[文書名] 関税及び貿易に関する一般協定(1947年10月30日)
(この文書は1952年5月における修正を受けて外務省が翻訳し1952年7月1日に公表されたものである。)
オーストラリア連邦、ベルギー王国、ブラジル合衆国、ビルマ国、カナダ、セイロン、チリ共和国、中華民国、キュバ共和国、チェッコスロヴァキア共和国、フランス共和国、インド、レバノン国、ルクセンブルグ大公国、オランダ王国、ニュージー・ランド、ノールウェー王国、パキスタン、南ローデシア、シリア国、南アフリカ連邦、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国並びにアメリカ合衆国の政府は、
貿易及び経済的努力の分野における関係が、生活水準を高め、完全雇用と高度の且つ着実に増加する実質所得及び有効需要とを確保し、世界の資源の完全な利用を発展させ、且つ、物品の生産及び交換を拡大する目的をもつて導かれるべきであることを承認し、
関税及び他の貿易障害の実質的な低減及び国際通商における差別待遇の除去をめざした相互的及び互恵的な取極を結ぶことによつて、これら目標に寄与することを希望し、
代表者を通じて次のとおり協定した。
第一部
第一条 一般的最恵国待遇
1 関税及びいずれかの種類の課金で、輸入若しくは輸出に対して若しくはこれらに関連して課せられ又は輸入若しくは輸出に対する支払手段の国際的振替に対して課せられるものに関して、このような関税及び課金を徴収する方法に関して、輸入及び輸出に関連するすべての規則及び手続に関して並びに第三条の第二項及び第四項の範囲内のすべての事項に関しては、締約国が他の国の原産の産品又はこれに仕向けられる産品に対して与える利益、特典、特権又は免除は、他のすべての締約国の領域の原産の産品又はこれに仕向けられる同種の産品に、即時且つ無条件に与えなければならない。
2 この条の第一項の規定は、輸入に対する関税又は課金に関する特恵でこの条の第四項に規定する限度をこえず且つ次の各項に該当するものの除去を要求するものではない。
(a)附属書Aに列記した領域の二以上の間にのみ有効な特恵。但し、この附属書に定めた条件に従うことを条件とする。
(b)千九百三十九年七月一日共通の主権又は保護関係若しくは宗主権関係によつて結合されていた地域であつて附属書A、C及びDに列記したものの二以上の間にのみ有効な特恵。但し、この附属書に定めた条件に従うことを条件とする。
(c)アメリカ合衆国とキュバ共和国との間にのみ有効な特恵
(d)附属書E及びFに列記した隣接国の間にのみ有効な特恵
3 第一項の規定は、かつてオットマン帝国の一部分で千九百二十三年七月二十四日に同帝国から分離した諸国の間の特恵には適用しない。但し、この特恵は、第二十九条の第一項に照らして、この点について適用されるべき第二十五条第五項(a)に基いて承認される。
4 この条の第二項に基いて特恵を許与された産品に対する特恵の限度は、この協定に附属する該当の関税表に特恵の最高限度が特定されていない場合には、次のものをこえてはならない。
(a)この関税表に記載した産品に対する関税又は課金については、その関税表に規定した最恵国税率と特恵税率の差
特恵税率を規定していない場合は、特恵税率は、この項の適用上、千九百四十七年四月十日に有効であつたものとする。また、最恵国税率を規定していない場合は、その限度は、最恵国税率と特恵税率との間に千九百四十七年四月十日に存在した差をこえてはならない。
(b)該当の関税表に記載してない産品に対する関税又は課金については、最恵国税率と特恵税率との間に千九百四十七年四月十日に存在した差
附属書Gに掲げた締約国の場合には、この項の(a)及び(b)に掲げた千九百四十七年四月十日の日付は、その附属書に定めたそれぞれの日付に置き換える。
第二条 関税譲許表
1 (a)各締約国は、この協定に附属する該当の関税表の該当の部に規定した待遇よりも不利でない待遇を他の締約国の通商に与えなければならない。
(b)一締約国に関する関税表の第一部に記載した産品で他の締約国の領域の産品であるものは、その関税表が関係する領域への輸入に当つて、その関税表に規定した条項、条件又は制限に従うことを条件としてその関税表に規定した関税をこえる普通の関税を免除されなければならない。これらの産品は、また、輸入に対して若しくは輸入に関連して課せられる他のすべての関税又はいづれかの種類の課金で、この協定の日付の日に課せられるところをこえるもの、又はこの日に輸入領域において有効な法令によつてその後に課することを直接に且つ義務的に要求されるところをこえるものを免除されなければならない。
(c)一締約国に関する関税表の第二部に記載した産品でその関税表が関係する領域への輸入に当つて特恵的待遇を受ける資格を第一条に基き与えられた領域の産品であるものは、この領域への輸入に当り、その関税表に定めた条項、条件又は制限に従うことを条件として、この関税表の第二部に規定した関税をこえる普通の関税を免除されなければならない。これらの産品は、また、輸入に対して若しくは輸入に関連して課せられる他のすべての関税又はいずれかの種類の課金で、この協定の日付の日に課せられるところをこえるもの、又はその日に輸入領域において有効な法令によつてその後課するところを直接に且つ義務的に要求されるところをこえるものを免除されなければならない。この条のいかなる規定も、特恵税率で輸入される貨物の適格条件については、締約国がこの協定の日付の日に存在した要件を維持することを妨げるものではない。
2 この条のいかなる規定も、締約国が産品の輸入に当つて次のものをいつでも課することを妨げるものではない。
(a)同種の国内産品に関して又は輸入産品の全部若しくは一部がそれから製造され若しくは生産されている物品に関して、第三条第二項の規定に合致して課せられる内国税に相等する課金
(b)第六条の規定に合致して適用されるダンピング防止税又は相殺関税
(c)提供された役務の費用に相応する料金又は他の課金
3 締約国は、関税を賦課される価額の決定の方法又は通貨交換の方法を、この協定に附属する該当の関税表に規定した譲許の価値を損ずるように変更してはならない。
4 この協定に附属する該当の関税表に記載した産品の輸入の独占を、正式に又は事実上締約国が設立し、維持し又は認可するときは、この独占を、その関税表に規定した場合又は最初に譲許を交渉した当事国の間に別段の合意がある場合を除き、平均してこの関税表に規定した保護の量をこえる保護を与えるように運用してはならない。この項の規定は、この協定の他の規定によつて許されているいかなる援助形式も、締約国が国内生産者に対して使用することを制限するものではない。
5 締約国は、この協定に附属する該当の関税表に規定した譲許によつて意図されていると信ずる待遇を一産品が他の締約国から受けていないと認めるときは、この事項について直接にその締約国の注意を喚起しなければならない。後者が、意図された待遇は第一の締約国が要求した待遇である事に同意するが、この協定に意図された待遇を許与するようにその産品を分類することはこの締約国の関税法においてはできないと裁判所又は他の適当な当局が裁定したためにその待遇を与えることができないと宣言するときは、この二締約国は、実質的に利害関係をもつ他の締約国とともにこの事項を補償的に調整する目的ですみやかに更に交渉に入らなければならない。
6 (a)国際通貨基金の加盟国である締約国に関する関税表に含まれる従量税及び従量課金並びにこれらの締約国が維持する従量税及び従量課金における特恵の限度は、この協定の日付の日に基金が受諾し又は暫定的に承認した平価における該当の通貨で表わす。従つて、この平価が国際通貨基金規約に合致して二〇パーセントをこえて引き下げられる場合は、この従量税及び従量課金並びに特恵の限度は、この引下げを考慮して調整することができる。但し、締約国団(すなわち、第二十五条に規定しているように共同して行動する締約国)が、この調整の必要又は緊急性に影響するすべての要素を考慮に入れて、この調整が該当の関税表又はこの協定の他の場所に規定している譲許の価値を損じないものであることに同意することを条件とする。
(b)同様の規定は、基金の加盟国でない締約国に対しては、その締約国が基金の加盟国となる日又は第十五条に従つて特別の為替協定を締結する日から適用しなければならない。
7 この協定に附属する関税表は、ここにこの協定の第一部の不可分の一部とする。
第二部
第三条 内国の課税及び規則に関する内国民待遇
1 締約国は、内国税及び他の内国課金と国内における産品の販売、販売のための提供、購買、輸送、分配又は使用に影響を及ぼす法律、規則及び要件と特定の数量又は割合による産品の混合、加工又は使用を要求する内国の数量的規則とを、国内生産に保護を与えることとなるように輸入産品又は内国産品に適用してはならないことを承認する。
2 締約国の領域の産品で他の締約国の領域に輸入されたものには、同種の内国産品に直接又は間接に適用されるものをこえるいかなる種類の内国税又は他の内国課金も、直接にも間接にも課してはならない。更に、締約国は、内国税又は他の内国課金を、他の方法によつて、第一項に定めた原則に反する様式で輸入産品又は内国産品に適用してはならない。
3 現存の内国税で、第二項の規定には合致しないが、それが課せられている産品に対する輸入税を固定している千九百四十七年四月十日に有効であつた貿易協定に基いて特に許容されているものについては、これを課している締約国は、この貿易協定の義務からの解除を得て、この内国税による保護を撤廃する代償として必要な限度においてこの関税の引上けを行いうる時期まで、この内国税に第二項の規定を適用することを延期することができる。
4 締約国の領域の産品で他の締約国の領域に輸入されたものには、その国内における販売、販売のための提供、購買、輸送、分配又は使用に影響を及ぼすすべての法律、規則及び要件について、国内原産の同種産品に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えなければならない。この項の規定は、輸送手段の経済的運用にのみ基礎を置き産品の国籍に基礎を置かない差等付内国輸送料金の適用を妨げない。
5 締約国は、特定の数量又は割合による産品の混合、加工又は使用に関連する内国の数量的規則で、その適用を受ける産品の特定の数量又は割合を国内の供給源から供給すべきことを直接又は間接に要求するものを設定し又は維持してはならない。更に、締約国は、内国の数量的規則を、他の方法によつて、第一項に定めた原則に反する様式で適用してはならない。
6 第五項の規定は、千九百三十九年七月一日、千九百四十七年四月十日又は千九百四十八年三月二十四日のうち締約国の選択するいずれかの日にその締約国の領域において有効であつた内国の数量的規則に適してはならない。但し、第五項の規定に反するこの規則は、輸入に対して障害となるように修正してはならず、また、交渉上関税として取扱わなければならない。
7 特定の数量又は割合による産品の混合、加工又は使用に関連する内国の数量的規則は、数量又は割合を国外の供給源の間に配分するような様式で適用してはならない。
8 (a)この条の規定は、政府用購入産品で商業的再販売ために又は商業的販売に向ける貨物の生産に使用するために購入するのではないものの政府機関による調達を規律する法律、規則又は要件には適用しない。
(b)この条の規定は、この条の規定に合致して適用される内国税又は内国課金の収入から行われる国内生産者のみに対する交付金及び政府の内国産品購入の形式で行われる補助金を含めて、国内生産者のみに対する補助金の交付を妨げない。
