[文書名] アジア開発銀行を設立する協定(アジア開銀設立協定)
アジア開発銀行を設立する協定
昭和四十年十二月四日 | マニラで作成 |
昭和四十一年七月二十二日 | 国会承認 |
昭和四十一年八月五日 | 批准の閣議決定 |
昭和四十一年八月十六日 | 批准書の寄託 |
昭和四十一年八月二十二日 | 効力発生 |
昭和四十一年八月二十四日 | 公布及び告示(条約第四号) |
締約国は、
アジア及び極東の資源の最も効果的な利用を達成し、かつ、その経済開発を促進するための手段として、一層緊密な経済協力が重要であることを考慮し、
資金その他の資源を地域の内外から動員することにより、並びに国内貯蓄の増加及び開発資金の地域内への流入の増大をもたらす条件を作り出し及び助長するよう努めることにより、開発のための追加の融資を地域のために利用することができるようにすることの重要性を理解し、
地域内の経済の調和のとれた成長及び加盟国の貿易の拡大を促進することが望ましいことを認識し、
基本的性格においてアジア的である金融機関の設立がこれらの目的に役だつことを確信して、
次の規定に従つて運営されるアジア開発銀行(以下「銀行」という。)をここに設立することを協定した。
第一条 目的
銀行は、アジア及び極東の地域(以下「地域」という。)における経済成長及び経済協力を助長し、並びに地域内の開発途上にある加盟国の共同的な又は個別的な経済開発の促進に寄与することを目的とする。この協定において、「アジア及び極東の地域」又は「地域」の用語を使用するときは、いつでも国際連合アジア極東経済委員会の付託条項に規定するアジア及び極東の地域をさすものとする。
第二条 任務
銀行は、その目的を達成するため、次の任務を有する。
(i)
地域内における公私の資本の投資で開発を目的とするものを促進すること。
(ii)
地域内の開発途上にある加盟国の開発に融資するため、銀行が保有する財源を利用すること。この場合において、地域の全部若しくは一部又は一国を対象とする事業計画及び総合計画であつて地域全体として調和のとれた経済成長に最も効果的に寄与するものを優先させ、かつ、地域内の小加盟国及び低開発加盟国が必要とするところに特別の考慮を払うものとする。
(iii)
地域内の加盟国が、その資源のより良い利用を達成し、その経済をより相互補完的なものとし、及びその貿易、特に域内貿易の秩序ある拡大を促進するため開発に関する政策及び計画を調整する場合において、当該加盟国の要請に応じて援助を与えること。
(iv)
開発に関する事業計画及び総合計画の準備、資金調達及び実施のための技術援助(特定の事業計画案の作成を含む。)を提供すること。
(v)
この協定の範囲内で銀行が適当と認める方法により、国際連合、その機関及び補助機関、特にアジア極東経済委員会、並びに公の国際機構その他の国際的機関又はいずれかの国の公私の団体で開発資金の地域内における投資に関係のあるものと協力し、かつ、投資及び援助の新たな機会についてそれらの国際的機関及び団体の関心を喚起すること。
(vi)
その他銀行の目的を促進する活動及び役務の提供を行なうこと。
第三条 加盟国の地位
1
銀行の加盟国の地位は、(i)国際連合アジア極東経済委員会の加盟国及び準加盟国並びに(ii)その他の域内国及び域外先進国で国際連合又はそのいずれかの専門機関の加盟国であるものに対して開放される。
2
1の規定に基づいて加盟国の地位を得る資格を有する国であつて第六十四条の規定に従つて加盟国とならないものは、銀行が決定する条件に従い、かつ、総務の総数の三分の二以上の多数であつて加盟国の総投票権数の四分の三以上を代表するものによる賛成の表決をもつて、銀行への加盟を承認される。
3
国際関係の処理について責任を有しない国際連合アジア極東経済委員会の準加盟国の場合には、銀行への加盟の申請は、当該申請国の国際関係に責任を有する銀行の加盟国が、銀行への加盟の承認及び加盟による利益の享有のために当該申請国に課されるすべての義務については、当該申請国が国際関係の処理の責任を引き受けるまでの期間は、同加盟国が責任を有する旨の約束を附して提出するものとする。この協定において、「国」には、国際連合アジア極東経済委員会の準加盟国である領域を含む。
第四条 授権資本
1
銀行の授権資本は、千九百六十六年一月三十一日現在の量目及び純分を有する合衆国ドルによる十億ドル(一、〇〇〇、〇〇〇、〇〇〇ドル)とする。この協定においてドルというときは、いつでも前記の価値を有する合衆国ドルをいうものと了解される。授権資本は、それぞれ一万ドル(一〇、〇〇〇ドル)の額面価額を有する十万(一〇〇、〇〇〇)株に分け、この株式には、第五条の規定に従つて加盟国のみが応募することができる。
2
当初の授権資本は、払込株式と請求払株式とに分ける。額面価額の総計が五億ドル(五〇〇、〇〇〇、〇〇〇ドル)の株式は、払込株式とし、額面価額の総計が五億ドル(五〇〇、〇〇〇、〇〇〇ドル)の株式は、請求払株式とする。
3
総務会は、適当と認める時に、及び適当と認める条件で、総務の総数の三分の二以上の多数であつて加盟国の総投票権数の四分の三以上を代表するものによる表決をもつて、銀行の授権資本を増額することができる。
第五条 株式の応募
1
各加盟国は、銀行の株式に応募しなければならない。当初の授権資本への各国の応募は、払込株式と請求払株式とにつき平等に行なわなければならない。第六十四条の規定に従つて加盟国となる国が応募する当初の株式数は、附属書Aに掲げるものとする。第三条2の規定に従つて加盟を承認される国が応募する当初の株式数は、総務会が決定する。ただし、いかなる応募も、域内加盟国が保有する資本の割合を応募済資本の総額の六十パーセント未満に減少させることとなるときは、認められない。
2
総務会は、銀行の資本を五年以上の間隔を置いて検討する。授権資本が増額されるときは、各加盟国は、総務会が決定する条件に従い、自国のそれまでの応募額が資本の増額の直前の応募済資本の総額に対して占める割合に等しい割合で資本の増額分について応募する適当な機会を与えられる。ただし、この規定は、もつぱら1及び3の規定に基づく総務会の決定を実施するための授権資本の増額の全部又は一部には適用しない。加盟国は、資本の増額のいかなる部分についても応募の義務を負わない。
3
総務会は、加盟国の要請があつたときは、総務会が決定する条件で当該加盟国の応募額を増額することができる。ただし、いかなる加盟国の応募額の増額も、域内加盟国が保有する資本の割合を応募済資本の総額の六十パーセント未満に減少させることとなるときは、認められない。総務会は、応募済資本の六パーセント未満を保有する域内加盟国が応募済資本に対するその持分の割合を増加させようとする要請に特別の考慮を払うものとする。
4
加盟国が当初に応募する株式は、額面で発行する。その他の株式も、総務会が総務の総数の過半数であつて加盟国の総投票権数の過半数を代表するものによる表決をもつて他の条件による発行を決定する特別の場合を除くほか、額面で発行する。
5
株式は、いずれの方法によるかを問わず、質に入れ、又は担保に供してはならず、また、第七章の規定に従つて銀行に譲渡する場合を除くほか、譲渡してはならない。
6
株式に基づく加盟国の責任は、その株式の発行価格の未払込部分相当額を限度とする。
7
加盟国は、加盟国であるという理由によつて、銀行の義務に対して責任を負うものではない。
第六条 応募額の払込み
1
第六十四条の規定に従つて加盟国となるこの協定の署名国が銀行の払込資本に当初に応募した額の払込みは、その額の二十パーセントずつの五回の分割払により行なうものとする。各加盟国は、この協定の効力発生の後三十日以内の日又は第六十四条1の規定に従つて自国のために行なう批准書若しくは受諾書の寄託の日以前の日のいずれかおそい方の日に最初の分割払の額を払い込む。第二回の分割払については、この協定の効力発生の日から一年で払込義務が生ずる。残りの三回の分割払については、前回の分割払について払込義務が生じた日から引き続き一年を経過するごとに払込義務が生ずる。
2
当初の払込資本に対する当初の応募額の払込みについては、各分割払のうち、
(a)
五十パーセントは、金又は交換可能通貨で払い込むものとし、
(b)
五十パーセントは、当該加盟国の通貨で払い込むものとする。
3
銀行は、いずれかの加盟国の通貨を銀行の業務の運営上必要としないときは、2(b)の規定に基づいて当該加盟国の通貨で払い込まれる額の代りに、当該加盟国の政府又は当該加盟国が指定する寄託所が発行する約束手形その他の債務証書を受理するものとする。これらの手形その他の債務証書は、譲渡禁止かつ無利子のもので、要求に応じて額面価額で銀行に払い込まなければならない。第二十四条(2)(ii)の規定に従うことを条件として、これらの手形その他の債務証書で交換可能通貨で払い込まれるものに対する要求は、これらの手形その他の債務証書のすべてについて合理的な期間を通じて同一の比率となるように行なわなければならない。
