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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 関税及び貿易に関する一般協定第六条の実施に関する協定(ダンピング防止協定)

[場所] ジュネーヴ
[年月日] 1967年6月30日作成,1968年7月1日効力発生,1968年5月17日国会承認
[出典] 外務省条約局,条約集(多数国間条約)昭和43年,291−311頁.
[備考] 
[全文]

関税及び貿易に関する一般協定第六条の実施に関する協定

昭和四十二年六月三十日 ジュネーヴで作成
昭和四十三年七月一日 効力発生
昭和四十三年五月十七日 国会承認
昭和四十三年五月二十一日 受諾の閣議決定
昭和四十三年五月二十一日 受諾書の寄託
昭和四十三年六月二十一日 公布及び告示(条約第九号)
昭和四十三年七月一日 効力発生

この協定の当事国は、

閣僚が、千九百六十三年五月二十一日に、世界貿易の大幅な自由化が望ましいこと及び包括的な貿易交渉である千九百六十四年の貿易交渉が関税のみならず非関税障害をも取り扱うべきであることを合意したことを考慮し、

ダンピング防止措置が国際貿易にとつて不当な障害となつてはならないこと及びダンピングが確立された産業に実質的な損害を与え若しくは与えるおそれがあり又は産業の確立を実質的に遅延させる場合にのみ当該ダンピングに対してダンピング防止税を課することができることを認め、

ダンピングの事件を十分に審査するための基礎として衡平なかつ公開の手続を定めることが望ましいことを考慮し、

一般協定第六条の規定の実施に一層の画一性及び確実性を与えるように、同条の規定を解釈し、及びその適用のための規則を詳細に定めることを希望して、

ここに次のとおり協定する。

第一部 ダンピング防止規約

第一条

ダンピング防止税の賦課は、一般協定第六条に定める条件の下においてのみ執られる措置である。次の諸規定は、ダンピング防止に関する法令に基づいて措置が執られる場合に限り、同条の規定の適用を規制する。

ダンピングの決定

第二条

(a) この規約の適用上、ある国から他の国へ輪出される産品の輸出価格が輸出国における消費に向けられる同種の産品の通常の商取引における比較可能な価格より低い場合には、その産品は、ダンピングされるもの、すなわち、正常の価額より低い価額で他の国の商業に導入されるものとみなす。

(b) この規約において「同種の産品」とは、同一の産品、すなわち、当該産品とすべての点で同じである産品又は、そのような産品がない場合には、すべての点では同じでないが当該産品ときわめて類似した性質を有する他の産品をいうものと解する。

(c) 産品が原産国から直接に輸入されず、中間国から輸入国に輸出される場合には、当該産品が輸出国から輸入国へ販売される価格は、通常、輸出国における比較可能な価格と比較するものとする。もつとも、たとえば、当該産品が単に輸出国において積み替えられる場合、当該産品が輸出国において生産されていない場合又は輸出国に当該産品についての比較可能な価格がない場合には、原産国における価格と比較することができる。

(d) 輸出国の国内市場の通常の商取引において同種の産品の販売が行なわれていない場合又は市場の特殊な状況のためにそのような販売によつては適正な比較を行なうことができない場合には、ダンピングの価格差は、第三国に輸出される同種の産品の比較可能な価格(その輸出の最高価格であつてもよいが、代表的な価格でなければならない。)との比較により、又は原産国における生産費に管理費、販売経費その他の経費及び利潤のための妥当な額を加えたものとの比較により決定するものとする。利潤としての付加額は、原則として、原産国の国内市場において同一の一般的な部類に属する産品の販売によつて通常得られる利潤をこえないものとする。

(e) 輸出価格がない場合又は関係当局(注)が輸出者と輸入者若しくは第三者との間の連合若しくは補償取決めのために輸出価格を基準とすることができないと認める場合には、輸出価格は、輸入された産品が独立した買手に最初に再販売される価格に基づいて、又は、当該産品が独立した買手に再販売されないとき若しくは輸入された時の状態で再販売されないときは、当局が決定する合理的な基礎に基づいて、構成することができる。