9 締約国は、最高価格による国内価格統制措置が、この条の他の規定に合致していても、輸入産品を供給する締約国の利益に有害な影響を及ぼしうることを承認する。従つて、この措置を適用している締約国は、有害な影響をできるだけ避けるために、輸出締約国の利益を考慮しなければならない。
10 この条の規定は、締約国が、露出映画フィルムに関し且つ第四条の要件に合致する内国の数量的規則を設定し又は維持することを妨げない。
第四条 露出映画フィルムに関する特別規定
締約国が露出映画フィルムに関する内国の数量的規則を設定し又は維持するときは、この規則は、次の要件に従う映写時間割当の形式をとらなければならない。
(a)映写時間割当は、一年以上の特定の期間に原産地にかかわりなくすべてのフィルムの商業的上映のために実際に利用される総映写時間のうちの特定の最少限度の割合の時間について、内国原産映画フィルムの上映を要求することができる。また、映写時間割当は、各劇場当りの年間映写時間又はこれに相当するものを基礎として計算しなければならない。
(b)映写時間割当に基いて内国原産フィルムのために留保されていない映写時間は、内国原産フィルムのために留保された時間のうちから行政的措置によつて解除された時間を含めて、正式にも又は事実上も供給源の間に割り当ててはならない。
(c)この条の(b)の規定にかかわらず締約国は、この条の(a)の要件に従う映写時間割当でこの映写時間割当を課しているこの締約国以外の特定国の原産のフィルムのために映写時間の最少限度の割合を留保するものを、維持することができる。但し、映写時間のこの最少限度の割合は、千九百四十七年四月十日現在の水準をこえて増加してはならない。
(d)映写時間割当は、その制限、緩和又は除去のための交渉の目的としなければならない。
第五条 通過の自由
1 貨物(手荷物を含む。)並びに船舶及び他の輸送手段は、締約国の領域を横切るそれらの通過が積換、倉入れ、荷分け又は輸送方法の変更を件うかどうかにかかわらず、この通過国の国境外から始まり国境外に終る全行程の一部分にすぎない場合には、この領域を通過中であるとみなす。この種の運輸は、この条において「通過運輸」という。
2 他の締約国の領域に向う又はこれから来る通過運輸に対しては、国際通過に最も便利な経路によつて各締約国の領域を通過する自由を与えなければならない。船舶の国籍、原産地、出発地、入国地、出国地若しくは到達地に基いて、又は、貨物、船舶若しくは他の輸送手段の所有に関する事情に基いて差別を設けてはならない。
3 締約国は、自国領域を通る通過運輸を所定の税関に申告すべきことを要求することはできるが、適用できる関税上の法律及び規則に従うことを怠つた場合を除き、他の締約国の領域から来る又はこれに向う通過運輸を不必要に遅延させ又は制限してはならず、また、輸送料金又は通過に伴う行政的経費又は提供された役務の費用に相応する料金を除き、関税及びすべての通過税又は通過に関して課する他の料金を免除しなければならない。
4 締約国が他の締約国の領域に向う又はこれから来る通過運輸に対して課するすべての料金及び規則は、その運輸の条件を考慮して、合理的なものでなければならない。
5 通過に関連するすべての料金、規則及び手続に関しては、各締約国は、他の締約国の領域に向う又はこれから来る通過運輸に対して、第三国に向う又はこれから来る通過運輸に与える待遇よりも不利でない待遇を与えなければならない。
6 各締約国は、他の締約国の領域を通過して来た産品に対しては、この産品がこの領域を通過せずに原産地から仕向地へ輸送された場合に与える待遇よりも不利でない待遇を与えなければならない。但し、締約国は、直接輸送が特恵税率による輸入の資格を与えられるための必須条件となつている貨物、又は直接輸送がその締約国の税関における特定の評価方法と関連している貨物に関して、この協定の日付の日に存する直接輸送の条件を維持することができる。
7 この条の規定は、航空機の通過航空に対しては適用しないが、貨物(手荷物を含む。)の航空通過には適用する。
第六条 ダンピング防止税及び相殺関税
1 締約国は、一国の産品をその正常な価値に比し低く他国の商業へ導入するダンピングが締約国における既設の産業に対し実質的な損害を与え若しくは与えるおそれがあるか又は国内産業の樹立を実質的に遅延させるときは、ダンピングを非難すべきものであることを承認する。この条の適用上、一国から他国へ輸出する産品の価格が次のいずれかに比し低いときは、その産品は、正常な価値に比し低く輸入国の商業へ導入されていると認める。
(a)輸出国内の消費に向けられる同種産品の通常の商取引における比較可能の価格 又は
(b)このような国内価格がない場合には、
(一)第三国に輸出される同種産品の通常の商取引における最高の比較可能の価格 若しくは
(二)原産国におけるその産品の生産費に販売経費及び利潤のための合理的な附加額を加えた価額
販売条件の差異、課税上の差異及び価格の比較に影響を及ぼす他の差異に対しては、各場合について妥当な考慮を払わなければならない。
2 ダンピングを相殺し又は防止するため、締約国は、ダンピングされた産品に対して、この産品のダンピングの限度をこえない金額のダンピング防止税を課することができる。この条の適用上、ダンピングの限度とは、第一項の規定に従つて決定する価格差をいう。
3 締約国の領域の産品で他の締約国の領域に輸入されるものに対しては、特定産品の輸送に対する特別の補助金を含み、原産国又は輪出国においてこの製品の製造、生産又は輸出に対して直接又は間接に与えられたことが確実な奨励金又は補助金の推定額に等しい金額をこえて、相殺関税を課していならない{前5文字ママ}。「相殺関税」という語は、商品の製造、生産又は輸出に対して直接又は間接に与えられた奨励金を相殺する目的で課する関税をいう。
4 締約国の領域の産品で他の締約国の領域に輸入されるものに対しては、原産国内若しくは輸出国内の消費に向けられる同種産品が負担する税金若しくは租税の免除を理由として、又はこの税金若しくは租税の払いもどしを理由として、ダンビング防止税又は相殺関税を課してはならない。
5 締約国の領域の産品で他の締約国の領域に輸入されるものに対しては、ダンビング又は輸出補助金交付から生ずる同一の事態を償うためにダンピング防止税及び相殺関税を併課してはならない。
6 締約国は、ダンピング又は補助金交付の影響がそれぞれ既設の国内産業に対して実質的な損害を与え若しくは与えるおそれがあり、又は国内産業の樹立を実質的に遅延させるものであると決定する場合でなければ、他の締約国の領域の産品の輸入に対してダンピング防止税又は相殺関税を課してはならない。産品の輸入国である締約国の領域に当該産品を輸出する他の締約国の領域の産業に実質的な損害を与え又は与えるおそれがあるダンピング又は補助金交付を相殺する目的で、締約国が当該産品の輸入にダンピング防止税又は相殺関税を課することができるように、締約国団は、この項の要件を放棄することができる。
7 一次的商品についてその輸出価格の変動に関係なくその国内価格又は国内生産者の所得を安定させるための制度で、国内市場において購買者が同種商品について負担する比較可能の価格に比し低い価格でその商品を輸出のために販売することになるものは、当該商品に実質的な利害関係をもつ締約国間の協議によつて次のことが決定されるときは、第六項の意義における実質的な損害を与えることにはならないものと認める。
(a)その制度が、国内市場において購買者が同種商品について負担する比較可能の価格に比し高い価格で、その商品を輸出のために販売する結果を生じたこともあること。及び
(b)その制度が、生産の実効的な調節又は他の理由により、輸出を不当に促進することのないように他の点で他の締約国の利益に重大な損害を与えることのないように運用されていること。
第七条 関税上の評価
1 締約国は、この条の次の諸項に定める評価の一般原則が妥当であることを承認する。また、締約国は、価額に基くか若しくはなんらかの様式で価額よつて規律される関税又は輸入及び輸出に対する他の課金若しくは制限の適用を受けるすべての産品について、実行可能な限りすみやかな日に、これらの原則を実施することを約束する。更に、締約国は、他の締約国の要請があつたときは、関税上の価額に関する法律又は規則の運用を、これらの原則に照らして検討しなければならない。締約国団は、締約国がこの条の規定に従つて執つた措置に関する報告をこの締約国に要請することができる。
2(a)輸入商品の関税上の価額は、関税を課せられるその輸入商品又は同種商品の実際価額を基礎としなければならず、内国原産の商品の価額又は任意の若しくは架空の価額を基礎としてはならない。
(b)「実際価額」は、輸入国の法令が定める時及び場所において且つ通常の商取引において、その商品又は同種商品が完全な競争の条件の下に販売され又は販売のために提供される価格でなければならない。その商品又は同種商品の価格が特定の取引における数量によつて支配される限りにおいては、考慮さるべき価格は、(一)比較可能の数量か、又は(二)輸出国と輸入国との間の商取引と輸入国との間の商取引においてその商品の一層大きな分量の販売が行われる場合の分量の販売が行われる場合の数量よりも輸入業者にとつて不利でない数量かのいずれかに一律に関連されなければならない。
(c)実際価額をこの項の(b)に従つて確定し得ないときは、関税上の価額は、この価額の確認しうる最も近い相当額を基礎としなければならない。
3 輸入産品の関税上の価額は、原産国又は輸出国内において適用のある内国課税で、その輸入産品が免除されたもの又は払いもどしによつて軽減されたもの若もくは{前4文字ママ}軽減されるであろうものの金額を含んではならない。
4(a)この項に別段の定めがある場合を除き、この条の第二項の適用上、締約国が他国の通貨で表示された価格を自国通貨に換算する必要がある場合には、使用されるべき換算為替相場は、国際通貨基金規約に従つて、又はこの協定の第十五条に基いて締結される特別為替協定によつて設定される当該通貨の平価を基礎としなければならない。
(b)この平価が設定されていない場合には、換算相場は、商取引におけるその通貨の現行価値を実効的に反映したものでなければならない。
(c)締約国団は、国際通貨基金規約に合致して複数為替相場が維持されている外国通貨について締約国の行う換算を規律する規則を、国際通貨基金との合意をもつて作成しなければならない。締約国は、この外国通貨について、この条の第二項の適用上、平価を基礎として使用する代りにこの規則を適用することができる。締約国団がこの規則を採用するまでは、締約国は、この外国通貨に関して、この条の第二項の適用上、商取引におけるこの外国通貨の価値を実効的に反映させるための換算規則を使用することができる。
(d)この条の規定は、この協定の日付の日に締約国の領域内において適用のある関税上の通貨換算方法の変更が支払われるべき関税の金額を一般に増加する効果をもつ場合には、この変更を要求するものと解釈してはならない。
5 価額に基くか若しくはなんらかの様式で価額によつて規律される関税又は他の課金若しくは制限の適用を受ける産品の価額を決定する基礎及び方法は、安定したものでなければならず、また、貿易業者が相当の確実性をもつて関税上の価額を推計できるように充分に公表しなければならない。
第八条 輸入及び輸出に関連する手続