4
2(b)の規定に基づいて加盟国が自国の通貨で行なう払込みの額は、銀行が、必要と認めるときは国際通貨基金と協議した後、国際通貨基金が設定した平価があるときはそれを使用して、応募額中の払い込まれるべき部分のドル換算価額に相当すると決定する額とする。最初の払込みは、当該加盟国がこの4の規定に従つて妥当と認める額によるが、その払込みのドル相当額を実現するため必要であると銀行が決定する調整を受けるものとする。この調整は、払込義務が生じた日から九十日以内に行なわれるものとする。
5
銀行の請求払資本に対する応募額の払込みは、通常資本財源に繰り入れるための資金の借入れ又は同財源の負担となる保証に関する第十一条(ii)又は(iv)の規定に基づいて生じた銀行の債務を履行するために必要とされる場合にのみ、払込請求に応じて行なわれるものとする。
6
5に規定する払込請求の場合には、払込みは、加盟国の選択により、金、交換可能通貨又は払込請求の原因となつた銀行の債務の履行に必要な通貨で行なうことができる。未払込みの応募額に対する払込請求は、すべての請求払株式について同一の比率で行なわれるものとする。
7
銀行は、この条の規定に基づいて払込みが行なわれる場所を定める。ただし、銀行の総務会の創立総会が行なわれるまでは、1に規定する最初の分割払の払込みは、銀行の受託者としての国際連合事務総長に対して行なうものとする。
第七条 通常資本財源
この協定において、銀行の「通常資本財源」とは、次のものを含む。
(i)
第五条の規定に基づいて応募された銀行の授権資本(払込株式及び請求払株式を含む。)から、第九九条{ママ、第十九条?}1(i)の規定に従つて一又は二以上の特別基金に繰り入れられる部分を除いたもの
(ii)
第二十一条(i)の規定により与えられた権限に基づいて銀行が借入れにより調達した資金。第六条5に定める払込請求応諾義務は、この資金について適用される。
(iii)
(i)及び(ii)に掲げる財源で行なわれた貸付け又は保証に係る返済により得た資金
(iv)
(i)、(ii)及び(iii)に掲げる資金から行なわれた貸付け又は第六条5に定める払込請求応諾義務が適用される保証から生ずる収入
(v)
銀行が受領するその他の資金又は収入で第二十条に規定する銀行の特別基金財源の一部を構成しないもの
第八条 財源の使用
銀行の財源及び便宜は、もつぱら、第一条及び第二条に定める目的及び任務を実施するために使用されるものとする。
第九条 通常業務及び特別業務
1
銀行の業務は、通常業務と特別業務とする。
2
通常業務は、銀行の通常資本財源によりまかなわれる業務とする。
3
特別業務は、第二十条に定める特別基金財源によりまかなわれる業務とする。
第十条 業務の分離
1
銀行の通常資本財源及び特別基金財源は、それらの保管、使用、使用約束、投資その他の処分において、いかなる時にも、かつ、いかなる点においても、それぞれ完全に別個なものとする。銀行の財務諸表は、通常業務と特別業務とを別個に示すものとする。
2
銀行の通常資本財源は、いかなる場合にも、特別業務から又は最初に特別基金財源を使用し若しくはその使用を約束した他の活動から生じた損失又は債務を負担し、又は処理するために用いてはならない。
3
通常業務に直接関係する費用は、銀行の通常資本財源の負担とする。特別業務に直接関係する費用は、特別基金財源の負担とする。その他の費用は、銀行が決定するところに従つて負担される。
第十一条 受益人及び業務の方法
銀行は、この協定に定める条件に従つて、加盟国、その機関、下部機関若しくは行政区画又は加盟国の領域内で業務を行なう団体若しくは企業に対し、及び地域の経済開発に関係する国際的又は地域的な機関又は団体に対し融資を行ない、又は融資について便宜を与えることができる。銀行は、次のいずれの方法によつても、その業務を行なうことができる。
(i)
銀行の毀損{毀にきとルビ}されていない払込済資本、銀行の準備金(第十七条に定めるものを除く。)及び未処分剰余金から、又は段損{毀にきとルビ}されていない特別基金財源から直接貸付けを行ない、又は直接貸付けに参加すること。
(ii)
銀行がその通常資本財源に繰り入れるために資本市場において調達し、又は借入れその他の方法により取得した資金から直接貸付けを行ない、又は直接貸付けに参加すること。
(iii)
(i)及び(ii)に規定する資金からいずれかの団体又は企業の株式又は持分に投資すること。ただし、この投資は、総務会が総務の総数の過半数であつて加盟国の総投票権数の過半数を代表するものによる表決をもつて銀行にこの種の業務を開始する用意があると決定するまでは、行なつてはならない。
(iv)
経済開発のための貸付けで銀行が参加するものの全部又は一部を、主たる債務者としてであるか従たる債務者としてであるかを問わず、保証すること。
第十二条 通常業務に対する制限
1
銀行が通常業務として行なつた貸付け、株式又は持分への投資及び保証の現在高総額は、いかなる時にも、銀行の通常資本財源に含まれる毀損{毀にきとルビ}されていない応募済資本、準備金及び剰余金の合計額から第十七条に定める特別準備金その他通常業務のために使用することができない準備金を除いた額をこえてはならない。
2
第六条5に定める払込請求応諾義務が適用される銀行の借入資金から行なわれた貸付けについては、特定の通貨で銀行に支払われるべき元本の現在高総額は、いかなる時にも、同一の通貨で支払われるべき銀行の借入れの元本の現在高総額をこえてはならない。
3
銀行の通常資本財源から株式又は持分に投資される資金については、投資の総額は、その時までに実際に払い込まれた銀行の毀損{毀にきとルビ}されていない払込資本並びに銀行の通常資本財源に含まれる準備金及び剰余金の合計額から第十七条に定める特別準備金を除いた額の十パーセントをこえてはならない。
4
株式又は持分への投資の額は、当該団体又は企業の資本について理事会がそれぞれの場合に適当と決定する比率をこえてはならない。銀行は、自己の投資を保護するため必要な場合を除くほか、株式又は持分への投資により当該団体又は企業の支配力を取得しようとしてはならない。
第十三条 直接貸付けのための通貨の供給
銀行は、直接貸付けを行ない又は直接貸付けに参加するにあたつて、次のいずれの方法によつても、融資を行なうことができる。
(i)
当該事業計画が実施される領域の属する加盟国の通貨(以下「現地通貨」という。)以外の通貨で当該事業計画の外貨費用にあてるため必要なものを借入人に供与すること。
(ii)
銀行が保有する金又は交換可能通貨を売却することなく現地通貨を供給することが可能であるときは、現地通貨により当該事業計画に係る現地支出に充てるための融資を行なうこと。事業計画が実施される領域の属する加盟国の国際収支に対し当該事業計画が不当な損失又は負担をもたらし、又はもたらすおそれがあると銀行が認める特別の場合には、現地支出に充てるための銀行の融資は、当該加盟国の通貨以外の通貨によつて行なうことができる。この場合において、このための銀行の融資の額は、借入人が負担する現地支出総額の合理的な割合をこえてはならない。
第十四条 業務の原則
銀行の業務は、次の原則に従つて行なうものとする。
(i)
銀行は、主として、特定の事業計画(一国又は地域の全部若しくは一部の開発に関する総合計画の一部である事業計画を含む。)のために融資を行なうことを業務とする。ただし、銀行は、特定の開発事業計画の融資所要額が銀行の直接の監督を必要とするほど多額ではないと認めるときは、当該加盟国の開発銀行その他適当な団体が当該事業計画に融資を行なうことができるようにするため、それらの団体に対する貸付け又は貸付けの保証を銀行の業務として行なうことができる。
(ii)
銀行は、適当な事業計画を選定するにあたり、常に第二条(ii)の規定を指針としなければならない。
(iii)
銀行は、加盟国の反対があるときは、その加盟国の領域内における事業に融資してはならない。
(iv)
申請人は、貸付けが行なわれるに先だち、適当な貸付申請を提出するものとし、また、銀行の総裁は、職員による審査に基づいた当該申請に関する報告書に、自己の意見を附してこれを理事会に提出するものとする。
(v)
銀行は、貸付け又は保証の申請を審査するにあたり、銀行がすべての関係要因を考慮に入れた上で受益人にとつて合理的であると考える条件で借入人が第三者から融資又は便宜を受けることができるかどうかについて、妥当な考慮を払わなければならない。
(vi)
銀行は、貸付け又は貸付の保証を行なうにあたつては、借入人及び、保証人があるときは保証人が貸付契約に基づく各人の債務を履行することができる見込みについて、妥当な考慮を払わなければならない。