(f) 輸出価格と輸出国(又は原産国)における国内価格又はこれがないときは一般協定第六条1(b)の規定に基づいて定められる価格との公正な比較を行なうために、これらの二の価格の比較は、商取引の同一の段階(通常の場合には、工場渡しの段階)について、かつ、できる限り同一の時点で行なわれた販売について行なうものとする。販売条件の差異、課税上の差異及び価格の比較に影響を及ぼすその他の差異に対しては、それぞれの場合に応じて妥当な考慮を払わなければならない。(e)に規定する場合には、輸入から再販売までの間に生じた経費(関税及び内国税を含む。)及び利潤に対しても考慮を払わなければならない。

(g) この条の規定は、一般協定附属書Iにおける第六条1についての補足規定2の規定を害するものではない。

注 この規約において「当局」とは、適当な上級の当局をいうものと解する。

実質的な損害、実質的な損害のおそれ及び実質的な遅延の決定

第三条 損害(注1)の決定

(a) 損害の決定は、ダンピング輪入が国内産業に対する実質的な損害若しくはそのおそれ又は国内産業の確立の実質的な遅延の明らかに主要な原因であることを関係当局が認めた場合にのみ、行なわれるものとする。当局は、決定を行なうにあたつては、一方においてダンピングの影響を、他方において国内産業に不利な影響を与えるその他のすべての要因の全体を考量するものとする。決定は、いかなる場合にも、事実の実証的な認定に基づくものでなければならず、単なる申立て又は仮定の可能性に基づくものであつてはならない。輸入国における新たな産業の確立の遅延に係る場合には、いずれかの産業が近く確立されることの明確な証拠、たとえば、新たな産業の計画がかなり進行した段階に達していること、工場が建設中であること又は機械設備が発注済みであることが示されなければならない。

(b) 損害の評価、すなわち、ダンピング輸入の当該産業に対する影響の評価は、当該産業の状態に関係があるすべての要因、たとえば、売上高、市場占拠率、利潤、価格(関税支払済みの引渡価格が輸入国における運常の商取引における同種の産品の比較可能な価格を下回るか又は上回る場合における価格差を含む。)輸出実績、雇用、ダンピング輸入の量及びその他の輸入の量、国内産業の操業度並びに生産性に関する動向及び見通し並びに制限的な商慣行を検討した結果に基づかなければならない。これらの要因のうち一個又は数個の要因のみでは、必ずしも決定的な判断の基準となることができない。

(c) ダンピング輪入が損害を与えたかどうかを確定するためには、個別に又は結合して当該産業に不利な影響を与える他のすべての要因、たとえば、当該産品のダンピングされない輸入の量及び価格、国内生産者相互間の競争並びに他の産品による代替又は消費者の好みの変化に起因する需要の減少を検討するものとする。

(d) ダンピング輸入の影響は、同種の産品の生産を生産工程、生産者の売上げ、利潤等の基準により他の生産と区別することができる資料があるときは、同種の産品の国内生産との関連において評価されるものとする。同種の産品の国内生産がこれらの基準で区別されないときは、ダンピング輸入の影響は、必要な情報を入手することができる最も狭い範囲の産品(同種の産品を含む。)の生産を検討することにより評価されるものとする。

(e) 実質的な損害のおそれの決定は、事実に基づかなければならず、単に申立て、推測又は希薄な可能性に基づくものであつてはならない。ダンピングが実質的な損害を与えるような事態を生ずるに至る状況の変化は、明らかに予見され、かつ、急迫したものでなければならない。(注2)

(f) ダンピング輪入が実質的な損害を与えるおそれがある事件に関しては、ダンピング防止措置の適用は、特別の注意をもつて検討され、及び決定されなければならない。

注1 この規約において「損害」とは、別段の定めがない限り、国内産業に対する実質的な損害、国内産業に対する実質的な損害のおそれ又は国内産業の確立の実質的な遅延を意味するものと解する。

注2 非常に近い将来においてダンピング価格による産品の輪入が実質的に増加すると信ずるに足りる確かな理由のあることが一例であるが、これに限らない。

第四条 産業の定義

(a) 損害の決定上、「国内産業」とは、同種の産品の国内生産者の全体又はこれらの生産者のうち当該産品の生産高の合計が当該産品の国内総生産高の主要な部分を占めている生産者をいうものと解する。ただし、