1 締約国は、税以外の手数料及び課金で輸入若しくは輸出に対して又はこれに関連して政府当局が課するものが、金額において提供された役務の概算の費用に限定されるべきであること、及び国内産品に対する間接的保護又は財政目的のための輸入若しくは輸出に対する課税となつてはならないことを承認する。締約国は、また、このような手数料及び課金の数及び種類を減少し、輸入及び輸出の手続の適用範囲及び複雑性を減じ、並びに輸入及び輸出の所要書類を減少し及び簡易化する必要を承認する。
2 締約国は、実行可能な限りすみやかな日に、この条の第一項の原則及び目標に従う措置を執らなければならない。更に、締約国は、他の締約国の要請があつたときは、これらの原則に照らして、あらゆる法律及び規則の適用を検討しなければならない。
3 締約国は、税関の規則又は手続上の要件の軽微な違反に対して重い罰を課してはならない。特に、容易に修正ができ且つ明らかに不正の意図又は重大な怠慢によるものでない税関書類中の脱落又は誤記についての罰は、単に警告として役立つに必要なものをこえてはならない。
4 この条の規定は、次のものに関する手数料、課金、手続及び要件を含めて、輸入及び輸出に関連して政府当局が課する手数料、課金、手続及び要件に対して適用しなければならない。
(a)領事送状及び領事証明書のような領事事務
(b)数量的制限
(c)許可
(d)為替管理
(e)統計事務
(f)書類、書類交付及び証明
(g)分析及び検査 並びに
(h)検疫、衛生検査及び消毒
第九条 原産地表示
1 各締約国は、表示の要件に関して、他の締約国の領域の産品に対して、第三国の同種産品に与える待遇よりも不利でない待遇を与えなければならない。
2 行政上実行可能なときはいつでも、締約国は、所要の原産地表示を輸入の時に付けることを許可しなければならない。
3 輸入産品の表示に関する締約国の法律及び規則は、産品に重大な損害を与えることなく、その価値を実費的に低減することなく、又はその費用を不当に増加することなく従いうるようなものでなくてはならない。
4 輸入前に表示要件に従うことを怠つたことに対しては、表示の訂正が不当に遅延し、虚偽の表示を付け、又は所要の表示を故意に省いたかの場合でなければ、締約国は、一般原則として、特別税又は罰を課してはならない。
5 締約国は、一締約国の領域の産品の特別な地域的又は地理的名称で当該国の立法によつて保護されているものを侵害するように産品の真の原産地を誤認させる商号の使用を防止する目的で、相互に協力しなければならない。各締約国は、前段に定めた約束を他の締約国から自国に対して通知済の産品の名称に対して適用することに関してその締約国が行う要請又は申入れについて、充分な且つ好意的な考慮を与えなければならない。
第十条 貿易規則の公表及び施行
1 締約国が実施する一般に適用される法律、規則、司法上の規定及び行政上の決定であつて、産品の関税上の分類若しくは評価に関し、又は関税、税金若しくは他の課金の率に関し、又は輸入、輸出若しくはそれらの支払の振替の要件、制限若しくは禁止に関するもの、あるいは、産品の販売、配給、輸送、保険、倉入れ、検査、陳列、加工、混合若しくは他の使用に影響を及ぼすものは、諸国政府及び貿易業者が知ることのできるように、すみやかに公表しなければならない。また、国際貿易政策に影響を及ぼす協定で締約国の政府又は政府機関と他の締約国の政府又は政府機関との間に有効なものは、公表しなければならない。
この項の規定は、法律の実施を妨げ若しくはその他で公共の利益に反し又は特定の公的若しくは私的の企業の正当な商業上の利益を害する秘密の情報を発表することを、締約国に要求するものではない。
2 締約国が採用する一般に適用される措置で、輸入に対する現に設定され且つ一律に行われている税金又は他の課金の率を増加するもの、又は輸入に対して若しくは輸入のための支払の振替に対して新たな若しくは一層重い要件、制限若しくは禁止を課するものは、正式に公表する前に実施してはならない。
3 (a)各締約国は、この条の第一項に掲げた種類のすべての法律、規則、規定及決定を一律の、公平な且つ合理的な方法で実施しなければならない。
(b)各締約国は、関税事項に関する行政行為のすみやかな検討及び是正を特に目的として、司法上調停上若しくは行政上の裁判又はこれらの手続を維持し又は実行可能な限りすみやかに設定しなければならない。これらの裁判所又は手続は、行政上の実施に任ずる機関から独立し、また、その決定は、輸入業者が控訴のために定められた期間内に上級の管轄権を有する法廷又は裁判所に控訴を提起しない限り、前記の機関が実施し、且つ、その機関の行為を規律しなければならない。但し、この機関の中央行政庁は、その決定と法律の確立された原則又は事実とが合致しないと信ずるのに充分の理由があるときは、他の手続によつてその事件の検討を受けるための措置を執ることができる。
(c)この項の(b)の規定は、この協定の日付の日に締約国の領域において有効な手続であつて、行政上の実施に任ずる機関から完全に又は形式的に独立していなくても、事実上行政行為の客観的な且つ公平な検討を定めているものの廃止又は更改を要求しない。この手続を採用している締約国は、要請があつたときは、その手続がこの号の要件に合致するかどうかを決定することができるように、締約国団にそれに関する充分な情報を提供しなければならない。
第十一条 数量的制限の一般的除去
1 締約国は、関税、租税又は他の課金以外のいかなる禁止又は制限も、それが割当によるか、輸入若しくは輸出の許可によるか又は他の措置によるかにかかわらず、他の締約国の領域の産品の輸入に対して、又は他の締約国の領域に仕向けられる産品の輸出に対して若しくは輸出のための売却に対して、設定し又は維持してはならない。
2 この条の第一項の規定は、次のものに適用しない。
(a)輸出の禁止又は制限で、輸出国である締約国に不可欠の食糧品又は他の産品の危険な不足を防止し又は緩和するために一時的に適用されるもの。
(b)輸入及び輸出の禁止又は制限で、国際貿易における商品の分類、格付又は売りさばきに関する基準又は規則の適用のために必要なもの。
(c)いかなる形で輸入されるかにかかわらず、農業又は漁業の産品に対する輸入制限で次の結果をもたらす政府の措置の実施のために必要なもの。
(一)売りさばき又は生産を許される同種の内国産品の数量又は、同種産品の実質的な国内生産がないときは、輸入産品で面接に代用できる内国産品の数量を制限すること。あるいは、
(二)同種の内国産品の一時的な過剰又は、同種産品の実質的な国内生産がないときは、輸入産品で直接に代用できる内国産品の一時的な過剰を、無償で又は現行の市場価格水準より低い価格で国内消費者のある集団に提供することによつて除去すること。あるいは、
(三)生産が全部又は大部分輸入商品に直接依存する動物産品の生産許可量を、この商品の国内生産が比較的にわずかなものであるとき制限すること。
この項の(c)に従つて産品の輸入に対して制限を適用している締約国は、将来の特定期間中に輸入を許可する総数量又は総価額及びこの数量又は価額の変更を公告しなければならない。更に、前記(一)に基いて適用される制限は、国内生産の総計との割合における輸入の総計を、制限がない場合に両者の間に成立すると合理的に期待される割合より小さくするものであつてはならない。この締約国は、この割合を決定するに当り、従前の代表的な期間に存在していた割合について、及び当該産品の貿易に影響を及ぼしたか又は及ぼしている特別の要因について妥当な考慮を払わなければならない。
3 第十一条、第十二条、第十三条及び第十四条を通じて、「輸入制限」又は「輸出制限」という語は、国家貿易取引において実施される制限を含む。
第十二条 国際収支を擁護するための制限
1 第十一条第一項の規定にかかわらず、締約国は、その対外財政状態及び国際収支を擁護するために、輸入を許可する商品の数量又は価額を制限することができる。但し、この条の次の諸項の規定に従うことを条件とする。
2 (a)締約国は、次の目的に必要な限度においての外、この条に基く輸入制限を設定し、維持し、又は強化してはならない。
(一)自国の貨幣準備の重大な減少の差し迫つた脅威を予防し又はこの減少を止めること 又は
(二)きわめて低率な貨幣準備をもつ締約国の場合には、その貨幣準備を合理的な率で増加すること。
このいずれの場合においても、この締約国の貨幣準備叉は貨幣準備の必要に影響を及ぼしているすべての特別の要因について、また、その締約国が特別の外国の信用又は他の資金を利用しうる場合にはこの信用又は資金の適当な使用を予定する必要について、妥当な考慮を払わなければならない。
(b)この項の(a)に基いて制限を適用している締約国は、この状態が改善されるに従つて制限を漸進的に緩和し、(a)に明記した状態が制限の適用を正当とする程度においてのみ維持しなければならない。この締約国は、事態が(a)に基く制限の設定叉は維持をもはや正当としないときは、制限を除去しなければならない。
3 (a)締約国は、今後の数年間は、すべての締約国が戦争の結果生じた経済的調整の問題にそれぞれ異なつた程度において直面することを承認する。この期間中は、締約国団は、この条叉は第十四条に基いて決定をすることを要するときは、戦後の調整の困難について、及び締約国が健全な且つ永続的な基礎の上にその国際収支の均衡を回復するに至る一歩として輸入制限を使用する必要について、充分な考慮を払わなければならない。
(b)締約国は、完全な且つ生産的な雇用及び高度の且つ着実に増加する需要の達成及び維持又は工業的及び他の経済的資源の復興若しくは開発並びに生産性の水準の向上をめざす国内政策の結果として、このような締約国に輸入に対する高度の需要が生することを承認する。よつて
(一)この条の第二項の規定にかかわらず、締約国は、前記の政策の変更がこの条に基いて適用している制限を不必要にするという理由で、制限を撤回し又は修正することを要求されない。
(二)この条に基いて輸入制限を適用している締約国は、前記の政策に照らして一層緊要な産品の輸入に優先権を与えるように、異なる産品又は異なる種類の産品の輸入に対して制限の軽重を定めることができる。
(c)締約国は、国内政策の実施について次のことを約束する。
(一)健全な且つ永続的な基礎の上に自国の国際収支の均衡を回復する必要について、及び生産資源の経済上の利用を確保することの望ましいことについて妥当な考慮を払うこと。
(二)いづれかの種類の貨物の商業上の最小限度の数量の輸入で、この輸入を排除すれば正常な公益を阻害することになるものを不当に妨げるように制限を適用しないこと、あるいは商業上の見本の輸入を妨げ又は特許権、商標権、著作権若しくは他の類似の手続に従うことを妨げるように制限を適用しないこと。並びに
(三)この条に基く制限を他の締約国の商業上又は経済上の利益に対する不必要な損害を避けるように適用すること。
4 (a)この条に基く制限を適用していないがその必要を考慮している締約国は、この制限を設定する前に、(又は事前の協議が実行不可能である事情においては事後直ちに、)自国の国際収支の困難の性質、制限に代えて執りうる是正措置及びこの措置が他の締約国の経済に及ぼす影響について、締約国団と協議しなければならない。締約国は、この号に基く協議の間は、自国が採用を終局的に決定する特定の措置の選択又は適用の時期を、あらかじめ示すことを要求されない。
(b)締約国は、この条に基く輸入制限を適用している締約国に対して、前記の協議を締約国団と行うようにいつでも勧誘することができ、また、このような制限を実質的に強化している締約国に対して、三十日以内に協議するように勧誘しなければならない。このように勧誘を受けた締約国は、この討議に参加しなければならない。締約国団は、他のいずれの締約国に対しても、討議に参加するように勧誘することができる。千九百五十一年一月一日以前に、締約国団は、この日に存在し且つ検討の時にこの条に基いてなお適用されているすべての制限を検討しなければならない。