(vii)
貸付け又は貸付けの保証を行なうにあたつては、利率、手数料及び元本の償還計画は、銀行が当該貸付けについて適当であると認めるものでなければならない。
(viii)
銀行は、他の投資者が行なう貸付けの保証を行ない、又は証券の売却を引き受けるにあたつては、危険に対して適当な補償を受けなければならない。
(ix)
銀行の通常業務として又は第十九条1(i)の規定に基づいて銀行が設定した特別基金から行なわれる貸付け、投資その他の投融資の資金は、理事会が、銀行に対して相当の額の融資を行なつている非加盟国における調達又はその非加盟国において生産される物品及び役務の調達を適当とする特別の場合にその調達を許可することを、加盟国の総投票権数の三分の二以上を代表する理事の表決をもつて決定する場合を除くほか、加盟国において生産される物品及び役務の加盟国における調達のためにのみ使用しなければならない。
(x)
銀行は、直接貸付けを行なう場合には、当該事業計画に関連する支出が実際に生じたときその支出に充てる場合に限り、借入人が資金を引き出すことを認めるものとする。
(xi)
銀行は、銀行が行ない、保証し、又は参加した貸付けの資金が、その貸付けが行なわれた目的のためにのみ使用されること並びに使用にあたり経済性及び有効性の問題に妥当な注意が払われることを確保するため必要な措置を執るものとする。
(xii)
銀行は、銀行の財源の一部がいずれかの加盟国の利益のために均衡を失するほどに使用されることを回避することが望ましいことについて、妥当な考慮を払わなければならない。
(xiii)
銀行は、株式又は持分への投資については、合理的な多様性を保つように努めなければならない。銀行は、自己の投資を保護するため必要な場合を除くほか、銀行が投資した団体又は企業の経営の責任を負つてはならない。
(xiv)
銀行は、健全な銀行経営の原則をその業務の指針としなければならない。
第十五条 直接貸付け及び保証に関する条件
1
銀行が行ない若しくは参加する直接貸付け又は銀行が保証する貸付けの場合には、貸付け又は保証に関する条件(貸付けの場合は、元本、利子及び手数料の支払、償還期限並びに支払日を含み、保証の場合は、保証料及び手数料を含む。)は、第十四条に定める業務の原則及びこの協定の他の規定に従い、契約により定められる。特に、契約には、3の規定に従うことを条件として、契約に基づく銀行に対するすべての支払は、貸付けが行なわれた通貨により行なわれるべきことを定めるものとする。ただし、第十九条1(ii)の規定に基づいて設定された基金から特別業務として直接貸付け又は貸付けの保証を行なつた場合において、銀行の規則に別段の定めがあるときは、この限りでない。銀行による保証には、借入人及び、保証人があるときは保証人の債務不履行があつた場合において、保証された債券その他の債務証書を額面価額に買入れの申入れに指定した日までの経過利子を加算した価格で買い入れることを銀行が申し入れたときは、銀行が利子に関するその責任を終了させることができることを定めるものとする。
2
貸付け又は貸付けの保証の受益人が加盟国自身でない場合には、銀行は、望ましいと認めるときは、当該事業計画が行なわれる領域の属する加盟国又はその公的機関若しくは下部機関で銀行が受諾することのできるものが貸付けの条件に従つた元本の償還並びに利子及び手数料の支払を保証することを要求することができる。
3
貸付け又は保証の契約には、銀行に対するすべての支払に用いるべき通貨を明示するものとする。もつとも、これらの支払は、いつでも借入人の選択により金又は交換可能通貨で行なうことができる。
第十六条 貸付手数料及び保証料
1
銀行は、通常業務として行ない又は参加した直接貸付けに対して、利子のほかに、貸付手数料を課する。この貸付手数料は、定期的に支払われ、貸付け又は貸付参加の現在高につき算定される。その率は、年一パーセント以上とする。ただし、銀行が、その業務の開始後五年が経過した後に、加盟国の三分の二以上の多数であつて加盟国の総投票権数の四分の三以上を代表するものによる表決をもつて、この最低限度の率を引き下げることを決定するときは、この限りでない。
2
銀行は、通常業務として貸付けの保証を行なう場合には、理事会が決定する率により、当該貸付けの現在高について定期的に支払われるべき保証料を課する。
3
銀行が通常業務に関して課するその他の手数料並びに銀行が特別業務に関して課する貸付手数料、保証料及びその他の手数料は、理事会が決定する。
第十七条 特別準備金
銀行が第十六条の規定に基づいて受領した貸付手数料及び保証料の額は、特別準備金として積み立てるものとし、第十八条の規定に従つて銀行の債務を履行するために保留するものとする。この特別準備金は、理事会が決定するところに従い、流動性のある形式で保管するものとする。
第十八条 銀行の債務履行の方法
1
銀行がその通常業務として行ない、参加し、又は保証した貸付けに係る債務が履行されない場合には、銀行は、返済に用いられる通貨を除き、貸付けの他の条件の変更に関して適当と認める措置を執る。
2
通常資本財源の負担となる第十一条(ii)又は(iv)の規定に基づく借入れ又は保証に対する銀行の債務履行のための支払には
(i)
最初に、第十七条に定める特別準備金を充て、
(ii)
次に、必要な限度において、かつ、銀行の裁量により、銀行が使用することができる他の準備金、剰余金及び資本を充てる。
3
銀行の通常業務における借入金についての利子、手数料若しくは償却の契約による支払に充てるため、又は銀行が保証した貸付けについての同様の支払で通常資本財源の負担となるものに関して債務を履行するために必要な場合には、銀行は、第六条6及び7の規定に従つて、応募済みの請求払資本中の払込請求未済分の適当な額について払込請求をすることができる。
4
銀行が通常業務として借入資金から行ない又は保証した貸付けに係る債務が履行されない場合において、その債務不履行が長期間にわたるおそれがあると認めるときは、銀行は、次に定める目的のため、いずれの一年についても請求払資本に対する加盟国の応募済額の一パーセントをこえない額について請求払資本の追加の払込みを請求することができる。
(i)
銀行が保証した貸付けで債務者がその債務を履行していいものの未償還元本額の全部若しくは一部を期限前に償還すること又はその他の方法でこれに関する銀行の債務を免れること。
(ii)
銀行自身の借入れの未償還額の全部若しくは一部を買い戻すこと又はその他の方法でこれに関する銀行の債務を免れること。
5
3及び4の規定に基づいて銀行の応募済みの請求払資本の全額について払込請求が行なわれた場合において、3に定める目的のため必要なときは、銀行は、第二十四条2(i)及び(ii)の規定に基づいて課される制限を含めていかなる制限をも受けることなく、いかなる加盟国の通貨をも使用し又は交換することができる。
第十九条 特別基金
1
銀行は、次のことを行なうことができる。
(i)
総務の総数の三分の二以上の多数であつて加盟国の総投票権数の少なくとも四分の三を代表するものによる表決をもつて、銀行の毀損{毀にきとルビ}されていない払込済資本のうち第六条2(a)の規定に従つて加盟国により払い込まれた部分及び第六条2(b)の規定に従つて払い込まれた部分のそれぞれについて十パーセントをこえないものを保留し、それによつて一又は二以上の特別基金を設定すること。
(ii)
銀行の目的に役だつことを意図し、かつ、銀行の任務の範囲内に入る特別基金の管理を受諾すること。
2
1(i)の規定に基づいて銀行が設定する特別基金は、銀行が通常業務について定める条件に比べて一層長期の返済期限、一層長期の据置期間及び一層低い利率により開発上の優先度の高い保証又は貸付けを行なうために使用することができる。これらの特別基金は、また、銀行がこれらの設定にあたつて指示するところに従い、かつ、この協定の規定及び回転基金としての特別基金の性格に矛盾しないその他の条件に従つて使用することができる。
3
1(ii)の規定に従つて銀行が管理を受諾した特別基金は、銀行の目的及び当該特別基金に関する合意に矛盾しないいかなる方法及び条件によつても使用することができる。
4
銀行は、各特別基金の設定、管理及び使用のため必要な特別の規則を採択する。この規則は、明らかに銀行の通常業務のみに適用される規定を除くほか、この協定の規定に適合しなければならない。
第二十条 特別基金財源
この協定において「特別基金財源」とは、特別基金の財源をいい、次のものを含む。
(a)
払込済資本から特別基金に保留される財源又はその他の方法により最初にいずれかの特別基金に繰り入れられる財源
(b)
銀行がいずれかの特別基金に繰り入れるために受け入れる資金
(c)
いずれかの特別基金の財源から行なわれた貸付け又は保証に関して返済された資金であつて当該特別基金を規制する銀行の規則に従つて当該特別基金により受領されたもの
