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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[内閣名] 第84代小渕内閣(平成10.7.30〜平成12.4.5)
[国会回次] 第146回(常会)
[演説者] 宮沢喜一大蔵大臣
[演説種別] 財政演説
[衆議院演説年月日] 1999/11/25
[参議院演説年月日] 1999/11/25
[全文]

 今般、さきに決定せられました経済新生対策を受けて、平成十一年度補正予算を提出することとなりました。その御審議をお願いするに当たり、当面の財政金融政策の基本的考え方について所信を申し上げますとともに、補正予算の大要について御説明いたします。

 まず、最近の経済情勢とさきに決定されました経済新生対策について申し述べます。

 我が国経済の現状を概観いたしますと、各種の政策効果の浸透に加え、アジア経済の回復などの影響もあって、緩やかな改善が続いており、景気は最悪期を脱しているものと思われます。しかしながら、所得が低迷し、殊に企業のリストラが雇用に与える影響等を考えますと、消費が持続的に回復する状況には至っておらず、また企業の設備投資につきましても、在庫水準の低下は見られるものの、遊休過剰設備の処理が十分に進まない中で、積極的な投資が見られるまでにはまだ時間を要すると思われるなど、経済の自律的回復のかぎを握る民需の動向は、依然として弱い状況であります。

 政府は、このような状況のもと、公需から民需への円滑なバトンタッチを行い、民需中心の本格的な景気回復を目指すとともに、二十一世紀の新たな発展基盤を確立するため、総事業規模約十七兆円、さらに介護対策を含めれば十八兆円程度の経済新生対策を決定いたしました。

 本対策においては、まず、経済の自律的回復に向けて、民間部門のダイナミズムの発揮を促すことが重要であるとの認識のもと、多様で活力のある中小企業、ベンチャー企業の振興や、ミレニアムプロジェクト等の戦略的、重点的な技術開発、成長分野や事業活動の基盤に係る規制緩和、制度改革等に取り組むほか、雇用の創出、安定に資する雇用対策の実施により、雇用不安の払拭を図ることとしております。

 また、二十一世紀の新たな発展基盤を築き、未来に向け経済を新生させるとの基本的考え方に立ち、生活基盤、基幹的なネットワークインフラ等を戦略的、重点的に整備するとともに、地域経済の動向にも十分配慮しつつ、地域の活性化に役立つ社会資本整備や、災害対策を推進することとしております。

 金融につきましては、日本銀行において、金融・為替市場の動向にも留意して適切かつ機動的な金融政策の運営が行われているところであります。政府としても、これまで景気の回復基盤を固めるため、金融機関に対して資本増強を行うことなどにより、金融システム安定化策を講じてまいりました。また、中小・中堅企業等の資金需要に的確にこたえ得るよう、政府系金融機関の融資等の資金量を確保するとともに信用保証制度を強化して、信用収縮や貸し渋りの防止に努めてまいりました。

 今回の対策におきましても、こうした取り組みを一層進めるとともに、証券市場の改革や、不動産の証券化を初めとする資産の流動化、住宅投資の促進を図るための住宅金融対策等の諸施策を実施することとしております。

 税制につきましては、中小企業、ベンチャー企業の支援、民間投資の促進といった観点から真に有効かつ適切な措置について検討を行い、結論を得ることといたしております。

 なお、財政構造改革につきましては、我が国経済が本格的な回復軌道に乗った段階において、二十一世紀の我が国経済社会のあるべき姿を展望しつつ、根本的な視点に立って必要な措置を講じてまいりたいと考えております。

 次に、今般提出いたしました平成十一年度補正予算の大要について御説明いたしま

す。

 平成十一年度補正予算については、歳出面において、経済新生対策関連として社会資本整備費三兆五千億円、中小企業等金融対策費七千七百三十三億円、住宅金融対策費二千一億円、雇用対策費千九百十七億円、金融システム安定化対策費九千二百七十九億円を計上するとともに、介護対策費九千百十億円を計上することとしております。

 このほか、義務的経費の追加等特に緊要となったやむを得ない事項等について措置するとともに、既定経費の節減等を行うこととしております。

 他方、歳入面におきましては、租税等について最近までの収入実績等を勘案して一兆四千四百十億円の減収を見込むとともに、前年度の決算上の純剰余金の残額五千八百四十九億円を計上し、その他収入の増加を見込んでもなお不足する歳入について、やむを得ざる措置として七兆五千六百六十億円の公債の追加発行を行うこととしております。

 なお、追加発行する公債のうち、三兆八千二百六十億円が建設公債、三兆七千四百億円が特例公債となっております。今回の措置により、平成十一年度の公債発行額は三十八兆六千百六十億円となり、公債依存度は四三・四%となります。

 これらの結果、平成十一年度一般会計第二次補正後予算の総額は、第一次補正後予算に対し歳入歳出とも六兆七千八百九十億円増加し、八十九兆百八十九億円となります。

 以上の一般会計補正等に関連して、特別会計予算及び政府関係機関予算についても所要の補正を行うこととしております。

 財政投融資計画につきましては、経済新生対策を実施するため、この補正予算において、日本政策投資銀行、日本道路公団等十三機関に対し、総額三千三百十五億円を追加することとしております。

 以上、平成十一年度補正予算の大要について御説明申し上げました。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。