(c)締約国は、この条に基いて維持し、強化し、若くは{前3文字ママ}設定しようとする制限について、又は将来の特定の条件の下に制限を維持し、強化し、若しくは設定しようとすることについて、締約国団の事前の承認を得る目的で締約国団と協議することができる。この協議の結果、締約国団は、この制限の一般的範囲、強度及び継続期間に関する限り、当該締約国による制限の維持、強化又は設定に事前の承認を与えることができる。このよう承認が与えらた限度内においては、この項の(a)の要件は、みたされたものと認められ、また、この制限を適用している締約国の措置は、この措置がこの条の第二項の規定と合致しないという理由で、この項の(d)に基く攻撃をされない。
(d)締約国は、この条の第二項若しくは第三項の規定又は第十三条の規定(第十四条の規定に従うことを条件とする)に合致しないでこの条に基く制限を他の締約国が適用していると認めたときは、問題を討議のため締約国団に付託することができる。制限を適用している締約国は、この討議に参加しなければならない。締約国団は、この手続を執つた締約国の貿易が損害を受けていることが一見して明白であると認めたときは、当事国にも締約国団にも当該問題の満足な解決をもたらす目的で、締約国団の見解を当事国に提出しなければならない。このような解決が得られず、且つ、締約国団において、この制限がこの条の第二項若しくは第三項の規定又は第十三条の規定(第十四条の規定に従うことを条件とする。)に合致しないで適用されていると決定するときは、締約国団は、制限の撤回又は修正を勧告しなければならない。この制限が締約国団の勧告に従つて六十日以内に撤回され又は修正されないときは、締約国団は、いかなる締約国に対しても、この制限を適用している締約国に対するこの協定に基く特定の義務を免除することができる。
(e)この条に基く制限の適用、撤回又は修正の予定が尚早に洩れることは、この条の目的を無にするような投機的な貿易及び資金移動を刺激することがあることを承認する。よつて、締約国団は、協議を行うに当つて最高度に秘密を守るように処置しなければならない。
5 この条に基く輸入制限が持続的に且つ広い範囲に適用されて、国際貿易を制限している一般的不均衡の存在することが明らかになつたときは、締約国団は、国際収支に圧迫を被つている締約国、国際収支が異常に有利に向つている締約国又は適当な政府間機関のうちのいずれかが不均衡の根本原因の除去のために他の措置を執りうるかどうかを審議する討議を発起しなければならない。締約国団の勧誘があるときは、締約国はごの討議に参加しなければならない。
第十三条 数量的制限の無差別適用
1 締約国は、すべての第三国の同種産品の輸入又はすべての第三国に仕向けられる同種産品の輸出が同様に禁止され又は制限されない限り、いかなる禁止又は制限も、他の締約国の領域の産品の輸入又は締約国の領域に仕向けられる産品の輸出に対して適用してはならない。
2 締約国は、産品に対して輸入制限を適用するに当つては、この制限がない場合に諸締約国が獲得するものと期待される分前にできる限り近くこの産品の貿易を分配することを目標とし、且つ、このために次の規定を守らなければならない。
(a)実行可能なときはいつでも、輸入許可品の総量をあらわす割当量(供給国間に配分するかどうかにかかわらない。)を決定し、且つ、その総量をこの条の第三項(b)に従つて公告しなけい{前1文字ママ}ばならない。
(b)割当量の決定が実行不可能な場合には、割当量を定めない輸入許可又は免許の方法によつて制限を適用することができる。
(c)締約国は、この項の(d)に従つて配分される割当量を運用する場合を除き、当該産品を特定の国又は供給源から輸入するために輸入許可又は免許を利用することを要求してはならない。
(d)割当量を供給国間に配分する場合には、制限を適用している締約国は、割当量の配分について、当該産品の供給に実質的な利害関係をもつ他のすべての締約国との合意を求めることができる。この方法が合理的には実行可能でない場合には、関係締約国は、この産品の供給に実質的な利害関係をもつ締約国に対して、過去の代表的期間にその締約国が供給した割合を基礎として、この産品の輸入の総数量又は総価額の分前を、この産品の貿易に影響を及ぼした又は及ぼしているすべての特別の要因に妥当な考慮を払つて、割り当てなければならない。締約国が前記の総数量又は総価額のうちの自国に割り当てられた分前を全部使用することを妨げる条件又は手続は、課してはならない。但し、割当量の使用について定められた期間内に輸入が行われることを条件とする。
3 (a)輸入許可証を輸入制限に関連して発給する場合には、制限を適用している締約国は、当該産品の貿易に利害関係をもつ締約国の要請に応じてその制限の適用ぶり、最近の期間中に与えた輸入許可及び供給国間へのこの許可の配分に関するすべての関係情勢を提供しなければならない。但し、輸入又は供給をなす企業の名称についての情報を提出する義務はない。
(b)輸入制限が割当量の決定を伴う場合には、制限を適用している締約国は、将来の特定期間中に輸入を許可する産品の総数量又は総価額及びこの数量又は価額の変更を公告しなければならない。公告が行われたときに輸送の途中にあつた当該産品の輸入は、拒否してはならない。但し、実行可能な限り、当該期間中に輸入を許可する数量からこれを差し引いて計算することができ、また、必要な場合には、次の一又は数期間中に輸入を許可する数量からこれを差し引いて計算することもできる。更にまた、締約国がこの公告の日から三十日の期間内に消費のために輸入され又は消費のために保税倉庫から引き取られる産品に対して慣行上前記の制限を免除するときは、この慣行は、この号の規定に完全に合致するものと認める。
(c)供給国間に割当量を配分する場合には、制限を適用している締約国は、当該産品の供給に利害関係をもつ他のすべての締約国に対して、供給国に配分した数量又は価額による割当量の分前をすみやかに通報し、且つ、公告しなければならない。
4 この条の第二項(d)に従い又は第十二条第二項(c)に基いて適用される制限については、産品に関する代表的期間の選定及び産品の貿易に影響を及ぼしている特別の要因の評価は、制限を適用している締約国が最初に行は{前1文字ママ}なければならない。但し、この締約国は、その産品の供給に実質的な利害関係をもつ他の締約国又は締約国団の要請があつたときは、決定した割合若しくは選定した基準期間の調整の必要、考慮に入れた特別の要因の再評価の必要、又は、適当な割当量の配分若しくはその無制限の使用に関して一方的に設定した条件、手続若しくは他の規定の廃止の必要について、すみやかに前記の他の締約国又は締約国団と協議しなければならない。
5 この条の規定は、締約国が設定し又は維持する関税割当に対して適用しなければならない。また、実行可能な限り、この条の原則は輸出制限に適用しなければならない。
第十四条 無差別待遇原則の例外
1 (a)締約国は、戦争の結果として、数量的制限の無差別適用の即時の完全な実現を許さない経済的調整の困難な問題が生じていること、及び、従つてこの項に定めた例外的な過渡期の取極が必要であることを承認する。
(b)第十二条に基く制限を適用する締約国は、この制限を使用するに当つては、国際通貨基金規約第十四条に基いて、又は第十五条第六項により締結した特別為替協定の類似の規定に基いて、そのときに経常的国際取引のための支払及び振替に対して自国が適用できる制限の効果と等しい効果をもつ様式で、第十三条の規定から逸脱することができる。
(c)第十二条に基く制限を適用しており、且つ、千九百四十八年三月一日に国際収支擁護のための輸入制限を、第十三条に定めた無差別待遇の原則から逸脱して適用していた締約国は、この逸脱がこの日において(b)によつては許容されなかつたのであろう限度においても継続し、また、変化する事情にこの逸脱を適応させることができる。
(d)千九百四十七年十月三十月ジュネーヴで協定した暫定的適用に関する議定書に千九百四十八年七月一日前に署名し、且つ、準備委員会が国際連合貿易雇用会議に提出した憲章草案第二十三条第一項の原則をこの署名によつて暫定的に受諾した締約国は、千九百四十九年一月一日前に締約国団に対し書面による通告を行つて、この項の項の(b)及び(c)の規定の代りに、この原則を収録しているこの協定の附属書Jの規定によつて規律されることを選択することができる。(b)及び(c)の規定は、附属書Jの規定により規律されることをこのように選択した締約国には適用することができない。また反対に、附属書Jの規定は、このように選択しなかつた締約国には適用することができない。
(e)戦後の過渡期において、(b)及び(c)に基くか又は附属書Jに基づく輸入制限を使用するに当つて適用する政策は、この期間中に多角的貿易の可能な最大限の発展を促進することと、第十二条の規定又は過渡的為替取極にもはや訴えることを必要としない国際収支状態の達成を促すこととをめざすものでなければならない。(f)締約国は、国際通貨基金規約第十四条に基く戦後過渡期の取極を援用している期間又は第十五条第六項に基いて締結した特別為替協定の類似の規定を援用している期間に限り、この項の(b)若しくは(c)に従つて又は附属書Jに従つて第十三条の規定から逸脱することができる。
(g)千九百五十年三月一日(国際通貨基金の活動開始の日から三年後)以前に、且つ、その後は毎年、締約国団は、締約国がこの項の(b)及び(c)に基いて又は附属書Jに基いてなお執つているすべての措置を報告しなければならない。千九百五十二年三月に、且つ、その後は毎年、(c)又は附属書Jの規定に基く措置を執る資格をなおもつ締約国は、この規定に従つてなお有効に第十三条から逸脱していることについて、及び、引き続いてこの規定に訴えていることについて、締約国団と協議しなければならない。千九百五十二年三月一日後は、附属書Jに基く措置で、協議が行われ且つ締約国団が不当と認定しなかつた逸脱の有効な維持を超えるもの又は変化する事情への逸脱の適応を超えるものは、その締約国の事情に照らして締約国団が定めることのある一般的性質の制限に従わなければならない。
(h)締約国団は、例外的な事情のある場合に必要と認めたときは、(c)の、規定に基く措置を執る資格をもつ締約国に対して、(c)の規定に基く第十三条の規定からの特定の逸脱の終止又は逸脱の一般的な放棄を可とする事態になつているとの申入れをすることができる。千九百五十二年三月一日後は、締約国団は、例外的な事情のある場合には、附属書Jに基く措置を執る資格をもつ締約国に対して、前記の申入れをすることができる。締約国は、この申入れに回答するために適当な期間を与えられる。締約国が第十三条の規定からの不当な逸脱を固執していると締約国団が認定したときは、その締約国は、六十日以内に(締約国団の指定する逸脱を制限し又は終止しなければならない。
2 第一項(f)に従つてその過渡期の取極が終了したかどうかにかかわらず、第十二条に基く輸入制限を適用している締約国は、その対外貿易の一小部分について、締約国団の同意を得て、第十三条の規定からの逸脱を、関係締約国の受ける利益が他の締約国の貿易に与える損害よりも実質的に大きいときは、一時的に行うことができる。
3 第十三条の規定は、第十二条の規定に従う次の制限を妨げない。