(d)
(a)、(b)及び(c)に掲げるいずれかの財源又は資金の使用約束を伴う銀行の業務から得られる収入が当該特別基金を規制する銀行の規則に基づいて当該特別基金について生ずる場合には、その収入
(e)
いずれかの特別基金に使用を任されたその他の財源
第二十一条 一般的権限
この協定の他の規定に特定する権限のほか、銀行は、次の権限を有する。
(i)
加盟国内又は加盟国外において資金を借り入れること及びその借入れに関して銀行が決定する見返担保その他の担保を提供すること。もつとも、常に次のことを条件とする。
(a)
銀行は、その債務証書をいずれかの国の領域において売却するに先だち、その国の承認を得なければならない。
(b)
銀行は、その債務証書がいずれかの加盟国の通貨で表示される場合には、その加盟国の承認を得なければならない。
(c)
銀行は、当該借入資金をいずれの加盟国の通貨にも制限を受けることなく交換することについて、(a)及び(b)に定める国の承認を得なければならない。
(d)
銀行は、その債務証書を特定の国において売却することを決定するに先だち、その国において以前に行なつた借入れがあるときは当該借入れの額及び第三国において以前に行なつた借入れの額並びにこれらの第三国における資金の入手可能性を考慮しなければならず、また、銀行の借入先については、できる限り異なる国から借入れを行なうべきであるという一般原則に妥当な考慮を払わなければならない。
(ii)
銀行が発行し、保証し、又は投資した証券を売買すること。ただし、銀行は、当該証券を売買する領域の属する国の同意を得なければならない。
(iii)
銀行が投資している証券の売却を容易にするためその証券を保証すること。
(iv)
銀行の目的に合致する目的のためいずれかの団体又は企業が発行する証券を引き受け、又はその引受けに参加すること。
(v)
業務上必要としない資金を、加盟国の領域内において、銀行が決定する加盟国又はその国民の債務証書に投資すること及び年金又はこれに類する使途に充てるため銀行が保有する資金を、加盟国の領域内において、加盟国又はその国民が発行する市場性のある証券に投資すること。
(vi)
銀行の目的に役だち、かつ、銀行の任務の範囲内に入る技術的な助言及び援助を提供すること。この役務の提供に伴つて生ずる支出が回収不能であるときは、銀行の純益からこれを負担する。銀行は、その業務の開始後最初の五年間は、支出が回収不能であることを前提として、払込資本の二パーセントまでを前記の役務の提出のため使用することができる。
(vii)
この協定の規定に従つて、銀行の目的及び任務を促進するため必要な又は適当な範囲内で、その他の権限を行使し、及び規則を制定すること。
第二十二条 証券面に記載すべき注意事項
銀行が発行し又は保証する各証券には、いかなる政府の債務でもない旨の目につきやすい記載をその証券面にしなければならない。ただし、実際にいずれか特定の政府の債務である場合は、この限りでないものとし、この場合には、その旨を記載するものとする。
第二十三条 交換可能性の決定
いずれかの通貨が交換可能であるかどうかを決定することがこの協定に基づいて必要となるときは、その決定は、銀行が国際通貨基金と協議した後行なわれるものとする。
第二十四条 通貨の使用
1
加盟国は、銀行又は銀行からの受益人がいずれかの国における支払のために次のものを保有し又は使用することに対し、いかなる制限をも維持し又は課することができない。
(i)
銀行の資本への応募額の払込みとして銀行が受領する金又は交換可能通貨(加盟国が第六条2(b)の規定に従つて銀行に払い込む通貨であつて2(i)及び(ii)の規定に従つて制限されるものを除く。)
(ii)
(i)に規定する金又は交換可能通貨により買い入れる加盟国の通貨
(iii)
銀行がその通常資本財源に繰り入れるために第二十一条(i)の規定に基づいて行なう借入れにより取得する通貨
(iv)
(i)から(iii)までに規定するいずれかの資金から行なわれた貸付け若しくは投資に係る元本、利子、配当若しくは手数料のための支払として、又は銀行が行なつた保証に係る保証料の支払として銀行が受領する金又は通貨
(v)
第四十条の規定に従つて行なわれる銀行の純益の分配として加盟国が銀行から受領する通貨で当該加盟国自身の通貨以外のもの
2
加盟国は、銀行が受領するいずれかの加盟国の通貨で1の規定に該当しないものをいずれかの国における支払のために銀行又は銀行の受益人が保有し又は使用することに対し、いかなる制限をも維持し又は課することができない。ただし、次の場合には、この限りでない。
(i)
開発途上にある加盟国が、銀行と協議の後、かつ、銀行の定期的審査を受けることを条件として、前記の通貨の全部又は一部の使用を、自国の領域内で生産される物品又は役務で当該領域内における使用が予定されるもののための支払に制限する場合
(ii)
その応募額が附属書AのAに定められているその他の加盟国であつてその工業製品の輸出額がその輸出総額のうちの重要な部分を占めていないものが、その応募額中の第六条2(b)の規定に従つて払い込んだ部分の全部又は一部の使用を自国の領域内で生産される物品又は役務の支払に制限することを希望する旨の宣言を、批准書又は受諾書とともに寄託する場合。ただし、この制限については、銀行の定期的審査及び銀行との協議が行なわれることを条件とし、また、当該加盟国の領域内における物品又は役務の買入れは、競争入札に通常の考慮を払うことを条件として、第六条2(b)の規定に従つて払い込まれた応募額の部分から最初に支払われるものとする。
(iii)
前記の通貨が、第十九条1(ii)の規定に基づいて得られる銀行の特別基金財源の一部を構成し、かつ、その使用が特別の規則によつて規制される場合
3
加盟国は、銀行の通常資本財源から行なわれた直接貸付けの返済として銀行が受領した通貨を、償却若しくは期限前償還の支払又は銀行自身の債務証書の全部若しくは一部の買戻しのために銀行が保有し又は使用することに対し、いかなる制限をも維持し又は課することができない。ただし、そのような保有又は使用は、銀行の応募済みの請求払資本の全額について払込請求が行なわれるまでの間は、当該加盟国の通貨で支払うことができる債務の場合を除くほか、2(i)の規定に従つて課される制限を受けるものとする。
4
銀行が保有する金又は通貨は、次の場合を除くほか、銀行が加盟国又は非加盟国の他の通貨を買い入れるために使用してはならない。
(i)
銀行の通常の業務活動中に生じた債務を履行するために使用する場合
(ii)
理事会が加盟国の総投票権数の三分の二以上を代表する理事の表決をもつて採択する決定に基づいて使用する場合
5
この条のいかなる規定も、銀行がいずれかの加盟国の領域内で負担する運営費のためその加盟国の通貨を使用することを妨げるものではない。
第二十五条 銀行の保有通貨の価値の維持
1
(a)いずれかの加盟国の通貨の国際通貨基金における平価が第四条に定めるドル換算価格において引き下げられた場合又は、(b)銀行が国際通貨基金と協議の後いずれかの加盟国の通貨の外国為替相場が著しく低落したと認める場合には、その加盟国は、銀行が保有するすべての当該通貨((a)銀行が借入れにより入手した通貨及び、(b)特別基金を設定するための合意に別段の定めがない限り、第十九条1(ii)の規定に基づいて銀行が受け入れた特別基金財源を除く。)の価値を維持するために必要な自国通貨による追加額を相当の期間内に銀行に対し支払わなければならない。
2
(a)いずれかの加盟国の通貨の国際通貨基金における平価が前記のドル換算価格において引き上げられた場合又は、(b)銀行が国際通貨基金と協議の後いずれかの加盟国の通貨の外国為替相場が著しく上昇したと認める場合には、銀行は、銀行が保有するすべての当該通貨((a)銀行が借入れにより入手した通貨及び、(b)特別基金を設定するための合意に別段の定めがない限り、第十九条1(ii)の規定に基づいて銀行が受け入れた特別基金財源を除く。)の価値を調整するために必要な当該通貨の額を相当の期間内に当該加盟国に対し支払わなければならない。
3
銀行は、すべての加盟国の通貨の平価について一律の比例による変更が行なわれた場合には、この条の規定の適用を免除することができる。
第二十六条 機構
銀行に、総務会、理事会、総裁、一人又は二人以上の副総裁並びに必要と認められるその他の役員及び職員を置く。
第二十七条 総務会の構成
1
各加盟国は、総務会に代表者を派遣するものとし、総務一人及び代理一人を任命するものとする。各総務及び各代理は、任命した加盟国が任意に定めるところに従つて勤務するものとする。代理は、総務が不在である場合を除くほか、投票することができない。総務会は、年次会合において総務のうちの一人を議長に指名するものとし、議長は、次の年次会合において次の議長が選出されるまで在任するものとする。
