など経済の動向を総合的に勘案して、引き続き適切かつ機動的に対処してまいりたいと考えております。
第二は、調和ある対外経済関係を促進し、世界経済の発展に貢献していくことであります。
世界経済は、貿易のみならず、資本交流等を通じ、ますます相互依存度が強まってきつつあります。その中にありまして、わが国経常収支は昨年四月以降黒字傾向にあり、これを背景として、欧米諸国から貿易不均衡の是正を求める声も高まっております。世界経済の活力の源泉は自由貿易にあり、わが国としても積極的にこれを推進することによって、世界経済の調和ある発展に貢献していかなければなりません。
かかる観点から、政府は、先般、市場開放対策、輸入促進対策、輸出対策等を内容とする対外経済対策を決定したところであります。
特に関税につきましては、わが国市場の開放に資するとの見地から、いち早く対応し、その引き下げを図ることを決定をいたしました。すなわち、東京ラウンドの合意にのっとった関税の段階的引き下げ措置を来年度に予定した分に加えて、さらに、一律に例外なく二年分繰り上げて実施するなどの前向きの改正措置を講ずることといたしております。
また、原油代金の産油国への偏在が世界経済をゆがめていることにかんがみ、世界貿易を円滑ならしめるため、オイルマネーの還流について、わが国は引き続き積極的にその役割りを果たしていくことが必要であると存じます。
さらに、開発途上国の経済発展のため、自助努力を支援することは、これらの国々の国民福祉の向上と民生の安定に寄与するのみならず、世界経済全体の均衡のとれた成長と安定を確保するために重要であります。このような観点から、また、国際責任の分担という見地からも、厳しい財政事情にもかかわらず、経済協力については、着実に拡充を図ることとし、あわせて、その効率的実施に十分配意し、政府開発援助の中期目標の達成に引き続き努めることといたします。
世界経済の円滑な発展のためには、国際通貨の安定は欠くことのできないものであります。円相場は、わが国経済の良好な基礎的諸条件を反映して、基調といたしましては、円高方向に動くことが期待されております。今後、関係諸国とも密接な連絡を保ちつつ、円相場の安定に努めてまいりたいと考えます。
わが国は、戦後幾多の試練をみごとに克服し、現在の経済的繁栄と安定を築き上げてまいりました。この繁栄し、安定した経済社会こそ、われわれが子孫に対し誇りを持って引き継ぐことができる貴重な財産でもあります。
このような繁栄と安定は、世界経済の中でひとりわが国が孤立してできるものではありません。わが国は資源の乏しい国であります。同時に、わが国は世界の国民総生産の一割を占める経済力を持つようになった国でもあります。わが国の動きは、世界経済に少なからぬ影響を与えます。
いまや、世界経済を離れて日本経済は存在しないということを認識し、わが国にふさわしい役割りと責任を積極的に果たしていくことが肝要であると考えます。
また、将来にわたる安定的繁栄にとってゆるがせにできない問題として、財政再建の問題があります。
財政再建の道のりは厳しく、また困難なものではありますが、すでに財政再建に向かって軌道の上を着実に歩んでいるのであります。一方、経済は生き物でありまして、上り坂もあれば下り坂もあります。雨の日も、風の日もあります。したがって、その対応には緩急もありましょうが、苦痛に耐え、忍耐強く、財政再建の歩みを進めなければなりません。それがわれわれの使命であり、財政を担当する私の責任でもあります。
かかる大任を肝に銘じ、昭和五十九年度特例公債脱却を目指し、引き続き財政の再建に全力を傾注する決意であります。
国民各位の御理解と御協力を切にお願い申し上げる次第でございます。