(a)国際通貨基金において共通の割当をもつ領域の集合が他国からの輸入に対して適用するが相互の間には適用しない制限。但し、この制限が他のすべての点で第十三条の規定に合致することを条件とする。又は
(b)戦争のために経済が破壊された他国を干九百五十一年十二月三十一日までの期間において、第十三条め規定からの実質的な逸脱を伴わない措置によつて援助するための制限
4 第十二条に基く輸入制限を適用している締約国は、第十三条の規定から逸脱しないで使用しうる通貨の獲得を増加するようにその輸出を指向する措置を適用することを、この協定の第十一条から第十五条までによつて妨げられることはない。
5 締約国は、次の数量的制限を適用することを、この協定の第十一条から第十五条までによつて妨げられることはない。
(a)国際通貨基金規約第七条第三項(b)に基いて許可された為替制限の効果と等しい効果をもつ制限、又は
(b)この協定の附属書Aに掲た{前2文字ママ}交渉が終るまで、この附属書に規定した特恵的取極に基く制限
第十五条 為替取極
1 締約国団は、締約国団と国際通貨基金とが基金の権限に属する為替上の問題並びに締約国団の権限に属する数量的制限の問題及び貿易上の他の措置について統一のある政策を遂行できるように、基金との協力に努めなければならない。
2 締約国団は、貨幣準備、国際収支又は外国為替取極に関する問題を審議し又は処理することを求められるすべての場合に、国際通貨基金と充分に協議しなければならない。この協議に際して、締約国団は、外国為替、貨幣準備及び国際収支について基金が提出する統計的及び他の事実に関するすべての認定を受諾し、且つ、為替上の事項に関する締約国の措置が国際通貨基金規約に又はその締約国と締約国団との間の特別為替協定の条項に従つているかどうかに関する基金の決定を受諾しなければならない。締約国団は、第十二条第二項(a)に定めた基準が問題となる場合に最終的決定を下すときは、その締約国の貨幣準備の重大な減少、その貨幣準備のきわめて低率な水準又はその貨幣準備の合理的な増加率とは何であるかに関する基金の決定及びこの場合に協議の対象となる他の事項の金融的な面に関する基金の決定を受諾しなければならない。
3 締約国団は、この条の第二項に基く協議のための手続について、基金との協定を求めなければならない。
4 締約国は、為替上の措置によつてこの協定の規定の意図を没却し、及び貿易上の措置によつて国際通貨基金規約の規定の意図を、没却してはならない。
5 締約国団は、輸入に関連する支払及び振替に対する為替制限を数量的制限に関してこの協定に規定された例外に合致しない様式で締約国が適用していると認めたときはいつでも、これについて基金に報告しなければならない。
6 基金の加盟国でない締約国は、締約国団が基金と協議の後定める期間内に、基金の加盟国となるか、又はそれができなければ締約国団と特別為替協定を締結しなければならない。基金の加盟国でなくなつた締約国は、締約国団と特別為替協定を直ちに締結しなければならない。この項に基いて締約国が締結した特別為替協定は、締結と同時にこの協定に基くこの締約国の義務の一部となる。
7 (a)この条の第六項に基く締約国と締約国団との間の特別為替協定は、当該締約国の為替上の事項に関する措置の結果としてこの協定の目的が没却されないことを、締約国団が充分と認める程度に、規定しなければならない。
(b)この協定の条項は、為替上の事項について、国際通貨基金規約が基金の加盟国に課する義務よりも全体として一層制限的な義務をその締約国に課してはならない。
8 基金の加盟国でない締約国は、締約国団がこの協定に基づく任務をを遂行するために要求する国際通貨基金規約第八条第五項の一般的範囲内における情報を提供しなければならない。
9 この協定の規定は、次のことを妨げない。
(a)締約国が国際通貨基金規約に若しくは締約国とその締約国との特別為替協定に従う為替管理若しくは為替制限を使用すること。又は
(b)締約国が第十一条、第十二条、第十三条及び第十四条に基いて許される効果のほかに、この為替管理又は為替制限を実効的ならしめる効果のみをもつ輸入若しくは輸出の制限又は統制を使用すること。
第十六条 補助金
締約国が、所得又は価格の何らかの形式による支持を含む補助金で産品の自国領域からの輸出を増進し又は産品の自国領域への輸入を低減する直接又は間接の効果のあるものを交付し又は維持するときは、その締約国は、補助金交付の範囲及び性質、自国領域へ輸入され又は自国領域から輸出される関係産品の数量にその補助金交付が及ぼすと推定された効果並びにその補助金交付を必要とする事情について書面で締約国団に通告しなければならない。他の締約国がこの補助金交付によつて自国の利益に対し重大な損害を与えられ又は与えられるおそれがあることが決定された場合には、補助金を交付している締約国は、要請があつたときは、その補助金交付を制限する可能性について、関係のある他の締約国又は締約国団と討議しなければならない。
第十七条 国家貿易企業の側の無差別待遇
1 (a)各締約国は、所在地のいかんにかかわらず国家企業を設立し若しくは維持し、又はいずれかの企業に対して排他的若しくは特別の特権を正式に若しくは事実上与えるときは、この企業が、輸入又は輸出のいずれかを伴う講入又は販売をするに当つて、私的貿易業者の行う輸入又は輸出に影響のある政府の措置についてこの協定で規定した無差別待遇の一般原則に合致する様式で行動しなければならないことを約束する。
(b)この項の(a)の規定は、これらの企業が、この協定の他の規定に妥当な考慮を払つた上で、価格、品質入手可能性、市場性、輸送及び購入又は販売の他の条件を含む商業的考慮のみに従つて前記の購入又は販売を行い、且つ、他の締約国の企業に対して、通常の商慣行に従つて、前記の購入又は販売に参加するために競争する適当な機会を与えなければならないことを要求するものと了解しなければならない。
(c)締約国は、その管轄権の下にある企業(この項の(a)に掲げた企業であるかどうかにかかわらない。)がこの項の(a)及び(b)の原則に従つて行動することを妨げてはならない。
2 この条の第一項の規定は、政府の使用のために直接に又は究極的に消費する産品で再販売するため又は販売に向ける貨物の生産に使用するためでないものの輸入には適用しない。この輸入については、各締約国は、他の締約国の貿易に対して公正且つ公平な待遇を与えなければならない。
第十八条 経済的発展及び復興に対する政府の援助
1 締約国は、特定工業又は農業の特定部門の樹立、発展又は復興を促進するために特別の政府援助を必要とすることがあること及び保護措置の形でこの援助を与えることが適当な事情の下では正当とされることを承認する。同時に、締約国は、この措置の不賢明な使用が、その国自身の経済に不当な負担を、及び国際貿易に是認し得ない制限を課することになるであろうし、また、他の国の経済に対して調整の困難を不必要に増大することがあることを承認する。
2 締約国団及び関係締約国は、この条に基づいて生ずる事項について最高度に秘密を保持しなければならない。
A
3 締約国が、その経済的発展若しくは復興のために、又は、第一条第三項の規定に従う新たな特恵協定の設定に関連して最恵国税率を増加するために、輸入に影響を及ぼす無差別的措置でこの締約国がこの協定の第二条に基いて負担した義務にはてい触するがこの協定の他の規定にはてい触しないようなものを採択することが望ましいと認めるときは、この締約国は、次のことをしなければならない。
(a)他のすべての締約国と直接交渉を開始すること。この協定の該当の関税表は、このような交渉の結果生ずる協定に従つて改正しなければならない。又は
(b)締約国団に最初から申請すること。また、この締約国は、(a)に基いて協定に達することができなかつた場合には、締約国団に申請することができる。締約国団は、提案された措置によつて実質的に影響を受ける締約国を決定しなければならず、且つ、すみやかで実質的な協定を得る目的で、この締約国と申請締約国との間の交渉を主唱しなければならない。締約国団は、申請締約国が提案した日程にできるだけ従つて、この交渉のための日程を定めて、且つ、関係締約国に通報しなければならない。締約国は、締約国団の定めた日程に従つて、この交渉を開始し、且つ、継続的に行わなければならない。締約国の要請があるときは、締約国団は、提案された措置に原則として同意する場合には、交渉を援助することができる。実質的な協定に達したときは、交渉において関係締約国間に合意された制限に従うことを条件として、締約国団は、この項に掲げた義務から申請締約国を解除することができる。
4 (a)第三項に基いて開始された措置の結果として、直接に代用できる産品を含む当該産品の輸入に増加があり、この輸入増加が継続すれば当該工業又は当該農業部門の樹立、発展又は復興を危くするほどに多大となるとき、且つ、この協定の規定と合致する防止措置であつて実効的となると思われるものを見出すことができないときは、申請締約国は、締約国団に通報した後、また、実行可能なときは締約国団と協議した後、情勢が必要とする他の措置を採択することができる。但し、このような措置は、この号に掲げた輸入の増加分を相殺するのに必要である以上に輸入を制限してはならず、且つ、異常な事情の場合を除いて、締約国が第三項に基く措置を開始した日に先だつ最近の代表的期間に達した水準以下に輸入を低減してはならない。
(b)締約国団は、実行可能な限りすみやかに、この措置を継続し、中絶し又は変更すべきかどうかを決定しなければならない。このことは、締約国団が交渉は完了し又は中絶したと決定したときは直ちに、いかなる場合にも終了しなければならない。
(c)この協定の第二条に基く締約国間の関係は、相互的の利益を含むものであることを承認する。従つて、その措置によつて自国の貿易が実質的に影響を受ける締約国は、申請締約国の貿易に対して、この協定に基く実質的に等しい義務又は譲許の適用を停止することができる。但し、当該締約国がこのような措置な執る前に締約国団と協議し、且つ、締約国団が不同意でないことを条件とする。
B
5 輸入に影響を及ぼす無差別的措置であつて、締約国がこの協定の第二条に基く義務を負担している産品に適用され、且つ、この協定の他の規定にてい{前2文字強調}触するものの場合には、第三項(b)の規定を適用する。但し、締約国団は、解除を与える前に、実質的な影響を受けると締約国団が決定するすべての締約国に対して、その見解を表明する適当な機会を与えなければならない。第四項の規定は、この場合にも適用する。
C
6 締約国がその経済的発展又は復興のために、輸入に影響を及ぼす無差別的措置であつて、この協定の第二条以外の規定にてい{前2文字強調}触するが自国が第二条に基く義務を負担している産品には適用されないものを採択することが望ましいと認めるときは、このような締約国は、締約国団にこれを通告し、且つ、提案した措置を特定期間採択しようとする理由の陳述書を締約国団に提出しなければならない。
7 (a)このような締約国の申請に従つて、締約国団は、申請締約国の経済的発展又は復興のための必要に特別の考慮を払つた上で、次のことが確定されるときは、提案された措置に同意し、且つ、特定期間について必要な解除を与えなければならない。
(一)その措置が、千九百三十九年一月一日と千九百四十八年三月二十四日との間に樹立された特定工業であつて、その発展のこの期間中戦争から生じた異常な条件案件によつて保護されていたものを保護することをめざすものであること。又は
(二)その措置が、外国で課せられた新規の又は増強された制限の結果として、内国産の一次的商品の対外販売が実質的に低減しているときに、この商品の加工のための特定工業の樹立又は発展を促進することをめざすものであること。又は
