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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約(一九七四年海上人命安全条約,1974年海上人命安全条約,1974年SOLAS条約)

[場所] ロンドン
[年月日] 1974年11月1日
[出典] 条約集(昭和五十五年 多数国間条約),外務省条約局,799-1180頁.
[備考] 
[全文] 

千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約

(略称)一九七四年海上人命安全条約

   昭和四十九年十一月一日 ロンドンで作成

   昭和五十五年五月二十五日 効力発生

   昭和五十五年四月二十五日 国会承認

   昭和五十五年五月九日 加入の閣議決定

   昭和五十五年五月十五日 加入書寄託

   昭和五十五年五月二十四日 公布及び告示(条約第一六号及び外務省告示第一九七号)

   昭和五十五年五月二十五日 我が国について効力発生



目次   ページ

前文・・・七九九

第一条 この条約に基づく一般的義務・・・七九九

第二条 適用・・・七九九

第三条 法令・・・八〇〇

第四条 不可抗力の場合・・・八〇〇

第五条 非常の際の人運送・・・八〇〇

第六条 従前の条約・・・八〇一

第七条 合意によって作成される特別規則・・・八〇一

第八条 改正・・・八〇二

第九条 署名、批准、受諾、承認及び加入・・・八〇五

第十条 效力発生・・・八〇五

第十一条 廃棄・・・八〇六

第十二条 寄託及び登録・・・八〇六

第十三条 用語・・・八〇七

本文・・・八〇七


◯附属書・・・八〇八

 第一章 一般規定・・・八〇八

  A部 適用・定義等・・・八〇八

   第一 規則 適用・・・八〇八

   第二 規則 定義・・・八〇八

   第三 規則 適用除外・・・八〇九

   第四 規則 免除・・・八一〇

   第五 規則 同等物・・・八一〇

  B部 検査及び証書・・・八一一

   第六 規則 検査・・・八一一

   第七 規則 旅客船の検査・・・八一一

   第八 規則 貨物船の救命設備その他の設備の検査・・・八一四

   第九 規則 貨物船の無線設備及びレーダーの検査・・・八一四

   第十 規則 貨物船の船体、機関及び設備の検査・・・八一四

   第十一 規則 検査後における状態の維持・・・八一五

   第十二 規則 証書の発給・・・八一五

   第十三 規則 他の政府による証書の発給・・・八一七

   第十四 規則 証書の有效期間・・・八一七

   第十五 規則 証書の様式・・・八一八

   第十六 規則 証書の掲示・・・八一八

   第十七 規則 証書の認容・・・八一八

   第十八 規則 証書の附属の文書・・・八一九

   第十九 規則 監督・・・八一九

   第二十 規則 特権・・・八二〇

  C部 海難・・・八二〇

   第二十一 規則 海難・・・八二〇

 第二−一章 構造 (区画及び復原性並びに機関及び電気設備)・・・八二一

  A部 統則・・・八二一

   第一 規則 適用・・・八二一

   第二 規則 定義・・・八二三

   第三 規則 可浸長・・・八二五

   第四 規則 浸水率・・・八二五

   第五 規則 区画室の可許長・・・八二八

   第六 規則 区画に関する特別規則・・・八三五

   第七 規則 損傷状態にある船舶の復原性・・・八三八

   第八 規則 バラスト・・・ 八四一

   第九 規則 船首尾隔壁、機関区域隔壁、軸路等・・・八四二

   第十 規則 二重底・・・八四三

   第十一 規則 区画満載喫水線の指定、標示及び記載・・・八四四

   第十二 規則 水密隔壁等の構造及び最初の試験・・・ 八四五

   第十三 規則 水密隔壁の開口・・・八四七

   第十四 規則 限界線の下方の外板の開口・・・八五四

   第十五 規則 水蜜戸、舷密等の構造及び最初の試験・・・八五八

   第十六 規則 水密甲板、トランク等の構造及び最初の試験・・・八五九

   第十七 規則 限界線の上方の水密性・・・八五九

   第十八 規則 旅客船のビルジ排水設備・・・八六〇

   第十九 規則 旅客船及び貨物船に対する復原性資料・・・八六六

   第二十 規則 損傷制御図・・・八六七

   第二十一 規則 水密戸等に関する標示並びに定期的な操作及び検査・・・八六七

   第二十二 規則 航海日誌への記録・・・八六七

  C部 機関及び電気設備・・・八六八

   第二十三 規則 総則・・・八六八

   第二十四 規則 旅客船の主電源・・・八六九

   第二十五 規則 旅客船の非常電源・・・八六九

   第二十六 規則 貨物船の非常電源・・・八七一

   第二十七 規則 電撃、火災その他の電気的危険の予防手段・・・八七三

   第二十八 規則 後進の手段・・・八七六

   第二十九 規則 操舵装置・・・八七六

   第三十 規則 電動操舵装置及び電動油圧操舵装置・・・八七八

   第三十一 規則 旅客船の非常設備の位置・・・八七九

   第三十二 規則 船橋と機関室との間の通信・・・八七九

 第二−二章 構造(防火並びに火災探知及び消火)・・・八八〇

  A部 統則・・・八八〇

   第一 規則 適用・・・八八〇

   第二 規則 基本原則・・・八八二

   第三 規則 定義・・・八八三

   第四 規則 火災制御図・・・八八九

   第五 規則 消火ポンプ、消火主管、消火栓及び消火ホース・・・八九〇

   第六 規則 雑項目・・・八九五

   第七 規則 消化器・・・八九五

   第八 規則 固定式ガス消火装置・・・八九七

   第九 規則 機関区域の固定式あわ消火装置・・・九〇〇

   第十 規則 機関区域の固定式高膨張あわ消火装置・・・九〇一

   第十一 規則 機関区域の固定式加圧水噴霧装置・・・九〇一

   第十二 規則 自動スプリンクラ装置(火災警報及び火災探知の装置を内蔵するもの) ・・・九〇三

   第十三 規則 自動火災警報探知装置・・・九〇七

   第十四 規則 消防員装具・・・九一一

   第十五 規則 消火設備の迅速な利用・・・九一二

   第十六 規則 代用物の認容・・・九一二

  B部 三十六人を超える旅客を運送する旅客船の火災安全装置・・・九一二

   第十七 規則 構造・・・九一二

   第十八 規則 主垂直区域及び水平地域・・・九一三

   第十九 規則 主垂直区域内の隔壁・・・九一四

   第二十 規則 隔壁及び甲板の保全防熱性・・・九一五

   第二十一 規則 脱出設備・・・九二八

   第二十二 規則 居住区域及び業務区域の階段及び昇降機の保護・・・九三〇

   第二十三 規則「A」級仕切りの開口・・・九三一

   第二十四 規則「B」級仕切りの開口・・・九三三

   第二十五 規則 通風裝置・・・九三五

   第二十六 規則 窓及び舷窓・・・九三八

   第二十七 規則 可燃性材料の制限・・・九三八

   第二十八 規則 雑項目・・・九四〇

   第二十九 規則 自動スプリンクラ(火災警報及び火災探知の装置を内蔵するもの) 又は自動火災警報探知装置・・・九四一

   第三十 規則 特殊分類区域の保護・・・九四一

   第三十一 規則 特殊分類区域以外の貨物区域であって、自走用の燃料をタンクに有する自動車を積載するためのものの保護・・・ 九四六

   第三十二 規則 火災巡視等の維持及び消火設備に関する規定・・・九四七

   第三十三 規則 燃料油、潤滑油その他の可燃性油に関する措置・・・九五五

   第三十四 規則 機関区域の特別措置・・・九五八

  C部 三十六人以下の旅客を運送する旅客船の火災安全措置・・・ 九五九

   第三十五 規則 構造・・・九五九

   第三十六 規則 主垂直区域・・・九六〇

   第三十七 規則 「A」級仕切りの開口・・・九六一

   第三十八 規則 「A」仕切りの保全防熱性・・・九六三

   第三十九 規則 居住区行きの機関区域、貨物区域及び業務区域からの隔離・・・九六三

   第四十 規則 居住区域及び業務区域の保護・・・九六三

   第四十一 規則 甲板床張り・・・九六五

   第四十二 規則 居住区域及び業務区域の階段及び昇降機の保護・・・九六五

   第四十三 規則 制御場所及び貯蔵品室の保護・・・九六五

   第四十四 規則 窓及び舷窓・・・九六六

   第四十五 規則 通風装置・・・九六六

   第四十六 規則 構造細目・・・九六六

   第四十七 規則 火災探知装置及び消火設備・・・九六七

   第四十八 規則 脱出設備・・・九七二

   第四十九 規則 内熱機関に使用される燃料油・・・九七三

   第五十 規則 機関区域の特別措置・・・九七三

  D部 貨物船の火災安全措置・・・九七四

   第五十一 規則 総トン数四千トン以上の貨物船(この章のE部の規定が適用されるタンカーを除く。)に関する一般要件・・・九七四

   第五十二 規則 消火設備・・・九七六

   第五十三 規則 脱出設備・・・九八〇

   第五十四 規則 機関区域の特別措置・・・九八一

  E部 タンカーの火災安全措置・・・九八二

   第五十五 規則 適用・・・九八二

   第五十六 規則 区域の配置及び隔離・・・九八三

   第五十七 規則 構造・・・九八五

   第五十八 規則 通風・・・九八九

   第五十九 規則 脱出設備・・・九九〇

   第六十 規則 貨物タンクの保護・・・九九〇

   第六十一 規則 固定式甲板あわ装置・・・九九二

   第六十二 規則 固定式イナート・ガス装置・・・九九四

   第六十三 規則 貨物ポンプ室・・・九九六

   第六十四 規則 消火ホースのノズル・・・九九七

  F部 現存旅客船の特別火災安全措置・・・九九七

   第六十五 規則 適用・・・九九七

   第六十六 規則 構造・・・九九八

   第六十七 規則 主垂直区域・・・九九八

   第六十八 規則 主垂直区域隔壁の開口・・・九九八

   第六十九 規則 居住区域の機関区域、貨物区域及び業務区域からの隔離・・・九九九

   第七十 規則 第一方式、第二方式及び第三方式に係る適用・・・一〇〇〇

   第七十一 規則 階段の保護・・・一〇〇一

   第七十二 規則 昇降機(旅客用及び業務用)、採光用及び通風用の垂直トランク等の保護・・・一〇〇一

   第七十三 規則 制御場所の保護・・・一〇〇二

   第七十四 規則 貯蔵品室等の保護・・・一〇〇二

   第七十五 規則 窓及び舷窓・・・一〇〇二

   第七十六 規則 通風措置・・・一〇〇三

   第七十七 規則 雑項目・・・一〇〇三

   第七十八 規則 映写用フィルム・・・一〇〇三

   第七十九 規則 図面・・・一〇〇四

   第八十 規則 消火ポンプ、消火主管装置、消火栓及び消火ホース・・・一〇〇四

   第八十一 規則 火災探知及び消火の要件・・・一〇〇四

   第八十二 規則 消火設備の迅速な利用・・・一〇〇五

   第八十三 規則 脱出設備・・・一〇〇五

   第八十四 規則 非常電源・・・一〇〇六

   第八十五 規則 招集及び訓練・・・一〇〇六

第三章 救命設備等・・・一〇〇七

 第一 規則 適用・・・一〇〇七

  A部 総則・・・一〇〇八

   第二 規則 定義・・・一〇〇八

   第三 規則 免除・・・一〇〇九

   第四 規則 救命艇、救命いかだ及び救命浮器の迅速な利用・・・一〇〇九

   第五 規則 救命艇の構造・・・一〇一〇

   第六 規則 救命艇の容積・・・一〇一二

   第七 規則 救命艇の収容能力・・・一〇一五

   第八 規則 積載すべき発動機付救命艇の数・・・一〇一六

   第九 規則 発動機付救命艇以外の機械推進装置付救命艇の仕様・・・一〇一七

   第十 規則 発動機付救命艇以外の機械推進装置付救命艇の仕様・・・一〇一八

   第十一 規則 救命艇の艤装品・・・一〇一八

   第十二 規則 救命艇の艤装品の定着・・・一〇二一

   第十三 規則 救命用の端艇及びいかだのための持運び式無線装置・・・一〇二二

   第十四 規則 発動機付救命艇の無線電信設備及び探照燈・・・一〇二二

   第十五 規則 膨張式救命いかだの要件・・・一〇二四

   第十六 規則 固定救命いかだの要件・・・一〇二七

   第十七 規則 膨張式救命いかだ及び固型救命いかだの艤装品・・・一〇二八

   第十八 規則 救命いかだの使用についての訓練・・・一〇三〇

   第十九 規則 救命艇及び救命いかだへの乗込み・・・一〇三一

   第二十 規則 救命艇、救命いかだ及び救命浮器の標示・・・一〇三二

   第二十一 規則 救命浮環の仕様・・・一〇三三

   第二十二 規則 救命胴衣・・・一〇三五

   第二十三 規則 救命索発射器・・・一〇三六

   第二十四 規則 船舶の遭難信号・・・一〇三六

   第二十五 規則 非常配置表及び非常措置・・・一〇三七

   第二十六 規則 招集及び訓練・・・一〇三八

  B部 旅客船・・・一〇四〇

   第二十七 規則 救命艇、救命いかだ及び救命浮器・・・一〇四〇

   第二十八 規則 短国際航海に従事する船舶のダビット及び救命艇の容積に関する表・・・一〇四三

   第二十九 規則 救命艇、救命いかだ及び救命浮器の積付け及び取扱い・・・一〇四五

   第三十 規則 甲板、救命艇、救命いかだ等の照明・・・一〇四八

   第三十一 規則 救命艇及び救命いかだへの人員の配置・・・一〇四九

   第三十二 規則 資格のある救命艇手・・・一〇四九

   第三十三 規則 救命浮器・・・一〇五〇

   第三十四 規則 救命浮環の数・・・一〇五一

  C部 貨物船・・・一〇五一

   第三十五 規則 救命艇及び救命いかだの数及び収容能力・・・一〇五二

   第三十六 規則 ダビット及び進水装置・・・一〇五四

   第三十七 規則 救命浮環の数・・・一〇五七

   第三十八 規則 非常照明・・・一〇五八

 第四章 無線電信及び無線電話・・・一〇五九

  A部 適用及び定義・・・一〇五九

   第一 規則 適用・・・一〇五九

   第二 規則 用語及び定義・・・一〇五九

   第三 規則 無線電信局・・・一〇六一

   第四 規則 無線電話局・・・一〇六一

   第五 規則 第三規則及び第四規則の免除・・・一〇六一

  B部 聴守・・・一〇六二

   第六 規則 聴守(無線電信)・・・一〇六二

   第七 規則 聴守(無線電話)・・・一〇六五

   第八 規則 聴守(VHF無線電話)・・・一〇六五

  C部 技術的要件・・・一〇六六

   第九 規則 無線電信局・・・一〇六六

   第十 規則 無線電信設備・・・一〇六七

   第十一 規則 無線電信自動警急機・・・一〇七五

   第十二 規則 方向探知機・・・一〇七七

   第十三 規則 発動機付救命艇に取り付ける無線電信設備・・・一〇七九

   第十四 規則 救命用の端艇及びいかだのための持運び式無線装置・・・一〇八一

   第十五 規則 無線電話局・・・一〇八三

   第十六 規則 無線電話設備・・・一〇八四

   第十七 規則 VHF無線電話局・・・一〇八八

   第十八 規則 無線電話自動警急機・・・一〇八九

  D部 無線日誌・・・一〇九〇

   第十九 規則 無線日誌・・・一〇九〇

 第五章 航行の安全・・・一〇九三

   第一 規則 適用・・・一〇九三

   第二 規則 危険通報・・・一〇九三

   第三 規則 危険通報に必要な情報・・・一〇九四

   第四 規則 気象業務・・・一〇九七

   第五 規則 氷の監視の業務・・・一〇九九

   第六 規則 氷の監視機関(管理及び経費)・・・一一〇〇

   第七 規則 氷の付近における速力・・・一一〇二

   第八 規則 航路指定・・・一一〇二

   第九 規則 遭難信号の濫用・・・一一〇三

   第十 規則 遭難通報(義務及び措置)・・・一一〇三

   第十一 規則 信号燈・・・一一〇四

   第十二 規則 船舶に備える航行設備・・・一一〇四

   第十三 規則 人員の配置・・・一一〇五

   第十四 規則 航行援助施設・・・一一〇六

   第十五 規則 捜索及び救助・・・一一〇六

   第十六 規則 救命信号・・・一一〇六

   第十七 規則 水先人用のはしご及び昇降機・・・一一一〇

   第十八 規則 VHF無線電話局・・・一一一四

   第十九 規則 自動舵装置の使用・・・一一一四

   第二十 規則 航海用完刊行物・・・一一一五

   第二十一 規則 国際信号書・・・一一一五

 第六章 穀類の運送・・・一一一六

  A部 一般規定・・・一一一六

   第一 規則 適用・・・一一一六

   第二 規則 定義・・・一一一六

   第三 規則 穀類の荷操り・・・一一一七

   第四 規則 非損傷時復原性の要件・・・一一一七

   第五 規則 縦通仕切り及び皿型積載・・・一一一八

   第六 規則 固定・・・一一二〇

   第七 規則 フィーダー及びトランク・・・一一二〇

   第八 規則 共通積載・・・一一二〇

   第九 規則 B部及びC部の規定の適用・・・一一二一

   第十 規則 承認・・・一一二一

   第十一 規則 穀類積載資料・・・一一二二

   第十二 規則 同等物・・・一一二三

   第十三 規則 特定の航海に対する免除・・・一一二三

  B部 仮定傾斜モーメントの計算・・・一一二四

   第一節 仮定空間の意義及び非損傷時復原性の計算方法・・・一一二四

   (A) 総則・・・一一二四

      第二節 満載区画室の仮定容積傾斜モーメント・・・一一二八

      (A) 総則・・・一一二八

      (B) 仮定・・・一一二九

      (C) 共通積載区画室・・・一一三一

      第三節 フィーダー及びトランクの仮定容積傾斜モーメント・・・一一三三

      (A) 適正に設けられた両翼部のフィーダー・・・一一三三

      (B) 主ハッチの上方のトランク・・・一一三四

      第四節 部分積載区画室の仮定容積傾斜モーメント・・・一一三五

      (A) 総則・・・一一三五

      (B) 不連続縦通仕切り・・・一一三五

      第五節 現存船の代替的積載方法・・・一一三五

      (A) 総則・・・一一三五

      (B) 特にばら積み穀類の運送に適した船舶への積付け・・・一一三六

      (C) 承認の文書を備えない船舶・・・一一三七

  C部 穀類の積付け設備及び固定・・・一一三八

   第一節 穀類積付け設備の強度・・・一一三八

   第二節 部分積載区画室における穀類の固定・・・一一三九

   第一節 穀類積付け設備の強度・・・一一三九

   (A) 総則・・・一一三九

   (B) 両側に積載がされる仕切り・・・一一四一

   (C) 片側にのみ積載がされる仕切り・・・一一四四

   (D) 皿型積載・・・一一四九

   (E) ばら積み穀類のバンドリング・・・一一五〇

   (F) 満載区画室のハッチ・カバーの定着・・・一一五一

   第二節 部分積載区画室における穀類の固定・・・一一五二

   (A) 緊縛・・・一一五二

   (B) 上積み・・・一一五四

   (C) 袋入り穀類・・・一一五四

 第七章 危険物の運送・・・一一五五

   第一 規則 適用・・・一一五五

   第二 規則 分類・・・一一五五

   第三 規則 包装・・・一一五六

   第四 規則 表示及び標識・・・一一五七

   第五 規則 書類・・・一一五七

   第六 規則 積付けの要件・・・一一五八

   第七 規則 旅客船における火薬類・・・一一五九

   第八章 原子力船・・・一一六〇

   第一 規則 適用・・・一一六〇

   第二 規則 他の章の規定の適用・・・一一六〇

   第三 規則 免除・・・一一六〇

   第四 規則 原子炉装置の承認・・・一一六〇

   第五 規則 原子炉装置の船舶における使用に対する適合性・・・一一六〇

   第六 規則 放射線に対する安全・・・一一六一

   第七 規則 安全説明書・・・一一六一

   第八 規則 操作手引書・・・一一六一

   第九 規則 検査・・・一一六二

   第十 規則 証書・・・一一六二

   第十一 規則 特別の監督・・・一一六三

   第十二 規則 海難・・・一一六三

◯付録 旅客船に対する安全証書の様式・・・一一六四

    貨物船に対する安全構造証書の様式・・・一一六七

    貨物船に対する安全設備証書の様式・・・一一六八

    貨物船に対する安全無線電信証書の様式・・・一一七〇

    貨物船に対する安全無線電話証書の様式・・・一一七二

    免除証書の様式・・・一一七四

    原子力旅客船に対する安全証書の様式・・・一一七五

    原子力貨物船に対する安全証書の様式・・・一一七八



千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約

 締約政府は、

 合意により画一的な原則及び規則を設定することによつて海上における人命の安全を増進することを希望し、

 千九百六十年の海上における人命の安全のための国際条約の締結後の発展を考慮に入れ、同条約に代わる条約の締結によりこの目的を最もよく達成することができることを考慮して、

 次のとおり協定した。

   第一条 この条約に基づく一般的義務

(a) 締約政府は、この条約及びこの条約の不可分の一部をなす附属書を実施することを約束する。「この条約」というときは、同時に附属書を含めていうものとする。

(b) 締約政府は、人命の安全の見地から船舶がその予定された用途に適合することを確保するため、この条約の十分かつ完全な実施に必要な法令の制定その他の措置をとることを約束する。

   第二条 適用

 この条約は、その政府が締約政府である国を旗国とする船舶に適用する。

   第三条 法令

 締約政府は、政府間海事協議機関(以下「機関」という。)の事務局長に次のものを送付しかつ寄託することを約束する。

(a) すべての締約政府に対しその職員への情報として回章に付するための、海上における人命の安全のための措置を当該締約政府に代わつてとる権限を与えられた非政府機関の名簿

(b) この条約の範囲内の事項について定めた法令

(c) すべての締約政府に対しその職員への情報として回章に付するための、この条約に基づいて発給される証書の十分な数の見本

   第四条 不可抗力の場合

(a) 出航の時にこの条約が適用されない船舶は、荒天その他の不可抗力により予定の航海を変更したためにこの条約を適用されることはない。

(b) 不可抗力により乗船している者及び船長の難船者その他の者を運送する義務の履行により乗船している者については、 船舶に対するこの条約の適用に当たり考慮に入れない。

   第五条 非常の際の人の運送

(a) 締約政府は、人命の安全に対する脅威を避けるために人を移動させることを目的とする場合には、この条約に基づいて運送することを認められる数を超える人員を自国の船舶で運送することを許可することができる。

(b) (a)の許可は、他の締約政府が自国の港に入つた(a)にいう船舶をこの条約に基づいて監督する権利を奪うものではない。

(c) (a)の許可を与える締約政府は、その許可について、事情の説明とともに機関の事務局長に通知する。

   第六条 従前の条約

(a) この条約は、締約政府間において、千九百六十年六月十七日にロンドンで署名された海上における人命の安全のための国際条約に代わるものとし、同条約を廃止する。

(b) 海上における人命の安全又はこれに関連する事項に関する他の条約及び取極であつてこの条約の締約政府の間に現に効力を有するものは、その有効期間内は、次のものについて引き続き十分かつ完全な効力を有する。

(i) この条約が適用されない船舶

(ii) この条約が適用される船舶についてこの条約に明文の規定がない事項

(c) (b)に規定する条約又は取極がこの条約に抵触する限度においては、この条約が優先する。

(d) この条約に明文の規定がない事項については、締約政府の法令に従うものとする。

   第七条 合意によつて作成される特別規則

 この条約により締約政府の全部又は一部の間の合意によつて特別規則が作成された場合には、当該特別規則は、すべての締約政府に対し回章に付するため機関の事務局長に送付する。

   第八条 改正

(a) この条約は、この条に定めるいずれかの手続に従つて改正することができる。

(b) 機関における審議の後の改正

 (i) 締約政府が提案する改正案は、機関の事務局長に提出するものとし、同事務局長は、審議の少なくとも六箇月前に、その改正案を機関のすべての加盟国及びすべての締約政府に対し回章に付する。

 (ii) (b)(i)の規定により提案されかつ回章に付された改正案は、審議のため機関の海上安全委員会に付託する。

 (iii) 締約政府は、自国が機関の加盟国であるかどうかを問わず、改正案の審議及び採択のため海上安全委員会の審議に参加する権利を有する。

 (ⅳ) 改正案は、(b)(iii)の規定により拡大された海上安全委員会(以下「拡大海上安全委員会」という。)に出席しかつ投票する締約政府の三分の二以上の多数による議決で採択する。ただし、投票の際に締約政府の少なくとも三分の一が出席していることを条件とする。

 (v) (b)(ⅳ)の規定に従つて採択された改正は、受諾のため、機関の事務局長がすべての締約政府に送付する。

 (vi)(1) この条約のいずれかの条又は附属書第一章の規定の改正は、締約政府の三分の二が受諾した日に受諾されたものとみなす。

   (2) 附属書第一章以外の附属書の改正は、次のいずれかの日に受諾されたものとみなす。

   (aa) 改正が受諾のため締約政府に送付された日から二年を経過した日

   (bb) 採択の際に拡大海上安全委員会に出席しかつ投票する締約政府の三分の二以上の多数により決定された場合には、(aa)に定める期間以外の当該決定された期問 (一年以上とする。)を経過した日

   ただし、定められた期間内に三分の一を超える締約政府又はその商船船腹量の合計が総トン数で世界の商船船腹量の五十パーセントに相当する商船船腹量以上となる締約政府により機関の事務局長に対し改正に反対する旨の通告がされた場合には、当該改正は、受諾されなかったものとみなす。

 (vii)(1) この条約のいずれかの条又は附属書第一章の規定の改正は、これを受諾した締約政府については、その改正が受諾されたとみなされる日の後六箇月で効力を生ずるものとし、また、その日の後に受諾する締約政府については、その受諾の日の後六箇月で効力を生ずる。

   (2) 附属書第一章以外の附属書の改正は、(b)(vi)(2)の規定によりその改正に反対しかつその反対を撤回しなかつた締約政府を除くすべての締約政府について、その改正が受諾されたとみなされる日の後六箇月で効力を生ずる。もつとも、その改正が効力を生ずべき日前に、いずれの締約政府も、その効力発生の日から一年以内の期間又はその改正の採択の際に拡大海上安全委員会に出席しかつ投票する締約政府の三分の二以上の多数により決定する一層長い期間その改正の実施を延期する旨を機関の事務局長に通告することができる。

(C) 会議による改正

 (i) 機関は、いずれかの締約政府が締約政府の三分の一以上の同意を得て要請する場合には、この条約の改正案を審議するため、締約政府会議を招集する。

 (ii) 機関の事務局長は、締約政府会議において出席しかつ投票する締約政府の三分の二以上の多数による議決で採択された改正を、受諾のため、すべての締約政府に送付する。

 (iii) 改正は、締約政府会議において別段の決定が行われない限り、(b)(vi)及び(vii)に定める手続に従い、受諾されたものとみなされ、かつ、効力を生ずる。この場合においては、(b)(vi)及び(vii)の「拡大海上安全委員会」を「締約政府会議」と読み替える。

(d)(i) 附属書の改正であつて効力を生じたものを受諾している締約政府は、(b)(vi)(2)の規定によりその改正に反対しかつその反対を撤回しなかつた政府の国を旗国とする船舶に対して発給される証書については、その改正に係る事項に関する限り、この条約による利益を与える義務を負わない。

 (ii) 附属書の改正であつて効力を生じたものを受諾している締約政府は、(b)(vii)(2)の規定に基づきその改正の実施の延期を機関の事務局長に通告した政府の国を旗国とする船舶に対して発給される証書について、この条約による利益を与える。

(e) 別段の明文の規定がない限り、この条の規定により行われるこの条約の改正であって船舶の構造に関するものは、その改正が効力を生ずる日以後にキールが据え付けられる船舶又はこれと同様の建造段階にある船舶にのみ適用する。

(f) 改正の受諾若しくは反対の宣言又は(b)(vii)(2)の規定に基づく通告は、機関の事務局長に対し文書で行うものとし、同事務局長は、その文書の提出があつたこと及びこれを受領した日をすべての締約政府に通報する。

(g) 機関の事務局長は、この条の規定に基づいて効力を生ずる改正及びその効力発生の日をすべての締約政府に通報する。

   第九条 署名、批准、受諾、承認及び加入

(a) この条約は、機関の本部において、千九百七十四年十一月一日から千九百七十五年七月一日までは署名のため、その後は加入のため、開放しておく。国は、次のいずれかの方法によりこの条約の締約国となることができる。

 (i) 批准、受諾又は承認につき留保を付さないで署名すること。

 (ii) 批准、受諾又は承認を条件として署名した後、批准し、受諾し又は承認すること。

 (iii) 加入すること。

(b) 批准、受諾、承認又は加入は、そのための文書を機関の事務局長に寄託することによつて行う。

(c) 機関の事務局長は、この条約に署名しており又は加入している国の政府に対し、署名並びに批准、受諾、承認又は加入の文書の寄託及びその寄託の日を通報する。

   第十条 効力発生

(a) この条約は、二十五以上の国であつてその商船船腹量の合計が総トン数で世界の商船船腹量の五十パーセントに相当する商船船腹量以上となる国が前条の規定に従つて締約国となつた日の後十二箇月で、効力を生ずる。

(b) この条約の効力発生の日の後に寄託される批准書、受諾書、承認書又は加入書は、寄託の日の後三箇月で、効力を生ずる。

(c) この条約の改正が第八条の規定に従つて受諾されたとみなされる日の後に寄託される批准書、受諾書、承認書又は加入書は、改正された条約に係るものとする。

   第十一条 廃棄

(a) 締約政府は、この条約が自己について効力を生じた日から五年を経過した後は、いつでもこれを廃棄することができる。

(b) 廃棄は、機関の事務局長に廃棄書を寄託することによつて行う。機関の事務局長は、廃棄書の受領及びその受領の日並びに廃棄が効力を生ずる日を他のすべての締約政府に通報する。

(c) 廃棄は、機関の事務局長による廃棄書の受領の後一年で、又は廃棄書に明記するこれよりも長い期間の後に、効力を生ずる。

   第十二条 寄託及び登録

(a) この条約は、機関の事務局長に寄託する。機関の事務局長は、その認証謄本をこの条約に署名し又は加入したすべての国の政府に送付する。

(b) この条約が効力を生じたときは、機関の事務局長は、国際連合憲章第百二条の規定により、その本文を登録及び公表のため速やかに国際連合事務総長に送付する。

   第十三条 用語

 この条約は、ひとしく正文である中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語により本書一通を作成する。アラビア語、ドイツ語及びイタリア語による公定訳文は、作成の上、署名済みの原本とともに寄託する。

 以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの条約に署名した。

千九百七十四年十一月一日にロンドンで作成した。



   附属書

第一章 一般規定

 A部 適用、定義等

  第一規則 適用

(a) この規則は、別段の明文の規定がない限り、国際航海に従事する船舶にのみ適用する。

(b) 各章の規定の適用を受ける船舶の種類は、それぞれの章において一層明確に定め、また、船舶に対する各章の規定の適用範囲は、それぞれの章において示す。

  第二規則 定義

 この規則の適用上、別段の明文の規定がない限り、

(a) 「この規則」とは、この条約の附属書の規則をいう。

(b) 「主管庁」とは、船舶の旗国の政府をいう。

(c) 「承認された」とは、主管庁によって承認されたことをいう。

(d) 「国際航海」とは、この条約が適用される国から国外の港に至る航海又はその逆の航海をいう。

(e) 「旅客」とは、次に掲げる者以外の者をいう。

 (i) 船長及び乗組員並びにその他資格のいかんを問わず乗船して船舶の業務に雇用され又は従事する者

 (ii) 一歳未満の乳児

(f) 「旅客船」とは、十二人を超える旅客を運送する船舶をいう。

(g) 「貨物船」とは、旅客船でない船舶をいう。

(h) 「タンカー」とは、引火性の液体貨物のばら積み運送のために建造し又は改造した貨物船をいう。

(i) 「漁船」とは、魚類、鯨類、あざらし、せいうちその他の海洋生物資源を採捕するために使用する船舶をいう。

(j) 「原子力船」とは、原子力施設を備える船舶をいう。

(k) 「新船」とは、この条約の効力発生の日以後にキールが据え付けられる船舶又はこれと同様の建造段階にある船舶をいう。

(l) 「現存船」とは、新船でない船舶をいう。

(m) 一海里は、千八百五十二メートル又は六千八十フィートとする。

  第三規則 適用除外

(a) この規則は、別段の明文の規定がない限り、次のものには、適用しない。

 (i) 軍艦及び軍隊輸送船

 (ii) 総トン数五百トン未満の貨物船

 (iii) 推進が機械でされない船舶

 (ⅳ) 原始的構造の木船

 (v) 運送業に従事しない遊覧ヨット

 (vi) 漁船

(b) この規則は、第五章に明文の規定がある場合を除くほか、専ら北アメリカの大湖及びセント・ローレンス河の水域であつてロージャー岬とアンティコスティ島のウエスト・ポイントとを結ぶ直線(アンティコスティ島の北側については西経六十三度の子午線)を東端とするものを航行する船舶には、適用しない。

  第四規則 免除

(a) 主管庁は、通常は国際航海に従事しない船舶であつて例外的状況において一回限りの国際航海を行う必要が生じたものについては、この規則のいずれの規定の適用も免除することができる。ただし、その航海に適当であると主管庁が認める安全要件を満たすことを条件とする。

(b) 主管庁は、新しい特性を有する船舶については、次章から第四章までの規定であつて船舶の新しい特性の開発のための研究及び国際航海に従事する船舶への応用を著しく阻害するおそれのあるものの適用を免除することができる。ただし、当該新しい特性を有する船舶が、その予定された用途に適するものでありかつ全般的にはその安全性を確保するものであると主管庁が認める安全要件であつて当該船舶の訪れる国の政府が受諾するものを満たすことを条件とする。免除を認める主管庁は、その明細及び理由を機関に通報するものとし、機関は、これらを締約政府に対し情報として同章に付する。

  第五規則 同等物

(a) 船舶に特定の若しくは特定の型式の取付け物、材料、器具若しくは装置を取り付け若しくは備えること又は特定の措置をとることをこの規則が要求している場合において、試験その他の方法により他の若しくは他の型式の取付け物、材料、器具若しくは装置又は他の措置がこの規則の要求するものと少なくとも同等の実効性を有すると認められるときは、主管庁は、船舶に当該他の若しくは当該他の型式の取付け物、材料、器具若しくは装置を取り付け若しくは備えること又は当該他の措置をとることを認めることができる。

(b) (a)に規定する他の若しくは他の型式の取付け物、材料、器具若しくは装置又は他の措置を認める主管庁は、これらについての細目をその試験報告とともに機関に送付するものとし、機関は、当該細目を他の締約政府に対しその職員への情報として回章に付する。

 B部 検査及び証書

  第六規則 検査

 船舶の検査は、この規則の実施及びその適用の免除に関する限り、船舶が登録された国の職員が行う。もつとも、当該国の政府は、検査をそのために指名する検査員又は政府の認定する団体に委託することができる。あらゆる場合において、当該政府は検査の完全性及び実効性を十分に保証する。

  第七規則 旅客船の検査

(a) 旅客船は、次の検査を受ける。

 (i) 船舶の就航前の検査

 (ii) 十箇月ごとに一回の定期的検査

 (iii) 臨時の追加検査

(b)  (a)の検査は、次のとおり行う。

(i) 船舶の就航前の検査は、船底の外部及びボイラーの内外部を含む船体、機関及び設備についての完全な検査を含む。この検査は、船体、ボイラーその他の圧力容器及びその附属品、主機関、補助機関、電気設備、無線設備、発動機付救命艇の無線電信設備、救命用の端艇及びいかだのための持運び式無線装置、救命設備、防火設備、火災探知装置、消火設備、レーダー、音響測深装置、ジャイロ・コンパス、水先人用はしご、水先人用昇降機その他の設備の配置、材料及び寸法がこの条約に定める要件及びこの条約に基づいて主管庁が制定する法令に定める要件であつて船舶についてその予定された用途別に適用されるものを完全に満たすことを確保するものでなければならない。この検査は、 また、船舶のすべての部分及び設備の工作がすべての点において満足なものであること並びに船舶がこの条約及び現行の海上における衝突の予防のための国際規則の要求する燈火、形象物並びに音響信号及び遭難信号の装置を備えることを確保するものなければならない。

(ii) 定期的検査は、船底の外部を含む船体、ボイラーその他の圧力容器、機関及び設備の検査を含む。この定期的検査は、船舶が、船体、ボイラーその他の圧力容器及びその附属品、主機関、補助機関、電気設備、無線設備、発動機付救命艇の無線電信設備、救命用の端艇及びいかだのための持運び式無線装置、救命設備、防火設備、火災探知装置、消火設備、レーダー、音響測深装置、ジャイロ・コンパス、水先人用はしご、水先人用昇降機その他の設備について満足な状態にありかつその予定された用途に適合すること並びにこの条約及びこの条約に基づいて主管庁が制定する法令に適合することを確保するものでなければならない。船舶に備える燈火、形象物並びに音響信号及び遭難信号の装置もまた、この条約及び現行の海上における衝突の予防のための国際規則に適合することを確保するため、検査を受けるものとする。

(iii) 船舶の安全性若しくは船舶の救命設備その他の設備の実効性若しくは完全性に影響を及ぼす事故の発生若しくは欠陥の発見があつた場合又は重大な修繕若しくは取替えが行われた場合には、状況に応じ、全般的又は部分的の検査を 行う。この検査は、必要な修繕又は取替えが実効的に行われたことを確認するとともに、その修繕又は取替えの材料及び工作がすべての点において満足なものであること並びに船舶がすべての点においてこの条約及び現行の海上にお ける衝突の予防のための国際規則並びにこれらに基づいて主管庁が制定する法令に適合することを確保するものでなければならない。