2
総務及び代理は、その資格においては、銀行から報酬を受けないで勤務する。ただし、銀行は、会合への出席に際して負担する相当の費用をこれらの者に支給することができる。
第二十八条 総務会の権限
1
銀行のすべての権限は、総務会に付与される。
2
総務会は、その権限の一部又は全部を理事会に委任することができる。ただし、次の権限を除く。
(i)
新加盟国の加盟を承認し、及びその加盟の承認の条件を決定する権限
(ii)
銀行の授権資本を増額し、又は減額する権限
(iii)
加盟国の資格停止を行なう権限
(iv)
理事会が行なつたこの協定の解釈又は適用に関する異議の申立てを裁決する権限
(v)
他の国際機関との協力のための一般的な協定の締結を許可する権限
(vi)
銀行の理事及び総裁を選出する権限
(vii)
理事及びその代理の報酬並びに総裁の給料その他勤務に関する契約の条件を定める権限
(viii)
銀行の貸借対照表及び損益計算書を、監査人の報告を審査した上で承認する権限
(ix)
銀行の純益の留保及び分配を決定する権限
(x)
この協定を改正する権限
(xi)
銀行の業務を終了させること及びその資産を分配することを決定する権限
(xii)
この協定において明示的に総務会に付与されたその他の権限を行使する権限
3
総務会は、2の規定に基づいて理事会に委任したいかなる事項についても指揮監督を行なう完全な権限を保有する。
4
総務会は、適当な経済的考慮を払つた上で、総務の総数の三分の二以上の多数であつて加盟国の総投票数{ママ、総投票権数?}の四分の三以上を代表するものによる表決をもつて、この協定の適用上、いずれの国又は加盟国が先進国若しくは先進加盟国又は開発途上にある国若しくは開発途上にある加盟国とみなされるべきかを随時決定することができる。
第二十九条 総務会の手続
1
総務会は、年次会合のほか、総務会が定め、又は理事会が招集する会合を開く。理事会は、銀行の五加盟国が要請したときは、総務会を招集するものとする。
2
総務会の会合の定足数は、総務の過半数で加盟国の総投票権数の三分の二以上を代表するものとする。
3
総務会は、規則を設けることによつて、理事会が望ましいと認めるとき総務会の会合を招集することなしに特定の問題に関して総務の表決をとる手続を定めることができる。
4
総務会及び、権限を与えられた範囲内で、理事会は、銀行の業務を運営するため必要な又は適当な補助機関を置くことができる。
第三十条 理事会の構成
1
(i)
理事会は、十人の理事で構成するものとし、これらの理事は、総務会の構成員であつてはならない。そのうち、
(a)
七人は、域内加盟国を代表する総務が選挙する。
(b)
三人は、域外加盟国を代表する総務が選挙する。
理事は、経済及び金融に関する問題について有能な者でなければならず、附属書Bに従つて選挙されるものとする。
(ii)
総務会は、創立総会後の第二回年次会合において、理事会の規模及び構成について検討するものとし、その時の事情により理事会における小低開発加盟国の代表者の数の増加が望ましいときは、これに特別の考慮を払つて、理事の数を適当に増加するものとする。この(ii)の規定に基づく決定は、総務の総数の過半数であつて加盟国の総投票権数の三分の二以上を代表するものによる表決をもつて行なわれるものとする。
2
各理事は、不在のときに自己に代わつて行動する完全な権限を有する代理を任命する。理事及び代理は、加盟国の国民でなければならない。二人以上の理事が同一の国籍を有してはならず、また、二人以上の代理が同一の国籍を有してはならない。代理は、理事会の会合に参加することはできるが、理事に代わつて行動しているときでなければ、投票することができない。
3
理事は、二年間在任し、再選されることができる。理事は、後任者が選出され、かつ、資格を与えられるまで在任する。理事が任期終了前百八十日をこえる期間欠員となつたときは、前任の理事を選挙した総務は、この協定の附属書Bに従つて残任期間のため後任者を選挙する。選出には、前記の総務による投票の過半数を必要とする。理事が任期終了前百八十日をこえない期間欠員となつたときも、前任の理事を選挙した総務は、同様の方法により残任期間のため後任者を選挙することができる。選出には、前記の総務による投票の過半数を必要とする。欠員の間は、前任の理事の代理は、代理を任命する権限を除くほか、理事の権限を行使する。
第三十一条 理事会の権限
理事会は、銀行の一般的業務を運営する責任を有し、このため、この協定により明示的に与えられる権限のほか、総務会から委任されたすべての権限を行使する。特に、次の権限を有する。
(i)
総務会の作業を準備する権限
(ii)
総務会の一般的指令に従つて、貸付け、保証、株式又は持分への投資、銀行の借入れ、技術援助の供与及びその他銀行の業務に関する決定を行なう権限
(iii)
各年次会合で総務会の承認を得るため各会計年度の決算書を提出する権限
(iv)
銀行の予算を承認する権限
第三十二条 理事会の手続
1
理事会は、銀行の主たる事務所で通常その職務を行ない、銀行の業務の必要に応じて会合する。
2
理事会の会合の定足数は、理事の過半数で加盟国の総投票権数の三分の二以上を代表するものとする。
3
総務会は、規則を採択することによつて、いずれかの加盟国が、自国の国籍の理事がいないときは、自国に特に影響がある事項について審議が行なわれている間、理事会の会合に投票権を有しないで出席する代表者一人を送ることができるようにする。
第三十三条 表決
1
各加盟国の投票権数は、各加盟国の基本票数と比例票数との合計とする。
(i)
各加盟国の基本票数は、すべての加盟国の基本票数と比例票数との合計票数の二十パーセントをすべての加盟国の間に均等に分配して算出される票数とする。
(ii)
各加盟国の比例票数は、その加盟国の持株数に等しい数の票数とする。
2
各総務は、総務会における表決において、自己が代表する加盟国の票数を投票する資格を有する。この協定に別段の明示の規定がある場合を除くほか、総務会が決定すべきすべての事項は、当該会合で代表される投票権数の過半数によつて決定するものとする。
3
各理事は、理事会における表決において、各自の選出のために算入された票数を投票する資格を有するが、その票数を一括して投票する必要はない。この協定に別段の明示の規定がある場合を除くほか、理事会が決定すべきすべての事項は、当該会合で代表される投票権数の過半数によつて決定するものとする。
第三十四条 総裁
1
総務会は、総務の総数の過半数であつて加盟国の総投票権数の過半数を代表するものによる表決をもつて、銀行の総裁一人を選挙する。総裁は域内加盟国の国民でなければならない。総裁は、在任の間は、総務若しくは理事又はそれらの者の代理であつてはならない。
2
総裁の任期は、五年とする。総裁は、再選されることができる。ただし、総裁は、総務会が総務の総数の三分の二以上の多数であつて加盟国の総投票権数の三分の二以上を代表するものによる表決をもつて決定する場合には、退任するものとする。総裁がいずれかの理由により任期終了前百八十日をこえる期間欠員となつたときは、総務会は、1の規定に従つて残任期間のため後任者を選挙する。総裁がいずれかの理由により任期終了前百八十日をこえない期間欠員となつたときも、総務会は、同様の方法により残任期間のため後任者を選挙することができる。
3
総裁は、理事会の議長となるが、可否同数の場合の決定投票を除くほか、投票権を有しない。総裁は、総務会の会合に参加することはできるが、投票してはならない。
4
総裁は、銀行の法律上の代表者とする。
5
総裁は、銀行の職員の長であつて、理事会の指揮の下に、銀行の経常的業務を行なう。総裁は、理事会が採択した規則に従つて、役員及び職員の組織及び任免の責任を負う。
6
役員及び職員の任命にあたつては、最高水準の能率及び技術的能力を確保することが最も重要であるが、総裁は、地域内のできる限り広範な地理的基礎に基づいてそれらの者を採用することについても妥当な考慮を払わなければならない。
第三十五条 副総裁
1
理事会は、総裁の勧告に基づいて、一人又は二人以上の副総裁を任命する。副総裁は、理事会が定める期間在任し、かつ、理事会が決定するところに従い、権限を行使し、及び銀行の管理の任務を遂行する。総裁の不在又は心身の故障の場合には、副総裁(二人以上副総裁がいるときは、上位の副総裁)は、総裁の権限及び任務を代行するものとする。
2
副総裁は、理事会の会合に参加することはできるが、そこでの投票権を有しない。ただし、副総裁又は場合により上位の副総裁は、総裁に代わつて行動するときは、決定投票を行なうものとする。
第三十六条 政治活動の禁止及び銀行の国際的性格
1