(三)その措置が、国内産の一次的商品を加工する特定工業又は加工しなければ廃物となるこのような工業の副産物を加工する特定工業の樹立又は発展を促進する申請締約国の可能性及び手段にかんがみて、申請締約国の天然資源及び労働力の一層完全な且つ経済的な使用を達成するため、並びに結局において申請締約国の領域内における生活水準を引き上げるために必要であり、更に、結局において国際貿易に有害な影響を有するとは思われないものであること。又は
(四)その措置が、この協定に基いて許与された他の実行可能な且つ合理的な措置であつて過大な困難なしに課しうるものよりも国際貿易にとつて制限的であるとは思われず、且つ、当該工業又は当該農業部門の経済的条件及び締約国の経済的発展又は復興のための必要に考慮を払つた上で目的のために最も適したものであること。
この号の前記の規定は、次の条件に従う。
(1)このような措置を、最初の期間の終了後に、修正を加え又は加えることなくして適用しようとする申請締約国の提案は、この項の規定の適用を受けない。及び
(2)締約国団は、前記の(一)、(二)又は(三)の規定に基く措置であつて、他の締約国の領域の経済が大いに依存している一次的商品の輸出をはなはだしく阻害すると思われるものに合意してはならない。
(b)申請締約国は、(a)に基いて許与された措置を、他の締約国の商業的又は経済的利益に対する不必要な損害を避けるような方法で、適用しなければならない。
8 提案した措置が第七項の規定に該当しないときは、締約国は、次のことをすることができる。
(a)この措置によつて実質的に影響を受けるであろうとこの締約国が認める締約国と直接の協議を開始すること。同時に、この締約国は、実質的に影響を受けるすべての締約国がこの協議に包含されているかどうかを決定する機会を締約国団に与えるために、このような協議について締約国団に通報しなければならない。完全な又は実質的な協定が成立したときは、その措置を執ることを利益とするこの締約国は、締約国団に申請しなければならない。締約国団は、実質的に影響を受けるすべての締約国の利益が妥当に考慮されたかどうかを確めるために、すみやかに申請を検討しなければならない。関係締約国間に更に協議が行われたかどうかを問わず、締約国団がこの結論に達したときは、締約国団は、申請締約国を、締約団が課する制限に従うことを条件として、この協定の関連規定に基く義務から解除しなければならない。又は
(b)最初から、又は(a)に基いて完全な又は実質的な協定に達することができなかつた場合に締約国団に申請すること。締約国団は、提案された措置によつて実質的に影響を受けると締約国団が決定した締約国に、第六項に基いて提出された陳述書をすみやかに送付しなければならない。このような締約国は、提案された措置が自国の領域の経済に及ぼすと予想される影響に照らして、提案された措置に対して異議があるかどうかを、締約国団が定めた期限内に、締約国団に通報しなければならない。締約国団は、
(一)影響受けた締約国から、提案された措置に対して何らの異議もないときは、申請締約国をこの協定の関連規定に基く義務から直ちに解除しなければならない。又は
(二)異議があるときは、この協定の規定と、申請締約国が提出した理由及び申請締約国の経済の発展又は復興の必要と、実質的に影響を受けると決定された締約国の見解と、提案された措置が、修正を伴うと伴わないとを問わず、直ちに及び結局において国際貿易に対して、また、結局において申請締約国の領域内における生活水準に対して及ぼすと思われると思われる影響とに考慮を払つた上で、提案された措置をすみやかに検討しなければならない。このような検討の結果として、締約国団が提案された措置に修正を加えて又は加えることなくして同意するときは、締約国団は、申請締約国を、締約国団が課する制限に従うことを条件として、この協定の関連規定に基く義務から解除しなければならない。
9 第六項に掲げた措置の採択に対する締約国団の同意を見越して、直接に代用できる産品を含めて、当該産品の輸入について、当該工業の又は当該農業部門の樹立、発展又は復興を危くするほどに実質的な増加又は増加のおそれがあり、且つ、この協定と合致する防止措置であつて実効的となると思われるものを見出すことができないときは、申請締約国は、締約国団に通報した後、また、実行可能なときは締約国団と協議した後、締約国の申請に対する締約国団の決定があるまで、その情勢が必要とする他の措置を採択することができる。但し、このような措置は、第六項に基いて通告が行われた日に先だつ最近の代表的期間に達した水準以下に輸入を低減させないことを条件とする。
10 締約国は、申請締約国が関連義務から解除されるかどうかを申請締約国に通告する日を、最も早い機会に、しかし通常第七項又は第八項の(a)若しくは(b)の規定に基く申請の受領後十五日以内に、同締約国に通知しなければならない。その日は、実行可能な最も早い日でなければならず且つこのような申請の受領後九十日よりおそくてはならない。但し、定められた日の前に予見しなかつた困難が発生したときは、その期間は、申請締約国との協議の後延長することができる。定められた日までに申請締約国がそのような通告を受けなかつたときは、その締約国は、締約国団に通報した後、提案した措置を執ることができる。
11 締約国は、輸入に影響を及ぼす無差別的保護措置であつて、千九百四十七年九月一日に有効であり特定工業又は農業の特定部門の樹立、発展又は復興のために課しており、旦つ、この協定が他に許与していないものを維持することができる。但し、千九百四十七年十月十日より前に、このような措置及びこのような措置が維持される各産品並びにこのような措置の性質及び目的について、他の締約国に対して通告が行われていることを条件とする。
12 このような措置を維持している締約国は、締約国となつてから六十日以内に、この措置の維持を支持する理由及びこの措置を維持しようとする期間についての陳述書を締約国団に提出しなければならない。締約国団は、できる限りすみやかに、しかしいかなる場合にもこのような締約国が締約国となつた日から十二箇月以内に、この措置に関して、締約国団の同意を得るためにこの条の第一項から第十項までに基いて提出された場合と同様に、検討し且つ決定を与えなければならない。
13 この条の第十一項及び第十二項の規定は、締約国がこの協定の第二条に基く義務を負担している産品に関する措置には適用しない。
14 締約国団は、措置を特定の日までに修正又は撤回すべきであると決定する場合には、このような修正又は撤回をなすための期間を締約国が必要とすることがあることに考慮を払わなければならない。
第十九条 特殊の産品の輸入に対する緊急措置
1 (a)事情の予見されなかつた発展により、且つ、関税上の譲許を含み、この協定に基いて締約国が負う義務の効果により、産品がその締約国の領域内へ、その領域内における同種の又は直接競争的な産品の国内生産者に重大な損害を与え又は与える虞れがあるような増加した数量で及びそのような条件で輸入されているときは、その締約国は、この産品について、また、前記の損害を防止し又は救済するのに必要な限度及び期間において、その義務を全部若しくは一部停止すること又はその譲許を撤回し若しくは修正することができる。
(b)特恵に関する譲許の対象となつている産品が締約国の領域内にこの項の(a)に定めた状態で輸入され、その結果特恵を受けているか又は受けていた他の締約国の領域内における同種の直接競争的的な産品の国内生産者に重大な損害を与え又は与える虞れがあるきは、輸入国たる締約国は、前記の他の締約国の要請があつた場合、前記の損害を防止し又は救済するのに必要な限度及び期間において、その産品について、関連義務を全部若しくは一部停止すること又は譲許を撤回し若しくは修正することができる。
2 締約国は、この条の第一項の規定に従つて措置を執るに先だち、執ろうとする措置ついて、実行しうる限り早く書面で締約国団に通告し、且つ、締約国団及び当該産品の輸出国として実質的な利害関係をもつ締約国に自国と協議する機会を与えなければならない。特恵に関する譲許についてこのような通告を行うときは、その通告には、この措置を要請した締約国の名を掲げなければならない。措置が遅延すれば回復し難い損害を生ずるような事態においては、この条の第一項に基く措置は、措置を執つた後直ちに協議を行うことを条件として、事前の協議なしに暫定的に執ることができる。
3 (a)この措置について関係締約国間に合意が成立しなかつたときも、この措置を執り又はこの措置を継続しようとする締約国は、そうすることができる。また、この措置を執り又は継続するときは、その影響を受けた締約国は、措置が執られてから九十日以内に、措置を執つている締約国の貿易又はこの条の第一項(b)に掲げた場合にはこの措置を要請している締約国の貿易に対して、この協定に基く実質上等価値の義務又は譲許の適用を、締約国団が停止の通告書を受領した日から三十日の経過後停止することができる。この停止は、締約国団が反対しないものでなければならない。
(b)この項の(a)の規定にかかわらず、この措置が、事前の協議なしにこの条の第二項に基いて執られ、且つ、その影響を受ける産品の国内生産者に対して締約国の領域内において重大な損害を与え又は与える虞れがある場合には、その締約国は、遅延すれば回復し難い損害を生ずるときは、その措置が執られると同時に、且つ、協議の期間を通じて、損害を防止し又は救済するのに必要な義務又は譲許を停止することができる。
第二十条 一般的例外
この協定の規定は、締約国による次の措置の採択又は実施を妨げるものと解釈してはならない。但し、この措置が、同じ条件の下にある国に対する専断的な若しくは正当と認められない差別待遇の手段となるように、又は国際貿易に対する偽装された制限となるように適用されないことを条件とする。
一(a)公徳を保護するために必要な措置
(b)人、動物又は植物の生命又は健康を保護するために必要な措置
(c)金又は銀の輸入又は輸出に関する措置
(d)関税上の措置の実施、第二条第四項及び第十七条に基き運営される独占の実施、特許権・商標権・著作権の保護並びに詐欺的慣行の防止に関する法律又は規則を含めて、この協定の規定に合致する法律又は規則の遵守を確保するために必要な措置
(e)刑務所労働の産品に関する措置
(f)美術的、歴史的又は考古学的価値のある国宝の保護のために課せられる措置
(g)限りのある天然資源の保存に関する措置。但し、この措置が国内の生産又は消費に対する制限と関連して実施されるときに限る。
(h)国際商品取極中間調整委員会を設立する千九百四十七年三月二十八日の国際連合経済社会理事会の決議により同理事会が認めた原則に従う政府間商品協定に基く義務に従つて執られる措置 又は
(i)国内原料の価格が政府の安定計画の一部として世界価格より低位に保たれている期間中、この原料の不可決な数量を国内の加工業に確保するために必要な輸出制限を伴う措置。但し、この制限は、国内産業からの輸出を増進するように又はこれに与えられる保護を増進するように運用してはならず、また、無差別待遇に関するこの協定の規定から逸脱してはならない。
二(a)全般的に又は地方的に供給が不足している産品の獲得又は分配のために不可決な措置。但し、この措置は、この産品の公平な国際的分配をめざす多角的取極に合致し、且つ、このような取極がない場合には、すべての締約国がこの産品の国際的供給の公平な分前を受ける資格があるという原則に合致しなければならない。