(c)(i) (b) にいう法令は、人命の安全の見地から、船舶がその予定された用途に適合することをすべての点において確保するためのものでなければならない。

 (ii) (b)にいう法令は、特に、主ボイラー、補助ボイラー、接続物、蒸気管、高圧容器及び内燃機関の燃料タンクについて行う最初の及びその後の水圧試験又はこれに代わる適当な試験に関する要件(試験の方法及び試験の間隔を含む。) を定める。

  第八規則 貨物船の救命設備その他の設備の検査

 次章から第三章まで及び第五章の規定が適用される貨物船の救命設備(発動機付救命艇の無線電信設備並びに救命用の端艇及びいかだのための持運び式無線装置を除く。)、音響測深装置、ジャイロ・コンパス及び消火設備は、この章の第七規則において旅客船について定めるところに準じて最初の検査及びその後の検査を受けるものとし、この場合において、同規則(a)(ii)の「十二箇月」は、「二十四箇月」とする。新船の火災制御図並びに新船及び現存船に備える水先人用はしご、水先人用昇降機、燈火、形象物及び音響信号の装置は、この条約及び現行の海上における衝突の予防のための国際規則 (適用がある場合)に適合することを確保するため、これらの検査の対象に含める。

  第九規則 貨物船の無線設備及びレーダーの検査

 第四章及び第五章の規定が適用される貨物船の無線設備及びレーダー並びに第三章の規定により備える発動機付救命艇の無線電信設備並びに救命用の端艇及びいかだのための持運び式無線装置は、この章の第七規則において旅客船について定めるところに準じて最初の検査及びその後の検査を受ける。

  第十規則 貨物船の船体、機関及び設備の検査

 貨物船の船体、機関及び設備(貨物船安全設備証書、貨物船安全無線電信証書又は貨物船安全無線電話証書に含まれる事項を除く。)は、その状態がすべての点において満足なものであることを確保するために必要であると主管庁が認める方法及び間隔で、完成の際に及びその後に検査を受ける。この検査は、船体、ボイラーその他の圧力容器及びその附属品、主機関、補助機関、電気設備並びに他の設備の配置、材料及び寸法が船舶の予定された用途にとつてすべての点において満足なものであることを確保するものでなければならない。

  第十一規則 検査後における状態の維持

 この章の第七規則から第十規則までの規定に基づく船舶の検査の完了後は、主管庁の許可を受けない限り、検査の対象となる構造配置、機関、設備等の変更を行つてはならない。

  第十二規則 証書の発給

(a)(i) 次章から第四章までの規定その他この規則の関係規定に適合する旅客船に対し、検査の後に旅客船安全証書と称する証書を発給する。

 (ii) 貨物船の検査に関してこの章の第十規則に定める要件を満たす貨物船であつて次章及び第二−二章の規定(消火設備及び火災制御図に関する規定を除く。)に適合するものに対し、検査の後に貨物船安全構造証書と称する証書を発給する。

 (iii) 次章から第三章までの関係規定その他この規則の関係規定に適合する貨物船に対し、検査の後に貨物船安全設備証書と称する証書を発給する。

 (ⅳ) 無線電信設備を備える貨物船であつて第四章の規定その他この規則の関係規定に適合するものに対し、検査の後に貨物船安全無線電信証書と称する証書を発給する。

 (v) 無線電話設備を備える貨物船であつて第四章の規定その他この規則の関係規定に適合するものに対し、検査の後に貨物船安全無線電話証書と称する証書を発給する。

 (vi) この規則により船舶に免除を認める場合には、(a)(i)から(v)までに規定する証書のほかに、免除証書と称する証書を発給する。

 (vii) 旅客船安全証書、貨物船安全構造証書、貨物船安全設備証書、貨物船安全無線電信証書、貨物船安全無線電話証書及び免除証書は、主管庁又は主管庁から正当に権限を与えられた者若しくは団体が発給する。いずれの場合において も、証書については、主管庁が全責任を負う。

(b) この条約の他のいずれの規定にもかかわらず、千九百六十年の海上における人命の安全のための国際条約に基づいて発給された証書であって、その証書を発給した主管庁についてこの条約が効力を生じた時に有効なものは、同国際条約第一章第十四規則の規定により当該期間が満了するまで有効とする。

(c) 締約政府は、この条約が自己について効力を生じた日の後は、千九百六十年の海上における人命の安全のための国際条約、千九百四十八年の海上における人命の安全のための国際条約又は千九百十九年の海上における人命の安全のための国際条約に基づいて証書を発給してはならない。

  第十三規則 他の政府による証書の発給

 締約政府は、主管庁の要請があつたときは、船舶に検査を受けさせることができるものとし、この規則の規定に適合していると認めるときは、当該船舶に対しこの規則に基づいて証書を発給する。このようにして発給する証書には、その証書が船舶の登録された国又は登録される予定の国の政府の要請に基づいて発給される旨を記載する。その証書は、この章の第十二規則の規定に基づいて発給される証書と同一のものとみなされ、同一の効力を有する。

  第十四規則 証書の有効期間

(a) 証書は、貨物船安全構造証書、貨物船安全設備証書及び免除証書を除くほか、十二箇月を超えない期間について発給する。貨物船安全設備証書は、二十四箇月を超えない期間について発給する。免除証書は、関連する証書の有効期間を超える期間について効力を有することはない。

(b) 総トン数三百トン以上五百トン未満の貨物船について発給された貨物船安全無線電信証書又は貨物船安全無線電話証書は、その有効期間の満了前二箇月以内に検査が行われる場合には、回収し、その有効期間の満了後十二箇月で有効期間が満了する新証書を発給することができる。

(c) 証書の有効期間の満了の時に船舶がその登録された国の港にない場合には、主管庁は、証書の有効期間を延長することができる。ただし、延長は、船舶がその登録された国又はその検査がされる予定の国への航海を完了することができるようにするためにのみ、しかもそれが適当かつ合理的であると認められる場合に限り、許可される。

(d) (c)の規定に基づく証書の有効期間の延長は、五箇月を超えて行うことはできない。有効期間の延長を許可された証書を備える船舶は、その登録された国又はその検査がされる予定の港に到着したときは、新証書の発給を受けない限り、当該延長によつては、その国又は港を離れることができない。

(e) (c)及び(d)の規定による有効期間の延長がされていない証書については、主管庁は、記載された有効期間の満了の日から一箇月以内の猶予期間を認めることができる。

  第十五規則 証書の様式

(a) 証書は、これを発給する国の公用語で作成する。

(b) 証書は、この規則の付録に定める様式による。証書の様式の印刷部分の配置は、発給する証書又はその認証謄本に正確に再現するものとし、証書又はその認証謄本の記入事項は、ローマ文字及びアラビア数字による。

  第十六規則 証書の掲示

 この規則に基づいて発給する証書又はその認証謄本は、船内の目につきやすくかつ近づき得る場所に掲示する。

  第十七規則 証書の認容

 締約政府の権限に基づいて発給する証書は、この条約の適用上、他の締約政府によつて認容される。証書は、他の締約政府により、当該他の締約政府が発給する証書と同一の効力を有するものとみなされる。

  第十八規則 証書の附属の文書

(a)特定の航海において船舶が旅客船安全証書に記載する総数より少ない人員を乗船させ、したがつて、この規則により、証書に記載する数より少ない数の救命艇その他の救命設備の積載を許される場合には、この章の第十二規則又は第十三規則にいう政府、者又は団体は、附属の文書を発給することができる。

(b) (a)の附属の文書には、その状況においてこの規則に対する違反がない旨を記載する。同文書は、証書に添付するものとし、救命設備に関する限り、証書に代わるものとする。同文書は、それが発給された特定の航海についてのみ効力を有する。

  第十九規則 監督

 この章の第十二規則又は第十三規則の規定に基づいて発給された証書を備える船舶は、他の締約政府の港において、船内に有効な証書を備えていることを確認するためのものである限り、当該他の締約政府から正当に権限を与えられた職員が行う監督に服する。証書は、船舶又はその設備の状態が実質的に証書の記載事項どおりでないと認める明確な根拠がある場合を除くほか、認容される。このような根拠がある場合には、監督を行う職員は、当該船舶が旅客又は乗組員に危険を及ぼすことなく航行することができるようになるまで、当該船舶を航行させないための措置をとる。何らかの干渉をすることとなる監督を行う場合には、監督を行う職員は、当該船舶が登録された国の領事に対し干渉を必要と認める事情を直ちに書面で通報するものとし、また、その事実を機関に報告する。

  第二十規則 特権

 この条約に基づく特権は、船舶が適正かつ有効な証書を備えている場合に限り、主張することができる。

 C部 海難

  第二十一規則 海難

(a) 主管庁は、いかなる変更がこの規則に加えられることが望ましいかを決定するに当たつて役立つと判断する場合には、この条約の適用を受ける自国の船舶の受けた海難について調査を行うことを約束する。

(b) 締約政府は、(a)の調査の結果に関する適切な情報を機関に提供することを約束する。この情報に基づく機関の報告又は勧告は、当該船舶又はその国籍を明らかにするものであつてはならず、また、いかなる方法によつても、いずれかの船舶若しくは人に責任を負わせ、又はその責任を暗示するものであつてはならない。

第二−一章 構造(区画及び復原性並びに機関及び電気設備)

 A部 総則

  第一規則 適用

(a)(i) この章の規定は、別段の明文の規定がない限り、新船に適用する。

 (ii) 現存の旅客船及び貨物船は、この(a)(ii)の(1)から(4)までのいずれかの規定に適合するものでなければならない。

  (1) 千九百六十年の海上における人命の安全のための国際条約の効力発生の日以後にキールが据え付けられた船舶又はこれと同様の建造段階にあつた船舶については、主管庁は、同条約第二章に定義する新船に対し同章の規定に基づいて適用される要件を満たすことを確保する。

  (2) 千九百四十八年の海上における人命の安全のための国際条約の効力発生の日以後千九百六十年の海上における人命の安全のための国際条約の効力発生の日前にキールが据え付けられた船舶又はこれと同様の建造段階にあつた船舶については、主管庁は、千九百四十八年の条約第二章に定義する新船に対し同章の規定に基づいて適用される要件を満たすことを確保する。

  (3) 千九百四十八年の海上における人命の安全のための国際条約の効力発生の日前にキールが据え付けられた船舶又はこれと同様の建造段階にあつた船舶については、主管庁は、同条約第二章に定義する現存船に対し同章の規定に基づいて適用される要件を満たすことを確保する。

  (4) 主管庁は、この章に定める要件であつて千九百六十年の海上における人命の安全のための国際条約第二章及び千九百四十八年の海上における人命の安全のための国際条約第二章に含まれないもののうち、この条約に定義する現存船に適用する要件を決定する。

 (iii) 修繕、変更及び改造並びにこれらに関連する艤装が行われる船舶は、少なくともその船舶に従来適用されていた要件を引き続き満たすものとする。この場合において、現存船は、原則として、新船に対する要件を満たす程度が従前より劣つてはならない。主要な修繕、変更及び改造並びにこれらに関連する艤装は、主管庁が合理的かつ実行可能と認める限り、新船に対する要件を満たすものでなければならない。

(b)この章の規定の適用上、

 (i) 「新旅客船」とは、この条約の効力発生の日以後にキールが据え付けられる旅客船若しくはこれと同様の建造段階にある旅客船又はその日以後に旅客船に用途変更される貨物船をいい、その他の旅客船は、現存旅客船とする。

 (ii) 「新貨物船」とは、この条約の効力発生の日以後にキールが据え付けられる貨物船又はこれと同様の建造段階にある貨物船をいう。

(c) 主管庁は、保護された航海の性質及び状況によりこの章の特定の規定を適用することが不合理又は不必要であると認める場合には、最も近い陸地から二十海里以内を航行する自国の個々の船舶又は船舶の種類について、当該規定の適用を免除することができる。

(d) 第三章第二十七規則(c)の規定により救命艇の所定の合計収容能力を超える数の乗船者を運送することを認められる旅客船は、この章の第五規則(e)に定める区画の特別規準及びこの章の第四規則(d)の浸水率に関する特別規定に従う。ただし、主管庁が航海の性質及び状況を考慮してこの章及び次章の他の規定に適合すれば十分であると認める場合は、この限りでない。

(e) 主管庁は、巡礼者運送のような特殊な運送において多数の旅客の運送に使用される自国の旅客船については、この章の規定に適合させることが実行不可能であると認める場合には、次の規則に従うことを条件として、当該規定の適用を免除することができる。

 (i) 千九百七十一年の特殊運送旅客船協定に附属する規則

 (ii) 千九百七十三年の特殊運送旅客船についての場所の要件に関する議定書(効力を生じている場合)に附属する規則

  第二規則 定義

 この章の規定の適用上、別段の明文の規定がない限り、

(a)(i)「区画満載喫水線」とは、船舶の区画を決定するために用いる喫水線をいう。

 (ii) 「最高区画満載喫水線」とは、適用される区画の要件に従つて認められる最大喫水に対応する喫水線をいう。

(b) 「船舶の長さ」とは、最高区画満載喫水線の両端における垂線の間の長さをいう。

(c) 「船舶の幅」とは、最高区画満載喫水線又はその下方におけるフレームの外面から外面までの最大幅をいう。

(d) 「喫水」とは、船舶の長さの中央における型基線からその区画満載喫水線までの垂直距離をいう。

(e) 「隔壁甲板」とは、横置水密隔壁の達する最上層の甲板をいう。

(f)「限界線」とは、隔壁甲板の船側における上面から少なくとも七十六ミリメートル(三インチ)下方に引いた線をいう。

(g) 特定の場所の「浸水率」とは、その場所において水が占めることになる部分の百分率をいう。

限界線の上方に及ぶ場所の容積は、限界線の高さまでの容積について計算する。 (h)「機関区域」とは、型基線から限界線までの範囲において、主推進機関、補助推進機関、推進の用に供するボイラー及び常設石炭庫を含む場所を仕切る両端の横置水密隔壁の間に広がる場所をいう。

通例の配置と異なる配置の場合には、主管庁は、機関区域の範囲を定めることができる。

(i)「旅客区域」とは、手荷物室、貯蔵品室、食料品室及び郵便室を除くほか、旅客の居住及び使用に充てる場所をいう。

この章の第四規則及び第五規則の規定の適用上、限界線の下方の乗組員の居住及び使用に充てる場所は、旅客区域とみなす。

(j) すべての場合に、容積及び面積は、モールデッド・ラインまでの容積及び面積について計算する。

 B部 区画及び復原性(注)

(この部の規定は、第十九規則の規定を貨物船にも適用するほかは、旅客船にのみ適用する。)

注 この部に定める要件に代えて、機関が決議A二六五 (VIII)において採択した千九百六十年の海上における人命の安全のための国際条約第二章B部の同等物としての旅客船の区画及び復原性に関する規則 (適用がある場合)を適用することができる。

  第三規則 可浸長

(a) 船舶の長さの特定の点における可浸長は、その船舶の形状、喫水その他の特性を考慮した計算方法によつて決定する。

(b) 連続する隔壁甲板を有する船舶については、特定の点における可浸長は、その点を中心点とする船舶の長さの部分であつて、この章の第四規則に定める一定の仮定の下で船舶が限界線を越えて沈むことなく水が浸水し得る最大のものとする。

(c)(i) 連続する隔壁甲板を有しない船舶については、特定の点における可浸長は、関係横置水密隔壁及び外板が水密で達する甲板の船側における上面から少なくとも七十六ミリメートル(インチ)下方に引いた連続限界線を仮定するこ とにより算定することができる。

 (ii) 仮定された限界線の一部が水密隔壁の達する甲板のかなり下方にある船舶については、主管庁は、限界線の上方にある水密隔壁の部分であつて上層の甲板の直近の部分の水密性について、ある程度その緩和を認めることができる。

  第四規則 浸水率

(a) この章の第三規則にいう一定の仮定は、限界線の下方の場所の浸水率に関するものである。

可浸長の算定に当たつては、限界線の下方における船舶の次の各部分の全長にわたり一律の平均浸水率を用いる。

 (i) この章の第二規則に定義する機関区域

 (ii) 機関区域の前方の部分

 (iii) 機関区域の後方の部分

 (ⅳ) 機関区域の一律の平均浸水率は、次の式で算定する。

{数式と数式の説明は削除}

 (ii) 精密な計算で決定する平均浸水率が(b)(i)の式で得られたものより小さいことが明らかであると主管庁が認める場合には、精密に計算した値を用いることができる。この計算上、この章の第二規則に定義する旅客区域の浸水率は、九十五とし、貨物、石炭及び貯蔵品のために充てられる場所の浸水率は、六十とし、また、二重底の浸水率及び燃料油タンクその他のタンクの浸水率は、承認された値とする。

(c) 機関区域の前方(又は後方)の船舶の部分の一律の平均浸水率は、(d)の規定が適用される場合を除くほか、次の式で算定する。

{数式と数式の説明は削除}

(d) 第三章第二十七規則(c)の規定により救命艇の所定の合計収容能力を超える数の乗船者を運送することを認められ、かつ、この章の第一規則(d)の規定により特別規定に従うことを要求される船舶については、機関区域の前方(又は後方)の 船舶の部分の一律の平均浸水率は、次の式で算定する。

{数式と数式の説明は削除}

(e) 通例の配置と異なる配置の場合には、主管庁は、機関区域の前方又は後方の部分の平均浸水率の精密な計算を許容し、又は要求することができる。この計算上、この章の第二規則に定義する旅客区域の浸水率は、九十五とし、機関を含む場所の浸水率は、八十五とし、貨物、石炭及び貯蔵品のために充てられる場所の浸水率は、六十とし、また、重底の浸水率及び燃料油タンクその他のタンクの浸水率は、承認された値とする。

(f) 二の横置水密隔壁の間にある甲板間の区画室に旅客区域又は乗組員区域が含まれる場合には、常設鋼製隔壁によつて完全に閉囲されかつ他の目的に充てられる場所を除くほか、その区画室の全部を旅客区域とみなす。ただし、当該旅客区域又は乗組員区域が常設鋼製隔壁によつて完全に閉囲されている場合には、開囲された場所のみを旅客区域とみなす。

  第五規則 区画室の可許長

(a) 船舶は、その予定された用途の性質を考慮して、できる限り有効に区画する。区画の程度は、旅客の運送に主として従事する最も長い船舶が最も高い程度に区画されるように、船舶の長さ及び用途に応じて異なる。

(b) 区画係数 船舶の長さの特定の点を中心点とする区画室の最大の可許長は、可侵長に適当な係数(区画係数という。)を乗じて求める。

区画係数は、船舶の長さに応じて変わるものとし、一定の長さに対しては、船舶の予定された用途の性質に応じて変わる。この係数は、

 (i) 船舶の長さが増大するに従い、

 (ii) 貨物運送に主として従事する船舶に適用する係数Aから、旅客運送に主として従事する船舶に適用する係数Bまで

 規則的かつ連続的に減少する。

  係数A及びBの変化は、次の(Ⅰ)及び(II)の式で示す。式中の Lは、この章の第二規則に定義する船舶の長さである。

{数式と数式の説明は削除}

(c) 用途の標準 特定の長さの船舶については、適当な区画係数は、次の(III)及び(IV)の式で求める用途の標準数(以下「標準数」という。)を用いて算定する。

  Csは、標準数とする。

  Lは、この章の第二規則に定義する船舶の長さとする。

  Mは、この章の第二規則に定義する機関区域の容積とする。内底の上方において機関区域の前方又は後力に常設燃料油タンクがある場合には、その容積を加算する。

  Pは、この章の第二規則に定義する旅客区域の限界線の下方の全容積とする。

  Vは、船舶の限界線の下方の全容積とする。

{数式と数式の説明は削除}

 連続する隔壁甲板を有しない船舶については、容積は、可浸長の算定に用いる実際の限界線までの容積について計算する。

(d) (e)の規定が適用される船舶以外の船舶の区画規則

 (i) 長さ百三十一メートル(四百三十フィート)以上の船舶の船首倉の後方の区画は、標準数が二十三以下である場合には(Ⅰ)の式で求める係数Aにより、標準数が百二十三以上である場合には(II)の式で求める係数Bにより、また、標準数が二十三を超え百二十三未満である場合には次の式を用いて係数Aと係数Bとの間の一次補間法で求める係数Fにより決定する。

  この区画は、標準数が百二十三以上である場合には(II)の式で求める係数Bにより、また、標準数がSを超え百二十三未満である場合には次の式を用いて一・〇〇と係数Bとの間の一次補間法で求める係数Fにより決定する。

{数式と数式の説明は削除}

 (iii) 長さ百三十一メートル (四百三十フィート)未満七十九メートル(二百六十フィート)以上で標準数がS未満である船舶及び長さ七十九メートル(二百六十フィート)未満の船舶の船首倉の後方の区画は、係数一・〇〇により決定する。もつとも、そのいずれの場合においても、主管庁は、船舶の特定の部分についてこの係数によることが明らかに実行不可能であると認めるときは、事情を考慮した上で妥当と認める緩和を許容することができる。

 (ⅳ) (d)(iii)の規定は、運送を認められる旅客定員が十二を超え次の数又は五十のいずれか小さい方の数を超えない船舶(長さのいかんを問わない。)にも適用する。

{数式と数式の説明は削除}

(e) 第三章第二十七規則(c)の規定により救命艇の所定の合計収容能力を超える数の乗船者を運送することを認められ、かつ、この章の第一規則(d)の規定により特別規定に従うことを要求される船舶に対する区画の特別規準

 (i)(1) 旅客の運送に主として従事する船舶については、船首倉の後方の区画は、係数〇・五〇により決定する。(c)及び(d)の規定に従つて決定する係数が〇・五〇未満である場合には、その値により決定する。

  (2) 長さ九十一・五メートル(三百フィート)未満の(e)(i)(1)の船舶について主管庁が(e)(i)(1)の係数を区画室に適用することが実行不可能であると認める場合には、主管庁は、区画室の長さを、(e)(i)(1)の係数より大きい係数により決定することを認めることができる。ただし、その係数は、その事情において合理的かつ実行可能な最も小さい係数とする。

 (ii) いずれの船舶についても、長さが九十一・五メートル(三百フォート)未満であるかどうかを問わず、相当の量の貨物を運送する必要から船首倉の後方の区画を、〇・五〇以下の係数により決定することが実行不可能である場合には、適用する区画の規準は、この(e)(ii)の(1)から(5)までの規定に従つて決定する。もつとも、主管庁は、何らかの点で厳格な適用を強制することが不合理であると認める場合には、適当と認められかつ区画の全般的な効果を減ずることがないような水密隔壁の別の配置を認めることができる。

  (1) 標準数に関しては、(c)の規定を適用する。寝床旅客に対するP1の値の計算に当たつては、Kは(c)に定義する値又は三・五五立方メートル(百二十五立方フィート) のいずれか大きい方の値をとり、無寝床旅客に対するP1の値の計算に当たつては、Kは、二・五五立方メートル (百二十五立方フィート)の値をとる。

  (2) (b)の係数Bは、次の式で算定する係数BBと置き換える。

{数式と数式の説明は削除}

  (3) 長さ百三十一メートル(四百三十フィート)以上の船舶の船首倉の後方の区画は、標準数が二十三以下である場合には(b)の(1)の式で求める係数Aにより、標準数が百二十三以上である場合には(e)(ii)(2)の式で求める係数部にBBにより、また、標準数が二十三を超え百二十三未満である場合には次の式を用いて係数Aと係数BBとの間の一次補間法で求める係数Fにより決定する。

{数式と数式の説明は削除}

  (4) 長さ百三十一メートル(四百三十フィート) 未満五十五メートル(百八十フィート)以上の船舶の船首倉の後方の区画は、標準数が次の式で求めるS1に等しい場合には、係数一・〇〇により決定する。

{数式と数式の説明は削除}

 (5) 長さ百三十一メートル(四百三十フィート)未満五十五メートル(百八十フィート)以上で標準数がS1未満である船舶及び長さ五十五メートル(百八十フィート)未満の船舶の船首倉の後方の区画は、係数一・〇〇により決定する。もつとも、主管庁は、特定の区画室についてこの係数によることが明らかに実行不可能であると認める場合には、これらの区画室について、事情を考慮した上で妥当と認める緩和を許容することができる。この場合において、最後部の区画室及びできる限り多くの前方の区画室(船首倉と機関区域の後端との間にあるもの) は、可浸長以内の長さのものでなければならない。

  第六規則 区画に関する特別規則

(a) 船舶のいずれかの部分において横置水密隔壁が他の部分におけるよりも上層の甲板に達しており、可浸長の計算において隔壁のこの延長を利用することが望ましい場合には、次のことを条件として、船舶の当該いずれかの部分について別個の限界線を使用することができる。

 (i) 船側が船舶の全長にわたつて上方の限界線に対応する甲板まで達していること、及びこの甲板の下方の外板のすべての開口を船舶の全長にわたつてこの章の第十四規則の規定の適用上限界線の下方にあるものとして取り扱うこと。

 (ii) 隔壁甲板の階段部に隣接する二の区画室がそれぞれの限界線に対応する可許長以内の長さのものであり、かつ、これらの合計長が下方の限界線に対応する可許長の二倍の長さを超えないこと。

(b)(i) 区画室の長さは、その区画室とこれに隣接する区画室のいずれとの合計長も可許長の二倍の長さ又は可浸長のいずれか小さい方の長さを超えない場合には、この章の第五規則の方式により決定する可許長を超えることができる。

 (ii) 隣接する二の区画室のいずれか一方が機関区域内にあり、他方が機関区域外にある場合において、当該他方の区画室のある船舶の部分の平均浸水率が機関区域の平均浸水率と異なるときは、その二の区画室の合計長は、その二の区画室のある船舶のそれぞれの部分の平均浸水率の平均を基礎として調整する。

 (iii) 面隣接する二の区画室の区画係数が異なる場合には、その二の区画室の合計長は、比例的に決定する。

(c) 長さ百メートル(三百三十フィート)以上の船舶においては、船首倉の後方の横置水密隔壁の一は、船首垂線から可許長を超えない距離に設ける。

(d) 横置水密隔壁には、用折部を設けることができる。ただし、屈折部のすべての部分が、最高区画満載喫水線の水平面において中心線に対し直角に測つて外板からこの章の第二規則に定義する船舶の幅の五分の一に相当する距離にある船舶の両側における垂直面の内方にあることを条件とする。

前記の条件を満たさない屈折部のいずれの部分も、(e)の規定により階段部として取り扱う。

(e) 横置水密隔壁には、次のいずれかの条件を満たす場合には、階段部を設けることができる。

 (i) 横置水密隔壁で仕切られる二の区画室の合計長が可浸長の九十パーセントに相当する長さ及び可許長の二倍の長さを超えないこと。ただし、区画係数が〇・九を超える船舶においては、二の区画室の合計長は、可許長を超えてはならない。

 (ii) 平面隔壁によって確保されると同程度の安全性を維持するため、階段部のある箇所に追加の区画を設けること。

 (iii) 上方に階段部のある区画室の長さが、階段部の七十六ミリメートル(三インチ)下方に引いた限界線に対応する可許長を超えないこと。

(f) 横置水密隔壁に屈折部又は階段部がある場合には、これと同等の平面隔壁を用いて区画を決定する。

(g) 隣接する二の横置水密隔壁の間、これと同等の平面隔壁の間又は横置水密隔壁の階段部の最も近い点を通る横断面の間の距離が三・〇五メートル(十フィート)に船舶の長さの三パーセントに相当する長さを加えたもの又は十・六七メート ル(三十五フィート)のいずれか小さい方の長さに達しない場合には、これらの隣接する二の横置水密隔壁の一のみをこの章の第五規則の規定による船舶の区画の部分を形成するものとみなす。

(h) 区画室が局部的区画を有しており、三・〇五メートル(十フィート)に船舶の長さの三パーセントに相当する長さを加えたもの又は十・六七メートル(三十五フィート)のいずれか小さい方の長さに及ぶ船側損傷を受けても区画室の全容積について浸水しないことが明らかであると主管庁が認める場合には、その他の場合にこの区画室に要求される可許長を、 該局部的区画の容積に応じて、増大させることができる。この場合において、損傷を受けない船側について仮定する有効浮力の容積は、損傷を受けた船側について仮定する容積を超えてはならない。

(i) 要求される区画係数が〇・五〇以下である場合には、隣接する二の区画室の合計長は、可浸長を超えてはならない。

  第七規則 損傷状態にある船舶の復原性

(a) 船舶は、可浸長以内にあることを要求されるいずれの区画室についても、浸水の最終段階に耐えるため、十分な非損傷時復原性をいかなる使用状態においても有するものとする。

隣接する二の区画室がこの章の第六規則(e)(i)の条件による階段部を有する横置水密隔壁によつて仕切られる場合には、非損傷時復原性は、その二の区画室の浸水に耐えるために十分なものでなければならない。

要求される区画係数が〇・五〇以下で〇・三三を超える場合には、非損傷時復原性は、隣接する二の区画室の浸水に耐えるために十分なものでなければならない。

要求される区画係数が、〇・三三以下である場合には、非損傷時復原性は、隣接する三の区画室の浸水に耐えるために十分なものでなければならない。

(b)(i) (a)に定める要件は、(c)、(d)及び(f)の規定に従い、かつ、船舶の寸法比及び設計上の特性並びに損傷を仮定した区画室の配置及び形状を考慮して行う計算によつて決定する。この計算に当たつては、船舶は、復原性について予想される最悪の使用状態にあるものと仮定する。

 (ii) 水の流入を防ぐのを厳重にするために十分な水密性を有する甲板、内側外板又は縦通隔壁を設ける場合には、主管庁は、その計算に当たりこれらの制限措置について適切な考慮が払われていることを確かめる。

 (iii) 主管庁は、損傷状態における復原性の範囲が疑わしいと判断する場合には、その調査を要求することができる。

(c) 損傷時復原性の計算上、容積浸水率及び表面浸水率は、原則として次のとおりとする。

   場所  浸水率

  貨物、石炭又は貯蔵品用の場所・・・六十

  居住設備のある場所・・・九十五

  機関のある場所・・・八十五

  液体用の場所・・・○又は九十五 (注)

    注 いずれか一層厳格な条件となる方の値をとる。

 損傷時の水線面の近傍において実質的に居住設備又は機関を含まない場所及び通常相当の量の貨物又は貯蔵品によつて占められない場所については、一層大きい表面浸水率を用いる。

(d) 仮定する損傷の範囲は、次のとおりとする。

 (i) 縦方向範囲三・〇五メートル(十フィート)に船舶の長さの三パーセントに相当する長さを加えたもの又は十・六七メートル(三十五フィート)のいずれか小さい方の長さ。要求される区画係数が〇・三三以下である場合には、仮定する縦方向の損傷範囲は、隣接する二の横置水密隔壁を含むように必要に応じて増大させる。

 (ii) 横方向範囲(最高区画満載喫水線の水平面において中心線に対し直角に船側から内方に測る。) この章の第二規則に定義する船舶の幅の五分の一に相当する長さ

 (iii) 垂直方向範囲 限定なしに基線から上方

 (ⅳ) (d)(i)から(iii)までに示す範囲より小さい範囲の損傷が横傾斜に関し又はメタセンタ高さの減少に関して一層重大な状態をもたらす場合には、その計算に当たり、この損傷を仮定する。

(e) 非対称浸水は、効果的な配置により最小限度に保つことを要する。大角度の横傾斜を修正する必要がある場合には、採用される設備は、実行可能な限り自動的に作動するものでなければならない。クロス・フラッディング設備に対する制御装置が設けられる場合には、その制御装置は、隔壁甲板の上方から操作することができるものでなければならない。制御装置を含むこれらの設備及び平衡前の最大傾斜角は、主管庁の認容するものでなければならない。クロス・フラッディング設備が必要である場合には、平衡に要する時間は、十五分を超えてはならない。 クロス・フラッディング設備の使用に関する適当な情報は、船長に提供する。(注)

  注 機関が決議A二六六(VIII)において採択した旅客船におけるクロス・フラッディング設備に関する要件を満たすことを確保するための標準的方法に関する勧告を参照すること。

(f) 損傷の後及び非対称浸水の場合に平衡措置をとつた後における船舶の最終状態は、次のとおりとする。

 (i) 対称浸水の場合には、浮力喪失法による計算において、少なくとも五十ミリメートル(二インチ)の正の残存メタセンタ高さがなければならない。

 (ii) 非対称浸水の場合には、横傾斜は、七度を超えてはならない。特別の場合には、主管庁は、非対称モーメントによる横傾斜の増大を認容することができるが、最終の横傾斜は、いかなる場合にも十五度を超えてはならない。

 (iii) 限界線は、いかなる場合にも、浸水の最終段階において水に没してはならない。主管庁は、浸水の中間段階において限界線が水に没することがあると認める場合には、船舶の安全のために必要と認める調査及び措置を要求することができる。

(g) 船長には、船舶が危険な損傷に耐えるために十分な非損傷時復原性を使用状態において維持するため必要な資料を提供する。クロス・フラッディングを必要とする船舶については、船長に対し、横傾斜の計算の基礎となつた復原性に係る条件について通報し、かつ、一層悪い条件の下に船舶が損傷を受けた場合に過度の横傾斜が起こることのあることを警告する。

(h)(i) 主管庁は、いずれかの使用状態において損傷時復原性に関する要件を満たすために必要な非損傷時メタセンタ高さが船舶の予定された用途のためには過大であることが証明される場合を除くほか、これらの要件の緩和を考慮することができない。

 (ii) 損傷時復原性に関する要件の緩和は、特定の状況において実際にかつ合理的に採用することができる船舶の寸法比、配置その他の特性が損傷後の復原性に最も有利であると主管庁が認めることを条件として、例外的な場合においてのみ、許される。

  第八規則 バラスト

 バラストに水を使用することが必要である場合には、水バラストは、原則として、燃料油用のタンクに積載してはならない。燃料油タンクへの水バラストの積載を避けることが実行不可能である船舶については、主管庁の認める油水分離器を設け、又はこれに代えて油に汚れた水バラストを廃棄するための主管庁の承認する他の措置をとる。

  第九規則 船首尾隔壁、機関区域隔壁、軸路等

(a)(i) 船舶には、隔壁甲板まで水密な船首隔壁すなわち衝突隔壁を設ける。船首隔壁は、船首垂線からの距離が船舶の長さの五パーセントに相当する距離以上、三・〇五メートル (十フィート)と船舶の長さの五パーセントに相当する距離との和以下となるように取り付ける。

 (ii) 船舶が長い前部船楼を有する場合には、船首隔壁は、隔壁甲板の直上の甲板まで延長した風雨密のものとする。延長に係る部分が船首垂線から船舶の長さの少なくとも五パーセントに相当する距離にあり、かつ、階段部を形成する隔壁甲板の部分が有効に風雨密である場合には、当該延長は、下方の船首隔壁の直上にはする必要がない。

(b) 船舶には、また、船尾隔壁及びこの章の第二規則に定義する機関区域とその前後の貨物区域又は旅客区域とを仕切る隔壁を設け、隔壁甲板まで水密にする。もつとも、船尾隔壁は、区画に関する船舶の安全度を減ずることがない限り、隔壁甲板の下方にとどめることができる。

(c) いかなる場合にも、船尾管は、適当な容積の水密な場所に取り付ける。船尾管グランドは、船尾管区画室から仕切られた水密な軸路又は他の水密な場所であつて、船尾管グランドからの漏水によつて浸水しても限界線が水に没しない程度の容積を有するものの内部に取り付ける。

  第十規則 二重底

(a) 二重底一周 二重底は、実行可能な限り、かつ、船舶の設計及び固有の用途に適合する限り、船首隔壁から船尾隔壁まで設ける。

 (i) 長さ五十メートル(百六十五フィート)以上六十一メートル(二百フィート)未満の船舶については、少なくとも機関区域の前端から船首隔壁まで又は実行可能な限りその近くまで、二重底を設ける。

 (ii) 長さ六十一メートル(二百フィート)以上七十六メートル(二百四十九フィート)未満の船舶については、少なくとも機関区域の両端から船首尾隔壁まで又は実行可能な限りその近くまで、二重底を設ける。

 (iii) 長さ七十六メートル(二百四十九フィート)以上の船舶については、中央から船首尾隔壁まで又は実行可能な限りその近くまで、二重底を設ける。

(b) 二重底を設けることを要する場合には、その深さは、主管庁の認めるものでなければならず、内底は、船底をわん曲部まで保護するように、船側まで達していなければならない。 この保護は、縁板の外縁とわん曲部外板との交線が、いずれの部分においても、基線に対して二十五度傾斜し、かつ、中心線から船舶の型幅の二分の一の点で基線を切る横斜線と船船の中央のフレーム・ラインとの交点を通る水平面の下方にない場合には、十分と認められる。

(c) 船倉等の排水装置に連結して二重底に設ける小さいウェルは、必要以上に深いものであつてはならない。 ウェルの深さは、いかなる場合にも、中心線における重底の深さから四百五十七ミリメートル(十八インチ)を差し引いたものより深いものであつてはならず、また、(b)にいう水平面の下方に達するものであつてはならない。ただし、スクリュー船の軸路の後端においては、外底まで達するウェルを設けることが許される。その他のウェル(例えば、主機関下の潤滑油用のもの)については、主管庁は、この第十規則の規定に適合する二重底による保護と同程度の保護を与える措置がとられていると認める場合には、これを設けることを許すことができる。

(d) 液体の運送にのみ用いる適当な大きさの区画室のある箇所には、二重底は、船底又は船側に損傷を受けても船舶の安全が害されないと主管庁が認めることを条件として、設けることを要しない。

(e) この章の第一規則(d)の規定が適用される船舶であつて第三章第二規則に定義する短国際航海の範囲内で定期業務に従事するものについては、主管庁は、〇・五〇を超えない係数で区画された船舶の部分に二重底を設けることが船舶の設計及び固有の用途に適さないと認める場合には、その部分の二重底を省略することを許すことができる。

  第十一規則 区画満載喫水線の指定、標示及び記載

(a) 必要な区画の程度を維持するため、承認された区画喫水に対応する満載喫水線を指定し、船側にその標示をする。船舶が旅客の居住又は貨物の運送に交互に充てる場所を有する場合において船舶所有者が希望するときは、当該船舶は、それぞれの使用状態について主管庁の承認する区画喫水に対応するように指定しかつその標示をする追加の満載喫水線を有することができる。

(b) 指定されかつその標示がされる区画満載喫水線は、旅客船安全証書に記載するものとし、主要旅客積載状態についてはC.1の記号により、その他の積載状態についてはC.2、C.3等の記号により、区別する。