(i) ダンピングされていると申し立てられた産品の輸入者が生産者である場合には、国内産業とは、その他の生産者をいうものと解することができる。

(ii) 例外的な状況においては、一国を当該生産について二以上の競争的市場に分割し、各市場別の生産者を別個の産業とみなすことができる。ただし、各市場内のすべての生産者が輸送費の理由から当該産品の生産の全部若しくはほとんど全部をその市場で販売しており、その国の他のいずれかの場所で生産された当該産品の全部若しくはほとんど全部がその市場で販売されていないこと又はその市場における生産者が当該産業の他の生産者から同程度に孤立する結果をもたらす特別の地域的な販売条件(たとえば、分配の伝統的な形態又は消費者の好み)があることを条件とする。もつとも、このような状況においては、損害の事実の認定は、その市場における当該産品の生産の全部又はほとんど全部について損害がある場合にのみ行なうことができる。

(b) 二以上の国が一個の統一された市場の性格を有する統合の水準に達した場合には、統合された全地域における当該産業は、(a)に規定する産業とみなされる。

(c) 第三条(d)の規定は、この条について準用されるものとする。

調査及び行政上の手続

第五条 調査の開始及びその後の調査

(a) 調査は、通常、影響を受けた産業(注)のために行なわれた要請でダンピング及びその結果当該産業に生ずる損害の双方の証拠によつて裏づけられたものに基づいて開始するものとする。関係当局は、特別な状況においてそのような要請を受けないで調査を開始することを決定する場合には、ダンピング及びその結果生ずる損害の双方の証拠があるときにのみ手続を進めるものとする。

(b) ダンピング及び損害の双方の証拠は、調査の開始の際及びその後において、同時に考慮すべきものである。いかなる場合にも、ダンピング及び損害の双方の証拠は、調査を開始するかどうかを決定する際に、また、その後の調査の過程においても、当局が第十条(d)に規定する輸出者及び輸入者の要請を受理する場合を除き、おそくとも暫定措置が適用される日から、同時に考慮しなければならない。

(c) ダンピング又は損害のいずれか一方の証拠が当該事件に関する手続の進行を正当とするために十分でないと関係当局が認めるときは、すみやかに申請を却下し、また、調査を取りやめなければならない。ダンピングの価格差、ダンピングされた現実の若しくは潜在的な輸入の量又は損害が無視することのできるものである場合には、調査は、直ちに取りやめるべきである。

(d) ダンピング防止のための手続は、通関手続を妨げてはならない。

注 第四条の定義による。

第六条 証拠

(a) 外国の供給者及び利害関係のある他のすべての者は、ダンピング防止のための当該調査について有用と考えるあらゆる証拠を書面により提出する十分な機会を与えられなければならない。これらの者は、また、正当な理由がある場合には、口頭により証言を行なう権利を有する。

(b) 関係当局は、苦情を申し立てた者、関係があると認められる輸入者及び輸出者並びに当該輸出国の政府に対し、それぞれの立場の主張に関係があるすべての情報で、(c)に定めるような秘密のものではなく、かつ、ダンピング防止のための調査において当該当局が使用するものを閲覧し、及びこの情報に基づいてそれぞれの主張を準備する機会を与えなければならない。

(c) いかなる情報も、その性質上(たとえば、その公開が競争者にとつて相当な競争上の利益となるか、又はその公開が情報を提供した者若しくはその者が当該情報を入手した情報源である者に対して相当な悪影響を与えることになるので)秘密であるもの又はダンピング防止のための調査の当事者が秘密として提供したものは、関係当局により厳重に秘密として取り扱われるものとし、当局は、その情報を提供した当事者の明示の許可を得ないでこれを漏らしてはならない。

(d) もつとも、関係当局は、秘密扱いの要請に正当な理由がないと認める場合において、提供者がその情報を公表させず又は一般的な表現若しくは要約された形によるその公開を認めないときは、その情報の正確であることが適当な源から当局に対して十分に立証されない限り、その情報を無視することができる。

(e) 当局は、提供された情報を確認し、又はさらに詳細な情報を入手するため、必要に応じ、他の国において調査を行なうことができる。ただし、当局が関係企業の同意を得ること及び当該他の国の政府の代表者にその旨を通告し、かつ、その代表者が調査に反対しないことを条件とする。