銀行は、銀行の目的又は任務を阻害し、制限し、ゆがめ、又はその他の方法で変更するおそれのある貸付け又は援助を受け入れてはならない。
2
銀行、総裁、副総裁並びに役員及び職員は、いずれの加盟国の政治問題にも干渉してはならず、また、いずれかの決定を行なうにあたつては、関係加盟国の政治的性格によつて影響されてはならない。その決定は、経済上の考慮のみに基づいて行なわれなければならない。これらの経済上の考慮は、銀行の目的及び任務を達成し、かつ、遂行するため、公平に比較衡量を加えられるものとする。
3
銀行の総裁、副総裁並びに役員及び職員は、その職務の執行にあたつて、銀行に対してのみ責任を負い、その他の当局に対しては責任を負わない。銀行の各加盟国は、この責任の国際的性格を尊重し、これらの者の職務の執行に影響を及ぼすすべての企図を慎まなければならない。
第三十七条 銀行の事務所
1
銀行の主たる事務所は、フィリピンのマニラに置く。
2
銀行は、代理事務所又は支事務所をその他の場所に設けることができる。
第三十八条 連絡経路及び寄託所
1
各加盟国は、銀行がこの協定に基づいて生ずる事項に関して連絡することができる適当な公的機関を指定するものとする。
2
各加盟国は、銀行が保有する当該加盟国の通貨その他の資産の寄託所として、自国の中央銀行又は銀行との合意により定める他の機関を指定するものとする。
第三十九条 常用語及び報告
1
銀行の常用語は、英語とする。
2
銀行は、監査済みの計算書を含む年次報告を加盟国に送付し、かつ、公表するものとする。銀行は、また、その財務状況の概要書及び業務の結果を示す損益計算書を四半期ごとに加盟国に送付するものとする。
3
銀行は、さらに、その目的の達成及び任務の遂行のため望ましいと認めるその他の報告を公表することができる。その報告は、銀行の加盟国に送付されるものとする。
第四十条 純益の割当て
1
総務会は、毎年、特別基金に生ずる純益を含む銀行の純益から準備金のための控除を行なつたものについて、剰余金への繰入額及び、加盟国への分配が行なわれるときは分配額を決定するものとする。
2
1に定める分配は、各加盟国が保有する株式数に比例して行なうものとする。
3
支払は、総務会が決定する方法及び通貨により行なうものとする。
第四十一条 脱退
1
加盟国は、銀行に対する書面による通告を主たる事務所に送達することにより、いつでも銀行から脱退することができる。
2
加盟国による脱退は、通告に明記する日に効力を生ずるものとし、加盟国は、同日にその資格を失うものとする。ただし、この日は、いかなる場合にも、銀行が当該通告を受領した日から少なくとも六箇月後の日でなければならない。もつとも、加盟国は、脱退が最終的に効力を生ずる前は、いつでも、脱退の意志の通告を取り消すことを書面により銀行に通告することができる。
3
脱退する加盟国は、脱退通告の送達の日に銀行に対して負つているすべての直接の債務及び偶発債務については引き続いて責任を負うものとする。脱退が最終的に効力を生じたときは、脱退した加盟国は、銀行が脱退通告を受領した日の後行なつた業務の結果生じる債務に関しては、いかなる責任も負わないものとする。
第四十二条 資格停止
1
加盟国が銀行に対するいずれかの義務を履行しなかつたときは、総務会は、総務の総数の三分の二以上の多数であつて加盟国の総投票権数の四分の三以上を代表するものによる表決をもつて、その加盟国の資格を停止することができる。
2
資格停止を受けた加盟国は、その資格停止の日から一年で自動的に銀行の加盟国でなくなる。ただし、この一年の期間中に総務会が資格停止に必要な多数と同様の多数により当該加盟国の資格を回復することを決定する場合は、この限りでない。
3
加盟国は、資格停止中は、脱退する権利を除くほか、この協定に基づくいかなる権利をも行使することはできないが、引き続きすべての義務には服さなければならない。
第四十三条 勘定の決済
1
いずれかの国が加盟国でなくなつた日の後は、加盟国でなくなる前に契約された貸付け又は保証の一部が償還されない間は、銀行に対する直接の債務及び銀行に対する偶発債務について引き続いて責任を負うが、その後に銀行が新たに契約した貸付け及び保証については責任を負わないものとし、また、銀行の収入にあずからず、かつ、銀行の経費を負担しないものとする。
2
いずれかの国が加盟国でなくなつたときは、銀行は、その国との間の勘定の決済の一部として3及び4の規定に従つてその国の株式の買戻しについて取極をするものとする。この場合において、その株式の買戻価格は、その国が加盟国でなくなつた日における銀行の帳簿価額とする。
3
この条の規定に基づいて銀行が買い戻した株式の代金の支払は、次の条件によるものとする。
(i)
当該国に対してその株式の代金として支払うべき金額は、当該国、その中央銀行又は当該国のいずれかの機関、下部機関若しくは行政区画が借入人又は保証人として銀行に対し引き続いて責任を負う間は、留保するものとし、かつ、銀行の選択によつて、この責任に係る債務にその期限が到来したときに充てることができる。第六条5の規定に基づく株式応募に係る将来の払込請求について当該国が負う偶発債務を理由としては、いかなる支払も留保してはならない。いかなる場合にも、加盟国の株式の代金としてその加盟国に支払うべき金額は、その国が加盟国でなくなつた日から六箇月後までは支払わないものとする。
(ii)
株式の代金の支払は、旧加盟国が買戻価格の全額を受領するまで、当該国が相当額の株券を引き渡すつど、2の買戻価格として支払うべき金額が(3)(i)の貸付け及び保証に対する責任額の総計をこえる額の範囲内ですることができる。
(iii)
支払は、銀行の財務状況を考慮して、使用可能な通貨で銀行が決めるものにより行なうものとする。
(iv)
いずれかの国が加盟国でなくなつた日に未償還額がある保証又は貸付けについて銀行が損失を受けた場合において、損失の金額が同日における損失引当準備金の額をこえるときは、その国は、株式の買戻価格の決定の際にその損失が考慮されていたとすれば株式の買戻価格から減額されていたはずである額を要求に応じて払い戻すものとする。さらに、旧加盟国は、第六条5の規定に基づく未払込応募額に係る払込請求について、株式の買戻価格の決定の際に資本に毀損{毀にきとルビ}が生じていて払込請求がされていたとすれば要求されていたはずである額の範囲内で引き続いて責任を負うものとする。
4
いずれかの国が加盟国でなくなつた日から六箇月以内に銀行が第四十五条の規定に基づいてその業務を終了したときは、その国のすべての権利は、第四十五条から第四十七条までの規定に従つて定められる。その国は、第四十五条から第四十七条までの規定の適用上、引き続き加盟国とみなされるが、投票権を有しないものとする。
第四十四条 業務の一時的停止
緊急の場合には、理事会は、総務会が審議して措置を執るまでの間、新規の貸付け及び保証について業務を一時的に停止することができる。
第四十五条 業務の終了
1
銀行は、総務の総数の三分の二以上の多数であつて加盟国の総投票権数の四分の三以上を代表するものによる表決をもつて承認された総務会の決議により業務を終了することができる。
2
銀行は、業務の終了後においては、その資産の秩序ある換価、保全及び管理並びにその債務の決済に附随する活動を除くほか、すべての活動を直ちに停止するものとする。
第四十六条 加盟国の責任及び請求権の弁済
1
銀行の業務を終了する場合において、すべての加盟国が銀行の資本に対する払込請求未済の応募額について有する責任及び自国通貨の減価について有する責任は、すべての偶発的な請求権を含む債権者のすべての請求権の履行が完了するまでの間、継続するものとする。
2
直接の請求権を有するすべての債権者に対しては、最初に銀行の資産から、次に未払込応募額又は払込請求が可能な応募額に関する銀行への払込金から弁済するものとする。直接の請求権を有する債権者に対し支払をするに先だつて、理事会は、直接の請求権を有する者と偶発的な請求権を有する者との間に比例的な分配を確保するため必要と認める措置を執るものとする。
第四十七条 資産の分配
1
銀行の資本に対する応募を理由とする資産の分配は、債権者に対するすべての債務を履行し、又は履行する用意を完了するまでは行なわないものとする。さらに、その分配は、総務の総数の三分の二以上の多数であつて加盟国の総投票権数の四分の三以上を代表するものによる表決をもつて総務会により承認されなければならない。
2
銀行の資産は、各加盟国が有する資本に比例して、銀行が公正かつ衡平と認める時期及び条件により加盟国に分配されるものとする。分配される資産の各国の取分は、資産の種類について画一的であることを必要としない。いかなる加盟国も、銀行に対するすべての債務を決済するまでは、資産の分配において自己の取分を受け取る資格を有しないものとする。
3