(c) 各満載喫水線に対応するフリーボードは、現行の満載喫水線に関する国際条約に従つて決定するフリーボードと同一の位置において同一の甲板線から測る。

(d) 承認された各区画満載喫水線に対応するフリーボード及び船舶の使用状態は、旅客船安全証書に明確に記載する。

(e) 区画満載喫水線の標示は、いかなる場合にも、船舶の強度により又は現行の満載喫水線に関する国際条約により決定される海水についての最高満載喫水線の上方にあつてはならない。

(f) 船舶には、いかなる場合にも、区画満載喫水線の標示の位置にかかわらず、現行の満載喫水線に関する国際条約により決定される季節及び場所に対応する満載喫水線の標示が水に没するような積載をしてはならない。

(g) 船舶には、いかなる場合にも、特定の航海及び使用状態に対応する区画満載喫水線の標示が海水に没するような積載をしてはならない。

  第十二規則 水密隔壁等の構造及び最初の試験

(a) 横置又は縦通の各水器隔壁は、船舶に損傷を生じた場合にその水隔壁が受けることがある最大の水高による圧力に対して、適当な余裕をもつて、少なくとも限界線までの水高による圧力に対しては耐え得るように造る。これらの水冷隔壁の構造は、主管庁の認めるものでなければならない。

(b)(i) 水密隔壁の階段部及び屈折部は、水密なものでなければならず、また、そのある箇所における水密隔壁と同一の強さのものでなければならない。

 (ii) フレーム又はビームが水密な甲板又は水密隔壁を貫通する場合には、その甲板及び水密隔壁は、木材又はセメントの使用に頼ることなく構造的に水密なものでなければならない。

(c) 区画室の水張り試験は、強制的なものではない。水張り試験が行われない場合には、射水試験が強制的なものとなり、これらの試験は、船舶の艤装工事の最も進ちよくした段階で行う。いかなる場合にも、水密隔壁についての完全な検査を行う。

(d) 船首倉、二重底(ダクト・キールを含む。)及び内側外板は、(a)に規定する水高による圧力で試験する。

(e) 液体を入れることを目的とするタンクであつて船舶の区画の一部をなしているものは、最高区画満載喫水線までの高さ又はタンクのある箇所におけるキールの上面から限界線までの深さの三分の二に相当する高さのいずれか大きい方の水高による圧力で、水密性について試験する。この場合において、試験水高は、タンクの頂板の上方〇・九二メートル(三フィート)未満であつてはならない。

(f) (d)及び(e)にいう試験は、区画構造が水密であることを確保することを目的とするものであり、燃料油の貯蔵その他の特殊目的のための区画室であつてタンク又はその連結管における液体の達する高さに応じて一層高い程度の試験を行うことを要するものの適性についての試験とみなしてはならない。

  第十三規則 水密隔壁の開口

(a) 水密隔壁の開口の数は、船舶の設計及び固有の用途に適合する範囲において、できる限り少なくするものとし、これらの開口の閉鎖のため適当な措置をとる。

(b) (i)管、排水管、電線等が水密隔壁を貫通する場合には、隔壁の水密の完全性を確保するための措置をとる。

 (ii) 管系の一部をなしていない弁及びコックは、水密隔壁に取り付けてはならない。

 (iii) 鉛その他の熱に弱い材料は、水密隔壁を貫通する装置であつて、火災の際に損傷によって水密隔壁の水密性を害するおそれがあるものに用いてはならない。

(c)(i) 戸、マンホール又は出入口は、次の隔壁に設けてはならない。

  (1) 衝突隔壁の限界線の下方の部分

  (2) (1)の規定が適用される場合を除くほか、貨物区域とこれに隣接する貨物区域、常設石炭庫又は予備石炭庫とを仕切る横置水密隔壁

 (ii) (c)(iii)の規定が適用される場合を除くほか、衝突隔壁は、限界線の下方においては、船首タンクの液体を処理するための一の管のみを貫通させることができる。ただし、管には、隔壁甲板の上方から操作し得るねじ下げ弁を取り付けるものとし、弁室は、衝突隔壁の船首倉側に取り付ける。

 (iii) 面船首倉が二種類の液体を入れるように仕切られている場合には、主管庁は、限界線の下方において(c)(ii)ただし書の要件を満たす二の管が衝突隔壁を貫通することを認めることができる。ただし、主管庁が第二の管の取付けに代わる実際的な措置がないこと及び船首倉における区画の増設により船舶の安全が維持されることを認める場合に限る。

(d)(i) 常設石炭庫と予備石炭庫との間の隔壁に取り付ける水密戸は、いつでも近づくことができるものでなければならない。ただし、甲板間の石炭庫の水密戸に関する(k)(ii)の規定による場合は、この限りでない。

 (ii) 石炭が石炭庫の水密戸の閉鎖を妨げることがないように、障板の取付けその他の適当な措置をとる。

(e) 主推進機関及び補助推進機関(推進の用に供するボイラー及び常設石炭庫を含む。)のある場所においては、石炭庫及び軸路に通ずる戸を除くほか、各横置水密隔壁に一の水密戸のみを取り付ける。二以上の軸がある場合には、軸路は、相互問の通路で連結する。機関区域と軸路区域との間の水密戸は、二の軸がある場合には一とし、二を超える軸がある場合には二までとする。これらの水密戸は、滑り戸型とし、実行可能な限り敷居を高くする。隔壁甲板の上方からこれらの水密戸を操作する手動装置は、必要な伝動装置の適切な配置と両立する限り、機関のある場所の外部に取り付ける。

(f) 水密戸は、滑り戸若しくはヒンジ戸又はこれらと同等の型の戸とする。ボルトのみで取り付ける板戸及び落下により又は落下重量物の作用によつて閉鎖される戸は、認められない。

 (ii) 滑り戸は、次のいずれかのものとすることができる。

  手のみで操作できるもの

  手及び動力のいずれでも操作できるもの

 (iii) 認められる水密戸は、次の三の級に分類される。

   第一級 ヒンジ戸

   第二級 手動滑り戸

   第三級 手でも操作できる動力滑り戸

 (ⅳ) 動力で操作されるかどうかを問わず、水密戸の操作の装置は、船舶がいずれの側に十五度横傾斜した場合にも戸を閉鎖することができるものでなければならない。

 (v) すべての級の水密戸について、戸が開けてあるか閉じてあるかを戸が見えないすべての操作場に示す表示器を取り付ける。いずれの級の水密戸にも、それが中央操作場から閉鎖されるように取り付けられていない場合には、あらか じめ与えられた命令によつてその水密戸を閉鎖する責任のある者に当直職員が即時に連絡し得るような機械式、電気式、電話式その他の方式の適当な直接通信装置を取り付ける。

(g) ヒンジ戸(第一級)には、水密隔壁の両側から操作し得る取つ手その他の急速閉鎖装置を取り付ける。

(h) 手動滑り戸(第二級)は、水平又は垂直に動くものとすることができる。手動滑り戸は、戸自体の両側から、及び隔壁甲板の上方の近づき得る位置から、連続回転クランク運動又はこれと同等の安全性を保証する承認された方式の他の運動により、その機構を操作することができるものでなければならない。場所の配置上、水密隔壁の両側から操作することができない場合には、この要件を満たさないことが許される。船舶が直立状態にある場合に手動装置を操作して完全に戸を閉鎖するために要する時間は、九十秒を超えてはならない。

(i)(i) 動力滑り戸(第三級)は、水平又は垂直に動くものとすることができる。動力滑り戸が中央操作場から動力で操作されることを要求される場合には、伝動装置を戸自体の両側からも動力で操作し得るように措置をとる。動力滑り戸 については、中央操作場からこれを閉鎖した後、局部操作によつて開けた場合にも自動的に閉鎖するように、また、中央操作場からこれを開ける操作をした場合にも局部装置によつてこれが開くことのないようにするための措置をと る。動力装置に連結する局部操作用ハンドルについては、これを水密隔壁の両側に取り付けるものとし、戸口を通る者が誤つて閉鎖装置を作動させることなく両側のハンドルを戸の開いた位置で持つことができるように措置をとる。動力滑り戸には、戸自体の両側から、及び隔壁甲板の上方の近づき得る位置から、連続回転クランク運動又はこれと同等の安全性を保証する承認された方式の他の運動によつて操作し得る手動装置を取り付ける。動力滑り戸の閉鎖が開始したこと及びその動力滑り戸が完全に閉鎖されるまで動き続けていることを音響信号で警報する装置を取り付ける。動力滑り戸は、安全性を確保するため閉鎖に十分な時間を要するものでなければならない。

 (ii) 制御下にあるすべての動力滑り戸を開閉し得る少なくとも二の独立の動力源を設けるものとし、そのいずれの動力源も、すべての動力滑り戸を同時に操作することができるものでなければならない。二の動力源は、要求される機能を十分に果たし得るかを点検するために必要な指示器を備える船橋の中央操作場から制御されるものでなければならない。

 (iii) 水力操作の場合には、各動力源には、六十秒以内にすべての動力滑り戸を閉鎖し得るポンプを設ける。更に、装置全体につき、すべての動力滑り戸を少なくとも三回、例えば、閉−開−閉と操作するために十分な容量の水力だめを設ける。使用される液体は、航海中船舶が遭遇することのあるいかなる温度においても凍結しないものでなければならない。

(j)(i) 旅客区域、乗組員区域及び作業区域におけるヒンジ戸(第一級)は、その船側における最低点において下面が最高区画満載喫水線の少なくとも二・一三メートル(七フィート)上方にある甲板の上方においてのみ使用することを認められる。

 (ii) 敷居が最高満載喫水線の上方にかつ(j)(i)に規定する線の下方にある水密戸は、滑り戸とし、また、手動のもの(第二級) とすることができる。ただし、短国際航海に従事し、かつ、区画係数が〇・五〇、以下であることを要求される船舶については、動力操作のもの(第三級)でなければならない。冷凍貨物を積載する場所との連絡用トランク路、自然通風管又は強制通風管が二以上の横置水密隔壁を貫通している場合には、その開口の滑り戸は、動力操作のものでなければならない。

(k)(i) 海上においてしばしは開ける水密戸であつて敷居の高さが最高区画満載喫水線の下方にあるものは、滑り戸とし、次の規則が適用される。

  (1) これらの滑り戸(軸路の人口の滑り戸を除く。)の数が五を超える場合には、これらの滑り戸及び軸路、自然通風管又は強制通風管の入口の滑り声は、動力操作のもの(第三級)でなければならず、船橋の中央操作場から同時に閉鎖することができるものでなければならない。

  (2) これらの滑り戸(軸路の入口の滑り戸を除く。)の数が二以上五以下である場合には、

   (a) 隔壁甲板の下方に旅客区域がないときは、(k)(i)(1)に規定するすべての滑り戸は、手動のもの(第二級)とすることができる。

   (b) 隔壁甲板の下方に旅客区域があるときは、(k)(i)(l)に規定するすべての滑り戸は、動力操作のもの(第三級)でなければならず、船橋の中央操作場から同時に閉鎖することができるものでなければならない。

  (3) これらの滑り戸を二のみ有し、かつ、これらが機関のある場所の内部又はその場所への入口にある船舶については、主管庁は、これらの二の滑り戸を手動のもの(第二級)とすることを認めることができる。

 (ii) 石炭繰りのために海上においてしばしば開けることを要する滑り戸を隔壁甲板の下方にある甲板間の石炭庫の間に取り付ける場合には、これらの滑り戸は、動力操作のもの(第三級)でなければならない。これらの滑り戸の開閉については、主管庁の定める航海日誌に記録する。

(l)(i) 甲板間の貨物区域を仕切る水密隔壁に戸を取り付けることが不可欠であると主管庁が認める場合には、満足すべき構造の水密戸をその水密隔壁に取り付けることができる。これらの水密戸は、ヒンジ戸、ロール戸又は滑り戸とすることができるが、遠隔操作のものであつてはならない。これらの水密戸は、最も高い位置に、かつ、実行可能な限り外板から遠い箇所に取り付けるが、これらの水密戸の外側の縦縁は、いかなる場合にも、最高区画満載喫水線の水平面において中心線に対し直角に測つて外板からこの章の第二規則に定義する船舶の幅の五分の一に相当する距離以上の距離になければならない。

 (ii) (1)(i)の水密戸は、出港前に閉鎖し、航行中閉鎖しておくものとし、これらの水密戸を港内において開けた時刻及び出港前に閉鎖した時刻は、航海日誌に記録する。これらの水密戸のうち航海中に近づき得るものについては、許可を受けないで開けることを防止する装置を取り付ける。これらの水密戸を取り付ける場合には、主管庁は、その数及び配置について特別の考慮を払う。

(m) 水密隔壁に取り付ける板戸で取り外し可能なものは、機関区域以外においては認められない。その板戸は、常に船舶の出港前に取り付けるものとし、航行中は、緊急の必要がある場合を除くほか、取り外してはならない。その板戸を再び取り付けるに当たつては、接合部が水密であることを確保するために必要な注意を払う。

(n) 水密戸は、船舶の作業上開ける必要がある場合を除くほか、 航行中は閉鎖しておくものとし、また、常に直ちに閉鎖することができるようにしておく。

(o)(i) 乗組員の居住に充てる場所からストークホールドへの通行、配管その他の用途に使用されるトランク路又はトンネルが横置水密隔壁を貫通している場合には、そのトランク路及びトンネルは、水密なものでなければならず、また、この章の第十六規則の規定に適合するものでなければならない。このトランク路又はトンネルを海上において通路として使用する場合には、このトランク路又はトンネルの少なくとも一端には、限界線の上方に達する十分な高さの水密のトランクを通つて到達することができるようにする。このトランク路又はトンネルの他端への通行は、船舶におけるその箇所について要求される型の水密戸によることができる。このトランク路又はトンネルは、衝突隔壁の後方 の最初の水密隔壁を貫通するものであつてはならない。

 (ii) 強制通風のため横置水密隔壁を貫通するトランク路又はトンネルを設ける場合には、主管庁は、これらについて特別の考慮を払う。

  第十四規則 限界線の下方の外板の開口

(a) 外板の開口の数は、船舶の設計及び固有の用途に適合する範囲においてできる限り少なくする。

(b) 外板の開口の閉鎖装置の配置及び実効性は、その開口の目的及び位置に適合するものでなければならず、また、原則として、主管庁の認めるものでなければならない。

(c)(i) 甲板間において、いずれかの舷窓の下縁が、船舶の幅の二・五パーセントに相当する距離だけ最高区画満載喫水線の上方にその最低点がある、船側における隔壁甲板に対し平行に引いた線の下方にある場合には、その甲板間のすべての舷窓は、開けることができない型のものでなければならない。

 (ii) (c)(i)の規定により開けることができない型のものであることを要求される舷窓を除くほか、その下縁が限界線の下方にある舷窓は、船長の同意を得ないで開けることを有効に防止するような構造のものでなければならない。

 (iii)(1) 甲板間において、(c)(ii)に規定するいずれかの舷窓の下縁が、船船の出港の際の水面から上方へ一・三七メートル(四・五フィート)に船舶の幅の二・五パーセントに相当する長さを加えた距離にその最低点がある、船側における隔壁甲板に対し平行に引いた線の下方にある場合には、その甲板間のすべての舷窓は、船舶の出港前に水密に閉鎖して錠を下ろすものとし、次の港に着く前に開けてはならない。(c)(iii)の規定の適用に当たり、可能なときは、淡水について適当な斟酌をすることができる。

  (2) 港内において(c)(iii)(1)に規定する舷窓を開けた時刻及び船舶の出港前に舷窓を閉鎖して銃を下ろした時刻は、主管庁の定める航海日誌に記録する。

  (3) 最高区画満載喫水線で浮いている場合にその舷窓が (c)(iii)(1)に規定する位置にある船舶については、主管庁は、限界平均喫水を指示することができるものとし、その限界平均喫水は、これに対応する喫水線から上方へ一・三七メートル(四・五フィート)に船舶の幅の二・五パーセントに相当する長さを加えた距離にその最低点がある、船側における隔壁甲板に対し平行に引いた線の上方にそ れらの舷窓の下縁がくることとなるようにする。その限界平均喫水で浮いている船舶は、舷窓を閉鎖して錠を下ろすことなく出港すること及び次の港までの航海中に船長の責任で海上において舷窓を開けることを許される。現行の満載喫水線に関する国際条約に定める熱帯においては、その限界喫水は、〇・三〇五メートル(一フィート)だけ増加させることができる。

(d) 舷窓には、容易に、有効にかつ、水密に閉鎖することができる効果的なヒンジ内ぶたを取り付ける。ただし、船首垂線から船舶の長さの八分の一に相当する距離にある箇所の後方において、かつ、最高区画満載喫水線から上方へ三・六六メートル(十二フィート)に船舶の幅の二・五パーセントに相当する長さを加えた距離にその最低点がある、船側における隔壁甲板に対し平行に引いた線の上方においては、普通旅客以外の旅客の居住に充てる場所の内ぶたは、現行の満載喫水線に関する国際条約により内ぶたを定位置に恒久的に取り付けることが要求される場合を除くほか、取り外し可能なものとすることができる。取り外し可能な内ぶたは、使用される舷窓の近くに備えておく。

(e) 航行中に近づくことができない舷窓及びその内ぶたは、船舶の出港前に確実に閉鎖しておく。

(f)(i) 専ら貨物又は石炭の運送に充てる場所には、舷窓を取り付けてはならない。

 (ii) 貨物又は旅客の運送に交互に充てる場所には、舷窓を取り付けることができるが、その舷窓は、船長の同意を得ないで舷窓又はその内ぶたを開けることを有効に防止するような構造のものでなければならない。

 (iii) (f)(ii)の場所に貨物を積載する場合には、舷窓及びその内ぶたは、貨物を積載する前に水密に閉鎖して錠を下ろすものとし、その閉鎖及び施錠については、主管庁の定める航海日誌に記録する。

(g) 自動通風用舷窓は、主管庁の特別の許可がなければ、限界線の下方の外板に取り付けてはならない。

(h) 外板の排水口、衛生排水口その他これらに類する開口の数は、各排出口をできる限り多数の衛生管その他の管の用に供することにより、又はその他の適当な方法により、できる限り少なくする。

(i)(i) 外版の吸入口及び排出口には、船内への不慮の浸水を防止するための効果的なかつ近づき得る装置を取り付ける。鉛その他の熱に弱い材料は、吸入口又は排出口の外板付き弁の外方に取り付ける管又は火災の際に損傷によつて浸水の危険を生ずるおそれがある他の管に用いてはならない。

 (ii)(1) (i)(iii)の規定が適用される場合を除くほか、限界線の下方の場所から導かれ外板を貫通する各排出管には、隔壁甲板の上方から有効に閉じるための装置を有する一の自動逆止弁を、又は、これに代えて、当該閉じるための装置を有しない二の自動逆止弁であつて上方の弁が船舶の使用されている状態において検査のために常に近づき得るように最高区画満載喫水線の上方にあつて通常は閉じている型のものを取り付ける。

  (2) 有効に閉じるための装置を有する弁を取り付ける場合には、隔甲板の上方の操作位置は、常に容易に近づくことができるものでなければならず、弁が開けてあるか閉してあるかを示すための装置を取り付ける。

 (iii) 機関と連結する主及び補助の海水吸入管及び排出管には、外板又は外板に取り付ける海水吸入箱に接続する部分に、容易に近づき得るコック又は弁を取り付ける。

(j)(i) 限界線の下方に設ける舷門、載貨門及び載炭門は、十分な強さのものでなければならない。これらは、船の出港前に有効かつ水密に閉鎖するものとし、航行中閉鎖しておく。

 (ii) (j)(i)に規定する開口は、いかなる場合にも、その最低点が最高区画満載喫水線の下方にあるように設けてはならない。

(k)(i) 灰捨て筒、ごみ捨て筒等の船内の開口には、効果的なふたを取り付ける。

 (ii) (k)(i)の開口が限界線の下方にある場合には、そのふたを水密にし、更に、最高区画満載喫水線の上方の容易に近づき得る位置において筒に自動逆止弁を取り付ける。筒を使用しない間は、ふた及び弁は、確実に閉じておく。

  第十五規則 水密戸、舷窓等の構造及び最初の試験

(a)(i) この章に規定する水密戸、舷窓、舷門、載貨門、載炭門、弁、管、灰捨て簡及びごみ捨て筒の設計、材料及び構 構造及び構造は、主管庁の認めるものでなければならない。

 (ii) 垂直に動く水密戸のわくは、ちりが積もることにより戸を確実に閉鎖することを妨げることとなるみぞを底部に有するものであつてはならない。

 (iii) 隔壁甲板の下方の海水吸入管及び排出管に用いるコック及び弁並びにそのコック及び弁の外方の取付け物は、鋼、青銅その他の承認された延性材料のものでなければならない。普通の鋳鉄又はこれと類似の材料は、使用してはならない。

(b) 各水密戸は、隔壁甲板までの水高の圧力で試験する。試験は、船舶の就航に先立ち、戸の取付けの前又は後に行う。

  第十六規則 水密甲板、トランク等の構造及び最初の試験

(a) 水密甲板、トランク、トンネル、ダクト・キール及び通風筒は、それぞれの対応する高さにおける水密隔壁と同一の強さのものでなければならない。これらを水密にする方法及びこれらにおける開口を閉鎖する措置は、主管庁の認めるものでなければならない。水密な通風筒及びトランクは、少なくとも隔壁甲板まで達するものでなければならない。

(b) 完成後、水密甲板に対しては射水試験又は水張り試験を行い、水密なトランク、トンネル及び通風筒に対しては射水試験を行う。

  第十七規則 限界線の上方の水密性

(a) 主管庁は、隔壁甲板の上方に水が浸入し及び広がることがないようにするため、合理的かつ実行可能な措置をとることを要求することができる。その措置には、部分水密隔壁又はウェッブを含めることができる。隔壁甲板上において横置水密隔壁の直上又はその近くに設けられる部分水密隔壁又はウェップは、船舶が損傷を受けて横傾斜した状態にあるときに甲板に沿つて水が流れることがないように、外板及び隔壁甲板と水密に接合させる。部分水密隔壁がその下方の横置水密隔壁と同一線上にない場合には、その間の隔壁甲板は、有効に水密にする。

(b) 隔壁甲板又はその上方の甲板は、通常の海面状態で下方に浸水しないという意味で、風雨密にする。暴露甲板の開口には、十分な高さ及び強さの線材並びに迅速に風雨密に閉鎖する効果的な装置を取り付ける。あらゆる天候状態において暴露甲板から迅速に排水することができるように、必要に応じて、放水口、オーブン・レール又は排水口を設ける。

(c) 限界線の上方にある舷窓、舷門、載貨門及び載炭門並びに外板の開口を閉鎖するその他の装置は、設ける場所及び最高区画満載喫水線との位置関係を考慮して、効果的な設計及び構造並びに十分な強さのものにしなければならない。

(d) 隔壁甲板直上の甲板の下方にある舷窓には、容易に、有効に、かつ、水密に閉鎖することができる効果的な内ぶたを取り付ける。

  第十八規則 旅客船のビルジ排水設備

(a) 船舶には、直立状態にあるか横傾斜しているかを問わず海難後に起こることのあるあらゆる状態において、常設の水又は油の区画室を除くいずれの区画室からも、吸水し及び排水することができる効果的なビルジ排水設備を設ける。このためには、船首尾にある、一の吸水管で十分な狭い区画室のほかは、原則として側部吸水管を必要とする。通常の形状でない区画室については、吸水管の増加を要求することができる。いずれの区画室についても、その内部の水が吸水管に達し得るように措置をとる。特定の区画室について、排水設備を設けることが好ましくないと主管庁が認める場合において、この章の第七規則(b)の規定により行われる計算によつて船舶の安全が損なわれないことが証明されるときは、主管庁は、排水設備を省略することを許すことができる。防熱倉からの排水については、効果的な措置をとる。

(b)(i) 船舶には、ビルジ主管に連結する少なくとも三の動力ポンプを設ける。そのうちの一は、主機に直結させることができる。標準数が三十以上である場合には、追加の一の独立動力ポンプを設ける。

 (ii) (b)(i)に定める要件は、次の表に要約される。

 標準数三〇未満三〇以上
主機直結ポンプ(一の独立動力ポンプをもつて代えることができる。) 一 一
独立動力ポンプ 二 三

 (iii) 衛生ポンプ、バラスト・ポンプ及び雑用ポンプは、ビルジ排水管系との必要な連結管を取り付けている場合には、独立動力ポンプとして認めることができる。

(c) 実行可能なときは、動力ビルン・ポンブは、一の損傷によつては容易に浸水しないような配置又は位置の別個の区画室に取り付ける。機関及びボイラーが二以上の区画室にある場合には、ビルジ排水に利用し得るポンプは、できる限りこれらの区画室に分散して配置する。

(d) 長さ九十一・五メートル(三百フィート)以上又は標準数三十以上の船舶については、船舶が海上において浸水することのある通常のあらゆる状況において少なくとも一の動力ビルジ・ポンプを利用し得るように措置をとる。次のいずれの場合も、この要件は満たされたものとする。

 (i) 要求される動力ビルジ・ポンプの一が、隔壁甲板の上方に動力源を有する信頼性のある潜水型の非常動力ビルジ・ポンプである場合

 (ii) 動力ビルジ・ボンフ及びその動力源が、船舶が耐えることを要求される浸水状態の下で損傷を受けない区画室内の少なくとも一の動力ビルジ・ポンプを利用し得るように、船舶の全長にわたつて配置されている場合

(e) 要求される動力ビルジ・ポンプについては、船首尾区画室用としてのみ設ける追加のポンプを除くほか、(a)の規定により排水することを要求されるいずれの場所からも排水するように措置をとる。

(f)(i) 各動力ビルジ・ポンプは、要求されるビルジ主管を通る水の速さを毎分百二十二メートル(四百フィート)以上のものとするものでなければならない。機関区域内にある独立動力ビルジ・ポンプには、その区域の各場所からの直接吸水管を取り付ける。ただし、いずれの場所においても、二を超える直接吸水管を必要としない。二以上の直接吸水管を取り付ける場合には、少なくとも、一を左舷に、一を右舷に取り付ける。主管庁は、他の区域にある独立動力ビルジ・ポンプに別個の直接吸水管を取り付けることを要求することができる。直接吸水管は、適切に配置するものとし、機関区域内の直接吸水管は、ビルジ主管について要求される径より小さい径のものであつてはならない。

 (ii) 石炭を燃料とする船舶については、この第十八規則の規定により要求される吸水管のほかに、独立動力ビルジ・ポンプの吸水側に連結し得る適当な径のかつ十分な長さの柔軟な吸水ホースをストークホールドに備える。

(g)(i) 機関区域においては、(f)の規定により要求される直接吸水管のほかに、主循環ポンプから機関区域の排水水位まで達しかつ逆止弁を取り付けた直接吸水管を取り付ける。直接吸水管の径は、蒸気船については、主循環ポンプの入口の径の少なくとも三分の二に相当する径とし、内燃機船については、主循環ポンプの入口の径と等しくする。

 (ii) 主循環ポンプ(g)(i)にいう直接吸水管を取り付けることが不適当であると主管庁が認める場合には、利用可能な最大の独立動力ポンプから機関区域の排水水位まで達する非常直接吸水管を取り付ける。非常直接吸水管の径は、使用 される独立動力ポンプの入口の径と等しくする。非常直接吸水管に連結された独立動力ポンプの能力は、要求される動力ビルジ・ポンブの能力より主管庁の認める量だけ大きくする。

 (iii) 海水吸入管及び直接吸水管の弁棒は、機関室の床から十分に上方に達するものでなければならない。

 (ⅳ) 燃料が石炭である場合又は石炭であることがある場合において機関とボイラーとの間に水密隔壁がないときは、(g)(i)の規定により使用される主循環ポンプには、船外への直接排水管又はこれに代わる主循環ポンプの排出管へのバイ パスを取り付ける。

(h)(i) 貨物区域又は機関区域の排水のために必要なポンプからの管は、水又は油を積載する場所を満たし又は空にするために使用する管とは別のものでなければならない。

 (ii) 石炭庫若しくは燃料油タンクの内部若しくは下方又はボイラー室若しくは機関室(澄ましタンク又は燃料油ポンプ装置を備える場所を含む。) の内部に用いるビルジ管は、鋼又は他の承認された材料のものでなければならない。

(i) ビルジ主管の内径は、次のいずれかの式で計算する。もつとも、ビルジ主管の実際の内径は、主管庁の認容する直近の標準寸法とすることができる。

{数式と数式の説明は削除}

  ビルジ支管の内径は、主管庁の定める規則により決定する。

(j) ビルジ及びバラストの吸排水系については、水が海から及びバラスト・タンクから貨物区域及び機関区域に又は一の区画室から他の区画室に流入する可能性を防止するように措置をとる。ビルジ用及びバラスト用の連結管を有するディーブ・ タンクについては、貨物を積載している場合には不用意に海水が流入することを、また、水バラストを積載している場合にはそれがビルジ管を通して不用意に吸出されることを防止するための特別の措置をとる。

(k) ビルジ吸水管を備える区画室が、衝突又は乗揚げにより他の区画室内でその管が切断され又は他の損傷を受けた場合に、浸水することを防止するための措置をとる。このため、管のいずれかの部分が船側から船舶の幅の五分の一に相当する距離(最高区画満載喫水線の水平面において中心線に対し直角に測る。) より船側寄りにある場合又はダクト・キール内にある場合には、解放端のある区画室内の管に逆止弁を取り付ける。

(l) ビルジ排水設備に連結する分管箱、コック及び弁は、通常の状態において常に近づき得る位置に取り付ける。これらについては、浸水した場合に、一の動力ビルジ・ポンプがいずれの区画室に対しても作動し得るように措置をとる。更に、ビルジ主管に連結するポンプ又はその管であつて船側から船舶の幅の五分の一に相当する距離より船側寄りにあるものが破損した場合にも、ビルジ管系が機能を停止しないようにする。すべての動力ビルジ・ポンプに共通な一の管系のみを備える場合には、ビルジ吸水管の制御に必要なコック及び弁は、隔壁甲板の上方から操作することができるものでなければならない。主ビルジ排水系のほかに非常ビルシ排水系を備える場合には、その非常ビルジ排水系は、主ビルジ排水系から独立したものでなければならず、浸水状態にあるいずれの 区画室に対してもホンプが作動し得るように措置をとる。この場合には、非常ビルジ排水系の操作に必要なコック及び弁のみが隔壁用板の上方から操作し得るようになつていれば足りる。

(m) (l)にいう隔壁甲板の上方から操作し得るコック及び弁の制御装置については、操作する場所に明確な標示をし、かつ、開けてあるか閉じてあるかを示すための装置を設ける。

  第十九規則 旅客船及貨物船に対する復原性資料(注)

注 機関が決議A一六七(ESIV)において採択した長さ百メートル未満の旅客船及び貨物船の共損傷時復原性に関する勧告並びに機関が決議A二〇六(VII)において採択した同勧告の改正を参照すること。

(a) 各旅客船及び各貨物船について、その完成後に傾斜試験を行い、復原性の要素を決定する。船長には、各種の使用状態における船舶の復原性についての正確な指針を迅速かつ容易に得るために必要な信頼し得る資料を提供するものとし、また、その写しを主管庁に提出する。

(b) 船長に提供された復原性資料に実質的に影響を及ぼすような変更が船舶に加えられた場合には、修正された復原性資料を作成する。必要なときは、当該船舶について再び傾斜試険を行う。

(c) 主管庁は、個々の船舶について、復原性の基本的情報が姉妹船の傾斜試験から得られ、その基本的情報から当該船舶の信頼し得る復原性資料が得られることが明らかであると認める場合には、傾斜試験を省略することを許すことができる。

(d) 主管庁は、また、液体又は鉱石のばら積み運送のために特に設計された個々の船舶又は船舶の種類であつて、寸法比及び配置から予想されるあらゆる載貨状態において十分なメタセンタ高さが得られることが類似の船舶の既存の情報を参照することにより明らかであるものについては、傾斜試験を省略することを許すことができる。

  第二十規則 損傷制御図

 担当職員の手引とするため、各甲板及び船倉について区画室の境界、その開口(閉鎖装置及びその制御装置の位置を含む。)及び浸水による船舶の横傾斜を修正する装置を明示する図面を恒久的に掲示する。更に、この資料を含む小冊子を船舶の職員の利用に供する。

  第二十一規則 水密戸等に関する標示並びに定期的な操作及び検査

(a) この第二十一規則の規定は、新船及び現存船に適用する。

(b) 水密戸、舷窓並びに排水口、灰捨て筒及びごみ捨て筒の弁及び閉鎖装置の操作の訓練を毎週行う。継続して一週間を超える航海を行う船舶については、当該訓練を出港前に完全に行い、その後は航海中少なくとも週一回行う。すべての船舶について、横置水密隔壁に取り付けた水密な動力戸及びヒンジ戸であつて海上において使用するものは、毎日操作する。

(c)(i) 水密戸、これに連結する装置及び指示器、その閉鎖が区画室を水密にするために必要とされる弁並びにその操作が 損傷制御用クロス連結管のために必要とされる弁は、海上において少なくとも週一回定期的に検査する。

 (ii) (c)(i)の水密戸、装置及び弁は、正しく使用され、最大の安全性が確保されるように適当な標示をする。

  第二十二規則 航海日誌への記録

(a) この第二十二規則の規定は、新船及び現存船に適用する。

(b) ヒンジ戸、取り外し可能な板戸、舷窓、舷門、載貨門、載炭門その他の開口であつてこの章の規定により航行中閉鎖しておくことを要求されるものは、船舶の出港前に閉鎖する。 閉鎖した時刻及び開けた時刻(この章の規定により開けることを許される場合)は、主管庁の定める航海日誌に記録する。

(c) この章の第二十一規則の規定により要求される訓練及び検査については、発見した欠陥についての明確な記録とともに航海日誌に記録する。

 C部 機関及び電気設備(注)

(この部の規定は、旅客船及び貨物船に適用する。)

注 機関が決護A二一一(VII)において採択した定期的に無人となる貨物船の機関区域の安全措置であつて有人の機関区域に通常必要とされる安全措置に追加されるものに関する動告を参照すること。

  第二十三規則 総則

(a) 旅客船における電気設備は、次の条件を満たすものでなければならない。

 (i) 安全のために不可欠な機能が各種の非常事態の下で維持されること。

 (ii) 電気的危険に対して旅客、乗組員及び船舶の安全が確保されること。

(b) 貨物船は、この章の第二十六規則から第三十規則まで及び第三十二規則の規定に適合するものとする。

  第二十四規則 旅客船の主電源

(a) 電力が船舶の推進及び安全のために不可欠な補助機能を維持する唯一の手段である旅客船には、少なくとも二組の主発電装置を設ける。これらの主発電装置の電力は、一組の主発電装置が停止した場合にも、この章の第二十三規則(a)(i)にいう機能を確保することができるものでなければならない。

(b) 一のみの主発電室がある旅客船については、主配電盤は、主発電室のある主垂直区域に配置する。二以上の主発電室がある旅客船については、主配電盤は、一のみとすることができる。

  第二十五規則 旅客船の非常電源

(a) 自己起電の非常電源を、隔壁甲板の上方に、かつ、機関区域のケーシングの外部に設ける。主電源に対する非常電源の位置関係は、この章の第二規則(h)に定義する機関区域の火災その他の災害によつて非常電力の給配が妨害されないと主管庁が認めるものでなければならない。非常電源は、衝突隔壁の前方にあつてはならない。

(b) 利用し得る電力は、非常の際に旅客及び乗組員の安全のために必要であると主管庁が認めるすべての機能を働かせるために十分なものでなければならない。この場合において、同時に働かせることを要する機能があることを考慮する。甲板及び舷外における端艇位置、通路、階段、出口、機関区域並びに次章第三規則(r)に定義する制御場所の非常照明、スプリンクラ・ポンプ、航行用の燈火並びに主電源によつて作動する昼問信号燈に対し、特別の考慮を払う。電力は、三十六時間の給電に十分なものでなければならない。もつとも、短期間の航海に定期的に従事する船舶については、主管庁は、同等の安全性が得られると判断する場合には、給電時間の短縮を認めることができる。

(c) 非常電源は、次のいずれかの物とすることができる。

 (i) 独立の給油装置及び承認された起動装置を有する適当な原動機によつて駆動する発電機。使用する燃料は、引火点が摂氏四十三度(華氏百十度)以上のものでなければならない。

 (ii) 再充電を必要とすることなく、また、過度の電圧降下を伴うことなく非常負荷に耐えることができる蓄電池

(d)(i) 非常電源が発電機である場合には、次の目的のために十分な容量の蓄電池による臨時非常電源を設ける。

  (1) 連続して三十分間非常照明に給電すること。

  (2) 水密戸(電動の場合)を閉鎖すること。もつとも、すべての水密戸を同時に閉鎖することを要しない。

  (3) 動力水密戸が開けてあるか閉じてあるかを示す表示器(電動の場合)を作動させること。

  (4) 動力水密戸の閉鎖の開始を知らせる音響信号(電動の場合)を作動させること。

主給電が停止した場合に臨時非常電源が自動的に作動するように措置をとる。

 (ii) 非常電源が蓄電池である場合には、主照明用給電が停止したときに非常照明が自動的に作動することを確保するための措置をとる。

(e) この第二十五規則の規定により設ける蓄電池が放電していることを示す表示器を、機関区域に、なるべく主配電盤に取り付ける。

(f)(i) 非常配電盤は、非常電源に実行可能な限り近接して設ける。

 (ii) 非常電源が発電機である場合には、非常配電盤は、その操作が害されない限り、非常電源と同一の場所に取り付ける。

 (iii) この第二十五規則の規定により設ける蓄電池は、非常配電盤と同一の場所に取り付けてはならない。

 (ⅳ) 主管庁は、通常の状態において主配電盤から非常配電盤に給電することを認めることができる。

(g) 船舶が二十二・五度横傾斜又は十度縦傾斜をした場合にもすべての非常設備が作動するように措置をとる。

(h) 非常電源及び臨時非常電源の定期的試験を行うための措置をとる。定期的試験は、自動装置の試験を含む。

  第二十六規則 貨物船の非常電源

(a) 総トン数五千トン以上の貨物船

 (i) 総トン数五千トン以上の貨物船については、自己起電の非常電源を、最上層の連続甲板の上方のかつ機関区域のケーシングの外部の場所であつて、火災その他の災害により主電気設備が故障した場合にも機能を確保すると主管庁が認める場所に設ける。