(f) 権限のある当局は、ダンピング防止のための調査を第五条の規定に基づいて開始することを正当とするために十分な証拠があると認めるときは、その旨を輸出国の代表者並びに関係があると認められる輸出者及び輸入者に通告するものとし、また、公告することができる。

(g) ダンピング防止のための調査において、すべての当事者は、自己の利益の擁護のために十分な機会を与えられるものとする。このため、関係当局は、要請があつたときは、直接の利害関係があるすべての者に対し利害関係の相反する者と会合する機会を与えて、対立する見解の表明及び反論の提示が行なわれるようにしなければならない。その機会を与えるに際しては、秘密保持の必要性及び当事者の便宜を考慮に入れなければならない。いずれの当事者も、会合に出席する義務を負わないものとし、また、出席しないことは、その当事者の立場を害しない。

(h) 関係当局は、ダンピング防止税を課し又は課さないことに関するその決定を、その理由及び適用した基準を示して輸出国の代表者及び直接の利害関係がある者に通告するものとし、また、その決定の公表をはばむ特別な理由のない限り、これを公表しなければならない。

(i) この条の規定は、当局がすみやかに肯定的若しくは否定的な仮決定を行ない、又はすみやかに暫定措置を適用することを妨げるものではない。利害関係のあるいずれかの者が必要な情報を提供しない場合には、肯定的又は否定的な最終の認定は、知ることができた事実に基づいて行なうことができる。

第七条 価格に関する約束

(a) 関係当局は、輸出者からダンピングの価格差が除去されるように価格を修正し、又は当該地域に対してダンピング価格による輸出をやめる旨の自発的な約束を受け取つた場合において、たとえば、当該産品の輸出者又は潜在的輸出者があまり多数でないため及び(又は)取引の慣行が適切であるため、それが実行可能であると考えるときは、ダンピング防止税又は暫定措置を適用することなく、ダンピング防止のための手続を取りやめることができる。

(b) 関係輸出者が価格を修正すること又は当該産品の輸出をやめることを事件の審査中に約束し、かつ、関係当局がその約束を認めた場合においても、損害の調査は、輸出者が希望するか又は関係当局が決定するときは、完結しなければならない。輸出者の行なつた約束は、損害がない旨の決定が行なわれた場合には、輸出者がその約束を消滅させない旨を表明しない限り、自動的に消滅するものとする。輸出者が調査の期間中に前記の約束を行なうことを申し出ないか又は前記の約束を行なうようにとの調査当局の勧誘を受諾しない事実は、当該事件を考慮する上でなんらの影響をも及ぼさない。もつとも、当局は、そのダンピング輸入が継続する場合には、損害のおそれが実現する可能性が一層大きくなると決めることができる。

ダンピング防止税及び暫定措置

第八条 ダンピング防止税の賦課及び徴収

(a) ダンピング防止税を課するためのすべての要件が満たされた場合にそれを課するかどうかの決定及び課すべきダンピング防止税の額をダンピングの価格差の全部とするか又はそれより少ないものとするかの決定は、輸入国又は輸入関税地域の当局が行なうものとする。この協定の当事国であるすべての国又は関税地域においてダンピング防止税の賦課が裁量行為であること及び、ダンピングの価格差より少ない額の税が国内産業に対する損害を除去するために十分であるときは、ダンピング防止税がその少ない額のものであることが望ましい。

(b) いずれかの産品についてダンピング防止税を課する場合には、そのダンピング防止税は、すべての輸入源からのその産品の輸入でダンピングされ、かつ、損害を与えていると認定されたものに対して、それぞれの場合について適当な額を無差別に課するものとする。当局は、当該産品の供給者を指定するものとする。ただし、当局は、同一の国の数人の供給者が関係している場合において、これらのすべての供給者を指定することが実行可能でないときは、当該供給国を指定することができる。当局は、二以上の国の数人の供給者が関係している場合には、すべての関係供給者を指定するか又は、これが実行可能でないときは、すべての関係供給国を指定することができる。

(c) ダンピング防止税の額は、第二条の規定に基づいて定められるダンピングの価格差をこえてはならない。したがつて、ダンピング防止税を課した後、徴収された税が実際のダンピングの価格差をこえていると認定した場合には、そのこえている額は、できる限りすみやかに還付するものとする。