この条の規定に従つて分配される資産を受け取つた加盟国は、銀行がその資産について分配前に有していた権利と同一の権利を有する。
第四十八条 この章の目的
銀行が効果的にその目的を達成し、及び与えられた任務を遂行することができるようにするため、銀行に対し、この章に規定する地位、免除、課税免除及び特権を各加盟国の領域において与えるものとする。
第四十九条 法的地位
銀行は、完全な法人格を有し、特に、次のことを行なう完全な能力を有する。
(i)
契約をすること。
(ii)
動産及び不動産を取得し、及び処分すること。
(iii)
訴えを提起すること。
第五十条 訴訟手続の免除
1
銀行は、資金を借り入れ、債務を保証し、若しくは証券を売買し、若しくはその売却を引き受ける権限を行使することから又はこれらの権限の行使に関連して生ずる場合を除くほか、あらゆる形式の訴訟手続の免除を享有する。前記の場合には、銀行に対する訴えは、銀行が当該領域内に主たる事務所若しくは支事務所を有しており、若しくは訴訟に関する送達若しくは告知を受けるため代理人を任命している国又は当該領域内で銀行が証券の発行若しくは保証を行なつている国の管轄裁判所においてのみ提起することができる。
2
1の規定にかかわらず、加盟国、その機関若しくは下部機関又は加盟国、その機関若しくは下部機関を直接若しくは間接に代理し、若しくはそれらの請求権を承継した団体若しくは個人は、銀行に対し訴えを提起してはならない。加盟国は、銀行と加盟国との間の紛争を解決するためには、この協定、銀行の基本規定及び規則又は銀行との契約書に定める特別手続によるものとする。
3
銀行の財産及び資産は、銀行に対する裁判の確定前は、所在地及び占有者のいかんを問わず、あらゆる形式の押収、差押え又は強制執行を免除される。
第五十一条 資産に関する免除
銀行の財産及び資産は、所在地及び占有者のいかんを問わず、行政上又は立法上の措置による捜索、徴発、没収、収用その他あらゆる形式の強制処分を免除される。
第五十二条 文書に関する免除
銀行の記録及び一般に銀行が所有し、又は保管する文書は、所在地のいかんを問わず不可侵とする。
第五十三条 資産に対する制限からの自由
銀行のすべての財産及び資産は、銀行の目的及び任務を効果的に遂行するために必要な範囲内において、かつ、この協定の規定に従うことを条件として、いかなる性質の制限、規制、管理及びモラトリアムをも課されない。
第五十四条 通信に関する特権
各加盟国は、銀行の公的通信に対して、他の加盟国の公的通信に対して与える待遇よりも不利でない待遇を与えなければならない。
第五十五条 銀行員の免除及び特権
銀行の総務、理事、代理、役員及び使用人(銀行のための任務を遂行する専門家を含む。)は、
(i)
公的資格で行なう行為について訴訟手続から免除される。ただし、銀行がこの免除を放棄するときは、この限りでない。
(ii)
当該加盟国の国民でないときは、加盟国が他の加盟国の同等の地位の代表者、公務員及び使用人に対して与える出入国制限、外国人登録義務及び国民的服役義務の免除並びに為替管理に関する便宜と同一の免除及び便宜を与えられる。
(iii)
加盟国が他の加盟国の同等の地位の代表者、公務員及び使用人に対して与える旅行上の便宜に関する待遇と同一の待遇を与えられる。
第五十六条 課税の免除
1
銀行並びにその資産、財産及び収入並びにその業務及び取引は、すべての内国税及び関税を免除される。銀行は、また、公租公課の納付、源泉徴収又は徴収の義務を免除される。
2
銀行が理事、代理、役員又は使用人(銀行のための任務を遂行する専門家を含む。)に支払う給料その他の給与に対し又はこれらの給与に関しては、いかなる租税も課してはならない。ただし、加盟国が自国の市民又は国民に銀行から支払われる給料その他の給与に対して自国及びその行政区画が課税する権利を留保する旨の宣言を批准書又は受諾書とともに寄託する場合は、この限りでない。
3
銀行が発行する債務証書その他の証書(その配当又は利子を含む)に対しては、保有者のいかんを問わず、次のいかなる種類の租税も課してはならない。
(i)
銀行が発行したことのみを理由として債務証書その他の証書に対して不利な差別を設ける租税
(ii)
債務証書その他の証書の発行、支払予定若しくは支払実施の場所若しくは通貨又は銀行が維持する事務所若しくは業務所の位置を唯一の法律上の基準とする租税
4
銀行が保証する債務証書その他の証書(その配当又は利子を含む。)に対しては、保有者のいかんを問わず、次のいかなる種類の租税も課してはならない。
(i)
銀行が保証したことのみを理由として債務証書その他の証書に対して不利な差別を設ける租税
(ii)
銀行が維持する事務所又は業務所の位置を唯一の法律上の基準とする租税
第五十七条 実施
各加盟国は、自国の法律制度に従つて、この章の規定を自国の領域内で実施するために必要な措置をすみやかに執り、かつ、その措置を銀行に通報しなければならない。
第五十八条 免除、課税免除及び特権の放棄
銀行は、その裁量により、いかなる場合にも、この章の規定に基づいて与えられる特権、免除及び課税免除を自己の利益に最も適当と認める方法及び条件で放棄することができる。
第五十九条 改正
1
この協定は、総務の総数の三分の二以上の多数であつて加盟国の総投票権数の四分の三以上を代表するものによる表決をもつて承認された総務会の決議によつてのみ改正することができる。
2
1の規定にかかわらず、次のものを変更する改正の承認には総務会の全会一致の合意を必要とする。
(i)
銀行から脱退する権利
(ii)
第五条6及び7に定める責任の限度
(iii)
第五条2に定める株式の買入れに関する権利
3
この協定を改正する提案は、加盟国又は理事会のいずれから提議されたものであつても、総務会の議長に通報され、議長は、その提案を総務会に提出する。改正案が採択されたときは、銀行は、すべての加盟国にあてた公式の通報によつてこの旨を確認する。改正は、公式の通報の日の後三箇月ですべての加盟国について効力を生ずるものとする。ただし、総務会がその通報中に異なる期間を明記するときは、この限りでない。
第六十条 解釈又は適用
1
この協定の規定の解釈又は適用について加盟国と銀行との間又は二以上の加盟国相互の間に生ずる疑義は、理事会に決定のため提出する。審議される疑義が自国に特に影響がある加盟国は、理事会に自国の国籍の理事がいないときは、当該審議が行なわれる間理事会に代表者を出す資格を有するが、この代表者は、投票権を有しないものとする。代表者を出すこの権利は、総務会によつて規制される。
2
理事会が1の規定に基づいて決定を下した場合には、いずれの加盟国も、その疑義を総務会に付託することを要求することができるものとし、総務会の決定は、最終的なものとする。総務会の決定が下されるまでの間、銀行は、必要と認める限り、理事会の決定に基づいて行動することができる。
第六十一条 仲裁
銀行と加盟国でなくなつた国との間又は、銀行の業務を終了する決議を採択した後において、銀行と加盟国との間に意見の相違が生じたときは、この意見の相違は、三人の仲裁人による仲裁に付託するものとする。仲裁人の一人は、銀行が任命し、他の一人は、当該国が任命し、第三の仲裁人は、当事者が別に合意しない限り、国際司法裁判所長又は総務会が採択した規則で定める他の当局が任命するものとする。最終的で、かつ、当事者を拘束する決定は、仲裁人の過半数の表決をもつて行なうことができる。第三の仲裁人は、手続問題に関して当事者の意見が相違する場合には、その問題を解決する権限を有する。
第六十二条 承認とみなされる場合
銀行が行為をする前に加盟国の承認を必要とする場合には、銀行が当該行為の提案を当該加盟国に通知するにあたつて定める相当の期間内に当該加盟国が異議を申し立てないときは、承認が与えられたものとみなす。
第六十三条 署名及び寄託
1
英語によるこの協定の原本一通は、千九百六十六年一月三十一日まで、バンコックにある国際連合アジア極東経済委員会において附属書Aに掲げる国の政府の署名のために開放しておく。この原本は、その後国際連合事務総長(以下「寄託者」という。)に寄託する。
2
寄託者は、すべての署名国及び銀行の加盟国となる他の国にこの協定の認証謄本を送付する。
第六十四条 批准又は受諾
1
この協定は、署名国によつて批准又は受諾がされなければならない。批准書又は受諾書は、千九百六十六年九月三十日以前に寄託者に寄託されなければならない。寄託者は、他の署名国に批准書又は受諾書の各寄託及びその日付を通告するものとする。
2
この協定が効力を生ずる日の前に批准書又は受諾書を寄託した署名国は、効力発生の日に銀行の加盟国となる。その他の署名国で1の規定に従つて批准書又は受諾書を寄託したものは、その寄託の日に銀行の加盟国となる。
第六十五条 効力発生