 (ii) 利用し得る電力は、非常の際に乗船者の安全のために必要であると主管庁が認めるすべての機能を働かせるために十分なものでなればならない。この場合において、同時に働かせることを要する機能があることを考慮する。次のものに対しては、特別の考慮を払う。

  (1) 甲板及び舷外における端艇位置、通路、階段、出口、主機関室、主発電室、船橋並びに海図室の非常照明

  (2) 一般警報装置

  (3) 電気式のみの航行用の燈火及び主電源によつて作動する昼間信号燈

電力は、六時間の給電に十分なものでなければならい。

 (iii) 非常電源は、次のいずれかの物とすることができる。

  (1) 再充電を必要とすることなく、また、過度の電圧降下を伴うことなく非常負荷に耐えることができる蓄電池

  (2) 独立の給油装置及び主管庁の認める起動装置を有する適当な原動機によつて駆動する発電機。使用する燃料は、引火点が摂氏四十三度(華氏百十度)以上のものでなければならない。

 (ⅳ) 船舶が二十二・五度横傾斜又は十度縦傾斜をした場合にもすべての非常設備が作動するように措置をとる。

 (v) すべての非常設備の定期的試験を行うための措置をとる。

(b) 総トン数五千トン未満の貨物船

 (i) 総トン数五千トン未満の貨物船については、主管庁の認める場所に、第三章第十九規則(a)(ii)、(b)(ii)及び(b)(iii)に規定する救命用の端艇及びいかだの進水場所及び積付け場所の照明並びに主管庁の要求することのある他の機能を働かせることができる自己起電の非常電源を設ける。この場合において、第三章第三十八規則の規定を考慮に入れる。

 (ii) 利用し得る電力は、少なくとも三時間の給電に十分なものでなければならない。

 (iii) (b)の貨物船は、また、(a)(iii)から(v)までの規定に従う。

  第二十七規則 電撃、火災その他の電気的危険の予防手段

(a) 旅客船及び貨物船

 (i)(1) 帯電しないようになつているが故障状態では帯電しやすくなる電気設備のすべての露出金属部分は、接地させるものとし、また、すべての電気設備は、通常の取扱いにおいて傷害の危険がないように造り、取り付ける。

  (2) 船舶の艤装品となつている移動電気燈、電気工具及び類似の器具であつて定格電圧が主管庁の規定する安全電圧を超えるものの金属わくは、適当な導体で接地させる。ただし、二重絶縁又は絶縁変圧器等によりこれと同等の措置をとる場合は、この限りでない。主管庁は、また、湿つた場所で使用する電燈、電気工具又は類似の器具に対して特別の予防手段を要求することができる。

 (ii) 主配電盤及び非常配電盤については、取扱者が危険を伴うことなくその前後面に容易に近づき得るように措置をとる。配電盤の側面及び後面並びに必要なときは前面は、適当に保護する。配電盤の前後には、必要なときは、非電導体のマット又はグレーティングを備える。大地に対する電圧が主管庁の定める電圧を超える露出通電部は、配電盤又は制御盤の表面に設けてはならない。

 (iii)(1) 配電に船体帰路方式を使用する場合には、主管庁の認める特別の予防措置をとる。

  (2) 船体帰路方式は、タンカーに使用してはならない。

 (ⅳ)(1) ケーブルの金属シース及び鎧装は、電気的に連続させ、かつ、接地させる。

  (2) ケーブルがシースも鎧装も施されておらず、電気的故障が生じた場合に火災の危険があるときは、主管庁は、予防措置を要求する。

 (v) 燈具類については、配線に有害な温度の上昇及び周囲の物の過熱を防止するように措置をとる。

 (vi) 配線は、擦傷その他の損傷を避けるように支持する。

 (vii) 独立回路は、短絡に対して保護をするものとし、また、この章の第三十規則の規定が適用される場合又は主管庁が除外を認める場合を除くほか、過負荷に対しても保護をする。回路の通電容量は、適当な過負荷保護装置の定格又は調整値とともに、恒久的に表示する。

 (viii) 蓄電池は、適当に格納するものとし、主としてその収納のために使用される区画室は、正しく造り、かつ、有効に通風する。

(b) 旅客船

 (i) 配電系統については、いずれかの主垂直区域における火災が他の主垂直区域における不可欠な機能を妨害しないように措置をとる。この要件は、いずれの主垂直区域を通過する主給電線及び非常給電線も垂直方向及び水平方向に実 行可能な限り間隔を広くしてある場合には、満たされたものとする。

 (ii) ケーブルは、主管庁の認める難燃性のものでなければならない。主管庁は、火災又は爆発を防ぐため、船舶の特定の場所のケーブルを更に保護することを要求することができる。

 (iii) 引火性のガスがたまりやすい場所には、防爆型の機器のようなガスに点火しない型式のものでない限り、電気設備を設けてはならない。

 (ⅳ) 石炭庫又は船倉内の照明回路には、その場所の外側にしや断用スイッチを取り付ける。

 (v) 低電圧の通信回路の場合を除くほか、導線の接続は、接続籍又は分岐箱内でのみ行う。これらの箱又は接続装置は、そこからの火災の拡大を防止するように造る。組継ぎを用いる場合には、ケーブルの本来の機械的及び電気的性質を維持する承認された方法のみによる。

 (vi) 安全及び非常警報系統に不可欠な内部通報のための配線系統については、調理室、機関区域その他の火災の危険性の大きい閉囲された場所を避けるように措置をとる。ただし、これらの場所内に通報を行い又は警報を発する必要が ある場合は、この限りでない。この要件を満たすことのできない構造を有する小型の船舶において配線系統が調理室、機関区域その他の火災の危険性の大きい閉囲された場所を通過する場合には、それらの配線系統の十分な保護を確保するため主管庁の認める措置をとる。

(c) 貨物船

 アークを発生しやすい装置は、防爆型のものでない限り、主として蓄電池用に充てる区画室に設けてはならない

  第二十八規則 後進の手段

(a) 旅客船及び貨物船

 船舶は、通常のあらゆる状況において船舶の適正な操縦を確保するために十分な後進力を有するものとする。

(b) 旅客船

 通常の操縦状態において、速やかにプロペラの推進方向を逆にして、最大前進航海速力にある船舶を停止させる機関の能力を最初の検査の時に試験する。

  第二十九規則 操舵装置(注)

 注 機関が決議A二一〇 (VII)において採択した大型船の操舵装置に関する勧告を参照すること。

(a) 旅客船及び貨物船

 (i) 船舶には、主管庁の認める主操舵装置及び補助操舵装置を設ける。

 (ii) 主操舵装置は、十分な強さのものでなければならず、かつ、最大航海速力において操舵するために十分なものでなければならない。主操舵装置及びラダー・ストックは、最大後進速力において破損しないように設計する。

 (iii) 補助操舵装置は、十分な強さのもので、かつ、航行し得る速力による操舵のために十分なものでなければならず、しかも非常の際に迅速に作動させることができるものでなければならない。

 (ⅳ) かじが動力によつて操作される場合には、その正確な位置を主操舵場所に指示する。

(b) 旅客船

 (i) 主操舵装置は、船舶が最大航海速力で前進中にかじを片舷三十五度から反対舷三十五度まで操作することができるものでなければならない。かじは、最大航海速力でいずれの舷からも片舷三十五度から反対舷三十度まで二十八秒以 内に操作することができるものでなければならない。

 (ii) チラーの箇所のラダー・ストックの径が二百二十八・六ミリメートル(九インチ)を超えることを主管庁が要求する場合には、補助操舵装置は、動力操作のものでなければならない。

 (iii) 主操舵装置の動力装置及びその連結装置が二重に設けらていることが主管庁に認められ、かつ、操舵装置が各動力装置により(b)(i)に定める要件を満たす場合には、補助操舵装置を設けることを要しない。

 (ⅳ) チラーの箇所のラダー・ストックの径が二百二十八・六ミリメートル(九インチ)を超えることを主管庁が要求する場合には、主管庁の認める場所に副操舵場所を設ける。主及び副操舵場所からの遠隔操舵制御系統については、いずれの一方の系統が故障した場合にも他方の系統で操舵し得ると主管庁が認めるように措置をとる。

 (v) 船橋から副操舵場所に命令を伝達し得るように、主管庁の認める装置を取り付ける。

(c) 貨物船

 (i) チラーの箇所のラダー・ストックの径が三百五十五・六ミリメートル(十四インチ)を超えることを主管庁が要求する場合には、補助操舵装置は、動力操作のものでなければならない。

 (ii) 動力操舵装置の動力装置及びその連結装置が二重に設けられていることが主管庁に認められ、かつ、各動力装置が(a)(iii)の規定に適合している場合には、補助操舵装置を設けることを要しない。ただし、それらの同時に働く二重の動力装置及び連結装置が(a)(ii)の規定に適合することを条件とする。

  第三十規則 電動操舵装置及び電動油圧操舵装置(注)

 注 機関が決議A二一〇 (VII)において採択した大型船の操舵装置に関する動 告を参照すること。

(a) 旅客船及び貨物船

電動操舵装置及び電動油圧操舵装置の電動機の運転表示器を、主管庁の認める適当な場所に取り付ける。

(b) 旅客船 (トン数のいかんを問わない。)及び総トン数五千トン以上の貨物船

 (i) 電動操舵装置及び電動油圧操舵装置は、主配電盤から二の回路によつて給電する。そのうちの一の回路は、非常配電盤がある場合には、これを経由することができる。各回路は、通常それに接続しかつ同時に作動するすべての電動機に給電するために十分な容量のものでなければならない。各回路がいずれの電動機又は電動機の組合せにも給電し得るように切換装置を操舵機室に取り付ける場合には、各回路の容量は、最大の負荷状態に対して十分なものでなければならない。これらの回路は、その全長にわたつて実行可能な限り間隔を広くする。

 (ii) (b)(i)の回路及び電動機は、短絡に対してのみ保護をする。

(c) 総トン数五千トン未満の貨物船

 (i) 電力が主操舵装置及び補助操舵装置の唯一の動力源である貨物船は、(b)(i)及び(ii)の規定に適合するものとする。もつとも、補助操舵装置が本来他の用途に使用される電動機によつて駆動する場合には、主管庁の認める保護措置がとられることを条件として、(b)(ii)の規定の適用を免れることができる。

 (ii) 電動主操舵装置又は電動油圧主操舵装置の電動機及び回路は、短絡に対してのみ保護をする。

  第三十一規則 旅客船の非常設備の位置

 非常電源、非常消火ポンプ、非常ビルジ・ポンプ、消火用の炭酸ガス・ボンべ群その他の船舶の安全のために不可欠の非常設備は、旅客船においては、衝突隔壁の前方に取り付けてはならない。

  第三十二規則 船橋と機関室との間の通信

 船舶には、船橋から機関室に命令を伝達するこの装置を取り付ける。そのうちの一は、エンジン・テレグラフとする。

  第二−二章 構造(防火並びに火災探知及び消火)

  A部 総則(注)

注 機関が決議A二一一(VII)において採択した定期的に無人となる貨物船の機関区域の安全措置であつて有人の機関区域に通常必要とされる安全措置に追加されるものに関する勧告を参照すること。

   第一規則 適用

(a) この章の規定の適用上、

 (i) 「新旅客船」とは、この条約の効力発生の日以後にキールが据え付けられる旅客船若しくはこれと同様の建造段階にある旅客船又はその日以後に旅客船に用途変更される貨物船をいい、その他の旅客船は、現存船とする。

 (ii) 「新貨物船」とは、この条約の効力発生の日以後にキールが据え付けられる貨物船又はこれと同様の建造段階にある貨物船をいう。

 (iii) 修繕、変更及び改造並びにこれらに関連する艤装が行われる船舶は、少なくともその船舶に従来適用されていた要件を引き続き満たすものとする。この場合において、現存船は、原則として、新船に対する要件を満たす程度が従前より劣つてはならない。主要な修繕、変更及び改造並びにこれらに関連する艤装は、主管庁が合理的かつ実行可能と認める限り、新船に対する要件を満たすものでなければならない。

(b) 別段の明文の規定がない限り、

 (i) この章のA部第四規則から第十六規則までの規定は、新船に適用する。

 (ii) この章のB部の規定は、三十六人を超える旅客を運送する新旅客船に適用する。

 (iii) この章のC部の規定は、三十六人以下の旅客を運送する新旅客船に適用する。

 (ⅳ) この章のD部の規定は、新貨物船に適用する。

 (v) この章のE部の規定は、新タンカーに適用する。

(c)(i) この章のF部の規定は、三十六人を超える旅客を運送する現存旅客船に適用する。

 (ii) 三十六人以下の旅客を運送する現存旅客船及び現存貨物船は、この(c)(ii)の(1)から(3)までのいずれかの規定に適合するものでなければならない。

  (1) 千九百六十年の海上における人命の安全のための国際条約の効力発生の日以後にキールが据え付けられた船舶又はこれと同様の建造段階にあつた船舶については、主管庁は、同条約第二章に定義する新船に対し同章の規定に基づいて適用される要件を満たすことを確保する。

  (2) 千九百四十八年の海上における人命の安全のための国際条約の効力発生の日以後千九百六十年の海上における人命の安全のための国際条約の効力発生の日前にキールが据え付けられた船舶又はこれと同様の建造段階にあつた船舶については、主管庁は、千九百四十八年の条約第二章に定義する新船に対し同章の規定に基づいて適用される要件を満たすことを確保する。

  (3) 千九百四十八年の海上における人命の安全のための国際条約の効力発生の日前にキールが据え付けられた船舶又はこれと同様の建造段階にあつた船舶については、主管庁は、同条約第二章に定義する現存船に対し同章の規定に基づいて適用される要件を満たすことを確保する。

(d) この条約に定義する現存船については、主管庁は、(c)(i)の規定を適用するほか、この章に定める要件であつて千九百四十八年の海上における人命の安全のための国際条約第二章及び千九百六十年の海上における人命の安全のための国際条約第二章に含まれないもののうちいずれの要件を適用するかを決定する。

(e) 主管庁は、保護された航海の性質及び状況によりこの章の特定の規定を適用することが不合理又は不必要であると認める場合には、最も近い陸地から二十海里以内を航行する自国の個々の船舶又は船舶の種類について、当該規定の適用を免除することができる。

(f) 主管庁は、巡礼者運送のような特殊の運送において多数の旅客の運送に使用される自国の旅客船については、この章の規定に適合させることが実行不可能であると認める場合には、次の規則に従うことを条件として、当該規定の適用を免除することができる。

 (i) 千九百七十一年の特殊運送旅客船協定に附属する規則

 (ii) 千九百七十三年の特殊運送旅客船についての場所の要件に関する議定書(効力を生じている場合)に附属する規則

   第二規則 基本原則

 この章の目的は、船舶における実行可能な最大限の防火、火災探知及び消火を要求することである。次の基本原則は、この章の規定の根底をなすものであり、船舶の型及び火災の危険の可能性を考慮してこの章の規則に具体化される。

(a) 船舶を防熱上及び構造上の境界により主垂直区域に区分すること。

(b) 居住区域を防熱上及び構造上の境界により船舶の他の部分から隔離すること。

(c) 可燃性材料の使用を制限すること。

(d) いかなる火災もその発生場所において探知すること。

(e) いかなる火災もその発生場所内で抑止し、消火すること。

(f) 脱出設備及び消火のための接近手段を保護すること。

(g) 消火設備を直ちに利用し得るようにしておくこと。

(h) 引火性貨物の蒸気の発火の可能性を最小にすること。

   第三規則 定義

 この章の規定の適用上、別段の明文の規定がない限り、

(a) 「不燃性材料」とは、摂氏七百五十度(華氏千三百八十二度)程度に熱せられたときに、燃えず、かつ、自己発火に十分な量の引火性蒸気を発生しない材料をいうものとし、所定の試験方法(注)によつて主管庁が決定する。その他の材料 は、可燃性材料とする。

  注 機関が決議A二七〇(VIII)において採択した船舶用構造材料を不燃性と判断するための試験方法に関する勧告を参照すること。

(b) 「標準火災試験」とは、該当する隔壁又は甲板の標本を試験炉においてほぼ標準時間=温度曲線に対応する温度の火にさらす試験をいう。この標本は、二・四四メートル(八フィート)の高さ(又は甲板の長さ)を有する四・六五平方メート ル(五十平方フィート)以上の面積の火にさらされる表面を有し、かつ、当該壁又は甲板の構造にできる限り類似するものでなければならず、また、必要に応じて少なくとも一の継手を有するものでなければならない。標準時間=温度曲線 とは、次の点を通つて引かれる滑らかな曲線をいう。

  最初の五分後 摂氏五百三十八度(華氏千度)

  最初の十分後 摂氏七百四度(華氏千三百度)

  最初の三十分後 摂氏八百四十三度(華氏千五百五十度)

  最初の六十分後 摂氏九百十七度(華氏千七百度)

(c) 「「A」級仕切り」とは、次の要件を満たす隔壁又は甲板で形成する仕切りをいう。

 (i) 鋼その他これと同等の材料で造られていること。

 (ii) 適当に補強されていること。

 (iii) 一時間の標準火災試験が終わるまで煙及び炎の通過を阻止し得るように造られていること。

 (ⅳ) 次の各級に対応して掲げる時間内において、火にさらされていない側の平均温度が最初の温度より摂氏百三十九度 (華氏二百五十度)を超えて上昇しないように、及び継手を含めいかなる点における温度も最初の温度より摂氏百八十度(華氏三百二十五度)を超えて上昇しないように、承認された不燃性材料で防熱を施されていること。

   「A-六十」級 六十分

   「A-三十」級 三十分

   「A-十五」級 十五分

   「A-〇」級 〇分

 (v) 主管庁は、保全性及び温度上昇について(c)(i)から(ⅳ)までに定める要件を満たすことを確保するため、隔壁又は甲板の標本について試験を要求することができる。(注)

   注 機関が決議A一六三(ESIV)及びA 二一五(VII)において採択した「A」級及び「B」級の仕切りの火災試験の方法に関する勧告を参照すること。

(d)「「B」級仕切り」とは、次の要件を満たす隔壁、甲板、天井張り又は内張りで形成する仕切りをいう。

 (i) 最初の三十分の標準火災試験が終わるまで炎の通過を阻止し得るように造られていること。

 (ii) 次の各級に対応して掲げる時間内において、火にさらされない側の平均温度が最初の温度より摂氏百三十九度(華氏二百五十度)を超えて上昇しないような、及び継手を含めいかなる点における温度も最初の温度より摂氏二百二十五度(華氏四百五度)を超えて上昇しないような防熱値を有すること。

   「B-十五」級 十五分

   「B-〇 」 級  〇分

 (iii) 承認された不燃性材料で造られており、かつ、「B」級仕切りを造り及び組み立てる際に使用される材料も不燃性のものであること。この章のC部及びD部の規定により可燃性材料の使用が排除されていない場合には、最初の三十分の標準火災試験が終わるまで、(d)(ii)に定める温度上昇制限に適合するものでなければならない。

 (ⅳ) 主管庁は、保全性及び温度上昇について(d)(i)から(iii)までに定める要件を満たすことを確保するため、仕切りの標本について試験を要求することができる。(注)

  注 機関が決議A 一六三(ESIV)及びA二一五(VII)において採択した「A」級及び「B」級の仕切りの火災試験の方法に関する勧告を参照すること。

(e) 「「C」級仕切り」は、承認された不燃性材料で造る。この仕切りは、煙及び炎の通過についての要件並びに温度上昇制限に適合することを要しない。

(f) 「連続「B」 級天井張り又は内張り」とは、「B」級の天井張り又は内張りであつて「A」級又は「B」級の仕切りまで連続するものをいう。

(g) 「鋼その他これと同等の材料」という場合の「同等の材料」とは、それ自体で又は防熱を施すことにより、標準火災試験において火にさらされた後も鋼と同等の構造及び保全性についての特性を有する材料(例えば、適当な防熱を施したアルミニウム合金)をいう。

(h) 「炎の広がりが遅い」とは、このように記述されている面が炎の広がりを十分に制限することをいうものとし、所定の試験方法によつて主管庁が決定する。

(i) 「主垂直区域」とは、「A」級仕切りにより船体、 船楼及び甲板室が仕切られた区域であつて、一甲板上におけるその平均の長さが原則として四十メートル(百三十一フィート) を超えないものをいう。

(j) 「居住区域」とは、公共室、通路、洗面所、キャビン、事務室、乗組員室、理髪室、独立の配ぜん室、ロッカー室その他これらに類する場所として使用する場所をいう。

(k) 「公共室」とは、居住区域の部分であつて、ホール、食堂、ラウンジその他これらに類する恒久的に囲まれた場所として使用するものをいう。

(l) 「業務区域」とは、調理室、主配ぜん室、貯蔵品室(独立の配ぜん室及びロッカー室を除く。)、郵便室、金庫室、作業室(機関区域の一部を形成するものを除く。) その他これらに類する場所として使用する場所及びこれらの場所に至るト ランクをいう。

(m) 「貨物区域」とは、貨物のために充てられる場所(貨物油タンクを含む。)及びこれらの場所に至るトランクをいう。

(n) 「特殊分類区域」とは、自走用の燃料をタンクに有する自動車を運送するための隔壁甲板の上方又は下方の閉囲された場所であつて、これらの自動車及び旅客が出入りすることができるものをいう。

(o) 「A類機関区域」とは、次の物を収容する場所をいい、これらの場所に至るトランクを含む。

 (i) 主推進のために使用される内燃機関又は他の目的のために使用される合計出力三百七十三キロワット以上の内燃機関

 (ii) 油だきボイラー又は燃料油装置

(p) 「機関区域」とは、A類機関区域並びに推進機関、ボイラー、燃料油装置、蒸気機関、内燃機関、発電機、主要電気設備、給油場所、冷凍機械、減揺装置、通風機械及び空気調和機械を収容する場所その他これらに類する場所並びにこれらの場所に至るトランクをいう。

(q) 「燃料油装置」とは、油だきボイラーに送る燃料油の処理に用いる装置又は内燃機関に送る加熱油の処理に用いる装置をいい、毎平方センチメートル一・八キログラム(毎平方インチ二十五ポンド)を超える圧力で油を処理する油圧ポンプ、こし器及び加熱器を含む。

(r) 「制御場所」とは、船舶の無線装置、主要な航行設備又は非常動力源が置かれる場所及び火災表示装置又は火災制御装置が集中配置される場所をいう。

(s) 「火災の危険性が小さい家具及び備品を備える部屋」とは、この章の第二十規則の規定の適用上、その内部に次のような火災の危険性が小さい家具及び備品を備える部屋(キャビン、公共室、事務室その他の居住区域)をいう。

 (i) 机、衣装ダンス、鏡台、引出し付き机、戸だな等の収納家具は、承認された不燃性材料のみで造られること。もつとも、厚さ二ミリメートル(十二分の一インチ)を超えない可燃性上張りをこれらの家具の使用表面に用いることができる。

 (ii) いす、ソファー、テーブル等の固定していない家具は、不燃性材料の骨組みで造られること。

 (iii) カーテンその他のつり下げられる織物類は、炎の広がりを妨げる性質が毎平方メートル〇・八キログラム(毎平方ヤード二十四オンス)の重さの羊毛の性質に劣らないと主管庁が認めるものであること。

 (ⅳ) 敷物は、炎の広がりを妨げる性質が同一目的に使用される同等の羊毛品の性質に劣らないと主管庁が認めるものであること。

 (v) 隔壁、内張り及び天井張りの表面は、炎の広がりが遅い性質を有すること。

(t) 「隔壁甲板」とは、横置水密隔壁の達する最上層の甲板をいう。

(u) 「載貨重量」とは、指定された夏期フリーボードに対する満載喫水線において比重一・〇二五の海水における船舶の排水量と軽荷重量との差をメートル・トンで表したものをいう。

(v) 「軽荷重量」とは、貨物、燃料、潤滑油、バラスト水、タンク内の清水及び養かん水、消耗貯蔵品並びに旅客及び乗組員並びにその手回品を除く船舶の排水量をメートル・トンで表したものをいう。

(w) 「兼用船」とは、ばら積みで油及び固型貨物を交互に運送するように設計されたタンカーをいう。

   第四規則 火災制御図

 新船及び現存船には、船舶の職員の手引とするため、一般配置図を恒久的に掲示する。一般配置図には、制御場所、「A」級仕切りで閉囲された区域、「B」級仕切りで閉囲された区域並びに火災警報探知装置、スプリンクラ装置、消火設備、区画室又は甲板等への出入設備及び通風装置(送風機制御位置、ダンパーの位置及び各区域用の通風用送風機の識別番号の詳細を含む。)についての詳細を甲板ごとに明示する。主管庁が認める場合には、一般配置図の掲示に代えて、これらの詳細を小冊子で示すことができるものとし、その場合には、その写しを各職員に支給し、その写しの一を船内の接近可能な場所にいつでも利用することができるようにしておく。一般配置図及び小冊子は、現状に合わせておくものとし、いかなる変更も実行可能な限り速やかにこれに記録する。一般配置図及び小冊子は、当該国の公用語で記載する。使用される言語が英語又はフランス語でない場合には、これらの言語のいずれかによる訳文を付する。更に、消火又は火災の抑止のための船内の装置及び設備の維持及び操作に関する手引書を接近可能な場所に直ちに利用し得るように覆いをして備える。

   第五規則 消火ポンプ、消火主管、消火栓及び消火ホース

(a) 消火ポンブの合計能力

 (i) 旅客船については、要求される消火ポンプは、ビルジ排水のため動力ビルジ・ポンプが使用される場合に必要とされる量の三分の二以上の量の水を、この第五規則に定める適当な圧力で消火のために送ることができるものでなけれ ばならない。

 (ii) 貨物船については、要求される消火ポンプは、非常ポンプを除くほか、ビルジ排水のため同一寸法の旅客船の各動力ビルジ・ポンプが使用される場合に前章第十八規則定により必要とされる量の三分の四以上の量の水を、この第五規則に定める適当な圧力で消火のために送ることができるものでなければならない。もつとも、いかなる貨物船についても、消火ポンプの要求される合計能力は、毎時百八十立方メートルを超えることを要しない。

(b) 消火ポンプ

 (i) 消火ポンプは、独立に駆動するものとする。衛生ポンプ、バラスト・ポンプ、独立動力ビルジ・ポンプ及び雑用ポンプは、油の吸排に通常使用しないことを条件として及び、臨時に燃料油の移送又は吸排のために使用されることがある場合には、適当な切換装置が取り付けられていることを条件として、消火ポンプとして認めることができる。

 (ii)(1) 三十六人を超える旅客を運送する旅客船については、要求される各消火ポンプは、要求される消火ポンプの合計能力を要求される消火ポンプの最少の数で除したものの八十パーセントに相当する能力以上の能力を有するものでなければならず、いかなる場合にも、要求される少なくとも二条の射水を放出することができるものでなければならず、また、要求される条件に従い消火主管の管系に水を供給することができるものでなければならない。

要求される最少の数を超える数の消火ポンプを設ける場合には、それらのポンプの能力は、主管庁の認めるものでなければならない。

  (2) (b)(ii)(1)に規定する船舶以外の船舶については、要求される各消火ポンプ(この章の第五十二規則の規定により要求される非常ポンブを除く。)は、要求される消火ポンプの合計能力を要求される消火ポンプの数で除したものの八十パーセントに相当する能力以上の能力を有するものでなければならず、いかなる場合にも、要求される条件に従い消火主管の管系に水を供給することができる ものでなければならない。

  要求される数を超える数の消火ポンプを設ける場合には、それらのポンプの能力は、主管庁の認めるものでなければならない。

 (iii) 消火主管、消火栓及び消火ホースの計画圧力を超える圧力を発生し得る消火ポンプには、これと連結して安全弁を取り付ける。安全弁は、消火主管の管系のいずれの部分における過圧をも防ぐように配置し、かつ、調整する。

(c) 消火主管内の圧力

 (i)消火主管の径は、同時に作動する二の消火ポンプに要求される最大送水量を効果的に配分するために十分なものでなければならない。もつとも、貨物船については、径は、毎時百四十立方メートルの水を送るために十分なものであれば足りる。

 (ii) 二の消火ポンプが(c)(i)に定める量の水を隣接する二の消火栓から同時に(g)のノズルを通して送つている場合にも、次の最小圧力が、すべての消火栓において維持されるものとする。

  旅客船

   総トン数四千トン以上 毎平方センチメートル 三・二キログラム(毎平方インチ四十五ポンド)

   総トン数千トン以上四千トン未満 毎平方センチメートル  二・八キログラム(毎平方インチ四十ポンド)

   総トン数千トン未満 主管庁の認めるもの

  貨物船

   総トン数六千トン以上 毎平方センチメートル 二・八キログラム(毎平方インチ四十ポンド)

   総トン数千トン以上六千トン未満 毎平方センチメートル 二・六キログラム(毎平方インチ三十七ボンド)

   総トン数千トン未満 主管庁の認めるもの

(d) 消火栓の数及び位置

 消火栓の数及び位置は、別個の消火栓から放出される少なくとも二条の射水(そのうち一条は、単一の消火ホースによる。)が、航行中旅客又は乗組員が通常近づき得る船舶のいずれの部分にも達することができるものでなければならない。

(e) 消火主管及び消火栓

 (i) 消火主管及び消火栓には、十分に保護する場合を除くほか、熱によつて容易に有効性を失う材料を使用してはならない。消火主管及び消火栓は、消火ホースを容易にこれに連結し得るように配置する。甲板積み貨物を運送すること のある船舶については、消火栓の位置は、常に容易に近づくことができるものでなければならず、消火主管については、甲板積み貨物による損傷の危険を実行可能な限り避けるように措置をとる。船内の各消火栓につき一の消火ホース及びノズルを備える場合を除くほか、ホース継手及びノズルは、それぞれ完全な互換性を有するものでなければならない。

 (ii) コック及び弁は、消火ポンプの作動中にいずれの消火ホースも取り外すことができる方法で各消火ホースへの送水が行われるように取り付ける。

(f) 消火ホース

消火ホースは、主管庁の承認する材料のものでなければならず、使用の必要が生ずることのあるいかなる場所にも射水するために十分な長さのものでなければならない。その最大の長さは、主管庁の認めるものでなければならない。各消火ホースには、一のノズル及び必要なホース継手を備える。この章において「消火ホース」と特定するホースは、必要な附属具及び道具とともに、消火栓又は送水連結栓の近くの目につきやすい位置に、直ちに使用し得るように備えておく。三十六人を超える旅客を運送する旅客船の内部においては、消火ホースは、いつでも消火栓に接続しておく。

(g) ノズル

 (i) この章の規定の適用上、ノズルの標準寸法は、十二ミリメートル(二分の一インチ)、十六ミリメートル(八分の五インチ)及び十九ミリメートル(四分の三インチ)又はできる限りこれらに近い寸法とする。これらより大きい寸法のノズルの使用は、主管庁の裁量により認められる。

 (ii) 居住区域及び業務区域については、十二ミリメートル(二分の一インチ)より大きい寸法のノズルを使用することを要しない。

 (iii) 機関区域及び露出した場所については、ノズルの寸法は、最も小さい消火ポンプから(c)に定める圧力の二条の射水によつて可能な最大の放水量が得られるものでなければならない。もつとも、十九ミリメートル(四分の三インチ)より大きい寸法のノズルを使用することを要しない。

 (ⅳ) 機関区域及び油の漏れるおそれのあるこれと類似の区域については、ノズルは、水を油の上に噴霧するために適したもの又はこれに代わる射水及び噴霧両用のものでなければならない。

(h) 国際陸上施設連結具

この章において船舶に備えることを要求される国際陸上施設連結具の標準寸法は、次の表に定める寸法とする。

 国際陸上施設連結具は、毎平方センチメートル十・五キログラム (毎平方インチ百五十ポンド)の使用圧力に対して適当な材料で造る。フランジは、その一面を平面とし、他の面には船舶の消火栓及び消火ホースに合う継手を恒久的に取り 付ける。国際陸上施設連結具は、毎平方センチメートル十・五キログラム(毎平方インチ百五十ポンド)の使用圧力に対して適当な材料のガスケット、径十六ミリメートル(八分の五インチ)、長さ五十ミリメートル(二インチ) の四のボルト 及び八の座金とともに船内に備えておく。

   第六規則 雑項目

(a) 電気放熱器は、備える場合には、固定するものとし、火災の危険性を最小にとどめるように造る。電気放熱器には、衣服、カーテンその他類似の材料を熱で焦がし又は燃やすおそれのある状態で露出している放熱線を取り付けてはならない。

(b) ニトロセルローズを基剤とするフィルムは、映写装置に使用してはならない。

   第七規則 消火器

(a) 消火器は、承認された形式及び設計のものでなければならない。

 (i) 要求される持運び式液体消火器の容量は、十三・五リットル(三ガロン)以下九リットル (二ガロン)以上とする。他の消火器は、十三・五リットル(三ガロン)の持運び式液体消火器より持運びの困難なものであつてはならず、また、九リットル(二ガロン)の持運び式液体消火器と少なくとも同等の消火効力を有するものでなければならない。

 (ii) 主管庁は、各種消火器の性能の同等性について決定する。

(b) 予備装填物は、主管庁の定める要件に従つて備える。

(c) 自然に又は予期される使用条件において人体に有害な量の有毒ガスを発生すると主管庁が認める消火剤を入れた消火器は、認められない。

(d) 持運び式あわ放射器は、消火ホースで消火主管に連結し得るインダクター・タイプの発泡ノズル、少なくとも二十リットル(四・五ガロン)のあわ原液の入つた持運び式タンク及び一の予備タンクから成る。ノズルは、一分間に少なくとも 一・五立方メートル(五十三立方フィート)の割合で、油火災の消火に適する効果的なあわを発生するものでなければならない。

(e) 消火器は、定期的に点検するものとし、また、主管庁が要求することのある試験を受ける。

(f)  いずれの場所においても、その場所に使用するための持運び式消火器のうち一は、その場所の入口の近くに備える。

   第八規則 固定式ガス消火装置

(a) 自然に又は予期される使用条件において人体に有害な量の有毒ガスを発生すると主管庁が認める消火剤の使用は、認められない。

(b) 消火の目的でガスを噴射する装置を設ける場合には、ガスを送るための管には、その管が導かれる区画室について明確な標示をした制御弁又はコックを取り付ける。いずれの区画室にもガスを不用意に侵入させないように、適切な措置をとる。消火のためのこの装置を備える貨物区域を旅客区域として使用する場合には、その間、ガス連結部をしや断しておく。

(c) 管は、鎮火性ガスを効果的に分布させるように配置する。

(d)(i) 炭酸ガスを貨物区域内において消火剤として使用する場合には、利用可能な炭酸ガスの量は、船舶の密閉し得る最大の貨物区画室の総容積の少なくとも三十パーセントに相当する量の遊離炭酸ガスを供給するために十分なものでなければならない。

 (ii) 炭酸ガスをA類機関区域において消火剤として使用する場合には、備える炭酸ガスの量は、少なくとも次の容積のいずれか大きい方に相当する量の遊離炭酸ガスを供給するために十分なものでなければならない。

  (1) A類機関区域の最大の場所の総容積の四十パーセントに相当する容積。この総容積には、ケーシングの水平面積がタンク頂部とケーシングの最下端との中間における当該最大の場所の水平面積の四十パーセント以下となる高さまでのケーシングの容積を含む。

  (2) ケーシングを含むA類機関区域の最大の場所の総容積の三十五パーセンに相当する容積

もつとも、前記の百分率は、総トン数二千トン未満の貨物船については、それぞれ三十五パーセント及び三十パーセントまで引き下げることができるものとし、また、A類機関区域の二以上の場所が完全に隔離されていない場合には、それらの場所は、一の区画室を形成するものとみなす。

 (iii) A類機関区域内の空気だめの空気が、火災の際にその区域に放出された場合に固定式ガス消火装置の効力に重大な影響を及ぼす量のものである場合には、主管庁は、追加の量の炭酸ガスを備えることを要求する。

 (ⅳ) 炭酸ガスを貨物区域及びA類機関区域の双方において消火剤として使用する場合には、炭酸ガスの量は、最大の貨物区画室又はA類機関区域の最大の場所に対して要求される量のいずれか大きい方の量を超えることを要しない。

 (v) (d)の規定の適用上、炭酸ガスの量は、一キログラムを〇・五六立方メートルとして(一ポンドを九立方フィートとして) 計算する。

 (vi) 炭酸ガスをA類機関区域において消火剤として使用する場合には、固定した管系は、要求される量の八十五パーセントに相当する量の炭酸ガスを二分以内にA類機関区域の一の場所に放出することができるものでなければならない。

 (vii) 炭酸ガス・ボンベの格納室は、安全な、かつ、迅速に近づき得る位置に設けるものとし、主管庁の認める有効な通風装置を設ける。格納室の入口は、開放された甲板に通ずることが望ましく、また、いかなる場合にも、保護される場所から独立させる。入口の戸は、ガス密なものでなければならず、また、格納室の境界を形成する隔壁及び甲板は、ガス密なものでなければならず、かつ、十分に防熱を施す。

(e)(i) 炭酸ガス又は(f)の規定により使用することを認められる蒸気以外のガスが船内で造られ、消火剤として使用される場合には、そのガスは、酸素含有量、一酸化炭素含有量、腐食性成分及び固形可燃性成分が許容量まで減量された燃 料燃焼のガス状生成物とする。

 (ii) (e)(i)のガスがA類機関区域の保護のための固定式ガス消火装置の消火剤として使用される場合には、そのガスは、固定式炭酸ガス消火装置の場合と同等の保護を与えるものでなければならない。

 (iii) (e)(i)のガスが貨物区域の保護のための固定式ガス消火装置の消火剤として使用される場合には、そのガスは、保護される最大の貨物区画室の総容積の少なくとも二十五パーセントに相当する量の遊離ガスを毎時かつ七十二時間継続