(b)戦争に引き続く物資不足を経験している締約国が行う価格統制のために不可決な措置又は
(c)締約国の政府が所有し若しくは管理する一時的な余剰在荷の秩序だつた整理のために、又は戦争の要請に応じて締約国内に発展した産業で平常の条件の下においては維持することが非経済的なものの秩序だつた整理のために不可決な措置。但し、締約国は、利害関係をもつ他の締約国と適当な国際的行動のために協議した後でなければ、この措置を執つてはならない。
この条の二に基いて実施し又は維持する措置でこの協定の他の規定に合致しないものは、それを必要とした条件がなくなつたときは直ちに、また、いかなる場合にも千九百五十一年一月一日以前に廃止しなければならない。但し、この期間は、特定の締約国による特定産品に対する特定の措置の適用については、締約国団の同意を得て、締約国団の指定するその後の時期まで延長することができる。
第二十一条 安全保障に関する例外
この協定の規定は、次のように解釈してはならない。
(a)発表すれば自国の安全保障上の不可決の利益に反すると締約国が認める情報の提供をその締約国に要求すること。あるいは
(b)自国の安全保障上の不可決の利益を保護するために必要であると締約国が認める次の措置を執ることを妨げること。
(一)核分裂性物質又はそれが抽出される物質に関する措置
(二)武器、弾薬及び戦争器材の取引又は軍事営造物を供給するために直接若しくは間接に行われる他の貨物及び物資の取引に関する措置
(三)戦時又は国際関係における緊急の場合に執る措置。あるいは、
(c)締約国が国際の平和及び安全の維持のために国際連合憲章に基く義務に従う措置を執ることを妨げること。
第二十二条 協議
各締約国は、税関規則及び手続、ダンピング防止税及び相殺関税、数量的統制及び為替統制、補助金、国家貿易の運営、人・動物又は植物の生命又は健康の保護のための衛生上の法律及び規則の運用について並びに一般にこの協定の運用に影響を及ぼすすべての事項について他の締約国が行うことのある申入に対して好意的考慮を払い、且つ、このような申入れに関する協議のため適当な機会を与えなければならない。
第二十三条 無効化又はき{前1文字強調}損
1 いづれかの締約国において、(b)他の締約国がこの協定に基く義務を怠つた結果として、又は(a)他の締約国がこの協定の規定にてい{前2文字強調}触するか否かにかかわらず何らかの措置を適用した結果として、又は(C)他の何んらかの状態が存在する結果として、この協定に基いて直接に若しくは間接に自国に生じた利益が無効とされ若しくはき{前1文字強調}損されていると認めたとき又はこの協定の目標の達成が妨げられていると認めたときは、締約国は、問題の満足な調整のために、関係があると認めた他の締約国に対して書面による申入れ又は提案を行うことができる。このような要請を受けた締約国は、行われた申入れ又は提案に対して好意的考慮を払わなければならない。
2 合理的な期間内に関係締約国の間に満足な調整が行われなかつたとき又は困難がこの条の第一項(c)に記載したものに該当するときは、問題を締約国団に付託することができる。締約国団は、このようにして付託された問題をすみやかに調査し、且つ、関係があると認めた締約国に対して適当な勧告を行い又は問題に対して適当な裁定を与えなければならない。締約国団は、必要と認めたときは、締約国、国際連合経済社会理事会及び適当な政府間機関と協議することができる。締約国団は、事情が重大であつてこの措置が正当であると認めたときは、締約国に対して、事情にかんがみて適当と決定したこの協定に基く義務又は譲許の他の締約国に対する適用を停止することを許すことができる。締約国に対する義務又は譲許の適用が実際に停止されたときは、この締約国は、このような措置が執られた後六十日以内に、この協定から脱退する意思を書面で国際連合事務総長に通告することができる。このような脱退は、脱退通告書を事務総長が受領した日から六十日を経過した時効力を生ずる。
第三部
第二十四条 地域的適用−国境貿易−関税同盟及び自由貿易地域
1 この協定の規定は、締約国の本国の関税地域及び第二十六条に基いてこの協定が受諾されている他の関税地域又は第三十三条に基いて若しくは暫定的適用に関する議定書に従つてこの協定が適用されている他の関税地域に適用する。この各関税地域は、この協定の地域的適用の場合に限り、一締約国として取扱う。但し、この項の規定は、単一の締約国がこの協定を第二十六条に基いて受諾しているか又は第三十三条に基いて若しくは暫定的適用に関する議定書に従つて適用している二以上の関税地域の間に、権利又は義務を発生させるものと解釈してはならない。
2 この協定の適用上、関税地域とは、それぞれ独立した関税又は他の通商規則を他の地域との貿易の実質的部分に対して維持している地域をいう。
3この協定の規定は、次のものを妨げるものと解釈してはならない。
(a)国境貿易を容易にするために締約国が隣接国に与える利益
(b)トリエステ自由地域の隣接国が同地域との貿易に与える利益。但し、この利益が第二次世界戦争の結果である平和条約にてい{前2文字強調}触しないことを条件とする。
4 締約国は、自発的な協定によりその締約国の経済関係の一層密接な統合を発展させて貿易の自由を増大することが望ましいことを承認する。締約国は、また、関税同盟又は自由貿易地域の目的が当事国間の貿易を容易にすることであり、当事国との他の締約国の貿易に対する傷害を高めることにあるべきでないことを承認する。
5 従つて、この協定の規定は、締約国の領域の間で、関税同盟若しくは自由貿易地域を形成すること又は関税同盟若しくは自由貿易地域の形成のために必要な中間協定を採択することを妨げない。但し、次のことを条件とする。
(a)関税同盟又は関税同盟の形成のための中間協定については、関税同盟又は中間協定の創設の時にこの同盟又は協定の当事国でない締約国との貿易に関して課せられた関税又は他の通商規則は、全体として、それぞれ関税同盟の形成又は中間協定の採択の前にその構成地域において適用する関税及び通商規則の一般的負担及び範囲よりも高いか又は制限的であつてはならない。
(b)自由貿易地域又は自由貿易地域の形成のための中間協定については、各構成地域において維持し、且つ、自由貿易地域の形成若しくは中間協定の採択の時にこの地域に含まれていない締約国又は協定の当事国でない締約国の貿易に対して適用する関税政び他の通商規則は、それぞれ自由貿易地域の形成又は中間協定に先だつて同一の構成地域に存在する相応の関税及び他の通商規則よりも高いか又は制限的であつてはならない。また、
(c)(a)及び(b)に掲げた中間協定は、合理的な期間内に関税同盟又は自由貿易地域を形成するための計画及び予定を含まなければならない。
6 五項(a)の要件を履行するに当つて締約国が第二条の規定に合致しないで税率を増加することを提議したときは、第二十八条に定めた手続を適用しなければならない。補償的調整を行うに当つては、関税同盟の他の構成国の相応の関税中にもたらされた引下げによつて既に与えられている補償に妥当な考慮を払わなければならない。
7 (a)関税同盟若しくは自由貿易地域又はこれらの同盟若しくは地域の形成のための中間協定を作ろうと決定する締約国は、すみやかに締約国団に通告し、且つ、締約国団が適当と認める報告及び勧告を締約国に対して行いうるようにこの同盟又は地域に関する情報を締約国団に提供しなければならない。
(b)締約国団は、第五項に掲げた中間協定に規定する計画及び予定を中間協定の当事国と協議して検討し、且つ、(a)の規定に従つて提供された情報に妥当な考慮を払つた後、この協定がその当事国の意図する期間内に関税同盟若しくは自由貿易地域の形成に到達しそうもないか又は期間が合理的でないと認定したときは、中間協定の当事国に対して勧告しなければならない。当事国は、この勧告に従つて中間協定を修正する用意がないときは、これを維持し又は実施してはならない。
(c)第五項(c)に掲げた計画又は予定の実質的な変更は、締約国団に通報しなければならない。締約国団は、変更が関税同盟又は自由貿易地域の形成を危くし又は不当に遅延させると認められるときは、当該締約国に締約国団と協議するように要請することができる。
8 この協定の適用上、
(a)関税同盟とは、単一の関税地域をもつて二以上の関税地域に代えたものであつて、次の結果をもたらすものをいう。
(一)関税及び他の制限的通商規則(必要な場合には、第十一条、第十二条、第十三条、第十四条、第十五条及び第二十条に基いて許与されるものを除く。)が同盟の構成地域間の実質上すべての貿易について又は少くともこれらの地域の原産に係る産品の実質上すべての貿易について除去されること。並びに
(二)第九項の規定に従うことを条件として、実質的に同一の関税及び他の通商規則が同盟の各加盟国によつて同盟に含まれない地域の貿易に適用されること。
(b)自由貿易地域とは、関税及び他の制限的通商規則(必要な場合には、第十一条、第十二条、第十三条、第十四条、第十五条及び第二十条に基いて許与されるものを除く。)が構成地域の原産に係る産品の構成地域間における実質上すべての貿易について除去されている二以上の関税地域の一群をいう。
9 第一項第二項に掲げた特恵は、関税同盟又は自由貿易地域の形成によつて影響を受けないが、影響を受けた締約国との交渉によつて除去し又は調整することができる。影響を受けた締約国との交渉のこの手続は、第八項(a)(一)及び第八項(b)の規定に従うために必要な特恵の除去に特に適用する。
10 締約国団は、第五項から第九項までの要件に完全には合致しない提案を三分の二の多数によつて承認することができる。但し、この提案は、この条の意義における関税同盟又は自由貿易地域の形成をもたらすものでなければならない。
11 独立国としてのインド及びパキスタンの成立から生ずる例外的な事情を考慮し、且つ、両国が長期にわたつて単一の経済単位を構成して来たことを承認し、締約国は、両国においてその相互の貿易関係を明確な基礎の上に設定するまで、この協定の規定が両国間の貿易について特別の取極を結ぶことを妨げるものではないことに同意する。
12 各締約国は、その領域内の地域的及び地方的の政府及び当局によるこの協定の規定の遵守を確保するために、なしうる合理的な措置を執らなければならない。
第二十五条 締約国の共同行動
1 締約国の代表者は、共同行動を伴うこの協定の規定を実施するため及び一般にこの協定の運用を容易にしその目標を助長するために、随時に会合しなければならない。この協定において共同して行動する締約国について述べるときは、いつでも締約国団という。
2 国際連合事務総長は、千九百四十八年三月一日以前に行われるべき締約国団の第一回会議の召集を要請される。
3 各締約国は、締約国団のすべての会議に寿いて一箇の投票権をもつ。
4 この協定に別段の定めがある場合を除き、締約国団の決定は、投ぜられた票の過半数による。
5(a)この協定に規定していない例外的な事情においては、締約国団は、この協定が締約国に課する義務を免除することができる。但し、この決定は、投票の三分の二の多数によつて承認され、また、この多数は、締約国の半数をこえる数でなければならない。締約国団は、また、このような表決により次のことをすることができる。
(一)義務の免除のために他の投票要件が適用される例外的な事情の範ちゆう{前3文字強調}を定めること。及び
(二)この(a)の適用に必要な規準を定めること。