この協定は、附属書Aに掲げる当初の応募額の総計が銀行の授権資本の六十五パーセント以上に達する少なくとも十五署名国(十以上の域内国を含む。)がそれぞれの批准書又は受諾書の寄託を完了したときに、効力を生ずる。
第六十六条 業務の開始
1
この協定が効力を生じたときは直ちに、各加盟国は、総務を任命し、また、国際連合アジア極東経済委員会の事務局長は、総務会の創立総会を招集する。
2
総務会は、その創立総会で次のことを行なうものとする。
(i)
第三十条1の規定に従つて行なわれる銀行の理事の選挙のための取極を行なうこと。
(ii)
銀行がその業務を開始する日を決定するための取極を行なうこと。
3
銀行は、その業務の開始の日を加盟国に通告するものとする。
千九百六十五年十二月四日フィリピンのマニラ市で、英語により本書一通を作成した。この本書は、第六十三条の規定に従い、バンコックにある国際連合アジア極東経済委員会に送付され、その後ニュー・ヨークにある国際連合の事務総長に寄託される。
附属書A 第六十四条の規定に従つて加盟国となる国の授権資本への当初の応募額
A 域内国
I
国名 応募額(百万合衆国ドル) |
1 アフガニスタン 三・三六 |
2 オーストラリア 八五・〇〇 |
3 カンボディア 三・〇〇 |
4 セイロン 八・五二 |
5 中華民国 一六・〇〇 |
6 インド 九三・〇〇 |
7 イラン 六〇・〇〇 |
8 日本国 二〇〇・〇〇 |
9 大韓民国 三〇・〇〇 |
10 ラオス 〇・四二 |
11 マレイシア 二〇・〇〇 |
12 ネパール 二・一六 |
13 ニュー・ジーランド 二二・五六 |
14 パキスタン 三二・〇〇 |
15 フィリピン 三五・〇〇 |
16 ヴィエトナム共和国 七・〇〇 |
17 シンガポール 四・〇〇 |
18 タイ 二〇・〇〇 |
19 西サモア 〇・〇六 |
合計 六四二・〇八 |
II
次の域内国は、第六十三条の規定に従つてこの協定の署名国となることができる。ただし、これらの国は、署名に際して、銀行の資本に対しそれぞれ次の額の応募を行なわなければならない。
国名 応募額(百万合衆国ドル) |
1 ビルマ 七・七四 |
2 モンゴル 〇・一八 |
合計 七・九二 |
B 域外国
I
国名 応募額(百万合衆国ドル) |
1 ベルギー 五・〇〇 |
2 カナダ 二五・〇〇 |
3 デンマーク 五・〇〇 |
4 ドイツ連邦共和国 三〇・〇〇 |
5 イタリア 一〇・〇〇 |
6 オランダ 一一・〇〇 |
7 連合王国 一〇・〇〇 |
8 アメリカ合衆国 二〇〇・〇〇 |
合計 二九六・〇〇 |
II
千九百六十五年十月二十一日から同年十一月一日までの間バンコックで開催されたアジア開発銀行に関する準備委員会の会合に参加し、かつ、その会合において銀行への加盟について関心を示した次の域外国は、第六十三条の規定に従つてこの協定の署名国となることができる。ただし、これらの国は、署名に際して、銀行の資本に対し五百万ドル(五、〇〇〇、〇〇〇ドル)以上の額の応募を行なわなければならない。
1 オーストリア |
2 フィンランド |
3 ノールウェー |
4 スウェーデン |
III
BIに掲げるいずれの域外国も、千九百六十六年一月三十一日以前に、バンコックにある国際連合アジア極東経済委員会の事務局長に通報することにより自国の応募額を増加することができる。ただし、BI及びIIに掲げる域外国の当初の応募の合計額は、三億五千万ドル(三五〇、〇〇〇、〇〇〇ドル)をこえてはならない。
附属書B 理事の選挙
A 域内加盟国を代表する総務による理事の選挙
(1)
域内加盟国を代表する各総務は、各自が代表する加盟国のすべての票数を一人に投票しなければならない。
(2)
最高の票数を得た七人は、理事となる。ただし、得票数が域内加盟国の総投票権数の十パーセントに達しなかつた者は、選出されないものとする。
(3)
第一回の投票で七人が選出されなかつたときは、第二回の投票を行なう。この投票においては、第一回の投票で最低の票数を得た者は、選挙される資格がないものとし、次に掲げる者のみが投票する。
(a)
第一回の投票で選出されなかつた者にその際投票した総務
(b)
総務のうち、(4)の規定に従い、第一回の投票で選出された者にその際投票した票数によつてその者の得票数が域内加盟国の総投票権数の十一パーセントをこえることとなつたとみなさる{ママ、みなされる?}者
(4)
(a)
いずれの総務が投票した票数によつてある者の得票数が十一パーセントをこえることとなつたとみなすかを決定するにあたつては、この十一パーセントは、まずその者に対して最高の票数を投票した総務の票数を、次に第二位の票数を投票した総務の票数を、以下票数の多い順に十一パーセントに達するまでの票数を含むものとみなす。
(b)
ある者の得票数が十パーセントをこえることとなるためにいずれかの総務の票数の一部が計上されなければならないときは、その総務のすべての票数は、その者の得票数がこれにより十一パーセントをこえるときでも、その者に投票されたものとみなす。
(5)
第二回の投票後七人が選出されなかつたときは、このAに定める原則及び手続に従つてさらに投票を行なう。ただし、六人が選出された後は、第七の者は、(2)の規定にかかわらず、域内加盟国の残余の票数の単純多数決で選出することができる。残余の票数は、第七の理事の選出のために投票されたものとみなす。
(6)
総務会は、域内加盟国を代表する総務が選出する理事の数の増加に応じて、(2)、(3)及び(4)に定める百分率を調整するものとする。
B 域外加盟国を代表する総務による理事の選挙
(1)
域外加盟国を代表する各総務は、各自が代表する加盟国のすべての票数を一人に投票しなければならない。
(2)
最高の票数を得た三人は、理事となる。ただし、得票数が域外加盟国の総投票権数の二十五パーセントに達しなかつた者は、選出されないものとする。
(3)
第一回の投票で三人が選出されなかつたときは、第二回の投票を行なう。この投票においては、第一回の投票で最低の票数を得た者は、選挙される資格がないものとし、次に掲げる者のみが投票する。
(a)
第一回の投票で選出されなかつた者にその際投票した総務
(b)
総務のうち、(4)の規定に従い、第一回の投票で選出された者にその際投票した票数によつてその者の得票数が域外加盟国の総投票権数の二十六パーセントをこえることとなつたとみなされる者
(4)
(a)
いずれの総務が投票した票数によつてある者の得票数が二十六パーセントをこえることとなつたとみなすかを決定するにあたつては、この二十六パーセントは、まずその者に対して最高の票数を投票した総務の票数を、次に第二位の票数を投票した総務の票数を、以下票数の多い順に二十六パーセントに達するまでの票数を含むものとみなす。
(b)
ある者の得票数が二十五パーセントをこえることとなるためにいずれかの総務の票数の一部が計上されなければならないときは、その総務のすべての票数は、その者の得票数がこれにより二十六パーセントをこえるときでも、その者に投票したものとみなす。
(5)
第二回の投票後三人が選出されなかつたときは、このBに定める原則及び手続に従つてさらに投票を行なう。ただし、二人が選出された後は、第三の者は、域外加盟国の応募額の総額が少なくとも三億四千五百万ドルに達することを条件として、(2)の規定にかかわらず、残余の票数の単純多数決で選出することができる。残余の票数は、第三の理事の選出のために投票されたものとみなす。
(6)
総務会は、域外加盟国を代表する総務が選出する理事の数の増加に応じて、(2)、(3)及び(4)に定める百分率を調整するものとする。
アフガニスタンのために
A・W・ハイダー
オーストラリアのために
ポール・ハスラック
ベルギーのために
ビルマのために
カンボディアのために
チャウ・サウ
カナダのために
J・R・ニコルソン
セイロンのために
W・テネクーン
中国のために
P・Y・シュー
デンマークのために
ドイツ連邦共和国のために
ヨハン・V・シュテコフ
インドのために
バリ・ラム・バガット
イランのために
A・アリカーニ
イタリアのために
日本国のために
藤山愛一郎
ラオスのために
I・スリヤダイ
マレイシアのために
タン・シュー・シン
モンゴリアのために
ネパールのために
ナゲンドラ・プラサド・リジャール
オランダのために
ズヴァール
ニュー・ジーランドのために
D・W・A・バーカー
パキスタンのために
オスマン・アリ
フィリピンのために
A・V・ファベラ
大韓民国のために
ス・リュン・キム
ヴィエトナム共和国のために
シンガポールのために
タイのために
S・ウィニッチャヤクーン
グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国のために
J・M・アディス
アメリカ合衆国のために
ユージン・R・ブラック
ジョセフ・W・バー
西サモアのために
D・W・A・バーカー