して供給するために十分な量のものでなければならない。

(f) 主管庁は、原則として、新船の固定式ガス消火装置の消火剤として蒸気を使用することを認めてはならない。主管庁が蒸気の使用を認める場合には、その蒸気は、要求される消火剤の追加として、かつ、限定された区域においてのみ、使用するものとし、蒸気供給用のボイラーは、少なくとも、保護される最大の区画室の総容積について〇・七五立方メートル当たり毎時一キログラム(十二立方フィート当たり毎時一ポンド) の蒸発量を有するものでなければならない。この装置は、この(f)の規定に適合するほか、あらゆる点について、主管庁が決定し、承認するものでなければならない。

(g) 人が通常近づき得る場所への鎮火性ガスの放出を知らせる自動式可聴警報装置を取り付ける。この警報装置は、鎮火性ガスの放出前の適当な期間作動するものでなければならない。

(h) 固定式ガス消火装置の制御装置は、迅速に近づくことができ、かつ、簡単に操作することができるものでなければならず、また、保護される場所の火災によつてしや断されるおそれのない位置にできる限りまとめて配置する。

   第九規則 機関区域の固定式あわ消火装置

(a) 機関区域に要求される固定式あわ消火装置は、燃料油が広がることのある最大の単一面積を百五十ミリメートル(六インチ)の厚さで覆うために十分な量のあわを固定された放出口から五分以内に放出することができるものでなければならない。この消火装置は、油火災の消火に適したあわを発生するものでなければならない。常設の管系及び制御弁又はコックを通して適当な放出口にあわを効果的に配分するための措置及び保護される場所内の他の主な火災危険箇所に固定放出器によつて効果的にあわを放出するための措置をとる。あわの膨張率は、十二倍を超えてはならない。

(b) 固定式あわ消火装置の制御装置は、迅速に近づくことができ、かつ、簡単に操作することができるものでなければならず、また、保護される場所の火災によつてしや断されるおそれのない位置にできる限りまとめて配置する。

   第十規則 機関区域の固定式高膨脹あわ消火装置

(a)(i) 機関区域に要求される固定式高膨脹あわ消火装置は、保護される最大の場所を少なくとも毎分一メートル(三・三フィート)の厚さの割合で満たすために十分な量のあわを固定された放出口から迅速に放出することができるもので なければならない。有効なあわ原液の量は、保護される最大の場所の容積の五倍に相当する量のあわを発生するために十分なものでなければならない。あわの膨張率は、千倍を超えてはならない。

 (ii) 主管庁は、同等の保護が達成されると認める場合には、代わりの配置及び放出率を認めることができる。

(b) あわの供給ダクト、あわ発生機の空気取入口及びあわ発生ユニット数は、あわの効果的な発生及び配分を可能にすると主管庁が認めるものでなければならない。

(c) あわ発生機の供給ダクトについては、保護される場所の火災があわ発生装置に影響を与えないように措置をとる。

(d) あわ発生機、動力供給源、あわ原液及び制御装置は、迅速に近づくことができ、かつ、簡単に操作することができるものでなければならず、また、保護される場所の火災によつてしや断されるおそれのない位置にできる限りまとめて配置する。

   第十一規則 機関区域の固定式加圧水噴霧装置

(a) 機関区域に要求される固定式加圧水噴霧装置には、承認された型式の噴霧ノズルを取り付ける。

(b) ノズルの数及び配置は、主管庁の認めるものでなければならず、また、保護される場所において少なくとも平均一平方メートル当たり毎分五リットル(一平方フィート当たり毎分〇・一ガロン)の水の効果的な散布を確保するものでなければならない。この散布率を増大する必要があると判断される場合には、主管庁の認める率とする。ノズルは、ビルジ、タンク頂部その他の燃料油が広がることのある場所の上方及び機関区域の他の特定の火災危険箇所の上方に取り付ける。

(c) 固定式加圧水噴霧装置は、区分ごとに使用することができる。この場合において、分配弁は、保護される場所の外部の容易に近づき得る位置であつて、火災の発生によつて容易にしや断されない位置から操作されるものでなければならない。

(d) 固定式加圧水噴霧装置は、必要な圧力で水を満たしておくものとし、この装置に水を供給するポンプは、装置内の圧力低下により自動的に作動するものでなければならない。

(e) (d)のポンプは、保護されるいずれの一の区画室においても、固定式加圧水噴霧装置のすべての使用区分に同時に必要な圧力で水を供給することができるものでなければならない。ポンプ及びその制御装置は、保護される場所の外部に配置する。固定式加圧水噴霧装置によつて保護される場所の火災によりこの装置が作動不能となることがあつてはならない。

(f) (d)のポンプは、独立の内燃機関によつて駆動することができる。ポンプが前章第二十五規則又は第二十六規則の規定により設ける非常用発電機から動力の供給を受ける場合には、主動力源の故障により非常用発電機が自動的に作動して、(e)の規定により要求されるポンプの動力が直ちに得られるように措置をとる。ポンプが独立の内燃機関によつて駆動する場合には、保護される場所の火災が内燃機関の空気の供給に影響を与えないように内燃機関を配置する。

(g) 水中の不純物により又は管、ノズル、弁及びポンプの腐食によりノズルが詰まることがないように、予防措置をとる。

   第十二規則 自動スプリンクラ装置(火災警報及び火災探知の装置を内蔵するもの)

(a)(i) 要求される自動スプリンクラ装置(火災警報及び火災探知の装置を内蔵するもの)は、常時直ちに作動することができるものでなければならず、作動させるために乗組員の操作を必要とするものであつてはならない。この装置は、 湿管式のものでなければならないが、主管庁が必要な予防措置がとられていると認める場合には、暴露した小系統を乾燥管式のものとすることができる。作動中に氷結温度の影響を受けることがあるこの装置のいずれの部分も、氷結に対して適切な保護をする。この装置は、必要な圧力で水を満たしておくものとし、また、この第十二規則の規定により要求される水の連続供給設備を設ける。

 (ii) 自動スプリンクラ装置の各系統には、いずれのスプリンクラが作動した場合にも表示盤に自動的に可視可聴警報信号を発する装置を取り付ける。この表示盤は、自動スプリンクラ装置が作動する場所の火災及びその位置を示すものでなければならず、船橋又は主火災制御室に集中配置する。この配置場所には、自動スプリンクラ装置の発する警報を責任者が直ちに受けることができるように人員を配置し、又は装備を施す。この警報装置は、また、自動スプリンクラ装置が故障した場合にこれを表示するように造る。

(b)(i) 自動スプリンクラ装置は、それぞれが二百を超えないスプリンクラを有する別個の系統に区分する。この装置のいずれの系統も、二を超える甲板及び一を超える主垂直区域にわたつて設けてはならない。もつとも、主管庁は、火災に対する船舶の保護を減ずることにならないと認める場合には、この装置の一の系統を二を超える甲板又は一を超える主垂直区域にわたつて設けることを許すことができる。

 (ii) 自動スプリンクラ装置の各系統は、一の止め弁のみによつて分離することができるものでなければならない。各系統の止め弁は、容易に近づくことができるものでなければならず、また、その位置の明確かつ恒久的な標示をする。関係者以外の者が止め弁を操作することを防ぐための手段を講ずる。

 (iii) 自動スプリンクラ装置の各系統の止め弁及び中央制御室にこの装置の圧力を指示する計器を取り付ける。

 (ⅳ) スプリンクラは、海上の環境によつて腐食することのないものでなければならない。スプリンクラは、居住区域及び業務区域において、摂氏六十八度(華氏百五十五度)から摂氏七十九度(華氏百七十五度)までの温度で作動を開始するものでなければならない。もつとも、その内部に高温が予想される乾燥室等の場所においては、スプリンクラの作動温度は、天井の最高温度に摂氏三十度(華氏五十四度)を超えない温度を加えた温度とすることができる。

 (v) 自動スプリンクラ装置の各系統について保護される場所及びその位置を表又は図で各表示盤に掲示する。試験及び保守に関する適当な手引書を利用することができるようにしておく。

(c) スプリンクラは、頭上の位置に取り付けるものとし、自動スプリンクラ装置によつて保護される場所について一平方メートル当たり毎分五リットル(一平方フィート当たり毎分○・一ガロン)以上の平均散水率を維持し得るような適当な間隔で配置する。主管庁は、これらのスプリンクラに代えて、同等以上に効果的であると認める他の適当な平均散水率を有するスプリンクラの使用を許すことができる。

(d)(i) この(d)(i)に定める定量充填清水の少なくとも二倍に相当する容積の圧力タンクを設ける。このタンクは、(e)(ii)のポンプによつて一分間に放出する水の量に相当する定量充塡清水を貯蔵するものとし、タンク内の定量充塡清水が使用された場合にも、タンク内の空気圧が、スプリンクラの作動圧力にタンクの底から自動スプリンクラ装置の最も高いスプリンクラの位置までの水高圧力を加えた圧力以上の圧力を維持するように措置をとる。このタンクの加圧空気及び充塡清水を補充する適当な手段を講ずる。このタンクの正確な水位を表示するためガラス水面計を取り付ける。

 (ii) 圧力タンクに海水が入るのを防ぐための手段を講ずる。

(e)(i) スプリンクラから水を自動的に継続して放出するための専用の独立動力のスプリンクラ・ポンプを設ける。このスプリンクラ・ポンプは、圧力タンクの定量充塡清水が完全に放出される前に自動スプリンクラ装置の圧力低下によつて自動的に作動するものでなければならない。

 (ii) スプリンクラ・ポンプ及び管系は、少なくとも二百八十平方メートル(三千平方フィート)の面積の場所に同時に(c)に定める平均散水率で継続して水を放出することを確保するために必要な圧力を最も高いスプリンクラの位置で維持することができるものでなければならない。

 (iii) スプリンクラ・ポンプには、その吐出側に、開放端のある短い放出管を有する試験弁を取り付ける。弁及び管の有効断面積は、(d)(i)に規定する自動スプリンクラ装置の圧力を維持しつつ、要求されるポンプ出力を出すために十分な ものでなければならない。

 (ⅳ) スプリンクラ・ポンプの海水取入口は、可能な限りスプリンクラ・ポンプの据付け場所に設けるものとし、また、船舶が浮いている場合に、スプリンクラ・ポンプの点検又は修理以外のいかなる目的のためにもスプリンクラ・ポンプへの海水の供給のしや断が必要とならないように措置をとる。

(f) スプリンクラ・ポンプ及び圧力タンクは、A類機関区域のいずれの場所からも適度に離れた場所に取り付けるものとし、自動スプリンクラ装置による保護が要求される場所に取り付けてはならない。

(g) スプリンクラ・ポンプ並びに火災警報及び火災探知の装置の動力供給源は、二以上とする。スプリンクラ・ポンプの動力源が電気である場合には、一の主発電機と一の非常電源とがなければならない。スプリンクラ・ポンプへの給電は、主配電盤及び非常配電盤から、この目的にのみ取り付けるそれぞれ別個の配電線によつて行う。配電線は、配電盤に接続する必要のある場合を除くほか、調理室、機関区域その他の火災の危険性の大きい閉囲された場所を避けるように配置するものとし、スプリンクラ・ポンプの近くにある自動切換スイッチに接続する。このスイッチは、主配電盤から給電し得る間は主配電盤から電力を供給し、主配電盤からの給電が停止した場合には非常配電盤からの給電に自動的に切り換えられるように設計する。主配電盤及び非常配電盤上のスイッチは、明確な標示をするものとし、通常は覆つておく。その配電線には、他のスイッチを取り付けてはならない。火災警報及び火災探知の装置の電源の一は、非常電源とする。スプリンクラ・ポンプの動力源の一が内燃機関である場合には、その内燃機関は、(f)の規定に適合するほか、いずれの保護される場所における火災もその内燃機関への空気の供給に影響を与えないように配慮する。

(h) 自動スプリンクラ装置は、この装置から消火主管への逆流を防止する錠付きのねじ下げ逆止弁を連結部に取り付けて消火主管に連結する。

(i)(i) 一のスプリンクラが作動した場合と同量の水の放出によつて自動スプリンクラ装置の各系統の自動火災警報の試験をするため、試験弁を取り付ける。各系統の試験弁は、その系統の止め弁の近くに配置する。

 (ii) 自動スプリンクラ装置の圧力が低下した場合にスプリンクラ・ポンプが自動的に作動することを試験する手段を講ずる。

 (iii) 自動スプリンクラ装置の各系統の火災警報器及び表示器の試験をすることができるように、(a)(ii)の配置場所の一にスイッチを取り付ける。

(j) 主管庁の認めるところにより自動スプリンクラ装置の各系統に予備のスプリンクラ・ヘッドを備える。

   第十三規則 自動火災警報探知装置

 三十六人を超える旅客を運送する旅客船についての要件

(a)(i) 要求される自動火災警報探知装置は、常時直ちに作動することができるものでなければならず、作動させるために乗組員の操作を必要とするものであつてはならない。

 (ii) 自動火災警報探知装置の各系統には、いずれの探知器が作動した場合にも表示盤に自動的に可視可聴警報信号を発する装置を取り付ける。この表示盤は、自動火災警報探知装置が作動する場所の火災及びその位置を示すものでなければならず、船橋又は主火災制御室に集中配置する。この配置場所には、自動火災警報探知装置の発する警報を責任者が直ちに受けることができるように人員を配置し、又は装備を施す。この警報装置は、また、自動火災警報探知装置が故障した場合にこれを表示するように造る。

(b) 自動火災警報探知装置は、それぞれ五十を超えない室に作動し、かつ、それぞれ百を超えない探知器を有する別個の系統に区分する。この装置のいずれの系統も、船舶の両舷、二以上の甲板及び二以上の主垂直区域にわたつて設けてはならない。もつとも、主管庁は、火災に対する船舶の保護を滅ずることにならないと認める場合には、この装置の一の系統を船舶の両舷又は二以上の甲板にわたつて設けることを許すことができる。

(c) 自動火災警報探知装置は、異常な空気温度、異常な煙の濃度その他の保護される場所の初期火災を示す要因によつて作動するものでなければならない。空気温度に感応する装置は、摂氏五十七度(華氏百三十五度)未満で作動するもので あつてはならず、また、温度上昇が毎分摂氏一度(華氏一・八度)を超えない場合には、摂氏七十四度(華氏百六十五度)以下の温度で作動するものでなければならない。許容される作動温度は、その内部に高温が予想される乾燥室等の場所においては、主管庁の裁量により、天井の最高温度に摂氏三十度(華氏五十四度)を加えたものとすることができる。煙の濃度に感応する装置は、通過光線強度について主管庁の決定する量の減少があつた場合に作動するものでなければならない。他の同等の効果を有する作動方式の採用は、主管庁の裁量により認められる。火災探知の装置は、火災の探知以外のいかなる目的にも使用してはならない。

(d) 探知器については、接点の開閉その他の適当な方式によつて警報を発するように措置をとる。探知器は、頭上の位置に取り付けるものとし、また、衝撃及び物理的損傷に対する適当な保護をする。探知器は、海上での使用に適したものでなければならない。探知器は、感応素子に向かつて高温ガス又は煙が流れるのを妨げるようなビームその他の構造物から離れた広い場所に取り付ける。接点を閉じることによつて作動する探知器は、シールド・コンタクト式のものでなければならず、その回路は、故障を表示するため継続的に監視されるものとする。

(e) 自動火災警報探知装置が要求される各場所に、少なくとも一の探知器を取り付けるものとし、また、甲板面積三十七平方メートル(四百平方フィート)当たり少なくとも一の探知器を取り付ける。広い場所においては、探知器は、他の探知器との間隔が九メートル(三十フィート)を超えず、又は隔壁からの距離が四・五メートル(十五フィート)を超えないような方法で規則的に配置する。

(f) 自動火災警報探知装置の作動のために使用される電気設備の電源は、二以上とし、そのうちの一は、非常電源とする。給電は、この目的にのみ備える別個の配電線によつて行う。配電線は、自動火災警報探知装置のために制御場所に取り付ける切換スイッチに接続する。配電線は、調理室、機関区域その他の火災の危険性の大きい閉囲された場所を避けるように配置する。ただし、これらの場所における火災探知の必要がある場合又は配電盤に接続させる必要がある場合は、この限りでない。

(g)(i) 自動火災警報探知装置の各系統について保護される場所及びその位置を表又は図で各表示盤の近くに掲示する。試験及び保守に関する適当な手引書を利用することができるようにしておく。

(ii) 探知器の取付け位置において高温の空気又は煙を当てることによつて探知器及び表示盤の正確な作動を試験し得るように措置をとる。

(h) 主管庁の認めるところにより自動火災警報探知装置の各系統に予備の検出器を備える。

 その他の船舶についての要件

(i) 要求される自動火災警報探知装置は、火災の存在又は徴候及びその位置を自動的に表示することができるものでなければならない。表示器は、船橋又は船橋との直接の連絡装置を取り付ける他の制御場所に集中配置する。主管庁は、表示器を数箇所に分けて配置することを認めることができる。

(j) 旅客船については、要求される自動火災警報探知装置の作動のために使用される電気設備には、二の別個の電源を設けるものとし、そのうちの一は、非常電源とする。

(k) 自動火災警報探知装置は、(i)の制御場所において可視可聴警報信号を発するものでなければならない。貨物区域については、可聴警報信号を必要としない。

   第十四規則 消防員装具

 消防員装具は、個人装具及び呼吸具から成る。

(a) 個人装具は、次の物から成る。

 (i) 火災の放射熱及び蒸気等による火傷から皮膚を保護する材料で作られた防護服。その表面は、防水性を有するものでなければならない。

 (ii) ゴムその他の絶縁性材料で作られた長靴及び手袋

 (iii) 衝撃から有効に保護するヘルメット

 (ⅳ) 少なくとも三時間点燈し得る承認された型式の電気安全燈(手提げ燈)

 (v) 主管庁の認めるおの

(b) 呼吸具は、承認された型式のものでなければならず、次のいずれかの物とすることができる。

 (i) 防煙ヘルメット又は防煙マスク。これらには、適当な空気ポンプ及び開放された甲板上のハッチ又は戸口から十分に離れた場所から船倉又は機関区域のいずれの部分にも十分に達する長さの空気ホースを備える。この(b)(i)に定める 要件を満たすため三十六メートル(百二十フィート)を超える長さの空気ホースを必要とする場合には、その代わりに又はそれに追加して、主管庁の決定するところに従い、自蔵式呼吸具を備える。

 (ii) 主管庁の決定する時間その機能を果たし得る自蔵式呼吸具

 呼吸具には、十分な長さ及び強さの耐火性の命綱を備えるものとし、その命綱は、操作の際に呼吸具が外れるのを防ぐためベルト又は呼吸具の装着具にスナップフックで取り付ける。

   第十五規則 消火設備の迅速な利用

 消火設備は、新船においても、現存船においても、航海中のいかなる時にも良好な状態に保つものとし、直ちに使用することができるようにしておく。

   第十六規則 代用物の認容

 この章において新船及び現存船の器具、装置、消火剤又は設備について特別の型が定められている場合には、器具等の他の型は、同等以上の実効性があると主管庁が認めるものに限り、認められる。

  B部 三十六人を超える旅客を運送する旅客船の火災安全措置

   第十七規則 構造

 船体、船楼、構造隔壁、甲板及び甲板室は、鋼その他これと同等の材料で造る。この章の第三規則(g)の鋼その他これと同等の材料についての定義の適用上、「火にさらされる」とは、この章の第二十規則の表の保全防熱性規準によつて行う。例えば、「B-O」級の保全防熱性を許される甲板、甲板室の端壁、甲板室の側壁その他の仕切りについては、火にさらされる時間は、三十分とする。

 船体構造のいずれの部分も、アルミニウム合金で造られている場合には、次の規定を適用する。

(a) 主管庁が無負荷と認める構造のものを除くほか、「A」級又は「B」級の仕切りのアルミニウム合金部分の防熱は、標準火災試験で火にさらされる時間中構造心材の温度がその周囲の温度より摂氏二百度(華氏三百六十度)を超えて上昇しないものでなければならない。

(b) 救命艇及び救命いかだの積付け、進水及び乗艇の場所並びに「A」級又は「B」級の仕切りを支える支柱その他の構造部材のアルミニウム合金部分の防熱については、次の条件を満たすように特別の考慮を払う。

 (i) 救命艇及び救命いかだの積付け、進水及び乗艇の場所並びに「A」級仕切りを支える部材については、(a)に定める温度上昇制限は、一時間を経過した後に適用する。

 (ii) 「B」級仕切りを支える部材については、(a)に定める温度上昇制限は、三十分を経過した後に適用する。

(c)  A類機関区域の頂部及びケーシングは、十分な防熱を施した鋼構造のものでなければならず、これらの頂部及びケーシングに開口を設ける場合には、火災の拡大を阻止するようにその開口を適当に配置し、かつ、その保護をする。

   第十八規則 主垂直区域及び水平区域

(a) 船体、船楼及び甲板室は、「A」 級仕切りにより主垂直区域に区画する。階段部及び屈折部は、その数を最小限にとどめるものとし、これらが必要な場合には、「A」 級仕切りとする。これらの仕切りは、この章の第二十規則の該当する表に定める防熱値のものでなければならない。

(b) 隔壁甲板の上方の主垂直区域の境界を形成する隔は、実行可能な限り、隔壁甲板直下の水密隔壁と同一線上になければならない。

(c) (b)の隔壁は、甲板から甲板まで及び外板その他の周壁から他の外板その他の周壁まで達するものでなければならない。

(d) 自動スプリンクラ装置によつて保護される区域と保護されない区域とを適当に仕切るために「A」級水平仕切りによつて水平区域に区画される主垂直区域においては、この水平仕切りは、主垂直区域隔壁から隣接する主垂直区域隔壁まで及び外板その他の外部周壁から他の外板その他の外部周壁まで達するものでなければならず、この章の第二十規則第三表の保全防熱性規準に従つて防熱する。

(e) 自動車渡船、鉄道車両渡船等の特別の目的のために設計された船舶については、主垂直区域隔壁を設けることが船舶の目的を損なう場合には、火災の制御及び拡大防止のための他の同等の方法を代用し、かつ、これについて特に主管庁の承認を受ける。

 特殊分類区域を有する船舶については、特殊分類区域は、この章の第三十規則の関係規定に適合するものでなければならず、それらの規定への適合がこの部の他の規定への適合と矛盾する場合には、同規則の規定が優先する。

   第十九規則 主垂直区域内の隔壁

(a) 「A」級仕切りとすることを要しない隔壁は、少なくとも、この章の第二十規則の表に定める「B」級又は「C」級の仕切りとする。これらの仕切りには、この章の第二十七規則の規定により可燃性上張りを施すことができる。

(b) 「A」級とすることを要しない通路隔壁は、次の場合を除くほか、甲板から甲板まで達する「B」級仕切りとする。

 (i) 連続「B」級天井張り又は内張りを隔壁の両側に施す場合には、連続「B」級天井張り又は内張りの裏側の隔壁部分は、厚さ及び構成において「B」級仕切りの構造として認められる材料のものでなければならず、その材料は、主管庁が合理的かつ実行可能と認める場合には、「B」級の保全性規準を満たすことを要する。

 (ii) この章の第十二規則の規定に適合する自動スプリンクラ装置によつて保護される船舶については、「B」級材料の通路隔壁は、その通路の天井張りが厚さ及び構成において「B」級仕切りの構造として認められる材料のものであることを条件として、その天井張りまでとすることができる。通路隔壁及び天井張りは、この章の第二十規則の規定にかかわらず、主管庁が合理的かつ実行可能と認める場合に限り、「B」級の保全性規準を満たすことを要する。通路隔壁に取り付ける戸及び戸わくは、不燃性材料のものでなければならず、また、主管庁の認める十分な耐火性を有する構造及び組立てのものでなければならない。

(c) 通路隔壁を除くほか、「B」級仕切りとすることを要する隔壁は、甲板から甲板まで及び外板その他の周壁から他の外板その他の周壁まで達するものでなければならない。もつとも、連続「B」級天井張り又は内張りを隔壁の両側に施す場合には、その隔壁は、連続天井張り又は内張りまでとすることができる。

   第二十規則 隔壁及び甲板の保全防熱性

(a) 甲板及び隔壁の最低の保全防熱性は、この部における甲板及び隔壁の保全防熱性に関する特別規定に従うほか、この第二十規則第一表から第四表までに定めるところによる。特別な構造のために仕切りの最低の保全防熱性規準を表によつて決定することが困難な場合には、当該保全防熱性規準は、主管庁が決定する。

(b) 表の適用は、次の規定に従う。

 (i) 第一表は、主垂直区域又は水平区域の境界となる隔壁に適用する。

第二表は、主垂直区域の境界とならず、しかも水平区域の境界ともならない隔壁に適用する。

第三表は、主垂直区域の階段部を形成する甲板又は水平区域の境界となる甲板に適用する。

第四表は、主垂直区域の階段部を形成せず、しかも水平区域の境界ともならない甲板に適用する。

 (ii) 隣接する場所は、その間の境界に適用される適切な保全防熱性規準の決定上、火災の危険性に従い、次の範疇(1)から範疇(14)までに分類する。いずれかの場所の内容及び用途かんがみ、この第二十規則の規定の適用上、その場所の分類について疑いがある場合には、その場所は、関連のある範疇のうち最も厳重な境界要件が適用される範疇に属する場所として取り扱う。各範疇の標題は、限定的意味のものではなく、典型的なものを示すものである。標題の上の括弧内の数字は、表中の該当する行又は列を示す。

  (1) 制御場所

    非常用の動力源及び証明源のある場所

    操舵室及び海図室

    無線装置のある場所

    火災の制御及び表示の場所

    推進機関のある機関区域の外に設ける推進機関の制御室

    火災警報装置を集中配置した場所

    非常用中央船内通報装置を設けた場所

  (2) 階段

    旅客用及び乗組員用の船舶内部の階段、昇降機及びエスカレーター(機関区域内に完全に含まれるものを除く。)並びにその囲壁。一の甲板間においてのみ閉囲 した階段は、防火戸によつて隔離されていない場所の一部とみなす。

  (3) 通路

    旅客用及び乗組員用の通路

  (4) 救命艇及び救命いかだの乗艇場所及び操作場所

    救命艇及び救命いかだの乗艇場所及び操作場所を形成する開放された甲板上の場所及び閉囲された遊歩場所

  (5) 開放された甲板上の場所

    救命艇及び救命いかだの乗艇場所及び操作場所以外の開放された甲板上の場所及び閉囲された遊歩場所

エアー・スペース(船楼及び甲板室の外部)

  (6) 火災の危険性の小さい居住区域

    火災の危険性の小さい家具及び備品を備えるキャビン

    火災の危険性の小さい家具及び備品を備える公共室であつて床面積が五十平方メートル(五百四十平方フィート)未満のもの

    火災の危険性の小さい家具及び備品を備える事務室及び診療室

  (7) 火災の危険性が中程度である居住区域

    範疇(6)に例示する場所であつて火災の危険性の小さい家具及び備品以外の家具及び備品を備えるもの

    火災の危険性の小さい家具及び備品を備える公共室であつて床面積が五十平方メートル(五百四十平方フィート)以上のもの

    居住区域にある独立したロッカー及び小貯蔵品室

    売店

    映写室及びフィルム収納室

    小調理室(裸火を用いないもの)

    掃除器具用ロッカー(可燃性液体を収納しないもの)

    実験室(可燃性液体を収納しないもの)

    薬局

    小乾燥室(床面積が四平方メートル(四十三平方フィート)以下のもの)

    金庫室

  (8) 火災の危険性の大きい居住区域

    火災の危険性の小さい家具及び備品以外の家具及び備品を備える公共室であつて床面積が五十平方メートル(五百四十平方フィート)以上のもの

    理髪室及び美容室

  (9) 衛生区域その他これに類する場所

    シャワー室、浴室、便所その他の共用の衛生設備のある室

    小洗たく室

    屋内プール室

    手術室

    居住区域にある独立した配ぜん室

    個人用の衛生設備のある室は、それが位置する場所の一部とみなす。

  (10) 火災の危険性のほとんどない又は全くないタンク、空所及び補機室

    船体構造の一部を形成する水タンク

    空所及びコファダム

    強制潤滑装置のある機械を備えていない補機室であつて可燃性物質の収納を禁じられているもの。例えば、送風機室、空気調和機室、揚錨機室、操舵機室、滅揺装置室、推進用電動機室、配電盤と純粋に電気的な設備(十キロボルトアンペアを超える容量の油入り変圧器を除く。)とを備える室、軸路、管を通すトンネル並びに可燃性液体を使用しないポンプ及び冷凍機の室

    前記の各場所に通ずる閉囲されたトランク

    管及び電線を通すトランクその他の閉囲されたトランク

  (11) 火災の危険性が中程度である補機室、貨物区域、特殊分類区域、貨物油その他の油のタンク及びこれらに類する場所

    貨物油タンク

    船倉、トランク路及びハッチ

    冷蔵室

    燃料油タンク(機械類を備えていない独立した場所にあるもの)

    可燃性物質の収納が可能な軸路及び管を通すトンネル

    範疇(10)に例示する補機室であつて強制潤滑装置のある機械を備えるもの又は可燃性物質の収納を許されているもの

    燃料油取入れ場所

    十キロボルトアンペアを超える容量の油入り変圧器を備える場所

    タービン又は往復蒸気機関によつて駆動する補助発電機及び非常用発電機、スプリンクラ・ポンプ、消火装置ポンプ、消火ポンプ、動力ビルジ・ポンプ等を駆動する百十二キロワット以下の出力の小型内燃機関を備える場所

    特殊分類区域。この区域には、第一表及び第三表のみが適用される。

    前記の各場所に通ずる閉囲されたトランク

  (12) 機関区域及び主調理室

    主推進機関室 (推進用電動機室を除く。)及びボイラー室

    内燃機関その他油の燃焼装置、加熱装置若しくはポンプ装置を備える補機室。これらの補機室は、範疇(10)及び範疇(11)には該当しない。

    主調理室及び附属場所

    前記の各場所に通ずるトランク及びケーシング

  (13) 貯蔵品窒、作業室、配ぜん室等

    調理室に附属しない主配ぜん室

    主洗たく室

    大乾燥室(床面積が四平方メートル(四十三平方フィート)を超えるもの)

    雑用倉庫

    郵便室及び手荷物室

    廃棄物室

    作業室(機関区域、調理室等の一部をなすものを除く。)

  (14) 可燃性液体を収納するその他の場所

    燈具庫

    塗料庫

    可燃性液体(染料、薬剤等を含む。)のある貯蔵品室

    実験室(可燃性液体のあるもの)

 (iii) 二の場所の間の境界の保全防熱性規準として単一の保全防熱性規準が示されている場合には、その保全防熱性規準を適用する。

 (ⅳ) この章の第十二規則の規定に適合する自動スプリンクラ装置によつて保護されない主垂直区域内若しくは水平区域内の二の場所の間又はこの装置によつて保護されないこれらの区域の間の境界に適用される保全防熱性規準の決定に 当たつては、表中の二の保全防熱性規準のいずれか高い方の保全防熱性基準を適用する。

 (v) この章の第十二規則の規定に適合する自動スプリンクラ装置によつて保護される主垂直区域内若しくは水平区域内の二の場所の間又はこの装置によつて保護されるこれらの区域の間の境界に適用される保全防熱性規準の決定に当た つては、表中の二の保全防熱性規準のいずれか低い方の保全防熱性規準を適用する。居住区域内又は業務区域内において、自動スプリンクラ装置によつて保護される主垂直区域又は水平区域と保護されない主垂直区域又は水平区域とが隣接する場合には、これらの区域の間の境界には、表中の二の保全防熱性規準のいずれか高い方の保全防熱性規準を適用する。

 (vi) 隣接する場所が同一の番号の範疇に属しており、かつ、表中の保全防熱性規準に1の肩文字が付されている場合には、主管庁が不要と認めるときは、これらの場所の間に隔壁又は甲板を設けることを要しない。例えば、範疇(12)のうち配ぜん室の隔壁及び甲板が調理室の境界としての保全防熱性をも維持する場合には、調理室とこれに附属する配ぜん室との間の隔壁は、必要としない。もつとも、調理室及び機関区域は、範疇(12)に属する場合にも、これらの場所の間の隔壁を必要とする。

 (vii) 表中の保全防熱性規準に2の肩文字が付されている場合には、隣接する場所の少なくとも一方がこの章の第十二規則の規定に適合する自動スプリンクラ装置によつて保護されるときに限り、低い方の保全防熱性規準を認めることが できる。

 (viii) 表中に横線のみが付されている場合には、この章の第十九規則の規定にかかわらず、境界の材料又は保全防熱性について、特別の要件を満たすことを要しない。

 (ix) 主管庁は、範疇(5)の場所に関し、甲板室及び船楼の端壁については第一表又は第二表のいずれの保全防熱性規準を適用するか、また、暴露甲板については第三表又は第四表のいずれの保全防熱性規準を適用するかを決定する。いかなる場合にも、範疇(5)について第一表から第四表までに定める要件は、主管庁がその閉囲を不要と認める場所の閉囲を要求するものではない。

(c) 連続「B」級天井張り又は内張りは、関連する甲板又は隔壁と一体をなして、仕切りに要求される保全防熱性を全体的に又は部分的に確保するものであると認めることができる。

(d) 主管庁は、防火構造の細目の承認に当たつては、要求される防熱壁の交差箇所及び末端における熱伝導による危険を考慮する。

第1表 主垂直区域又は水平区域の境界となる隔壁


外径一七八ミリメートル(七インチ)
内径六四ミリメートル(二と二分の一インチ)
ボルトの円の径
フランジのみぞ径一九ミリメートル(四分の三インチ)の四の穴をボルト円上に等間隔に配置し、フランジの外側にみぞをつける
フランジの暑さ最小一四・五ミリメートル(一六分の九インチ)
ボルト及びナット径一六ミリメートル(八分の五インチ)長さ五〇ミリメートル(二インチ)のもの四組

場所    (1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)(10)(11)(12)(13)(14)
                                                                
制御場所(1)A-
60
A-
30
A-
30
A-
0
A-
0
A-
60
A-
60
A-
60
A-
0
A-0A-
60
A-
60
A-
60
A-
60
階段(2)    A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
15
A-
0
A-
30
A-
0
A-
60
A-
15
A-
0
A-0A-
30
A-
60
A-
15
A-0
A-
60
通路(3)        A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
30
A-
0
A-
30
A-
0
A-
0
A-0A-
30
A-
60
A-
15
A-0
A-
60
救命艇及び救命いかだの乗艇場所及び操作場所(4)            --A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-0A-0A-
60
A-0A-
60
開放された甲板上の場所(5)                -A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-0A-0A-0A-0A-0
火災の危険性の小さい居住区域(6)                    A-
15
A-
0
A-
30
A-
0
A-
30
A-
0
A-
0
A-0A-
15
A-
0
A-
30
A-
15
A-
0
A-
30
火災の危険性が中程度である居住区域(7)                        A-
30
A-
0
A-
60
A-
15
A-
0
A-0A-
30
A-0
A-
60
A-
30
A-0
A-
60
火災の危険性の大きい居住区域(8)                            A-
60
A-
15
A-
0
A-0A-
60
A-
15
A-
60
A-
30
A-0
A-
60
衛生区域その他これに類する場所(9)                                A-
0
A-0A-0A-0A-0A-0
火災の危険性のほとんどない又は全くないタンク、空所及び補機室(10)                                    A-0A-0A-0A-0A-0
火災の危険性が中程度である補機室、貨物区域、特殊分類区域、貨物油その他の油のタンク及びこれらに類する場所(11)                                        A-0A-
60
A-0A-
60
機関区域及び主調理室(12)                                            A-
60
A-
302
A-
15
A-
60
貯蔵品室、作業室、配ぜん室等(13)                                                A-0A-
30
可燃性液体を収納するその他の場所(14)                                                    A-
60


第2表 主垂直区域の境界とならず、しかも水平区域の境界ともならない隔壁


場所    (1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)(10)(11)(12)(13)(14)
                                                                
制御場所(1)B-
01
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
B-
0
A-
60
A-
60
A-
60
A-
0
A-0A-
60
A-
60
A-
60
A-
60
階段(2)    A-
01
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
15
A-
0
A-
30
A-
0
A-
0
A-0A-
15
A-
30
A-
15
A-
0
A-
30
通路(3)        CA-
0
A-
0
B-
0
B-
0
B-
15
B-
0
B-
15
B-
0
B-
0
A-0A-
15
A-
30
A-0A-
30
A-0
救命艇及び救命いかだの乗艇場所及び操作場所(4)            --A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-0A-0A-
15
A-0A-
15
A-0
開放された甲板上の場所(5)                -A-
0
B-
0
A-
0
B-
0
A-
0
B-
0
A-
0
B-
0
A-0A-0A-0A-0
B-0
A-0

B-0
火災の危険性の小さい居住区域(6)                    B-
0
C
B-
15


C
B-
15


C
B-
0


C
A-0A-
15
A-0
A-
35
A-0A-0
A-
30
A-0
火災の危険性が中程度である居住区域(7)                        B-
15


C
B-
15


C
B-
0


C
A-0A-
30
A-0
A-
60
A-
15
A-0
A-
60
A-
15
火災の危険性の大きい居住区域(8)                            B-
15


C
B-
0


C
A-0A-
30
A-0
A-
60
A-
15
A-0
A-
60
A-
15
衛生区域その他これに類する場所(9)                                CA-0A-0A-0A-0A-0
火災の危険性のほとんどない又は全くないタンク、空所及び補機室(10)                                    A-
01
A-0A-0A-0A-0
火災の危険性が中程度である補機室、貨物区域、特殊分類区域、貨物油その他の油のタンク及びこれらに類する場所(11)                                        A-
01
A-0A-0A-
302


A-
15
機関区域及び主調理室(12)                                            A-0A-0A-
60
貯蔵品室、作業室、配ぜん室等(13)                                                A-
01
A-0
可燃性液体を収納するその他の場所(14)                                                    A-
302
A-
15


第3表 主垂直区域の階段部を形成する甲板又は水平区域の境界となる甲板

甲板下部の場所 ↓ 甲板上部の場所 → (1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)(10)(11)(12)(13)(14)
                                                                