(d) 基準価格制度の下においては、次の規則を適用するものとする。ただし、その規則の適用がこの規約の他の規定に合致することを条件とする。

ダンピング防止税は、一又は二以上の国の数人の供給者が関係している場合には、関係国からの当該産品の輸入でダンピングされ、かつ、損害を与えていると認定されたものに課することができる。その税は、輸出価格がこのために設定された基準価格を下回る額に等しいものとし、この基準価格は、正常の競争条件の下にある一又は二以上の供給国における最も低い正常の価格をこえないものとする。既設の基準価格を下回つて販売されている産品に関しては、利害関係のある者からの要請があり、かつ、その要請が適切な証拠によつて裏づけられている場合には、個個の事件について、ダンピング防止のための調査が新たに行なわれるものと了解される。徴収されたダンピング防止税は、ダンピングが存在しないと認定された場合には、できる限りすみやかに還付するものとする。さらに、徴収された税が実際のダンピングの価格差をこえていると認定された場合には、そのこえている額は、できる限りすみやかに還付するものとする。

(e) ダンピング防止税は、産業が特定の地域、すなわち、第四条(a)(ii)に定義されている市場の生産者をいうものと解される場合には、最終的な消費のためにその地域に仕向けられる当該産品についてのみ確定的に徴収されるものとする。ただし、ダンピング防止税を課する前に輸出者に当該地域においてダンピングをやめる機会を与えることとなつている場合は、この限りでない。この場合において、当該ダンピングをやめることについて適当な保証がすみやかに与えられるときは、ダンピング防止税を課さないものとするが、その保証が与えられないか又は履行されないときは、地域を限定することなくその税を課することができる。

第九条 ダンピング防止税の期間

(a) ダンピング防止税は、損害を与えているダンピングに対抗するため必要な期間に限り有効なものとする。

(b) 関係当局は、ダンピング防止税の賦課を継続する必要性について、自己の発意に基づき、又は利害関係のある当該産品の供給者若しくは輸入者が再検討が必要であることを実証する情報を提出して要請するときはその要請に基づき、正当な理由がある場合には、再検討を行なうものとする。

第十条 暫定措置

(a) 暫定措置は、ダンピングが存在する旨の仮決定が行なわれており、かつ、損害の十分な証拠がある場合にのみ執ることができる。

(b) 暫定措置は、暫定的な税又は、一層望ましいものとして、供託若しくは担保による保証の形をとることができ、その税又は保証の額は、暫定的に推定されたダンピングの価格差をこえない範囲で暫定的に推定されたダンピング防止税の額に等しいものとする。評価差止めは、通常の関税及び推定されたダンピング防止税の額が示され、かつ、その評価差止めが他の暫定措置と同一の条件に従う限り、妥当な暫定措置である。

(c) 関係当局は、暫定措置の適用に関するその決定を、その理由及び適用した基準を示して輸出国の代表者及び直接の利害関係がある者に通報するものとし、また、その決定の公表をはばむ特別な理由のない限り、これを公表しなければならない。

(d) 暫定措置の適用は、できる限り短い期間に限らなければならない。すなわち、暫定措置は、三箇月(輸出者及び輸入者からの要請により関係当局が決定する場合には、六箇月)をこえる期間について適用してはならない。

(e) 暫定措置の適用に際しては、第八条中の関連する規定を準用するものとする。

第十一条 遡及{遡にそとルビ}

ダンピング防止税又は暫定措置は、それぞれ第八条(a)又は第十条(a)の規定に従う決定が効力を生じた後に消費のために輸入される産品に対してのみ適用するものとする。ただし、

(i) 実質的な損害(実質的な損害のおそれ及び産業の確立の実質的な遅延を除く。)の決定が行なわれる場合又は暫定措置が暫定的な税であつて、かつ、その適用期間中に行なわれたダンピング輸入がその暫定措置がなかつたならば実質的な損害を与えたと思われる場合には、暫定措置が適用されていた期間についてダンピング防止税を遡及{遡にそとルビ}して課することができる。
最終決定において定められたダンピング防止税が暫定的に支払われた税より高い場合には、その差額を徴収してはならない。最終決定において定められた税が暫定的に支払われた税又は保証のための推定された額より低い場合には、場合により、その差額を還付するか又はダンピング防止税を再算定するものとする。