(b)締約国が充分な正当性なしにハバナ憲章の第十七条第一項に記載したような交渉を他の締約国と行うことを怠つたときは、締約国団は、苦情の申立に基いて且つ調査の後、苦情を申立てた締約国に対して、この協定の関連関税表に織込まれている譲許を他方の締約国に対して停止することを許すことができる。このような交渉を締約国が怠つたかどうかについて判断するに当り、締約国団は、関係締約国の発展、復興及び他の必要並びに一般財政制度を含めて関連するすべての事情とハバナ憲章の規定全般について考慮を払わなければならない。前記の譲許が実際に停止された結果、他の締約国の貿易に対して停止されない場合よりも高い関税が適用されるに至つたときは、この締約国は、この措置が実施された後六十日以内に、この協定からの脱退通告を書面で行うことができる。この脱退は、締約国団が通告を受領した日から六十日を経過した時に効力を生ずる。
(c)(b)の規定は、最初に相互間で交渉された譲許を含む関税表をもつ二締約国間には適用しない。
(d)(b)及び(c)の規定は、千九百四十九年一月一日まで適用しない。
第二十六条 受諾、効力の発生及び登録
1 この協定は、国際連合貿易雇用会議準備委員会の第二回会期の終了の際に採択した最終議定書の署名の日付をもち、また、最終議定書の署名政府の受諾に対し開放しておく。
2 この協定は、イギリス語の原本一通及びフランス語の原本一通で作成して、ともに正文とし、国際連合事務総長に寄託する。事務総長は、その認証謄本をすべての関係政府に送付する。
3 この協定を受諾する各政府は、国際連合事務総長に受諾書を寄託する。事務総長は、各受諾書の寄託の日及びこの協定がこの条の第五項に基いて効力を生ずる日をすべての関係政府に通知する。
4(a)この協定を受諾する各政府は、その本国の領域及び当該政府が国際的責任をもつ他の地域に関して受諾する。但し、受諾の時に国際連合事務総長に通告しなければならない。それぞれ独立の関税地域は、除外される。
(b)この項の(a)の但し書に基いて除外を事務総長に通告した政府は、その受諾が除外されたそれぞれの独立の関税地域のいずれかに関して有効となり、この通告が事務総長によりこれを受領された日の後三十日目に効力を生ずることを事務総長に対しいつでも通告することができる。
(c)締約国がこの協定を受諾した関税地域のいずれかがその対外通商関係及びこの協定の規定した他の事項の処理について完全な自治権を保持しているか又は取得したときは、この地域は、前記の事実を確立する責任のある締約国の宣言による主唱に基いて締約国とみなす。
5 この協定は、国際連合貿易雇用会議準備委員会の第二回会期の終了の際に採択した最終議定書の署名国の領域の対外貿易の八十五パーセントを占める最終議定書の署名政府が受諾書を国際連合事務総長に寄託した日の三十日後に、受諾した政府の間で効力を生ずる。このパーセンテージは、附属書Hに掲げた表に従つて決定する。最終議定書の他の各署名政府の受諾書は、受諾書を寄託した日の三十日後に効力を生ずる。
6 国際連合は、この協定が効力を生じた後直ちにその登録を行う権限を与えられる。
(注)第二十六条の第四項及び第五項の原本文を次に掲げる。これらの原本文は、これらの項の改正を受諾しない国即ち、チリにのみ適用する。
4 この協定を受諾する各政府は、その本国の領域及び当該政府が国際的責任をもつ他の領域について受諾する。但し、この政府は、当該政府が国際的責任をもつそれぞれ独立した関税地域が対外通商関係及びこの協定に規定した他の事項の処理について完全な自治権をもつこと並びにその政府の受諾がこのような関税地域に関係しないことを、受諾のときに宣言することができる。更に、締約国によつてこの協定を受諾された関税地域のいずれかがその対外通商関係及びこの協定に規定された他の事項の処理について完全な自治権をもち又は獲得したときは、この地域は、責任のある締約国の前記の事実を確立する宣言による主唱に基いて締約国とみなす
5(a)この協定は、国際連合貿易雇用会議準備委員会の第二回会期の終了の際に採択した最終議定書の署名国の領域の対外貿易総額の八十五パーセントを占める最終議定書の署名政府が受諾書を国際連合事務総長に寄託した日の三十日後に、受諾した政府の間で効力を生ずる。このパーセンテージは、附属書Hに掲げた表に従つて決定する。最終議定書の他の各署名政府の受諾書は、受諾書を寄託した日の三十日後一に効力を生ずる。
(b)この項の(a)の規定にかかわらず、この協定は、第二十九条の第二項(a)の規定に基く必要な合意が成立するまでは、この項に基いて効力を生ずることはない。
第二十七条 譲許の停止又は撤回
締約国は、この協定に附属する該当の関税表に規定した譲許であつて、締約国とならなかつた政府又は締約国でなくなつた政府と最初に交渉された譲許であると決定したものについては、いつでもその全部又は一部を停止し又は撤回することができる。この措置を執る締約国は、他のすべての締約国に通告し、要請があつたときは当該産品に実質的利害関係をもつ締約国と協議しなければならない。
第二十八条 関税表の修正
1 千九百五十四年一月一日以後は、締約国は、この協定に附属する該当の関税表に記載した産品に第二条に基いて与えることに同意した待遇を、この待遇を最初に交渉された他の締約国との交渉及び同意により並びに、このような待遇に実質的な利害関係をもつと締約国団が決定した他の締約国と協議することを条件として、修正し又はその適用を停止することができる。他の産品に関する補償的な調整の規定を含む前記の交渉及び合意においては、関係締約国は、この協定において規定されているよりも貿易に対して不利でない相互的及び互恵的な譲許の一般的水準を維持するように努力しなければならない。
2(a)第一義的な関係をもつ締約国の間に合意が成立しなかつた場合にも、この待遇を修正し又はその適用を停止することを提案した締約国は、それを行うことができる。この措置が執られた場合に、この待遇を最初に交渉された締約国及びこの条の第一項に基いて、実質的な利害関係をもつと決定された他の締約国は、このような措置が執られた後六箇月以内に、この措置を執る締約国と最初に交渉された実質的に相等しい譲許を、締約国団が撤回通告書を受領した日から三十日の期間を経過した時に撤回することができる。
(b)第一義的な利害関係をもつ締約国の間に合意が成立したが、実質的な利害関係をもつとこの条の第一項に基いて決定された他の締約国が満足しない場合には、このような他の締約国は、この合意に基く措置が執られた後六箇月以内に、この同意に基く措置を執る締約国と最初に交渉された実質的に相等しい譲許を、撤回通告書を締約国団が受領した日から三十日の期間が満了したとき撤回することができる。
第二十九条 この協定のハバナ憲章に対する関係
(注)本条は、第一部及び第二十九条を修正する議定書が効力を生ずるまで、九〇頁に収録した原本文が適用される。
1 締約国は、憲法上の手続に従つてハバナ憲章を受諾するまでの間、同憲章の第一章から第六章までの及び第九章の一般原則を、行政上の権限の最大限度まで守ることを約束する。
2 この協定の第二部は、ハバナ憲章が効力を生ずる日に停止する。
3 千九百四十七年九月三十日までにハバナ憲章が効力を生じなかつたときは、締約国は、千九百四十九年十二月三十一日前に、この協定を改正し、補足し、又は維持すべきかどうかについて合意するために会合しなければならない。
4 ハバナ憲章が効力を失なつたときはいつでも、締約国は、その後できるだけ早くこの協定を補足し、改正し、又は維持すべきかどうかについて合意するために会合しなければならない。このような合意に達するまでの間、この協定の第二部は、再び効力を生ずる。但し、第二十三条以外の第二部の規定は、必要な変化を加えて、ハバナ憲章に現われた形式に置き替えなければならない。なお、締約国は、ハバナ憲章が有効でなくなつた時に同国を拘束していなかつた規定によつて拘束されることはない。
5 ハバナ憲章が効力を生ずる日までにいずれかの締約国が同憲章を受諾していないときは、締約国は、前記の締約国と他の締約国との間の関係に影響する限りにおいて、この協定を補足し、又は改正すべきかどうかについて、また、すべきならばどのようにすべきかについて合意するために協議しなければならない。このような合意に達するまでの間、この協定の第二部の規定は、この条の第二項の規定にかかわらず、前記の締約国と他の締約国との間に引き続いて適用する。
6 国際貿易機関の加盟国である締約国は、ハバナ憲章の規定の運用を妨げるようにこの協定の規定に訴えてはならない。国際貿易機関の加盟国でない締約国に対するこの項に基づく原則の適用は、この条の第五項による合意の主題となる。
第三十条 改正
1 この協定に別段に修正のための規定が設けられている場合を除き、この協定の第一部の規定に対する改正又は第二十九条若しくはこの条の規定に対する改正は、すべての締約国が受諾した時に効力を生ずる。この協定の他の改正は、これを受諾した締約国については、締約国の三分の二が受諾した時に効力を生じ、その後は、他の各締約国については、その締約国が受諾した時に効力を生ずる。
2 この協定に対する改正を受諾する締約国は、締約国団が特定する期間内に国際連合事務総長に受諾書を寄託しなければならない。この条に基いて効力を生じた改正は、これを締約国団の特定した期間内に受諾しなかつた締約国がこの協定から脱退すること又は締約国団の同意を得て締約国として留まることができる性格のものであることを、締約国団は、決定することができる。
第三十一条 脱退
第二十三条又は第三十条第二項の規定を害することなく、締約国は、千九百五十一年一月一日以後この協定から脱退することができ、又は締約国が国際的責任をもち且つこの時に対外通商関係及びこの協定に規定した他の事項の処理に完全な自治権をもつそれぞれ独立の関税地域のために別個に脱退することができる。脱退は、千九百五十一年一月一日以後、国際連合事務総長が脱退通告書を受領した日から六箇月の機関を経過したときに効力を生ずる。
第三十二条 締約国
1 この協定の締約国とは、この協定の規定を第二十六条若しくは第三十三条に基いて又は暫定的適用に関する議定書に従つて適用している政府をいう。
2 第二十六条第三項に従つてこの協定を受諾した締約国は、第二十六条第五項に従つてこの協定が効力を生じた後はいつでも、この協定を受諾しなかつた締約国が締約国でなくなることを決定することができる。
第三十三条 加入
この協定の当事国でない政府又は対外通商関係及びこの協定に規定した他の事項の処理に完全な自治権をもつそれぞれ独立の関税地域のために行動する政府は、それ自身のために又は関税地域のために、このような政府と締約国団との間で合意した条件に基いてこの協定に加入することができる。この項に基く締約国団の決定は、三分の二の多数による。
第三十五条
1 第二十五条第五項(b)の規定又は第二十九条第一項による締約国の義務を害することなく、次の場合には、二締約国間の間にこの協定又はその代わりに協定の第二条を適用しない。
(a)二締約国が相互間に関税交渉を行わなかつた場合 且つ
(b)一方の締約国が、締約国となつたときに、この適用に同意しない場合。
2 締約国団は、ハバナ憲章が効力を生ずる前はいつでも、締約国の要請があつたときは、特定の場合におけるこの条の運用を検討し、且つ、適当な勧告をすることができる。
最終の注
軍事的占領下にある地域との締約国の貿易に対する関税及び貿易に関する一般協定の適用問題は、取り扱われず、近いうちに更に検討するために留保された。その間は、この協定の規定は関連する問題を予断するものとしてはならない。これは、もちろん、このような貿易から生ずる事項に対する第二十二条及び第二十三条の規定の適用に影響を及ぼすものではない。
{付属書、注釈は省略}