制御場所(1)A-
60
A-
60
A-
30
A-
0
A-
0
A-
15
A-
30
A-
60
A-
0
A-
0
A-
30
A-
60
A-
15
A-
60
階段(2)A-
15
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
15
A-
0
A-
15
A-
0
A-
0
A-
0
A-0A-
60
A-0A-
60
通路(3)A-
30
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
15
A-
0
A-
15
A-
0
A-
0
A-
0
A-0A-
60
A-0A-
60
救命艇及び救命いかだの乗艇場所及び操作場所(4)A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-0A-0A-0A-0
開放された甲板上の場所(5)A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-0A-0A-0A-0
火災の危険性の小さい居住区域(6)A-
60
A-
30
A-
0
A-
15
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
15
A-
0
A-
30
A-
0
A-
0
A-
0
A-
15
A-0
A-
15
A-0A-
15
火災の危険性が中程度である居住区域(7)A-
60
A-
60
A-
15
A-
30
A-
0
A-
15
A-
0
A-
0
A-
15
A-
0
A-
30
A-
0
A-
60
A-
15
A-
0
A-
0
A-
30
A-0
A-
30
A-0A-
30
火災の危険性の大きい居住区域(8)A-
60
A-
60
A-
15
A-
60
A-
15
A-
60
A-
15
A-
0
A-
30
A-
0
A-
60
A-
15
A-
60
A-
15
A-
0
A-
0
A-
30
A-0
A-
60
A-
15
A-0
A-
60
衛生区域その他これに類する場所(9)A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-0A-0A-0A-0
火災の危険性のほとんどない又は全くないタンク、空所及び補機室(10)A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-0A-0A-0A-0
火災の危険性が中程度である補機室、貨物区域、特殊分類区域、貨物油その他の油のタンク及びこれらに類する場所(11)A-
60
A-
60
A-
60
A-
60
A-
0
A-
30
A-
0
A-
60
A-
15
A-
60
A-
15
A-
0
A-
0
A-0A-
30
A-
302
A-0
A-
30
機関区域及び主調理室(12)A-
60
A-
60
A-
60
A-
60
A-
0
A-
60
A-
60
A-
60
A-
0
A-
0
A-
60
A-
60
A-
60
A-
60
貯蔵品室、作業室、配ぜん室等(13)A-
60
A-
60
A-
15
A-
30
A-
0
A-
15
A-
0
A-
15
A-
0
A-
30
A-
0
A-
60
A-
15
A-
0
A-
0
A-0A-
30
A-0A-
30
可燃性液体を収納するその他の場所(14)A-
60
A-
60
A-
60
A-
60
A-
0
A-
60
A-
60
A-
60
A-
0
A-
0
A-
60
A-
60
A-
60
A-
60


第4表 主垂直区域の階段部を形成せず、しかも水平区域の境界ともならない甲板

甲板下部の場所 ↓ 甲板上部の場所 → (1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)(10)(11)(12)(13)(14)
                                                                
制御場所(1)A-
30
A-
0
A-
30
A-
0
A-
15
A-
0
A-
0
A-
0
B-
0
A-
0
A-
15
A-
0
A-
30
A-
0
A-
0
A-
0
A-0A-
60
A-0A-
60
A-
15
階段(2)A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
B-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-0A-
30
A-
0
A-
30
A-0
通路(3)A-
15
A-
0
A-
0
A-
01
B-
01
A-
0
A-
0
B-
0
A-
0
B-
0
A-
15
B-
0
A-
15
B-
0
A-
0
B-
0
A-
0
A-0A-
30
A-0A-
30
A-0
救命艇及び救命いかだの乗艇場所及び操作場所(4)A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
--A-
0
B-
0
A-
0
B-
0
A-
0
B-
0
A-
0
B-
0
A-
0
A-0A-0A-0A-0
開放された甲板上の場所(5)A-
0
A-
0
A-
0
B-
0
A-
0
--A-
0
B-
0
A-
0
B-
0
A-
0
B-
0
A-
0
B-
0
A-
0
A-0A-0A-0
B-0
A-0
火災の危険性の小さい居住区域(6)A-
60
A-
15
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
B-
0
A-
0
B-
0
A-
0
B-
0
A-
0
B-
0
A-
0
B-
0
A-
0
A-0A-
15
A-0
A-0A-
15
A-0
火災の危険性が中程度である居住区域(7)A-
60
A-
30
A-
0
A-
15
A-
0
A-
15
A-
0
A-
0
B-
0
A-
0
B-
0
A-
15
B-
0
A-
30
B-
0
A-
0
B-
0
A-
0
A-
15
A-0
A-
30
A-0
A-0A-
15
A-0
火災の危険性の大きい居住区域(8)A-
60
A-
60
A-
15
A-
60
A-
0
A-
30
A-
0
A-
0
B-
0
A-
15
B-
0
A-
30
B-
0
A-
60
B-
0
A-
0
B-
0
A-
0
A-
30
A-0
A-
30
A-0
A-0A-
30
A-0
衛生区域その他これに類する場所(9)A-
0
A-
0
A-
0
B-
0
A-
0
A-
0
B-
0
A-
0
B-
0
A-
0
B-
0
A-
0
B-
0
A-
0
B-
0
A-
0
A-0A-0A-0A-0
火災の危険性のほとんどない又は全くないタンク、空所及び補機室(10)A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-
0
A-0A-0A-0A-0
火災の危険性が中程度である補機室、貨物区域、特殊分類区域、貨物油その他の油のタンク及びこれらに類する場所(11)A-
60
A-
60
A-
15
A-
60
A-
15
A-
30
A-
0
A-
0
A-
0
A-
15
A-
0
A-
30
A-
0
A-
0
A-
0
A-
01
A-0A-0A-
302
A-
15
機関区域及び主調理室(12)A-
60
A-
60
A-
60
A-
60
A-
0
A-
60
A-
60
A-
60
A-
0
A-
0
A-
30
A-
301
A-0A-
60
貯蔵品室、作業室、配ぜん室等(13)A-
60
A-
30
A-
0
A-
15
A-
0
A-
15
A-
0
A-
0
B-
0
A-
15
A-
0
A-
30
A-
30
A-
30
A-
0
A-
0
B-
0
A-
0
A-0A-0A-0A-
152
A-0
可燃性液体を収納するその他の場所(14)A-
60
A-
60
A-
30
A-
60
A-
30
A-
60
A-
0
A-
30
A-
0
A-
60
A-
15
A-
60
A-
15
A-
0
A-
0
A-
302
A-0
A-
302
A-0
A-0A-
302
A-0


   第二十一規則 脱出設備

(a) 旅客区域、乗組員区域及び乗組員が通常業務に従事する場所(機関区域を除く。)から救命艇及び救命いかだの乗艇甲板までの常設の脱出設備として、階段及びはしごを設ける。

この場合において、特に、次の規定を適用する。

 (i) 隔壁甲板の下方においては、各水密区画室及びこれに類する閉囲された一又は一群の場所からの二の脱出設備を設けるものとし、少なくともその一は、水密戸とは別個のものでなければならない。主管庁は、例外的に、当該場所の性質及び位置並びに通常当該場所に居住し又は当該場所で業務に従事する人員を考慮して、これらの脱出設備の一を省略することを認めることができる。

 (ii) 隔壁甲板の上方においては、各主垂直区域及びこれに類する閉囲された一又は一群の場所からの少なくとも二の脱出設備を設けるものとし、少なくともその一は、垂直方向の脱出経路をなす階段に通ずるものでなければならない。

 (iii) (a)(i)及び(ii)の規定により要求される脱出設備の少なくとも一は、迅速に近づき得る閉囲された階段とし、この階段は、その起点から適当な救命艇及び救命いかだの乗艇甲板又はその階段が通じている最上位置のいずれか高い方の位置まで火災から防護するものでなければならない。主管庁が(a)(i)の規定により省略することを認める場合には、他の一の脱出設備は、主管庁の認める安全な脱出を可能にするものでなければならない。階段の幅、数及び連続具合は、 主管庁の認めるものでなければならない。

 (ⅳ) 階段囲壁から救命艇及び救命いかだの乗艇場所までの通路の保護は、主管庁の認めるものでなければならない。

 (v) 昇降機は、要求される脱出設備の一とみなさない。

 (vi) 一の場所及びその場所内のバルコニーにのみ使用する階段は、要求される脱出設備の一とみなさない。

 (vii) 無線室から暴露甲板に直接通ずる出口がない場合には、その無線室からの二の脱出設備を設ける。

 (viii) 十三メートル(四十三フィート)を超える行き止まりの通路を設けることは、認められない。

(b)(i) 特殊分類区域については、隔壁甲板の下方及び上方に設ける脱出設備の数及び配置は、主管庁の認めるものでなければならず、乗艇甲板への通路の安全性は、原則として、少なくとも(a)(i)から(v)までに定めるものと同等のものでなければならない。

 (ii) 乗組員が通常業務に従事する機関区域からの脱出経路の一は、特殊分類区域に直接通ずるものであつてはならない。

(c) 機関区域の各場所からの二の脱出設備を設ける。この場合において、特に、次の規定を適用する。

 (i) 当該場所が隔壁甲板の下方にある場合には、二の脱出設備は、次のいずれかの物とする。

  (1) 相互にできる限り離して設ける二の鋼製はしごであつて、それぞれが当該場所の上部の同様に離れている二の戸に通じており、かつ、それらの戸から適当な救命艇及び救命いかだの乗艇甲板への通路が設けられているもの。これらのはしごの一は、当該場所の下部から外部の安全な位置まで火災から防護するものでなければならない。

  (2) 一の鋼製はしごであつて、当該場所の上部の戸まで通じており、かつ、その戸から乗艇甲板への通路が設けられているもの、及び一の鋼製戸であって、戸の両側から操作することができ、かつ、乗艇甲板への安全な脱出経路に通ずるもの

 (ii) 当該場所が隔壁甲板の上方にある場合には、二の脱出設備は、相互にできる限り離して設けるものとし、これらの脱出設備から通ずる戸は、適当な救命艇及び救命いかだの乗艇甲板への通路のある位置に取り付ける。脱出経路にはしごが必要である場合には、そのはしごは、鋼製のものでなければならない。

 もつとも、主管庁は、総トン数千トン未満の船舶については、当該場所の上部の幅及び配置に妥当な考慮を払つた上で、脱出設備の一を省略することを認めることができるものとし、また、総トン数千トン以上の船舶については、当該場所の性質及び位置とともに当該場所において人が通常業務に従事するかどうかについて妥当な考慮を払つた上で、戸又は鋼製はしごのいずれかが乗艇甲板への安全な脱出経路となつている場合に限り、当該場所からの脱出設備の一を省略することを認めることができる。

   第二十二規則 居住区域及び業務区域の階段及び昇降機の保護

(a) 階段は、主管庁が他の同等の材料の使用を認める場合を除くほか、鋼製骨組構造のものでなければならず、次の場合を除くほか、「A」級仕切りで形成する囲壁であつてそのすべての開口を有効に閉鎖するための装置を設けるものの内部になければならない。

 (i) 二の甲板間のみを連結する階段は、その境界となる甲板の保全防熱性がこれらの甲板間のいずれか一における適当な隔壁又は戸によつて維持される場合には、(a)の囲壁を必要としない。階段をいずれか一の甲板間において閉囲する 場合には、この階段囲壁は、この章の第二十規則の甲板に関する表に定めるところにより保護をする。

 (ii) 公共室の階段は、その全体が公共室内にある限り、閉囲することなく設けることができる。

(b) 階段囲壁は、通路と直接の連絡があるものでなければならず、また、非常の際に階段を使用することのある人員を考慮して、混雑を防ぐために十分な面積のものにしなければならない。階段囲壁は、実行可能な限り、キャビン、用具収納所又は火災源となるおそれのある可燃性物質のある閉囲された場所に直接通ずるものであつてはならない。

(c) 昇降機トランクは、煙及び炎が一の甲板間から他の甲板間に侵入することを阻止し得るように設け、かつ、通風及び煙を制御し得るように閉鎖装置を取り付ける。

   第二十三規則 「A」級仕切りの開口

(a) 電線、管、トランク、ダクト等を通すため又はガーダ、ビームその他の構造物を設けるために「A」級仕切りに穴を開ける場合には、(g)の規定により、耐火性が損なわれないことを確保するため措置をとる。

(b) 通風用のダクトが主垂直区域隔壁を貫通する必要がある場合には、フェイル・セーフの自動閉鎖型防火ダンパーをこの隔壁の近くに取り付ける。防火ダンパーは、主垂直区域隔壁のいずれの側からも手で閉鎖することができるものでなければならない。この操作位置は、迅速に近づくことができるものでなければならず、光を反射する赤色の標示をする。防火ダンパーと主垂直区域隔壁との間の通風用のダクトは、鋼その他これと同等の材料のものでなければならず、必要なときは、(a)の規定に適合する保全防熱性規準のものでなければならない。防火ダンパーには、少なくとも主垂直区域隔壁の一の側に、防火ダンパーが開けてある状態の場合にそのことを示す可視式表示器を取り付ける。

(c) 貨物区域、特殊分類区域、貯蔵品室及び手荷物室の間のハッチ並びにこれらの場所と暴露甲板との間のハッチを除くほか、すべての開口には、常設閉鎖装置を設けるものとし、この閉鎖装置は、少なくともそれが設けられる仕切りと同等の耐火性のものでなければならない。

(d) 「A」級仕切りにおけるすべての戸及び戸わくの構造並びに戸を閉鎖したときに定着させる装置は、火災並びに煙及び炎の通過の阻止について、実行可能な限り、戸が取り付けられる隔壁と同等のものでなければならない。これらの防火戸及び戸わくは、鋼その他これと同等の材料で造る。水密戸は、防熱を施すことを要しない。

(e) 防火戸は、隔壁のいずれの側からも一人で開閉することができるものでなければならない。

(f) 主垂直区域隔壁及び階段囲壁の防火戸は、動力操作の水密戸及び通常施錠されている防火戸を除くほか、自己閉鎖型のものでなければならず、船舶が防火戸の閉鎖方向の反対側に三・五度傾斜した場合にも閉鎖することができるものでなければならない。防火戸の閉鎖速度は、人に不測の危険を与えることがないように、必要により調整する。これらの防火戸は、通常閉鎖されているものを除くほか、制御場所から同時に又は群別に閉鎖することができるものでなければならず、また、防火戸のある位置でも個々に閉鎖することができるものでなければならない。この閉鎖機構は、また、制御装置が故障した場合に防火戸が自動的に閉鎖するように設計する。もつとも、承認された動力操作の水密戸は、この目的にかなつたものとみなす。制御場所から操作されない開け放し用フックの使用は、認められない。両開き自由の防火戸の使用が認められる場合には、この防火戸の閉鎖機構により自動的に作動する掛け金をこの防火戸に取り付ける。

(g) この章の第十二規則の規定に適合する自動スプリンクラ装置によつて保護されている場所又は連続「B」級天井張りが施されている場所においては、主垂直区域の階段部を形成せず、しかも水平区域の境界とならない甲板の開口は、適当に密に閉鎖するものとし、また、そのような甲板は、主管庁が合理的かつ実行可能と認める限り、「A」級の保全性規準を満たすものでなければならない。

(h) 船舶の外部周壁の「A」級の保全性規準は、窓及び舷窓には、適用しない。 同様に、「A」級の保全性規準は、船楼及び甲板室の外側の戸には、適用しない。

   第二十四規則 「B」級仕切りの開口

(a) 電線、管、トランク、ダクト等を通すため又は通風端部、照明器具その他これらに類する装置を取り付けるために「B」級仕切りに穴を開ける場合には、耐火性が損なわれないことを確保するための措置をとる。

(b) 「B」級仕切りに取り付ける戸及び戸わく並びに戸を閉鎖したときに定着させる装置は、実行可能な限りその「B」級仕切りと同等の耐火性を保持するものでなければならない。 もつとも、通風口をこれらの防火戸の下部に設けることができる。通風口を防火戸の下部又は防火戸の下方に設ける場合には、通風口の合計面積は、〇・〇五平方メートル(七十八平方インチ)を超えてはならない。通風口を防火戸に設ける場合には、不燃性材料で造つた格子をこれに取り付ける。防火戸は、不燃性のものでなければならない。

(c) 船舶の外部周壁の「B」級の保全性規準は、窓及び舷窓には、適用しない。 同様に、「B」級の保全性規準は、船楼及び甲板室の外側の戸には、適用しない。

(d) この章の第十二規則の規定に適合する自動スプリンクラ装置が設けられている場合には、

 (i)主垂直区域の階段部を形成せず、しかも水平区域の境界とならない甲板の開口は、適当に密に閉鎖するものとし、また、そのような甲板は、主管庁か合理的かつ実行可能と認める限り、「B」級の保全性規準を満たすものでなければならない。

 (ii) 「B」級材料の通路隔壁の開口は、この章の第十九規則の規定による保護をする。

   第二十五規則 通風裝置

(a) 通風用送風機は、原則として、主垂直区域の各場所に通ずるダクトがその主垂直区域内に収まるように配置する。

(b) 通風装置が甲板を貫通する場合には、この章の第二十三規則の規定により要求される甲板の保全防熱性に関する措置のほかに、煙及び高温ガスが一の甲板間から他の甲板間に通風装置を通して侵入する可能性を減ずるための措置をとる。垂直ダクトには、この第二十五規則に定める防熱のほかに、必要に応じて、この章の第二十規則の該当する表により要求される防熱を施す。

(c) 通風装置の主吸気口及び主排気口は、通風をする場所の外部から閉鎖することができるものでなければならない。

(d) 通風用のダクトは、貨物区域内のものを除くほか、次のとおり造る。

 (i) 断面積が〇・〇七五平方メートル(百十六平方インチ) 以上のダクト及び二以上の甲板間に使用する垂直ダクトは、鋼その他これと同等の材料で造る。

 (ii) 断面積が〇・〇七五平方メートル(百十六平方インチ) 未満のダクトは、不燃性材料で造る。このダクトが「A」級又は「B」級の仕切りを貫通する場合には、仕切りの保全防熱性を確保するように妥当な考慮を払う。

 (iii) おおむね断面積が〇・〇二平方メートル(三十一平方インチ)以下でかつ長さが二メートル(七十九インチ)以下であるダクトは、次のすべての条件を満たす場合には、不燃性とすることを要しない。

  (1) ダクトが火災の危険性が小さいと主管庁の認める材料で造られていること。

  (2) ダクトが通風装置の末端部にのみ使用されていること。

  (3) ダクトが「A」級又は「B」級の仕切り(連続「B」級天井張りを含む。)の貫通部からダクトの長さに沿つて測り〇・六メートル(二十四インチ)以上離れた位置にあること。

(e) 階段囲壁内を通風する場合には、ダクトは、通風装置の他のダクトとは別個に送風機室から導くものとし、他の場所に使用してはならない。

(f) 機関区域及び貨物区域の通風装置並びに(h)の規定により要求されることのある他の装置を除くほか、機械通風装置には、実行可能な限り相互に離れた二の位置のいずれからもすべての送風機を停止させることができるように配置した制御装置を取り付ける。機関区域に使用される機械通風装置の制御装置も、二の位置から操作し得るように配置するものとし、その一は、その機関区域の外部になければならない。貨物区域の機械通風装置の送風機は、その貨物区域の外部の安全な位置から停止させることができるものでなければならない。

(g) 調理室のレンジからの排気用のダクトは、居住区域又は可燃性物質のある場所を通る場合には、「A」級仕切りで造る。排気用のダクトには、次の物を取り付ける。

 (i) 掃除のために容易に取り外すことのできるグリース止め

 (ii) ダクトの下方末端の防火ダンパー

 (iii) 調理室から操作される排気用送風機の停止装置

 (ⅳ) ダクト内の消火のための固定装置

(h) 機関区域の外部にある制御場所については、火災の際にその制御場所にある機械及び設備を監視することができ、かつ、その機能を有効に持続させることができるように、通風、視界及び排煙の維持を確保するための実行可能な措置をとる。その制御場所には、また、二の独立の給気装置を設けるものとし、その二の給気装置の給気口は、同時に煙を吸引する危険性を最小限度にとどめるように配置する。主管庁が認める場合には、これらの要件は、開放された甲板上にありかつそこへの開口を有する制御場所及びその局部の閉鎖装置が同等に有効である制御場所には、適用することを要しない。

(i) A類機関区域の通風用のダクトは、原則として、居住区域、業務区域及び制御場所を通るものであつてはならない。もつとも、主管庁は、次のいずれかのことを条件として、この要件の緩和を認めることができる。

 (i) ダクトが鋼で造られ、かつ「A−六十」級の防熱が施されること。

 (ii) ダクトが鋼で造られ、かつ、貫通する仕切りの近くに自動閉鎖型防火ダンパーが取り付けられ、また、A類機関区域から自動閉鎖型防火ダンパーを越えて少なくとも五メートル(十六フィート)の位置まで「A-六十」級の防熱が施されること。

(j) 居住区域、業務区域又は制御場所の通風用のダクトは、原則として、A類機関区域を通るものであつてはならない。もつとも、主管庁は、ダクトが鋼で造られ、かつ、貫通する仕切りの近くに自動閉鎖型防火ダンパーが取り付けられることを条件として、この要件の緩和を認めることができる。

   第二十六規則 窓及び舷窓

(a) 居住区域、業務区域及び制御場所内の隔壁の窓及び舷窓は、この章の第二十三規則(h)及び第二十四規則(c)の規定が適用されるものを除くほか、これらが取り付けられる隔壁の保全性を保持するように造る。

(b) この章の第二十規則の表の要件にかかわらず、

 (i) 居住区域、業務区域及び制御場所を風雨からしや断する隔壁の窓及び舷窓は、鋼その他の適当な材料のわくで造る。ガラスは、金属ビード又は山形材で固定する。

 (ii) 救命艇及び救命いかだの開放された又は閉囲された乗艇場所に面する窓の保全防熱性並びにその乗艇場所の下方にある窓であつて火災中破損した場合に救命艇若しくは救命いかだの進水又はこれらへの乗艇を妨げる位置にあるものの保全防熱性については、特別の注意を払う。

   第二十七規則 可燃性材料の制限

(a) 内張り、根太、天井張り及び防熱材は、貨物区域、 郵便室、手荷物室及び業務区域内の冷凍区画室のものを除くほか、不燃性材料のものでなければならない。実用又は装飾の目的でいずれかの場所を区画するために使用する部分隔壁又は部分甲板は、同様に不燃性材料のものでなければならない。

(b) 冷却装置の防熱材とともに使用される防湿用表面材及び接着剤並びに冷却装置の管装置の防熱材は、不燃性であることを要しないが、実行可能な限り最少量にとどめるものとし、これらの材料の露出面は、主管庁の認める炎の広がりを妨げる性質のものでなければならない。

(c) 居住区域及び業務区域の隔壁、内張り及び天井張りには、可燃性の化粧張りを施すことができる。ただし、この化粧張りの厚さは、通路、階段囲壁及び制御場所においては一・五ミリメートル(十七分の一インチ)を超えてはならず、その他の場所においては二・〇ミリメートル(十二分の一インチ)を超えてはならない。

(d) いずれの居住区域又は業務区域においても、可燃性の上張り、繰り形、装飾物及び化粧張りの総容積は、壁及び天井の全表面に張った厚さ二・五ミリメートル(十分の一インチ)の化粧張りに相当する容積を超えてはならない。この章の第十二規則の規定に適合する自動スプリンクラ装置を備える船舶については、 この容積は、「C」級仕切りの組立てに使用される可燃性材料を含むことができる。

(e) 通路及び階段囲壁の露出面並びに居住区域、業務区域及び制御場所における隠れた又は近づくことのできない場所の露出面は、炎の広がりが遅い特性を有するものでなければならない。(注)

   注 機関が決議A一六六(ESIV)において採択した材料の火災危険性の評価に関する指針を参照すること。

(f) 通路及び階段囲壁内の家具は、最少のものにする。

(g) 船舶の内部の露出面に使用する塗料、ワニスその他の仕上剤は、性質上火災の危険が過大であると主管庁が判断するものであつてはならず、また、過度の量の煙その他の有毒性物質を生ずるものであつてはならない。

(h) 居住区域、業務区域及び制御場所の一次甲板床張りは、容易に発火することのない又は温度上昇によつて有毒物質の発生の危険若しくは爆発の危険が生ずることのない承認された材料のものでなければならない。(注)

   注 機関が決議A二一四(VII)において採択した一次甲板床張りの試策の方法に関する改善された暫定指針を参照すること。

(i) くず入れは、不燃性材料で造るものとし、固い側面及び底面を有するものでなければならない。

   第二十八規則 雑項目

 船舶のすべての部分に適用する要件

(a) 「A」級又は「B」級の仕切りを貫通する管は、その仕切りが耐えることを要求される温度を考慮して主管庁が承認する材料のものでなければならない。油用又は可燃性液体用の管は、火災の危険を考慮して主管庁が承認する材料のものでなければならない。熱によつて容易に有効性がなくなる材料は、喫水線に近い船外排水管、衛生排出管その他の排出管であつて火災の際にその材料の損傷によつて浸水の危険を生ずるものに使用してはならない。

居住区域、業務区域、制御場所、通路及び階段に適用する要件

(b)(i) 天井張り、パネル張り又は内張りの裏の空間は、間隔が十四メートル(四十六フィート)を超えない密着した通風止めによつて適当に仕切る。

 (ii) 垂直方向については、(b)(i)の空間(階段、トランク等の内張りの裏の空間を含む。)は、甲板ごとに仕切る。

(c) 天井張り及び隔壁の構造は、火災の発生の危険がないと主管庁が認める場所を除くほか、隠れた又は近づくことのできない場所に生じた煙を火災巡視員が防火の実効性を損なうことなく探知することができるものでなければならない。

   第二十九規則 自動スプリンクラ装置(火災警報及び火災探知の装置を内蔵するもの)又は自動火災警報探知装置

 この部の規定が適用される船舶については、実質的に火災の危険のない場所(空所、衛生区域等)を除くほか、居住区域及び業務区域並びに、主管庁が必要と認める場合には、制御場所に、主垂直区域であるか水平区域であるかを問わず各区域の全域にわたつて次のいずれかの装置を設ける。

 (i) 居住区域、業務区域及び制御場所の保護をするように配置する承認された型式の自動スプリンクラ装置(火災警報及び火災探知の装置を内蔵するもの)であつてこの章の第十二規則の規定に適合するもの

 (ii) (i) に規定する場所における火災の存在を探知し得るように配置する承認された型式の自動火災警報探知装置であつてこの章の第十三規則の規定に適合するもの

   第三十規則 特殊分類区域の保護

 隔壁甲板の上方又は下方の特殊分類区域に適用する規定

(a) 総則

 (i) この第三十規則の規定の根底をなす基本原則は、特殊分類区域においては、通常の主垂直区域への区分が実際的でないので、水平区域及び有効な固定式消火装置により同等の保護を確保しなければならないということである。この考え方に基づき、水平区域には、この第三十規則の規定の適用上、当該区域の高さが十メートル(三十三フィート)を超えないことを条件として、二以上の甲板にわたる特殊分類区域を含めることができる。

 (ii) 主垂直区域の保全性を維持するためこの章の第二十三規則及び第二十五規則に定める要件は、水平区域相互間の境界又は水平区域と他の区域との境界を形成する甲板及び隔壁にも同様に適用する。

(b) 構造上の保護

 (i) 特殊分類区域の境界隔壁には、この章の第二十規則第一表の範疇(11)の場所について要求される防熱を施すものとし、また、水平の境界には、同規則第三表の範疇(11)の場所について要求される防熱を施す。

 (ii) 船橋には、特殊分類区域に通ずるいずれかの防火戸が閉鎖されているときにその閉鎖されていることを示す表示器を取り付ける。

(c) 固定式消火装置(注)

特殊分類区域には、この区域内の甲板及び車両台のすべての部分を保護する手動操作の承認された固定式加圧水噴霧装置を設ける。もつとも、主管庁は、特殊分類区域における流油火災の実物大模擬試験においてこの区域で発生することのある火災を同等以上に有効に制御し得ることが実証された他の固定式消火装置の使用を認めることができる。

注 機関が決議A一二三(V)において採択した特殊分類区域のための固定式消火装置に関する勧告を参照すること。

(d) 巡視及び探知

 (i) 特殊分類区域においては、効果的な巡視制度を維持する。航海期間中継続する火災の見張りによる常時の巡視がの射水が当該区域のすべての部分に達するように配置されたもの

 (ii) 少なくとも三の水噴霧放射器

 (iii) この章の第七規則(d)の規定に適合する一の持運び式あわ放射器。船舶には、特殊分類区域における使用のため少なくとも二の持運び式あわ放射器を備える。

 (ⅳ) 主管庁が十分と認める数の承認された型式の持運び式消火器

(f){(f)は原文ママ} 通風裝置

 (i) 特殊分類区域には、少なくとも毎時十回の換気を行うために十分な能力を有する効果的な機械通風装置を設ける。この区域の機械通風装置は、他の通風装置とは完全に別個のものでなければならず、また、車両がこの区域にある場維持されていない場所には、承認された型式の自動火災探知装置を設ける。

 (ii) 必要に応じて、特殊分類区域の全域にわたつて手動式火災警報器を取り付けるものとし、また、この区域の各出口の近くに一の手動式火災警報器を配置する。

(e){(e)は原文ママ} 消火設備

 各特殊分類区域には、次の物を備える。

 (i) 承認された型式のホース並びに射水及び噴霧両用のノズルを取り付けた複数の消火栓であつて、別個の消火栓からそれぞれ単一のホースによつて放出される少なくとも二条合に常時作動していなければならない。主管庁は、車両が積載されているかどうかを問わず換気回数の増加を要求することができる。

 (ii) 通風は、空気の層状化及び停滞を防ぐものでなければならない。

 (iii) 要求される通風量が減少していることを船橋において示す装置を取り付ける。

隔壁甲板の上方の特殊分類区域にのみ適用する追加規定

(g) 排水口

固定式加圧水噴霧装置の作動によつて甲板にたまる多量の水に起因して復原性が著しく不利な影響を受けることにかんがみ、水が速やかに直接船外に排出されるように排水口を設ける。

(h) 可燃性蒸気の発火に対する予防措置

 (i) 可燃性蒸気の発火源となることのある設備、特に電気設備及び電線は、甲板の上方四百五十ミリメートル(十八インチ)以上の高さの位置に取り付ける。電気設備及び電線をこの高さよりも低い位置に取り付けることが船舶の安全な運航のために必要であると主管庁が認める場合には、その電気設備及び電線は、爆発性のガソリン空気混合気体中における使用について承認された型式のものでなければならない。甲板の上方四百五十ミリメートル(十八インチ)以上の高さの位置に取り付ける電気設備は、火花の漏れを防ぐように閉囲されかつ保護がされたものでなければならない。甲板の上方四百五十ミリメートル(十八インチ)の高さというときは、車両を積載し、このため爆発性蒸気がたまることが予想される甲板についていう。

 (ii) 電気設備及び電線は、排気用のダクト内に取り付ける場合には、爆発性のガソリン空気混合気体中における使用について承認された型式のものでなければならず、排気用のダクトの排気口は、他の発火源となるおそれのある物を考慮して、安全な位置に配置する。

隔壁甲板の下方の特殊分類区域にのみ適用する追加規定

(i) ビルジ排水装置

主管庁は、固定式加圧水噴霧装置の作動によつて甲板又はタンク頂部にたまる多量の水に起因して復原性が著しく不利な影響を受けることにかんがみ、前章第十八規則に定める要件のほかに、ビルジ排水装置を設けることを要求することができる。

(j) 可燃性蒸気の発火に対する予防措置

 (i) 電気設備及び電線は、取り付ける場合には、爆発性のガソリン空気混合気体中における使用に適した型式のものでなければならない。可燃性蒸気の発火源となるおそれのある他の設備は、認められない。

 (ii) 電気設備及び電線は、排気用のダクト内に取り付ける場合には、爆発性のガソリン空気混合気体中における使用について承認された型式のものでなければならず、排気用のダクトの排気口は、他の発火源となるおそれのある物を考慮して、安全な位置に配置する。

   第三十一規則 特殊分類区域以外の貨物区域であつて、自走用の燃料をタンクに有する自動車を積載するためのものの保護

 自走用の燃料をタンクに有する自動車を積載する貨物区域(特殊分類区域以外のもの)は、次の規定に適合するものでなければならない。

(a) 火災探知

承認された火災探知警報装置を設ける。

(b) 消火設備

 (i) この章の第八規則の規定に適合する固定式ガス消火装置を設ける。固定式炭酸ガス消火装置を設ける場合には、利用可能な炭酸ガスの量は、当該貨物区域のうち密閉し得る最大のものの総容積の少なくとも四十五パーセントに相当する量の遊離炭酸ガスを供給するために十分なものでなければならず、また、当該貨物区域内への炭酸ガスの迅速かつ有効な拡散を確保するように措置をとる。これらと同等のものである場合には、他の固定式ガス消火装置又は固定式高膨脹あわ消火装置であつても、設けることができる。

 (ii) 当該貨物区域における使用のため、主管庁が十分と認める数の承認された型式の持運び式消火器を備える。

(c) 通風装置

 (i) 当該貨物区域には、少なくとも毎時十回の換気を行うために十分な能力を有する効果的な機械通風装置を設ける。当該貨物区域の機械通風装置は、他の通風装置とは完全に別個のものでなければならず、また、車両が当該貨物区域にある場合に常時作動していなければならない。

 (ii) 通風は、空気の層状化及び停滞を防ぐものでなければならない。

 (iii) 要求される通風量が減少していることを船橋において示す装置を取り付ける。

(d) 可燃性蒸気の発火に対する予防措置

 (i) 電気設備及び電線は、取り付ける場合には、爆発性のガソリン空気混合気体中における使用に適した型式のものでなければならない。可燃性蒸気の発火源となるおそれのある他の設備は、認められない。

 (ii) 電気設備及び電線は、排気用のダクト内に取り付ける場合には、爆発性のガソリン空気混合気体中における使用について承認された型式のものでなければならず、排気用のダクトの排気口は、他の発火源となるおそれのある物を考慮して、安全な位置に配置する。

   第三十二規則 火災巡視等の維持及び消火設備に関する規定

(a) 火災巡視並びに火災探知、火災警報及び船内通報の装置

 (i) 火災の発生を速やかに探知するため、効果的な巡視制度を維持する。火災巡視員は、船内の配置並びに使用することのある設備の位置及び操作方法を熟知するように訓練されなければならない。

 (ii) 火災巡視員が船橋又は主火災制御室に直ちに警報を発することができるように、居住区域及び業務区域の全域に手動式火災警報器を取り付ける。

 (iii) 巡視制度では近づくことができないと主管庁が認める貨物区域における火災の存在又は徴候及び位置を適当な場所に自動的に表示する承認された火災警報装置又は火災探知装置を設ける。ただし、船舶が短期間の航海に従事している場合において、この要件を適用することが合理的でないと主管庁が認めるときは、この限りでない。

 (ⅳ) 船舶には、航行中であるか停泊中(就航していない場合を除く。)であるかを問わず、乗組員の責任者が最初の火災警報を直ちに受けることができるように、人員を配置し、又は装備を施す。

 (v) 乗組員の招集のため、船橋又は主火災制御室から操作される特別警報装置を設ける。この警報装置は、船舶の一般警報装置の一部とすることができるが、旅客区域に対する警報とは別個に警報を発することができるものでなければならない。

 (vi) 居住区域、業務区域及び制御場所の全域にわたつて有効な船内通報装置又は他の効果的な通信手段を設ける。

(b) 消火ポンプ及び消火主管装置

船舶には、この章の第五規則の規定に適合する消火ポンプ、消火主管装置、消火栓及び消火ホースを次の規定に従つて備える。

 (i) 総トン数四千トン以上の船舶には少なくとも三の独立駆動の消火ポンプを、総トン数四千トン未満の船舶には少なくとも二の独立駆動の消火ポンプを設ける。

 (ii) 総トン数千トン以上の船舶については、海水連結管及び消火ポンプ並びにこれらを作動させるための動力源は、一の区画室における火災によつてすべての消火ポンプが作動不能とならないことを確保するように配置する。

 (iii) 総トン数千トン以上の船舶については、消火ポンプ、消火主管及び消火栓は、この章の第五規(c)に規定する少なくとも一条の効果的な射水を船内のいずれの消火栓からも直ちに使用し得るように配置する。また、要求される消火ポンプの自動起動によつて水の連続放出を確保するように措置をとる。

(c) 消火栓、消火ホース及びノズル

 (i) 船舶には、主管庁が十分と認める数及び直径の消火ホースを備える。この章の第五規則(d)の規定により要求される各消火栓には、少なくとも一の消火ホースを備えるものとし、これらの消火ホースは、消火の目的のため又は消火訓練及び検査の際における消火装置の試験の目的のためにのみ使用する。

 (ii) 居住区域、業務区域及び機関区域においては、消火栓の数及び位置は、すべての水密戸及び主垂直区域隔壁のすべての戸を閉鎖した場合にも、この章の第五規則(d)の規定に適合するものでなければならない。

 (iii) 少なくとも二条の射水が空の状態の貨物区域のいずれの部分にも達し得るように、配置する。

 (ⅳ) 機関区域について要求される消火栓には、この章の第五規則(g)の規定により要求されるノズルのほかに水の油上噴霧に適したノズルを有する消火ホース又はこれらのノズルに代わる射水及び噴霧面用のノズルを有する消火ホースを備える。更に、A類機関区域には、少なくとも二の適当な水噴霧放射器(注)を備える。

   注 水噴霧放射器は、金属製のL型管で、この管は、消火ホースに取り付け得る長さ約二メートル(六フィート)の長箇部分及び固定式水噴霧ノズル(フォグ式のもの)を取り付けた又は水噴霧ノズル(スプレー式のもの)を取り付け得る長さ約二百五十ミリメートル(十インチ)の短簡部分から成る。

 (v) 機関区域以外の場所に要求される消火ホースの数の少なくとも四分の一の数の水の油上噴霧に適したノズル又は射水及び噴霧両用のノズルを備える。

 (vi) 呼吸具の各組に隣接して水噴霧放射器を備える。

 (vii)  A類機関区域において隣接する軸路からの入口が低い位置に設けられている場合には、A類機関区域の外側であつてその入口の近くに、射水及び噴霧両用のノズル付きの消火ホースを有する二の消火栓を設ける。入口が軸路からの入口ではなく他の一又は二以上の場所からの入口である場合には、A類機関区域の外側であつてそれらの入口の一の近くに、射水及び噴霧両用のノズル付きの消火ホースを有する二の消火栓を設ける。軸路又は隣接する区域が脱出経路でない場合には、この設備を必要としない。