(ii) ダンピングの事件の開始前に生じた理由でダンピングの問題と関係のないものに基づいて当該産品についての評価が停止されている場合には、ダンピング防止税は、苦情が提出された日前百二十日をこえない日まて遡及{遡にそとルビ}して課することができる。

(iii) ダンピングされた当該産品について、当局が

(a) 実質的な損害を与えたダンピングの事実が過去に存在し、又は当該輸出者がダンピングを行なつていること及びそのダンピングが実質的な損害を与えることを当該輸入者が知つていたか若しくは知つていたはずであり、かつ、

(b) 突発的なダンピング(比較的短期間における産品の大量のダンピング輸入)が、その再発を防止するためにその輸入についてダンピング防止税を遡及{遡にそとルビ}して課する必要があると認められる程度に、実質的な損害を与えている

と決定する場合には、ダンピング防止税は、暫定措置が適用された日前九十日をこえない日以後消費のために輸入された産品について課することができる。

第三国のためのダンピング防止措置

第十二条

(a) 第三国のためのダンピング防止措置の申請は、措置を必要とする当該第三国の当局が行なうものとする。

(b) その申請は、輸入がダンピングされていることを示す価格についての情報及び申し立てられたダンピングが当該第三国の関係国内産業に対し損害を与えていることを示す詳細な情報によつて裏づけられなければならない。当該第三国の政府は、輸入国の当局が必要とする他の情報を入手することができるように、その当局にあらゆる援助を与えるものとする。

(c) 当該輸入国の当局は、前記の申請を考慮する際に、申し立てられたダンピングが当該第三国の関係産業全体に与える影響を考慮するものとする。すなわち、損害は、申し立てられたダンピングがその産業の当該輸入国向けの輸出に与える影響との関連のみにおいて評価してはならず、また、そのダンピングがその産業の全輸出に与える影響との関連のみにおいても評価してはならない。

(d) 当該事件について手続を進めるかどうかの決定は、当該輸入国が行なうものとする。当該輸入国が措置を執る用意があると決定する場合には、その措置について締約国団の承認を求めるための締約国団に対する申請は、当該輸入国が行なうものとする。

第二部 最終規定

第十三条

この協定は、一般協定の締約国及び欧州経済共同体により署名その他によつて受諾されるため、開放される。この協定は、千九百六十八年七月一日までにこれを受諾した各当事国については、同日に効力を生ずる。この協定は、同日後にこれを受諾する各当事国については、その受諾の日に効力を生ずる。

第十四条

この協定の各当事国は、その法令及び行政上の手続がこのダンピング防止規約の規定に従うことをその当事国についてこの協定が効力を生ずる日以前に確保するために、すべての必要な一般的又は個別的措置を執るものとする。

第十五条

この協定の各当事国は、そのダンピング防止に関する法令及びその運用におけるすべての変更について、一般協定の締約国団に通報するものとする。

第十六条

この協定の各当事国は、そのダンピング防止に関する法令の運用について、ダンピング防止税が確定的に課された事件の概略を附して毎年締約国団に報告するものとする。

第十七条

この協定の当事国は、締約国団に対し、この協定の当事国の代表者で構成するダンピング防止措置に関する委員会を設置するよう要請するものとする。同委員会は、いずれかの参加国又は参加関税地域におけるダンピング防止制度の運用でダンピング防止規約の適用又はその目的の達成に影響を及ぼすことがあるものに関する事項について協議する機会をこの協定の当事国に与えるため、通常毎年一回会合するものとする。この協議は、一般協定第二十二条及び第二十三条の規定を害してはならない。

この協定は、締約国団の事務局長に寄託するものとし、事務局長は、すみやかに、一般協定の各締約国及び欧州経済共同体に対しその認証謄本を送付し、また、各受諾について通告するものとする。

この協定は、国際連合憲章第百二条の規定に従つて登録するものとする。

千九百六十七年六月三十日にジュネーヴで、ひとしく正文である英語及びフランス語により、本書一通を作成した。

(署名欄省略)