(d) 国際陸上施設連結具

 (i) 総トン数千トン以上の船舶には、この章の第五規則(h)の規定に適合する少なくとも一の国際陸上施設連結具を備える。

 (ii) 船舶のいずれの側においても国際陸上施設連結具を使用し得るような設備を設ける。

(e) 居住区域、業務区域及び制御場所の持運び式消火器

居住区域、業務区域及び制御場所には、主管庁が適当かつ十分と認める承認された持運び式消火器を備える。

(f) 貨物区域の固定式消火装置

 (i) 総トン数千トン以上の船舶の貨物区域は、この章の第八規則の規定に適合する固定式ガス消火装置又はこれと同等の保護を与える固定式高膨脹あわ消火装置によつて保護する。

 (ii) 短期間の航海に従事する船舶であつて(f)(i)の規定を適用することが合理的でないと主管庁が認めるもの及び総トン数千トン未満の船舶については、貨物区域の固定式消火装置は、主管庁の認めるものでなければならない。

(g) ボイラー室等における消火設備

油だきボイラー又は燃料油装置を備える場所については、次の措置をとる。

 (i) 次の固定式消火装置のうちいずれか一を設ける。

  (1) この章の第十一規則の規定に適合する固定式加圧水噴霧装置

  (2) この章の第八規則の規定に適合する固定式ガス消火装置

  (3) この章の第九規則の規定に適合する固定式あわ消火装置

  (4) この章の第十規則の規定に適合する固定式高膨脹あわ消火装置

機関室とボイラー室とが完全に隔離されていない場合又は燃料油がボイラー室から機関室に流れ込む余地がある場合には、その機関室とボイラー室とを合わせて一の区画室とみなす。

 (ii) ボイラー室には、この章の第七規則(d)の規定に適合する少なくとも一の持運び式あわ放射器を備える。

 (iii) ボイラー室のたき火場及び燃料油設備の一部がある場所には、あわ又はこれと同等のものを放出する少なくとも二の承認された持運び式消火器を備える。ボイラー室には、容量百三十六リットル(三十ガロン)以上の少なくとも一の承認されたあわ消火器又はこれと同等のものを備える。これらの消火器には、ボイラー室のいずれの部分にも達し得るホースをリールに巻いて備える。

 (ⅳ) たき火場には、主管庁の要求する量の砂、ソーダをしみ込ませたおがくずその他の承認された乾燥物質を入れた容器を備える。これに代えて、承認された持運び式消火器を備えることができる。

(h) 内燃機関のある場所の消火設備

主推進のために使用される内燃機関又は他の目的のために使用される合計出力三百七十三キロワット以上の内燃機関のある場所については、次の措置をとる。

 (i) (g)(i)の規定により要求される固定式消火装置のうち一を設ける。

 (ii) この章の第七規則(d)の規定に適合する少なくとも一の持運び式あわ放射器を備える。

 (iii) 燃料油及び潤滑油の圧力装置並びに伝動装置のすべての部分に並びに他の火災危険箇所に、あわ又はこれと同等のものを放出するために十分な数で容量四十五リットル(十ガロン)以上の承認されたあわ消火器又はこれらと同等のものを備える。更に、十分な数の持運び式あわ消火器又はこれらと同等のものをいずれの点からも十メートル(三十三フィート)以内の徒歩で到達し得る位置に備える。少なくとも、二の持運び式あわ消火器又はこれらと同等のものを備える。

(i) 蒸気タービン又は密閉型蒸気機関のある場所の消火設備

主推進のために使用される蒸気タービン若しくは密閉型蒸気機関又は他の目的のために使用される合計出力三百七十三キロワット以上の蒸気タービン若しくは密閉型蒸気機関のある場所については、次の措置をとる。

 (i) 圧力潤滑装置のすべての部分に及びタービン、機関又は連結している伝動装置の圧力潤滑部分を密閉しているケーシングのすべての部分に並びに他の火災危険箇所に、あわ又はこれと同等のものを放出するために十分な数で容量四 十五リットル(十ガロン)以上のあわ消火器又はこれらと同等のものを備える。もつとも、(g)(i)の規定により設ける固定式消火装置によつてこの(i)(i)と同等以上の保護が与えられる場合には、あわ消火器及びこれらと同等のものは、必要としない。

 (ii) 十分な数の持運び式あわ消火器又はこれらと同等のものをいずれの点からも十メートル(三十三フィート)以内の徒歩で到達し得る位置に備える。少なくとも、二の持運び式あわ消火器又はこれらと同等のものを備える。もつとも、これらの消火器は、(h)(iii)の規定により備えるものに加えて要求されることはない。

(j) 他の機関区域の消火設備

(g)から(i)までに消火設備に関する明文の規定がない機関区域内に火災の危険があると主管庁が認める場合には、その機関区域の内部に又はこれに隣接させて主管庁が十分と認める数の承認された持運び式消火器その他の消火手段を備える。

(k) この部の規定により要求されることのない固定式消火装置

この部の規定により要求されることのない固定式消火装置を設ける場合には、この装置は、主管庁の認めるものでなければならない。

(l) 機関区域の特別要件

 (i) A類機関区域において隣接する軸路からの入口が低い位置に設けられている場合には、水密戸のほかに、軸路のA類機関区域から離れた位置に戸の両側から操作し得る軽い鋼製の防火戸を取り付ける。

 (ii) 自動火災警報探知装置は、主管庁がこの特別の予防措置を適当と認める場合に、自動遠隔制御装置の設置が人員を継続的に配置する代わりとして認められている機関区域に設ける。

(m) 消防員装具及び個人装具

 (i) この章の第十四規則の規定に適合する消防員装具及び同規則(a)(i)から(iii)までに規定する物から成る追加の個人装具を次のとおり備える。

  (1) 少なくとも二組の消防員装具

  (2) 甲板に旅客区域及び業務区域かある場合には、これらの区域の合計長の八十メートル(二百六十二フィート)当たり、及びその端数につき、また、このような甲板が二以上ある場合には、各甲板のこれらの区域の合計長のうち最大の合計長の八十メートル(二百六十二フィート)当たり、及びその端数につき、少なくとも、二組の消防員装具及びこの章の第十四規則(a)(i)から(iii)までに規定する物から成る二組の追加の個人装具

 (ii) この章の第十四規則(b)に規定する自蔵式呼吸具を含む各消防員装具につき、主管庁の承認する量の予備の補充物を備える。

 (iii) 消防員装具及び追加の個人装具は、直ちに使用し得るように広く分散させて備える。いずれの備付け場所においても、少なくとも、二組の消防員装具及び一組の追加の個人装具を使用することができるようにしておく。

   第三十三規則 燃料油、潤滑油その他の可燃性油に関する措置

(a) 燃料油に関する措置

燃料油を使用する船舶については、燃料油の貯蔵、配分及び使用のためとられる措置は、船舶及び乗船者の安全を確保するものでなければならず、少なくとも次の規定に適合するものでなければならない。

 (i) 承認された引火点測定器によつて引火点が摂氏六十度(華氏百四十度)より低いと決定された(密閉容器試験による。)燃料油は、非常用発電機に使用する場合を除くほか、燃料として使用してはならず、非常用発電機に使用する場合にも、引火点が摂氏四十三度(華氏百十度)より低いものであつてはならない。

もつとも、主管庁は、引火点が摂氏四十三度(華氏百十度)以上である燃料油については、主管庁が必要と認める予防措置に従うことを条件として、及びその燃料油が貯蔵され又は使用される場所の温度がその燃料油の引火点より摂氏十度(華氏十八度)低い温度以上にならないようにすることを条件として、一般に使用することを許すことができる。

 (ii) 燃料油装置の部分であつて、毎平方センチメートル一・八キログラム(毎平方インチ二十五ポンド)を超える圧力の熱せられた油を内蔵するものは、実行可能な限り、破損及び漏れを直ちに検出することを妨げるように覆つてはならない。機関区域においては、当該燃料油装置の部分を十分に照明する。

 (iii) 機関区域の通風は、通常の状態において、油性蒸気がたまるのを防ぐのに十分なものでなければならない。

 (ⅳ)(1) 燃料油タンクは、実行可能な限り、船体の一部を形成するものでなければならず、A類機関区域の外部に設ける。二重底タンク以外の燃料油タンクをA類機関区域に隣接して設ける必要がある場合には、その燃料油タンクは、重底タンクと共通の境界を有することが望ましく、 A類機関区域と共通のタンク境界の面積は、最小にとどめる。原則として、自立型の燃料油タンクの使用は避けるものとし、このタンクを使用する場合には、A類機関区域内に設けてはならない。

  (2) 油タンクは、油タンクから流出し又は漏出した油が熱せられた物の表面と接触することによつて危険を生ずるおそれのある位置に設けてはならず、圧力によつてポンプ、こし器又は加熱器から漏出することのある油が熱せられた物の表面と接触するのを防ぐための予防措置をとる。

 (v) 損傷した場合に、二重底の上方に配置されている貯蔵タンク、澄ましタンク又は小出しタンクから油が漏出することがある燃料油管については、これらのタンクが設けられている場所における火災の発生の際に当該場所の外部の安トンネル又は類似の場所の内部に設けられている特別の場合には、タンクに弁を取り付けるほか、火災の際におけるトンネル又は類似の場所の内部に設けられている特別の場合には、タンクに弁を取り付けるほか、火災の際における油の漏出を防止するため、追加の弁をトンネル又は類似の場所の外部の管に取り付けることができる。

 (vi) 燃料油タンク内の油の量を確認する安全かつ十分な装置を取り付ける。適当な閉鎖手段を備える測深管は、その上端が安全な位置まで延びていることを条件として、認めることができる。燃料油タンク内の油の量を確認する他の装 置は、燃料油タンクの頂部より下方を貫通しないことを条件として、及び当該装置の破損又は燃料油タンクへの油の入れ過ぎによつて油が流出することがないことを条件として、認めることができる。

 (vii) いずれの燃料油タンクについても、また、燃料油装置のいずれの部分(注入管を含む。)についても、過度の圧力を防ぐ装置を取り付ける。逃がし弁及び空気管又はあふれ管の放出口は、主管庁が安全と認める場所になければならない。

 (viii) 燃料油管は、鋼その他の承認された材料のものでなければならない。たわみ管は、主管庁が必要と認める箇所に限り使用することを許される。たわみ管及び燃料油管の末端の附属品は、十分な強度を有する承認された耐火性の材料のものでなければならず、主管庁の認めるところにより造る。

(b) 潤滑油に関する措置

圧力潤滑油装置に使用する油の貯蔵、配分及び使用のためとられる措置は、船舶及び乗船者の安全を確保するものでなければならず、A類機関区域及び、実行可能なときは、他の機関区域におけるこれらの措置は、少なくとも(a)(ii)、(a)(ⅳ)(2)及び(a)(v)から(vii)までの規定に適合するものでなければならない。

(c) 他の可燃性油に関する措置

動力伝達装置、制御装置、作動装置及び加熱装置において圧力をかけて使用される他の可燃性油の貯蔵、配分及び使用のためとられる措置は、船舶及び乗船者の安全を確保するものでなければならない。発火要因が存在する場所におけるこれらの措置は、少なくとも(a)(ⅳ)(2)及び(a)(vi)の規定に適合するものでなければならず、強度及び構造に関しては、(a)(viii)の規定に適合するものでなければならない。

   第三十四規則 機関区域の特別措置

(a) この第三十四規則の規定は、A類機関区域及び、主管庁が望ましいと認める場合には、他の機関区域に適用する。

(b)(i) 天窓、戸、通風筒、排気通風のための煙突の開口その他の機関区域の開口の数は、通風の必要性及び船舶の適正かつ安全な運航と両立し得る範囲内で最少とする。

 (ii) 天窓に取り付けるふたは、鋼製のものでなければならない。火災の際に保護された区域から煙を放出し得るように適当な措置をとる。

 (iii) 動力操作の水密戸以外の戸は、動力操作の閉鎖装置により、又は船舶が戸の閉鎖方向の反対側に三・五度傾斜した場合にも閉鎖することができる自己閉鎖戸であつて遠隔操作の閉鎖装置を備えるフェイル・セーフの開放装置を有するものとすることにより、機関区域に火災が発生した場合に確実に閉鎖し得るように措置をとる。

(c) 機関区域のケーシングには、窓を取り付けてはならない。

(d) 次の目的のための制御装置を取り付ける。

 (i) 天窓の開閉、排気通風のために通常使用される煙突の開口の閉鎖及び通風筒ダンパーの閉鎖

 (ii) 煙の放出

 (iii) 動力操作の戸の閉鎖又は動力操作の水密戸以外の戸の閉鎖機構

 (ⅳ) 通風用送風機の停止

 (v) 強制給排気用送風機、燃料油移送ポンプ、燃料油装置のポンプ及び類似の燃料油ポンプの停止

(e) 通風用送風機のために要求される制御装置は、この章の第二十五規則(f)の規定に適合するものでなければならない。要求される固定式消火装置のための制御装置並びに(d)(i)から(iii)まで及び(v)の規定並びにこの章の第三十三規則(a)(v)の規定により要求される制御装置は、一の制御位置又は主管庁の認めるできる限り少ない制御位置にまとめて配置する。この制御位置は、制御の対象となる区域における火災の発生に際してしや断されない場所であつて、開放された甲板から安全に近づくことができる場所になければならない。

  C部 三十六人以下の旅客を運送する旅客船の火災安全措置

   第三十五規則 構造

(a) 船体、船楼、構造隔壁、甲板及び甲板室は、鋼その他これと同等の材料で造る。

(b) この章の第四十規則(b)の規定による防火を行う場合には、船楼は、次のことを条件として、例えばアルミニウム合金で造ることができる。

 (i) 標準火災試験の際における「A」級仕切りの金属心材の温度上昇については、材料の機械的性質に妥当な考慮を払うこと。

 (ii) 船舶の関係部分に使用される可燃性材料の量を適当に減じていると主管庁が認めること。天井張り(甲板下面の内張り)は、不燃性のものでなければならない。

 (iii) 救命用の端艇及びいかだの積付け及び進水並びにこれらへの乗艇のための設備が火災の際に船楼が鋼で造られている場合と同程度に有効であることを確保するため、十分な措置をとること。

 (ⅳ) ボイラー室及び機関室の頂部及びケーシングが十分な防熱を施した鋼構造のものであること並びに、これらの頂部及びケーシングに開口を設ける場合には、火災の拡大を阻止するようにその開口を適当に配置し、かつ、その保護をすること。

   第三十六規則 主垂直区域

(a) 船体、船楼及び甲板室は、主垂直区域に区画する。階段部及び屈折部は、その数を最小限にとどめるものとし、これらが必要な場合には、「A」級仕切りとする。

(b) 隔壁甲板の上方の主垂直区域の境界を形成する隔壁は、実行可能な限り、隔壁甲板直下の水密隔壁と同一線上になければならない。

(c) (b)の隔壁は、甲板から甲板まで及び外板その他の周壁から他の外板その他の周壁まで達するものでなければならない。

(d) 自動車渡船、鉄道車両渡船等の特別の目的のために設計された船舶については、主垂直区域隔壁を設けることが船舶の目的を損なう場合には、火災の制御及び拡大防止のための他の同等の方法を代用し、かつ、これについて特に主管庁の承認を受ける。

   第三十七規則 「A」級仕切りの開口

(a) 電線、管、トランク、ダクト等を通すため又はガーダ、ビームその他の構造物を設けるために「A」級仕切りに穴を開ける場合には、耐火性が損なわれないことを確保するため措置をとる。

(b) 通風用のダクトが主垂直区域隔壁を貫通する必要がある場合には、フェイル・セーフの自動閉鎖型防火ダンパーをこの隔壁の近くに取り付ける。防火ダンパーは、主垂直区域隔壁のいずれの側からも手で閉鎖することができるものでなければならない。この操作位置は、迅速に近づくことができるものでなければならず、光を反射する赤色の標示をする。防火ダンパーと主垂直区域隔壁との間の通風用のダクトは、鋼その他これと同等の材料のものでなければならず、必要なときは、(a)の規定に適合する保全防熱性規準のものでなければならない。防火ダンパーには、少なくとも主垂直区域隔壁の一の側に、防火ダンパーが開けてある状態の場合にそのことを示す可視式表示器を取り付ける。

(c) 貨物区域、貯蔵品室及び手荷物室の間のハッチ並びにこれらの場所と暴露甲板との間のハッチを除くほか、すべての開口には、常設閉鎖装置を設けるものとし、この閉鎖装置は、少なくともそれが設けられる仕切りと同等の耐火性のものでなければならない。

(d) 「A」級仕切りにおけるすべての戸及び戸わくの構造並びに戸を閉鎖したときに定着させる装置は、火災並びに煙及び炎の通過の阻止について、実行可能な限り、戸が取り付けられる隔壁と同等のものでなければならない。水密戸は、防熱を施すことを要しない。

(e) 防火戸は、隔壁のいずれの側からも一人で開けることができるものでなければならない。

(f) 主垂直区域隔壁及び階段囲壁の防火戸は、動力操作の水密戸及び通常施錠されている防火戸を除くほか、自己閉鎖型のものでなければならず、船舶が防火戸の閉鎖方向の反対側に三・五度傾斜した場合にも閉鎖することができるものでなければならない。これらの防火戸は、通常閉鎖されているものを除くほか、制御場所から同時に又は群別に閉鎖することができるものでなければならず、また、防火戸のある位置でも個々に閉鎖することができるものでなければならない。この閉鎖機構は、また、制御装置が故障した場合に防火戸が自動的に閉鎖するように設計する。もつとも、承認された動力操作の水密戸は、この目的にかなつたものとみなす。制御場所から操作されない開け放し用フックの使用は、認められない。両開き自由の防火戸の使用が認められる場合には、この防火戸の閉鎖機構により自動的に作動する掛け金をこの防火戸に取り付ける。

   第三十八規則 「A」級仕切りの保全防熱性

 この部の規定により「A」級仕切りが要求される場合には、主管庁は、防熱の量の決定に当たり、この章のB部の規定に従う。もつとも、防熱の量を同部に定めるものより少なくすることを認めることができる。

   第三十九規則 居住区域の機関区域、貨物区域及び業務区域からの隔離

 居住区域を機関区域、貨物区域及び業務区域から隔離する境界の隔壁及び甲板は、「A」級仕切りで造るものとし、隣接する場所の性質を考慮して主管庁が認める防熱値を有するものでなければならない。

   第四十規則 居住区域及び業務区域の保護

 居住区域及び業務区域は、(a)又は(b)のいずれかの規定に従つて保護する。

(a)(i) 居住区域内の隔壁は、「A」級仕切りであることを要するものを除くほか、不燃性材料の「B」級仕切りで造る。もつとも、この「B」級仕切りは、(a)(iii)の規定により可燃性材料で上張りを施すことができる。

 (ii) 通路隔壁は、甲板から甲板まで達するものでなければならない。「B」級隔壁の戸には、通風用の開口を設けることができるが、その位置は、なるべく下部とする。他の隔壁は、保全防熱性を確保し得るような不燃性の天井張り又は 内張りを施す場合(この場合には、隔壁は、天井張り又は内張りまでとすることができる。)を除くほか、垂直方向には甲板から甲板まで、横方向には外板その他の周壁からの外板その他の周壁まで達するものでなければならない。

 (iii) 内張り、根太、天井張り及び防熱材は、貨物区域、郵便室、手荷物室及び業務区域内の冷凍区画室のものを除くほか、不燃性材料のものでなければならない。いずれの居住区域又は公共室においても、可燃性の上張り、繰り形、装飾物及び化粧張りの総容積は、壁及び天井の全表面に張つた厚さ二・五四ミリメートル(十分の一インチ)の化粧張りに相当する容積を超えてはならない。通路及び階段囲壁の露出面並びに隠れた又は近づくことのできない場所の露出面は、炎の広がりが遅い特性を有するものでなければならない。(注)

   注 機関が決議A一六六(ESIV)において採択した材料の火災危険性の評価に関する指針を参照すること。

(b)(i) 居住区域の通路隔壁は、鋼又は「B」級パネルで造る。

 (ii) 承認された型式の火災探知装置を設けるものとし、この装置が、旅客の使用又は乗組員の使用若しくは業務に充てられる閉囲された場所(実質的に火災の危険がない場所を除く。)における火災の存在を探知して、その存在又は徴候及び位置を職員及び乗組員により最も速やかに確認されるような場所に自動的に表示するように、措置をとる。

   第四十一規則 甲板床張り(注)

  注 機関が決議A二一四(VII)において採択した一次甲板床張りの試験の方法に関する改善された暫定指針を参照すること。

居住区域、制御場所、階段及び通路内の一次甲板床張りは、容易に発火することのない承認された材料のものでなければならない。

   第四十二規則 居住区域及び業務区域の階段及び昇降機の保護

(a) 居住区域及び業務区域の階段及び脱出設備は、鋼その他の適当な材料で造る。

(b) 旅客用及び業務用の昇降機トランク、旅客区域のための採光用及び通風用の垂直トランク等は、「A」級仕切りで造る。戸は、鋼その他これと同等の材料のものでなければならず、閉鎖したときに、少なくとも戸が取り付けられるトランクと同等の耐火性を有するものでなければならない。

   第四十三規則 制御場所及び貯蔵品室の保護

(a) 制御場所は、「A」級の隔壁及び甲板によつて船舶の他の部分から隔離する。

(b) 手荷物室、郵便室、貯蔵品室、塗料庫、燈具庫、調理室その他これらに類する場所の境界の隔壁は、「A」級仕切りとする。引火性が高度の貯蔵品を収納する場所は、火災の際の旅客又は乗組員に対する危険が最も少ない位置になければならない。

   第四十四規則 窓及び舷窓

(a) 居住区域を風雨からしや断する隔壁の窓及び舷窓は、鋼その他の適当な材料のわくで造る。ガラスは、金属ビードで固定する。

(b) 居住区域の隔壁の窓及び舷窓は、これらが取り付けられる隔壁の保全性を保持するように造る。

   第四十五規則 通風裝置

 機関区域の機械通風装置は、機関区域の外部の迅速に近づき得る位置から停止させることができるものでなければならない。

   第四十六規則 構造の細目

(a) 塗料、ワニスその他の調合品であつてニトロセルローズその他の引火性が高度の基剤を用いたものは、船舶のいずれの部分においても使用してはならない。

(b) 「A」級又は「B」級の仕切りを貫通する管は、その仕切りが耐えることを要求される温度を考慮して主管庁が承認する材料のものでなければならない。油用又は可燃性液体用の管は、火災の危険を考慮して主管庁が承認する材料のものでなければならない。熱によつて容易に有効性がなくなる材料は、喫水線に近い船外排水管、衛生排出管その他の排出管であつて火災の際にその材料の損傷によつて浸水の危険を生ずるものに使用してはならない。

(c) 主推進機関、油だきボイラー又は合計出力七百四十六キロワット以上の補助内燃機関がある場所については、次の措置をとる。

 (i) 天窓は、外側から閉鎖することができるものでなければならない。

 (ii) ガラス板を有する天窓には、鋼その他これと同等の材料の外ぶたを恒久的に取り付ける。

 (iii) 主管庁がケーシングに取り付けることを認める窓は、非開閉型のものでなければならず、鋼その他これと同等の材料の外ぶたを恒久的に取り付ける。

  (ⅳ) (c)(i)から(iii)までの窓及び天窓には、網入りガラスを使用する。

   第四十七規則 火災探知装置及び消火設備

(a)  巡視及び探知

 (i) 火災の発生を速やかに探知するため、効果的な巡視制度を維持する。火災巡視員が船橋又は主火災制御室に直ちに警報を発することができるように、旅客及び乗組員の居住に充てる場所の全域に手動式火災警報器を取り付ける。

 (ii) 巡視制度では近づくことができないと主管庁が認める船内の部分における火災の存在又は徴候及び位置を適当な場所に自動的に表示する承認された火災警報装置又は火災探知装置を設ける。ただし、船舶が短期間の航海に従事している場合において、この要件を適用することが合理的でないと主管庁が認めるときは、この限りでない。

 (iii) 船舶には、新船であるか現存船であるかを問わず、また、航行中であるか停泊中(就航していない場合を除く。)であるかを問わず、乗組員の責任者が最初の火災警報を直ちに受けることができるように、人員を配置し、又は装備を施す。

(b) 消火ポンプ及び消火主管装置

船舶には、この章の第五規則の規定に適合する消火ポンプ、消火主管装置、消火栓及び消火ホースを次の規定に従つて備える。

 (i) 総トン数四千トン以上の船舶には少なくとも三の独立駆動の消火ポンプを、総トン数四千トン未満の船舶には少なくとも二の独立駆動の消火ポンプを設ける。

 (ii) 総トン数千トン以上の船舶については、海水連結管及び消火ポンプ並びにこれらを作動させるための動力源は、一の区画室における火災によつてすべての消火ポンプが作動不能とならないことを確保するように配置する。

 (iii) 総トン数千トン未満の船舶については、主管庁の認めるところにより配置をする。

(c) 消火栓、消火ホース及びノズル

 (i) 船舶には、主管庁が十分と認める数の消火ホースを備える。この章の第五規則(d)の規定により要求される各消火栓には、少なくとも一の消火ホースを備えるものとし、これらの消火ホースは、消火の目的のため又は消火訓練及び検査の際における消火装置の試験の目的のためにのみ使用する。

 (ii) 居住区域、業務区域及機関区域においては、消火栓の数及び位置は、すべての水密戸及び主垂直区域隔壁のすべての戸を閉鎖した場合にも、この章の第五規則(d)の規定に適合するものでなければならない。

 (iii) 少なくとも二条の射水が空の状態の貨物区域のいずれの部分にも達し得るように、配置する。

 (ⅳ) 油だきボイラー又は内燃型推進機関を有する船舶の機関区域について要求される消火栓には、この章の第五規則(g)の規定により要求されるノズルを有する消火ホースを備える。

(d) 国際陸上施設連結具

 (i) 総トン数千トン以上の船舶には、この章の第五規則(h)の規定に適合する少なくとも一の国際陸上施設連結具を備える。

 (ii) 船舶のいずれの側においても国際陸上施設連結具を使用し得るような設備を設ける。

(e) 居住区域及び業務区域の持運び式消火器

居住区域及び業務区域には、主管庁が適当かつ十分と認める承認された持運び式消火器を備える。

(f) 貨物区域の固定式消火装置

 (i) 総トン数千トン以上の船舶の貨物区域は、この章の第八規則の規定に適合する固定式ガス消火装置によつて保護する。

 (ii) 短期間の航海に従事する船舶であつて(f)(i)の規定を適用することが合理的でないと主管庁が認めるもの及び総トン数千トン未満の船舶については、貨物区域の固定式消火装置は、主管庁の認めるものでなければならない。

(g) ボイラー室等における消火設備

主又は補助の油だきボイラーを備える場所及燃料油装置又は澄ましタンクを備える場所については、次の措置をとる。

 (i) 次の固定式消火装置のうちいずれか一を設ける。

  (1) この章の第十一規則の規定に適合する固定式加圧水噴霧装置

   (2) この章の第八規則の規定に適合する固定式ガス消火装置

  (3) この章の第九規則の規定に適合する固定式あわ消火装置 (主管庁は、床板の上方の火災を消火するため、加圧水又はあわを吹き付ける固定式又は移動式の消火装置を要求することができる。)

機関室とボイラー室とが完全に隔離されていない場合又は燃料油がボイラー室から機関室のビルジに流れ込む余地がある場合には、その機関室とボイラー室とを合わせて一の区画室とみなす。

 (ii) ボイラー室のたき火場及び燃料油設備の一部がある場所には、あわ又は油火災の消火に適した他の承認された消火剤を放出する少なくとも二の承認された持運び式消火器を備える。ボイラー室には、容量百三十六リットル(三十ガロン)以上の少なくとも一の承認されたあわ消火器又はこれと同等のものを備える。これらの消火器には、ボイラー室及び燃料油設備の一部がある場所のいずれの部分にも達し得るホースをリールに巻いて備える。

 (iii) たき火場には、主管庁の要求する量の砂、ソーダをしみ込ませたおがくずその他の承認された乾燥物質を入れた容器を備える。これに代えて、承認された持運び式消火器を備えることができる。

(h) 内燃機関のある場所の消火設備

主推進のため又は七百四十六キロワット以上の合計出力を要する補助目的のために内燃機関を使用する場合には、次の措置をとる。

 (i) (g)(i)の規定により要求される固定式消火装置のうち一を設ける。

 (ii) 機関室には、容量四十五リットル(十ガロン)以上の一の承認されたあわ消火器又はこれと同等のものを備えるものとし、更に、機関の出力の七百四十六キロワット当たり、及びその端数につき、一の承認された持運び式あわ消火器を備える。この持運び式消火器の合計数は、二以上でなければならず、六を超えることを要しない。

(i) 蒸気タービンのある場所であつて固定式消火装置の要求されない場所の消火設備

主管庁は、水密隔壁によつてボイラー室から隔離されている蒸気タービンのある場所に備える消火設備については、特別の考慮を払う。

(j) 消防員装具及び個人装具

 (i) この章の第十四規則の規定に適合する消防員装具及び同規則(a)(i)から(iii)までに規定する物から成る追加の個人装具を次のとおり備える。

  (1) 少なくとも二組の消防員装具

  (2) 甲板に旅客区域及び業務区域がある場合には、これらの区域の合計長の八十メートル(二百六十二フィート)当たり、及びその端数につき、また、このような甲板が二以上ある場合には、各甲板のこれらの区域の合計長のうち最大の合計長の八十メートル(二百六十二フィート) 当たり、及びその端数につき、少なくとも、二組の消防具装具及びこの章の第十四規則(a)(i)から(iii)までに規定する物から成る二組の追加の個人装具

 (ii) この章の第十四規則(b)に規定する自蔵式呼吸具を含む各消防員装具につき、主管庁の承認する量の予備の補充物を備える。

 (iii) 消防員装具及び追加の個人装具は、直ちに使用し得るように広く分散させて備える。いずれの備付け場所においても、少なくとも、二組の消防員装具及び一組の追加の個人装具を使用することができるようにしておく。

   第四十八規則 脱出設備

(a) 旅客区域、乗組員区域及び乗組員が通常業務に従事する場所(機関区域を除く。)から救命艇の乗艇甲板までの常設の脱出設備として、階段及びはしごを設ける。この場合において、特に、次の規定を適用する。

 (i) 隔壁甲板の下方においては、各水密区画室及びこれに類する閉囲された一又は一群の場所からの二の脱出設備を設けるものとし、少なくともその一は、水密戸とは別個のものでなければならない。主管庁は、当該場所の性質及び位置並びに通常当該場所に居住し又は当該場所で業務に従事する人員を考慮して、これらの脱出設備の一を省略することを認めることができる。

 (ii) 隔壁甲板の上方においては、各主垂直区域及びこれに類する閉囲された一又は一群の場所からの少なくとも二の実用的な脱出設備を設けるものとし、少なくともその一は、垂直方向の脱出経路をなす階段に通ずるものでなければな らない。

 (iii) 脱出設備の少なくとも一は、迅速に近づき得る閉囲された階段とし、この階段は、実行可能な限り、その起点から救命艇の乗艇甲板まで火災から防護するものでなければならない。階段の幅、数及び連続具合は、主管庁の認めるものでなければならない。

(b) 機関区域においては、各機関室、軸路及びボイラー室からの二の脱出設備を設けるものとし、その一は、水密戸とすることができる。機関区域においては、水密戸を利用することができない場合には、これらの二の脱出設備は、相互にできる限り離して設ける二の鋼製はしごであつて、それぞれがケーシングの同様に離れている二の戸に通じており、かつ、それらの戸から乗艇甲板への通路が設けられているものでなければならない。総トン数二千トン未満の船舶については、主管庁は、ケーシングの幅及び配置に妥当な考慮を払つた上で、この要件を省略することを認めることができる。

   第四十九規則 内燃機関に使用される燃料油

 内燃機関は、その燃料が承認された引火点測定器によつて引火点が摂氏四十三度(華氏百十度)以下であると決定された(密閉容器試験による。)場合には、船舶の固定設備としてはならない。

   第五十規則 機関区域の特別措置

(a) 機関区域及び貨物区域に使用する通風用送風機を停止させるための装置並びにこれらの場所に通ずるすべての戸口、通風筒、煙突周囲の環状部その他の開口を閉鎖するための装置を取り付ける。これらの装置は、火災の際にこれらの場所の外部から操作することができるものでなければならない。

(b) 強制給排気用送風機、燃料油移送ポンプ、燃料油装置のポンプ及び類似の燃料油ポンプを駆動する機械には、これらが設けられている場所における火災の発生の際にこれらを停止させることができるように、遠隔制御装置を当該場所の外部に取り付ける。

(c) 二重底の上方に配置される貯蔵タンク、澄ましタンク又は小出しタンクの燃料油吸入管には、これらのタンクが設けられている場所における火災の発生の際に当該場所の外部から閉じることができるコック又は弁を取り付ける。ディープ・タンクが軸路又は管を通すトンネルの内部に設けられている特別の場合には、タンクに弁を取り付けるほか、火災の際における油の流出を防止するため、追加の弁をトンネルの外部の管に取り付けることができる。

  D部 貨物船の火災安全措置(注)

  注 機関が決譲A二一一(VII)に於いて採択した定期的に無人となる貨物船の機関区域の安全措置であつて有人の機関区域に通常必要とされる安全措慣に追加されるものに関する勧告を参照すること。

   第五十一規則 総トン数四千トン以上の貨物船(この章のE部の規定が適用されるタンカーを除く。)に関する一般要件

(a) 船体、船楼、構造隔壁、甲板及び甲板室は、主管庁が火災の危険を考慮した上で他の適当な材料の使用を認める特別の場合を除くほか、鋼で造る。

(b) 居住区域の通路隔壁は、鋼又は「B」級パネルで造る。

(c) 機関区域及び貨物区域の頂部を形成する甲板にある居住区域内においては、甲板床張りは、容易に発火しない型式のものでなければならない。(注)

注 機関が決議A二一四(VII)において採択した一次甲板床張りの試験の方法に関する改善された特定指針を参照すること。

(d) 暴露甲板の下方の内部階段は、鋼その他の適当な材料のものでなければならない。居住区域内の乗組員用昇降機のトランクは、鋼又はこれと同等の材料のものでなければならない。

(e) 調理室、塗料庫、燈具庫、居住区域に隣接する甲板長倉庫及び非常用発電機室の隔壁は、鋼又はこれと同等の材料のものでなければならない。

(f) 塗料、ワニスその他の調合品であつて、ニトロセルローズその他の引火性が高度の基剤を用いたものは、居住区域及び機関区域において使用してはならない。

(g) 油用又は可燃性液体用の管は、火災の危険を考慮して主管庁が承認する材料のものでなければならない。熱によつて容易に有効性がなくなる材料は、喫水線に近い船外排水管、衛生排出管その他の排出管であつて火災の際にその材料の損傷によつて浸水の危険を生ずるものに使用してはならない。

(h) 機関区域の機械通風装置は、機関区域の外部の迅速に近づき得る位置から停止させることができるものでなければならない。

   第五十二規則 消火設備

(a) 適用

この第五十二規則に規定する船舶の総トン数より小さい総トン数の船舶については、同規則の事項に関する措置は、主管庁の認めるところによる。

(b) 消火ポンプ及び消火主管装置

船舶には、この章の第五規則の規定に適合する消火ポンプ、消火主管装置、消火栓及び消火ホースを次の規定に従つて備える。

 (i) 総トン数千トン以上の船舶には、二の独立駆動の消火ポンプを設ける。

 (ii) 総トン数千トン以上の船舶には、いずれか一の区画室における火災によつてすべての消火ポンプが作動不能になるおそれがある場合には、消火のために水を供給する代替装置を設ける。総トン数二千トン以上の船舶については、この代替装置は、独立駆動の固定式非常ポンプとする。この非常ポンプは、主管庁の認める二条の射水を放出することができるものでなければならない。

(c) 消火栓、消火ホース及びノズル

 (i) 総トン数千トン以上の船舶については、備えるべき消火ホース(それぞれ継手及びノズルを完備したもの)の数は、船舶の長さ三十メートル(百フィート)当たり一及び予備として一とし、いかなる場合にも合計五以上とする。この数は、機関室又はボイラー室について要求される消火ホースの数を含まない。主管庁は、常に十分な数の消火ホースが利用可能であること及びこれらに近づくことができることを確保するため、船型及び船舶が従事する運送の性格を考慮して、要求される消火ホースの数を増加させることができる。

 (ii) 居住区域、業務区域及び機関区域においては、消火栓の数及び位置は、この章の第五規則(d)の規定に適合するものでなければならない。

 (iii) 少なくとも二条の射水が空の状態の貨物区域のいずれの部分にも達し得るように、配置する。

 (ⅳ) 油だきボイラー又は内燃型推進機関のある機関区域において要求される消火栓には、この章の第五規則(g)の規定により要求されるノズルを有する消火ホースを備える。

(d) 国際陸上施設連結具

 (i) 総トン数千トン以上の船舶には、この章の第五規則(h)の規定に適合する少なくとも一の国際陸上施設連結具を備える。

 (ii) 船舶のいずれの側においても国際陸上施設連結具を使用し得るような設備を設ける。

(e) 居住区域及び業務区域の持運び式消火器

居住区域及び業務区域には、主管庁が適当かつ十分と認める承認された持運び式消火器を備えるものとし、これらの消火器の数は、総トン数千トン以上の船舶については、いかなる場合にも五以上とする。

(f) 貨物区域の固定式消火装置

 (i) 総トン数二千トン以上の船舶の貨物区域は、この章の第八規則の規定に適合する固定式ガス消火装置によつて保護する。

 (ii) 主管庁は、次の場合には、船倉(タンカーのタンクを除く。)について、(f)(i)の規定の適用を免除することができる。

  (1) 鋼製ハッチ・カバー及び船倉に通ずる通風筒その他の開口に有効な閉鎖装置を設ける場合

  (2) 船舶が、鉱石、石炭、穀類その他類似の貨物を運送するためにのみ造られ、かつ、使用される場合

  (3) 船舶が短期間の航海に従事する場合において、(f)(i)の規定を適用することが合理的でないと主管庁が認めるとき。

 (iii) 船舶は、この第五十二規則の規定に適合するほか、第七章第七規則の規定により旅客船による運送を認められない性質又は量の火薬類を運送する場合には、次の規定に適合するものとする。

  (1) 蒸気は、火薬類を収納する区画室において使用してはならない。(f)(iii)の規定の適用上、「区画室」とは、二の隣接する常設隔壁の間の場所をいい、その下方の船倉及び上方の貨物区域を含む。

  (2) 火薬類を収納する区画室及びこれに隣接する貨物区画室には、煙又は火災の探知装置を設ける。

(g) ボイラー室等における消火設備

総トン数千トン以上の船舶の主又は補助の油だきボイラーを備える場所及び燃料油装置又は澄ましタンクを備える場所については、次の措置をとる。

 (i) 次の固定式消火装置のうちいずれか一を設ける。

  (1) この章の第十一規則の規定に適合する固定式加圧水噴霧装置

  (2) この章の第八規則の規定に適合する固定式ガス消火装

  (3) この章の第九規則の規定に適合する固定式あわ消火装置 (主管庁は、床板の上方の火災を消火するため、加圧水又はあわを吹き付ける固定式又は移動式の消火装置を要求することができる。)

機関室とボイラー室とが完全に隔離されていない場合又は燃料油がボイラー室から機関室のビルジに流れ込む余地がある場合には、その機関室とボイラー室とを合わせて一の区画室とみなす。

 (ii) ボイラー室のたき火場及び燃料油設備の一部がある場所には、あわ又は油火災の消火に適した他の承認された消火剤を放出する少なくとも二の承認された持運び式消火器を備える。更に、各バーナーにつき容量九リットル(二ガロン)の少なくとも一の同様の消火器を備える。もつとも、 この追加の消火器の合計容量は、各ボイラー室について四十五リットル(十ガロン)を超えることを要しない。

 (iii) たき火場には、主管庁の要求する量の砂、ソーダをしみ込ませたおがくずその他の承認された乾燥物質を入れた容器を備える。これに代えて、承認された持運び式消火器を備えることができる。

(h) 内燃機関のある場所の消火設備

総トン数千トン以上の貨物船については、主推進のため又は七百四十六キロワット以上の合計出力を要する補助目的のために内燃機関を使用する場合には、次の措置をとる。

 (i) (g)(i)の規定により要求される固定式消火装置のうち一を設ける。

 (ii) 機関室には、容量四十五リットル(十ガロン)以上の一の承認されたあわ消火器又はこれと同等のものを備えるものとし、更に、機関の出力の七百四十六キロワット当たり、及びその端数につき、一の承認された持運び式あわ消火器を備える。この持運び式消火器の合計数は、二以上でなければならず、六を超えることを要しない。

(i) 蒸気タービンのある場所であつて固定式消火装置の要求されない場所の消火設備

主管庁は、水密隔壁によつてボイラー室から隔離されている蒸気タービンのある場所に備える消火設備については、特別の考慮を払う。

(j) 消防員装具及び個人装具

 (i) 船舶には、新船であるか現存船であるかを問わず、この章の第十四規則の規定に適合する少なくとも二組の消防員装具を備える。更に、主管庁は、大型船については追加の個人装具を、タンカー、工船等の特殊な船舶については追加の消防員装具を、要求することができる。

 (ii) この章の第十四規則(b)に規定する自蔵式呼吸具を含む各消防員装具につき、主管庁の承認する量の予備の補充物を備える。

 (iii) 消防員装具及び追加の個人装具は、迅速に近づき得る場所に直ちに使用することができるように備えるものとし、二組以上の消防員装具又は追加の個人装具がある場合には、広く分散させて備える。

   第五十三規則 脱出設備

(a) 乗組員区域、旅客区域及び乗組員が通常業務に従事する場所(機関区域を除く。) から救命艇の乗艇甲板までの常設の脱出設備として、階段及びはしごを設ける。

(b) 機関区域においては、各機関室、軸路及びボイラー室からの二の脱出設備を設けるものとし、その一は、水密戸とすることができる。機関区域においては、水密戸を利用することができない場合には、これらの二の脱出設備は、相互にできる限り離して設ける二の鋼製はしごであつて、それぞれがケーシングの同様に離れている二の戸に通じており、かつ、それらの戸から乗艇甲板への通路が設けられているものでなければならない。総トン数二千トン未満の船舶については、主管庁は、ケーシングの幅及び配置に妥当な考慮を払つた上で、この要件を省略することを認めることができる。

   第五十四規則 機関区域の特別措置

(a) 機関区域及び貨物区域に使用する通風用送風機を停止させるための装置並びにこれらの場所に通ずるすべての戸口、通風筒、煙突周囲の環状部その他の開口を閉鎖するための装置を取り付ける。これらの装置は、火災の際にこれらの場所の外部から操作することができるものでなければならない。

(b) 強制給排気用送風機、燃料油移送ポンプ、燃料油装置のポンプ及び類似の燃料油ポンプを駆動する機械には、これらが設けられている場所における火災の発生の際にこれらを停止させることができるように、遠隔制御装置を当該場所の外部に取り付ける。

(c) 二重底の上方に配置される貯蔵タンク、澄ましタンク又は小出しタンクの燃料油吸入管には、これらのタンクが設けられている場所における火災の発生の際に当該場所の外部から閉じることができるコック又は弁を取り付ける。ディープ・タンクが軸路又は管を通すトンネルの内部に設けられている特別の場合には、タンクに弁を取り付けるほか、火災の際における油の漏出を防止するため、追加の弁をトンネルの外部の管に取り付けることができる。

  E部 タンカーの火災安全措置

   第五十五規則 適用

(a) この部の規定は、承認された引火点測定器によつて引火点が摂氏六十度(華氏百四十度)以下であると決定された(密閉容器試験による。)原油及び石油生成品であつてレイド蒸気圧が大気圧より低いもの並びにこれらと同様の火災の危険性を有する液体製品を運送する新タンカーに適用する。

(b) この部の規定が適用される船舶は、この章の第五十二規則から第五十四規則までの規定に適合するものとする。もつとも、この章の第五十二規則(f)の規定は、この章の第六十規則の規定に適合するタンカーには、適用することを要しない。

(c) (a)に規定する貨物に追加して当該貨物以外の貨物を運送することにより火災の危険性が増大する場合には、主管庁の認める追加の安全措置が要求される。

(d) 兼用船は、いずれの貨物タンクにも油が積載されておらず、しかもガスが除去されている場合又は個々の船舶について主管庁の認める措置がとられている場合を除くほか、固体貨物を運送してはならない。

   第五十六規則 区域の配置及び隔離

(a) A類機関区域は、貨物タンク及びスロップ・タンクの後方に配置するものとし、コファダム、貨物ポンプ室又は燃料油タンクによつてこれらのタンクから隔離する。この機関区域は、また、これらのコファダム及び貨物ポンプ室の後方に配置しなければならないが、燃料油タンクの後方に配置することを要しない。貨物ポンプ室の下部は、ポンプを設けるため機関区域に突出させることができる。ただし、キールから突出部分の甲板頂部までの高さがおおむね型深さの三分の一に相当する高さを超えないことを条件とする。載貨重量二万五千トン以下の船舶については、この条件に従うことが通行上及び配管を十分にする上で実行不可能であることが証明される場合には、主管庁は、キールから突出部分の甲板頂部までの高さが型深さの二分の一に相当する高さを超えない範囲で前記の高さを超える突出を認めることができる。

(b) 居住区域、主貨物制御場所、制御場所及び業務区域は、貨物タンク、スロップ・タンク及び貨物ポンプ室の後方に並びにA類機関区域から貨物タンク又はスロップ・タンクを隔離するコファダムの後方に配置する。居住区域、業務区域及び制御場所から貨物ポンプ室(ポンプ室入口を含む。)を隔離する隔壁は、「A-六十」級に造る。必要なときは、同等の安全性を有しておりかつ適当な消火設備を設けていると主管庁が認めることを条件として、居住区域、制御場所、A類機関区域以外の機関区域及び業務区域をすべての貨物タンク、スロップ・タンク、貨物ポンプ室及びコファダムの前方に設けることができる。

(c) 操船場所を貨物タンクの上方に設けることが必要な場合には、その操船場所は、操船の目的にのみ使用するものでなければならず、少なくとも二メートルの高さの空間によつて貨物タンク頂部の甲板から隔離する。この操船場所の防火については、また、この章の第五十七規則(a)及び(b)に並びにこの部の該当する他の規則に定める制御場所の防火についての要件を適用する。

(d) 甲板に漏出した油が居住区域及び業務区域に流入することを防ぐための措置をとる。この措置は、船側から船側に達する適当な高さの恒久的な連続コーミングを設けることによつて達成することができる。船尾荷役に伴う措置については、特別の考慮を払う。

(e) 居住区域及び業務区域を閉囲する船楼及び甲板室の外部周壁(張出し甲板を含む。)については、貨物タンクに面する部分及び前面から後方へ三メートルの間の部分に「A-六十」級の防熱を施す。これらの船楼及び甲板室の側壁には、主管庁が必要と認める高さまでこの防熱を施す。

(f) 居住区域及び業務区域のある船楼及び甲板室の貨物タンクに面する外部周壁には、次の規定を適用する。

 (i) 当該外部周壁には、戸を取り付けてはならない。もつとも、主管庁は、居住区域及び業務区域に通じていない場所、例えば、貨物制御場所、食糧庫及び貯蔵品室への戸は、取り付けることを認めることができる。戸が取り付けられている場合には、これらの場所の境界には、「A-六十」級の防熱を施す。当該外部周壁には、機械の移動のためのボルト締め板を取り付けることができる。

 (ii) 当該外部周壁の舷窓は、固定式(非開閉型)のものでなければならない。操舵室の窓は、非固定式(開閉型)のものとすることができる。

 (iii) 主甲板上の船楼又は甲板室の第一層の舷窓には、鋼又はこれと同等の材料の内ぶたを取り付ける。

  この(f)の(i)から(iii)までに定める要件は、船橋への通路の外部局壁を除くほか、可能なときは、船楼及び甲板室の前端から船舶の縦方向に五メートルの間にある外部周壁にも適用する。

   第五十七規則 構造

(a)(i) 船体、船楼、構造隔壁、甲板及び甲板室は、鋼その他これと同等の材料で造る。

 (ii) 貨物ボンブ室(トランクを含む。)とA類機関区域との間の隔壁は、「A」級のものでなければならず、その隔壁には、貨物ポンプ軸グランド及び同様のグランド付貫通物を除くほか、「A-〇」級又はこれと同等の耐火性を有する貫通物より劣るものを取り付けてはならない。

 (iii) 居住区域及び業務区域からA類機関区域及び貨物ポンプ室 (トランクを含む。)を隔離する隔壁及び甲板は、「A-六十」級のものでなければならない。この隔壁及び甲板並びにA類機関区域と貨物ポンプ室との境界となる仕切りには、窓又は舷窓を取り付けるために穴を開けてはならない。

 (ⅳ) (a)(ii)及び(iii)の規定は、承認された恒久的なガス密の照明用囲いを、十分な強度を有すること並びに「A」級の保全性及びガス密性を維持することを条件として、貨物ポンプ室の照明のために取り付けることを妨げるものではない。また、その全体が機関区域内にある制御室に窓を取り付けることを妨げるものではない。

 (v) 制御場所は、「A」級の隔壁及び甲板により、隣接する閉囲された場所から隔離する。制御場所の境界の防熱は、隣接する場所の火災の危険を考慮して主管庁が認めるものでなければならない。

 (vi) A類機関区域のケーシングの戸は、自己閉鎖型のものでなければならず、また、(b)(vii)の関連要件を満たすものでなければならない。

 (vii) A類機関区域内の境界の防熱材の表面は、油及び油蒸気を通すものであつてはならない。

 (viii) 一次甲板床張りは、容易に発火することのない承認された材料のものでなければならない。(注)

   注 機関が決議A二一四(VII)において採択した一次甲板床張りの試験の方法に関する改善された暫定指針を参照すること。

 (ix) 内部階段は、鋼その他の適当な材料のものでなければならない。

 (x) 調理室、塗料庫、燈具庫及び甲板長倉庫の隔壁は、居住区域に接する場合には、鋼又はこれと同等の材料のものでなければならない。

 (xi) 船舶の内部の露出面に使用する塗料、ワニスその他の仕上剤は、性質上火災の危険が過大であると主管庁が判断するものであつてはならず、また、過度の量の煙その他の有毒性物質を生ずるものであつてはならない。

 (xii) 油用又は可燃性液体用の管は、火災の危険を考慮して主管庁が承認する材料のものでなければならない。熱によつて容易に有効性がなくなる材料は、喫水線に近い船外排水管、衛生排出管その他の排出管であつて、火災の際にその 材料の損傷によつて浸水の危険を生ずるものに使用してはならない。

 (xiii) 機関区域の機械通風装置は、機関区域の外部の迅速に近づき得る位置から停止させることができるものでなければならない。

 (xiv) A類機関区域及び貨物ポンプ室の天窓は、窓及び舷窓に関する(a)(iii)の規定に適合するものでなければならず、また、天窓が使用される場所の外側から容易に閉鎖し得るように措置をとる。

(b) 居住区域、業務区域及び制御場所の内部には、次の規定を適用する。

 (i) 通路隔壁 (戸を含む。)は、甲板から甲板まで達する「A」級又は「B」級の仕切りとする。連続「B」級天井張り又は内張りを通路隔壁の両側に施す場合には、通路隔壁は、連続天井張り又は内張りまでとすることができる。通路隔壁に取り付けるキャビン及び公共室の戸には、下半分によろい板を取り付けることができる。

 (ii) 天井張り、パネル張り又は内張りの裏の空間は、間隔が十四メートルを超えない密着した通風止めによつて仕切る。

 (iii) 天井張り、内張り、隔壁及び防熱材(冷凍区画室の防熱材を除く。)は、不燃性材料のものでなければならない。冷却装置の防熱材とともに使用される防湿用表面材及び接着剤並びに冷却装置の管装置の防熱材は、不燃性であることを要しないが、実行可能な限り最少量にとどめるものとし、これらの材料の露出面は、主管庁の認める炎の広がりを妨げる性質のものでなければならない。

 (ⅳ) 骨組み(根太並びに隔壁、内張り、天井張り及び通風止めの継手を含む。)は、不燃性材料のものでなければならない。

 (v) 通路及び階段囲壁の露出面並びに隠れた又は近づくことのできない場所の露出面は、炎の広がりが遅い特性を有するものでなければならない。(注)

   注 機関が決議A一六六(ESIV) において採択した材料の火災危険性の評価に関する指針を参照すること。

 (vi) 隔壁、内張り及び天井張りには、可燃性の化粧張りを施すことができる。ただし、この化粧張りの厚さは、通路、階段囲壁及び制御場所においては一・五ミリメートルを超えてはならず、その他の場所においては、二・〇ミリメートルを超えてはならない。

 (vii) 一の甲板にのみ連絡する階段は、一方の甲板から他方の甲板に火災が急速に拡大することを阻止するため、少なくともいずれか一の甲板において、「A」級又は「B」級の仕切り及び自己閉鎖型の戸によつて保護する。乗組員用昇降機のトランクは、「A」 級仕切りで造る。二以上の甲板に連絡する階段の囲壁及び昇降機のトランクは、「A」級仕切りで造るものとし、各甲板において自己閉鎖型の鋼製の戸によつて保護する。自己閉鎖型の戸には、開け放し用フックを用いてはならない。もつとも、フィール・セーフの遠隔閉鎖装置を取り付けた開け放し装置は、用いることができる。

(c) A類機関区域の通風用のダクトは、原則として、居住区域、業務区域及び制御場所を通るものであってはならない。もつとも、主管庁は、次のいずれかのことを条件として、この要件の緩和を認めることができる。 

 (i) ダクトが鋼で造られ、かつ、「A-六十」 級の防熱が施されること。

 (ii) ダクトが鋼で造られ、かつ、貫通する仕切りの近くに自動閉鎖型防火ダンパーが取り付けられ、また、A類機関区域から自動閉鎖型防火ダンパーを越えて少なくとも五メートルの位置まで「A-六十」級の防熱が施されること。

(d) 居住区域、業務区域又は制御場所の通風用のダクトは、原則として、A類機関区域を通るものであつてはならない。もつとも、主管庁は、ダクトが鋼で造られ、かつ、貫通する仕切りの近くに自動閉鎖型防火ダンパーが取り付けられることを条件として、この要件の緩和を認めることができる。

   第五十八規則 通風

(a) 貨物タンク頂部の甲板の開口であつてそこからガスが発散することがあるものは、発火源を有する閉囲された場所にガスが侵入する可能性並びに発火の危換性がある甲板機械及び甲板設備の近くにガスがたまる可能性を最小にするように配置する。甲板上の排気口の高さ及びガスの排出速度は、いかなる場合にも、甲板室の開口又は発火源からその排気口までの距離と関連させて考慮する。

(b) 通風装置の吸気口及び排気口並びに甲板室及び船楼の境界区域の開口の配置は、(a)の規定に適合するものでなければならない。これらの開口、特に機関区域の開口は、実行可能な限り、船尾に設ける。船尾に荷役設備を有する船舶については、この点に対し妥当な考慮を払う。電気設備その他の発火源については、爆発の危険を避けるように措置をとる。

(c) 貨物ポンプ室には、機械通風装置を設けるものとし、この装置の排気用送風機からの排気は、開放された甲板上の安全な場所に導く。貨物ポンプ室の機械通風装置は、可燃性蒸気がたまる可能性を最小にするために十分な能力を有するものでなければならず、また、貨物ポンプ室の総容積を基礎として、少なくとも毎時二十回の換気を行うことができるものでなければならない。通風用のダクトは、貨物ボンプ室の全域を有効に通風し得るように配置する。機械通風装置は、吸気型のものでなければならない。

   第五十九規則 脱出設備

 主管庁は、この章の第五十三規則(a)の規定を適用するほか、各キャビンからの個人用非常脱出設備の利用について考慮を払う。

   第六十規則 貨物タンクの保護

(a) 載貨重量十万トン以上のタンカー及び載貨重量五万トン以上の兼用船の貨物タンク頂部の甲板区域及び貨物タンクは、この章の第六十一規則及び第六十二規則の規定に適合する固定式甲板あわ装置及び固定式イナート・ガス装置によつて保護する。もつとも、他の固定式装置の組合せがこれらの装置と同等の保護を与えるものである場合には、主管庁は、船舶の配置及び設備を考慮した上で、第一章第五規則の規定によりその使用を認めることができる。

(b) 甲板あわ装置に代わる装置は、同等と認められるためには、次のいずれの条件をも満たすものでなければならない。

 (i) 甲板上の油火災を消火する能力を有するとともに、漏油の発火を防止すること。

  (ii) 破損した貨物タンク内の火災を消火する能力を有すること。

(c) 固定式イナート・ガス装置に代わる装置は、同等と認められるためには、次のいずれの条件をも満たすものでなければならない。

 (i) バラスト航海中の通常業務及び必要なタンク内作業の間、貨物タンク内に爆発性混合物が危険な程度にたまることを防止する能力を有すること。

 (ii) 装置自体が発生させる静電気による発火の危険性を最小にするように設計されること。

(d) 載貨重量十万トン未満のタンカー及び載貨重量五万トン未満の兼用船については、主管庁は、この章の第五十二規則(f)の規定の適用に当たり、貨物タンクの内外にあわを放出し得るあわ装置の使用を認めることができる。この装置の詳細は、主管庁の認めるものでなければならない。

   第六十一規則 固定式甲板あわ装置

 この章の第六十規則(a)にいう固定式甲板あわ装置は、次のとおり設計する。

(a) あわを放出するための装置は、貨物タンク区域の全域及び頂部の甲板が破損している貨物タンク内にあわを放出する能力を有するものでなければならない。

(b) 固定式甲板あわ装置は、容易にかつ迅速に操作することができるものでなければならない。この装置の主制御場所は、貨物タンク区域の外部の適当な場所であつて、居住区域に隣接し、及び保護される区域内の火災の際に迅速に近づくことができかつこの装置を操作することができる場所に設ける。

(c) あわ溶液の供給率は、次のいずれか大きい方の率以上の率とする。

 (i) 貨物甲被面積の一平方メートル当たり毎分〇・六リットル。この場合において、貨物甲板面積は、船舶の最大幅に貨物タンク区域の船舶の縦方向の合計長を乗じたものとする。

 (ii) 最大の水平断面積を有する貨物タンクの水平面積の一平方メートル当たり毎分六リットル

この(c)の(i)又は(ii)に定めるあわ溶液の供給率のいずれか大きい方の率を用いた場合において、少なくとも二十分間のあわの発生を確保するために十分なあわ原液が供給されるものとする。あわの膨張率(発生したあわの容積の供給された水とあわ原液との混合溶液の容積に対する比率)は、原則として十二倍を超えてはならない。固定式甲板あわ装置が本質的に低膨張のあわを発生するものであるが膨脹率が十二倍をわずかに超えるあわを発生する場合には、利用可能なあわ溶液の量は、十二倍の膨張率の固定式甲板あわ装置の場合と同様に計算する。中膨張率のあわ(膨脹率が五十倍から百五十倍までの範囲のもの)を使用する場合には、あわの放出率及びモニターの容量は、主管庁の認めるところによる。

(d) 固定式甲板あわ装置は、モニター及びあわ放射器によつてあわを放出する。各モニターは、要求されるあわの放出率の少なくとも五十パーセントに相当する放出率であわを放出することができるものでなければならない。

(e)(i) モニターの数及び位置は、(a)の規定に適合するものでなければならない。モニターの容量(一分当たりのあわ溶液放出量をリットルで表した数)は、モニターの前方にあつてそのモニターによつて保護される甲板面積(平方メートルで表した数)の少なくとも三倍とする。

 (ii) モニターからその前方の保護区域の最遠端までの距離は、無風状態におけるモニターの放出距離の七十五パーセントに相当する距離以下とする。

(f) モニター及びあわ放射器用ホース連結栓は、船尾楼前端の左右両側又は貨物タンク頂部の甲板に面する居住区域の左右両側に配置する。あわ放射器は、消火作業における行動の自在性を与えるために、及びモニターの放出するあわの及ばない場所の保護をするために備える。

(g) あわ主管及び消火主管には、各モニターの位置のすぐ前方に、これらの主管の損傷部分をしや断するための弁を取り付ける。

(h) 固定式甲板あわ装置が要求される放出率で作動する場合において、消火主管から、同時に、要求される圧力で要求される条数の射水が得られるものとする。

   第六十二規則 問定式イナート・ガス装置

 この章の第六十規則(a)にいう問定式イナート・ガス装置は、貨物タンク内の雰囲気が不活性となるように、すなわち炎が伝わらなくなるように、酸素の少ないガスを必要に応じて貨物タンクに供給することができるものでなければならない。この装置は、次の要件を満たすものでなければならない。

(a) 船舶の通常の操業中新鮮な空気を貨物タンクに注入する必要が生じないものでなければならない。ただし、人が貨物タンク内に入る場会は、この限りでない。

(b) 荷揚げの後、空の貨物タンク内の炭化水素量を減少させるため、イナート・ガスにより貨物タンク内のガスを置換することができるものでなければならない。

(c) 貨物タンクの洗浄は、不活性雰囲気において実施することができるものでなければならない。

(d) 荷揚げの間、(f)に定める供給率でイナート・ガスが得られることを確保するものでなければならない。他の場合には、(g)の規定に適合するために十分なイナート・ガスが継続的に得られるものでなければならない。

(e) イナート・ガスによると同様に、新鮮な空気により貨物タンク内のガスを置換するための適当な手段を講ずる。

(f) 貨物ポンプの最大容量の少なくとも百二十五パーセントに相当する供給率でイナート・ガスを供給することができるものでなければならない。

(g) 通常の作動状態において、貨物タンクにイナート・ガスが注入されている間及び貨物タンクがイナート・ガスで満たされている間、貨物タンク内で正の圧力を維持することができるものでなければならない。

(h) 置換用のガス排出口は、開放された場所の適当な位置に設けるものとし、また、この章の第五十八規則(a)において貨物タンクの通風用の排気口について定める要件と同一の要件を満たすものでなければならない。

(i) イナート・ガスを有効に冷却し、かつ、残留商形物及び硫黄燃焼物を除去するためのスクラバーを設ける。

(j) 少なくとも、二の送風機を設ける。これらの送風機は、全体で、少なくとも(f)に定める供給率でイナート・ガスを供給することができるものでなければならない。

(k) 供給されるイナート・ガスの酸素含有率は、通常、体積で五パーセントを超えてはならない。

(l) 貨物タンクから機関区域及び煙道へ炭化水素のガス又は蒸気が逆流すること並びに貨物タンクが過圧又は真の状態となることを防止するための手段を講ずる。更に、スクラバー又は甲板に有効なウォーター・シールを取り付ける。イナート・ガス支管には、貨物タンクごとに止め弁又はこれと同等の制御装置を取り付ける。固定式イナート・ガス装置は、静電気の発生による発火の危険性を最小にするように設計する。

(m) 送風機の排気側におけるイナート・ガス主管内のガスの圧力及び酸素含有率を、イナート・ガスか供給されている間、継続的に指示し、かつ、恒久的に記録するための装置を取り付ける。その装置は、貨物制御室内に取り付けることが望ましいが、いかなる場合にも、荷役に従事する職員が容易に近づくことができるものでなければならない。貨物タンク内のガスを監視するため、酸素及び炭化水素のガス又は蒸気の測定に適した持運び式器具及び必要なタンク取付け物を取り付ける。

(n) イナート・ガス主管内の温度及び圧力を指示する装置を取り付ける。

(o) 次の事項を表示する警報器を取り付ける。

 (i) イナート・ガス主管内のイナート・ガスの酸素含有率が高いこと。

 (ii) イナート・ガス主管内の圧力が低いこと。

 (iii) 甲板にウォーター・シールがある場合には、これに対する供給圧力が低いこと。

 (ⅳ) イナート・ガス主管内の温度が高いこと。

 (v) スクラバーに対する水の供給圧力が低いこと。

この(o)の(iii)から(v)までの事項については、所定の限界値に達した時に固定式イナート・ガス装置が自動的に停止するように措置をとる。

(p) 固定式イナート・ガス装置を備える船舶の船長は、この装置の操作、安全及び職業上の健康に関する事項についての取扱説明書の提供を受ける。

   第六十規則 貨物ポンプ室

 貨物ポンプ室には、その外部の迅速に近づき得る場所から操作される固定式消火装置を設ける。この装置には、水噴霧又は主管庁の認める他の適当な消火剤を用いる。

   第六十四規則 消火ホースのノズル

 消火ホースのノズルは、停止装置付きの承認された射水及び噴霧両用のものでなければならない。

  F部 現存旅客船の特別火災安全措置

 (この部の規定の適用上、第・・・規則 (一九四八)というときは、千九百四十八年の海上における人命の安全のための国際条約第二章第・・・規則をいい、第・・・規則(一九六〇)というときは、別段の定めがない限り、千九百六十年の海上における人命の安全のための国際条約第二章第・・・規則をいう。)

   第六十五規則 適用

 三十六人を超える旅客を運送する旅客船は、少なくとも次の規定に適合するものとする。

(a) 千九百五十二年十一月十九日前にキールが据え付けられた船舶は、この章の第六十六規則から第八十五規則までの規定に適合するものとする。

(b) 千九百五十二年十一月十九日以後千九百六十五年五月二十六日前にキールが据え付けられた船舶は、千九百四十八年の海上における人命の安全のための国際条約中新船に適用される火災安全措置に関する規定に適合するものとし、また、この章の第六十八規則(b)及び(c)、第七十五規則、第七十七規則(b)、第七十八規則、第八十規則(b)、第八十一規則(b)から(g)まで、第八十四規則並びに第八十五規則の規定に適合するものとする。

(c) 千九百六十五年五月十六日以後この条約の効力発生の日前にキールが据え付けられた船舶は、この章のA部及びB部の規定に適合しない場合には、千九百六十年の海上における人命の安全のための国際条約中新船に適用される火災安全措置に関する規定に適合するものとし、また、この章の第六十八規則(b)及び(c)、第八十規則(b)、第八十一規則(b)から(d)まで並びに第八十五規則の規定に適合するものとする。

   第六十六規則 構造

 構造材料は、鋼その他の第二十七規則(一九四八)の規定に適合する適当な材料とする。もつとも、居住設備のない独立した甲板室及び暴露甲板は、主管庁の認める構造上の防火措置がとられている場合には、木製とすることができる

   第六十七規則 主垂直区域

 船舶は、第二十八規則 (一九四八)の規定により「A」級仕切りで主垂直区域に区画する。この仕切りは、実行可能な限り、第二十六規則(c)(ⅳ)(一九四八)に定めるところにより、隣接する場所の性質を考慮して十分と認められる防熱値のものなければならない。

   第六十八規則 主垂直区域隔壁の開口

(a) 船舶は、第二十九規則 (一九四八)の規定に実質的に適合するものとする。

(b) 防火戸は、不燃性材料による防熱を施してあるかどうかを問わず、鋼又はこれと同等の材料のものでなければならない。

(c) 主垂直区域の仕切りを貫通する通風用のトランク及びダクトであつて〇・〇二平方メートル(三十一平方インチ)以上の断面積を有するものには、次の追加規定を適用する。

 (i) 〇・〇二平方メートル(三十一平方インチ)以上〇・〇七五平方メートル(百十六平方インチ)以下の断面積を有する通風用のトランク及びダクトについては、フェイル・セーフの自動閉鎖型防火ダンパーの取付けをし、又は該当する仕切りの要件を満たす方式で、その仕切りの両側の部分を、その仕切りから少なくとも四百五十七ミリメートル (十八インチ)まで断熱する。

 (ii) 断面積が〇・〇七五平方メートル(百十六平方インチ)を超えるトランク及びダクトには、フェイル・セーフの自動閉鎖型防火ダンパーを取り付ける。

   第六十九規則 居住区域の機関区域、貨物区域及び業務区域からの隔離

 船舶は、第三十一規則(一九四八)の規定に適合するものとする。

   第七十規則 第一方式、第二方式及び第三方式に係る適用

 船舶の居住区域及び業務区域は、(a)から(d)までのいずれかの規定に適合するものでなければならない。

(a) 船舶は、第一方式を採用しているとみなされるためには、不燃性の「B」級隔壁網について、第三十規則(a)(一九四八)の規定に実質的に適合するものとし、また、不燃性材料について、第三十九規則(a)(一九四八)の規定によりこれを最大限に使用する。

(b) 船舶は、第二方式を採用しているとみなされるためには、

 (i) 第四十二規則及び第四十八規則(一九四八)の規定に実質的に適合する自動スプリンクラ装置及び火災警報装置を設ける。

 (ii) あらゆる種類の可燃性材料の使用を合理的かつ実行可能な限り減少させる。

(c) 船舶は、第三方式を採用しているとみなされるためには、第三十規則(b) (一九四八)の規定に実質的に従つて防火隔壁網を甲板から甲板まで設け、かつ、第四十三規則(一九四八)の規定に実質的に従つて自動火災探知装置を設けるものとし、また、第三十九規則(b)及び第四十規則(g)(一九四八)の規定に従つて可燃性及び高度の引火性の材料の使用を制限する。もつとも、火災巡視が二十分を超えない間隔で行われる場合には、第三十九規則(b)及び第四十規則(g)(一九四八)の規定からの逸脱を認められる。

(d) 船舶は、第三方式を採用しているとみなされるためには、

 (i) 居住区域において主垂直区域の平均の長さを約二十メートル(六十五・五フィート)に短縮するために、追加の「A」級仕切りを居住区域内に設ける。

 (ii) 第四十三規則(一九四八)の規定に実質的に従つて、自動火災探知装置を設ける。

 (iii) 居住区域における通路及びキャビンの隔壁のすべての露出面は、炎の広がりを妨げるものでなければならない。

 (ⅳ) 第三十九規則(b) (一九四八)の規定に従つて、可燃性材料の使用を制限する。火災巡視が二十分を超えない間隔で行われる場合には、第三十九規則(b)(一九四八)の規定からの逸脱を認められる。

 (v) 防火隔壁網を形成する追加の不燃性の「B」級仕切りを甲板から甲板まで設けるものとし、公共室を除くほか、いずれの区画室の面積も、原則として三百平方メートル(三千二百平方フィート)を超えないようにする。

   第七十一規則 階段の保護

 階段は、第三十三規則(一九四八)の規定に適合するものでなければならない。もつとも、特別に困難な場合には、主管庁は、階段囲壁について、「A」級の仕切り及び防火戸に代えて不燃性の「B」級の仕切り及び防火戸の使用を認めることができる。主管庁は、また、自動スプリンクラ装置によつて保護されかつ十分に閉囲されることを条件として、例外的に、木製の階段を引き続き使用することを認めることができる。

   第七十二規則 昇降機 (旅客用及び業務用)、採光用及び通風用の垂直トランク等の保護

 船舶は、第三十四規則(一九四八)の規定に適合するものとする。

   第七十三規則 制御場所の保護

 船舶は、第三十五規則 (一九四八)の規定に適合するものとする。もつとも、制御場所の配置又は構造がこれらの規定に完全に適合することを妨げるものである場合(例えば、操舵室が木造である場合)には、主管庁は、その制御場所の保護のため、自立型の不燃性の「B」級仕切りの使用を認めることができる。その制御場所の直下の場所が重大な火災の危険性を有する場合には、これらの場所の境界となる甲板は、「A」級仕切りとしての完全な防熱を施す。

   第七十四規則 貯蔵品室等の保護

 船舶は、第三十六規則 (一九四八)の規定に適合するものとする。

   第七十五規則 窓及び舷窓

 機関室及びボイラー室の天窓は、これらの場所の外部から閉鎖することができるものでなければならない。

   第七十六規則 通風裝置

(a) 機械通風装置(貨物区域及び機関区域の機械通風装置を除く。)には、すべての通風用送風機(貨物区域及び機関区域の通風用送風機を除く。)を停止させるために、四以上の場所に行くことを必要としないように、機関区域の外部の迅速に近づき得る位置に主制御装置を取り付ける。機関区域の機械通風装置には、機関区域の外部から操作し得る主制御装置を取り付ける。

(b) 調理室のレンジからの排気ダクトが居住区域を通る場合には、その排気ダクトに効果的な防熱を施す。

   第七十七規則 雑項目

(a) 船舶は、第四十規則(a)、(b)及び(f)(一九四八)の規定に適合するものとする。もつとも、第四十規則(a)(i) (一九四八)の規定については、十三・七三メートル(四十五フィート)を二十メートル(六十五・五フィート)とすることができる。

(b) 燃料ポンプには、その設置場所における火災の発生の際にこれを停止させることができるように、その設置場所の外部に遠隔制御装置を取り付ける。

   第七十八規則 映写用フィルム

 ニトロセルローズを基剤とするフィルムは、船内の映写装置には使用してはならない。

   第七十九規則 図面

 図面は、第四十四規則(一九四八)の規定により備える。

   第八十規則 消火ポンプ、消火主管装置、消火栓及び消火ホース

(a) 船舶は、第四十五規則(一九四八)の規定に適合するものとする。

(b) 消火主管からの水は、実行可能な限り、圧力の保持により、又は迅速に近づくことができかつ操作することができる位置からの消火ポンプの遠隔制御により、直ちに利用することができるようにしておく。

   第八十一規則 火災探知及び消火の要件

 総則

(a) 船舶は、この第八十一規則の規定に従うことを条件として、第五十規則(a)から(o)まで(一九四八)の規定に適合するものとする。

火災巡視、火災探知装置及び通信装置

(b) この部の規定により要求される火災巡視員は、船内の配置並びにその使用することのある設備の位置及び操作方法を熟知するように訓練されなければならない。

(c) 乗組員の招集のために特別警報装置を設ける。この警報装置は、船舶の一般警報装置の一部とすることができる。

(d) 居住区域、公共室及び業務区域の全域にわたつて有効な船内通報装置又は他の効果的な通信手段を設ける。

 機関区域及びボイラー室

(e) 消火設備の数、型式及び配置は、第六十四規則(g)(ii)、(g)(iii)及び(h)(ii)(一九六〇)の規定に適合するものでなければならない。

 国際陸上施設連結具

(f) 船舶は、第六十四規則(d)(一九六〇)の規定に適合するものとする。

 消防員装具

(g) 船舶は、第六十四規則(j)(一九六〇)の規定に適合するものとする。

   第八十二規則 消火設備の迅速な利用

 船舶は、第六十六規則(一九六〇)の規定に適合するものとする。

   第八十二規則 脱出設備

 船舶は、第五十四規則 (一九四八)の規定に適合するものとする。

   第八十四規則 非常電源

 船舶は、第二十二規則(a)から(c)まで(一九四八)の規定に適合するものとする。もつとも、非常電源の位置は、第二十五規則(a)(一九六〇)の規定にも適合するものでなければならない。

   第八十五規則 招集及び訓練

  乗組員は、千九百六十年の海上における人命の安全のための国際条約第三章第二十六規則に定める火災訓練に際しては、船舶の配置及び設備、自己の義務並びに使用することのある設備を熟知していることを示すことを要求される。船長は、これらの点について乗組員が熟知するように教育する。


  第三章 救命設備等

   第一規則 適用

(a) この章の規定は、別段の明文の規定がある場合を除くほか、国際航海に従事する新船について次のとおり適用する。

   A部 旅客船及び貨物船

   B部 旅客船

   C部 貨物船

(b) 国際航海に従事する現存船であつて、千九百六十年の海上における人命の安全のための国際条約の効力発生の日以後にキールが据え付けられたもの又はこれと同様の建造段階にあつたものについては、同条約に定義する新船に適用される同条約第三章の規定を適用する。

(c) 国際航海に従事する現存船であつて、千九百六十年の海上における人命の安全のための国際条約の効力発生の日前にキールが据え付けられたもの又はこれと同様の建造段階にあつたものが同条約第三章の新船に関する規定に適合していない場合には、主管庁は、合理的かつ実行可能である限り、また、できる限り速やかに、これらの船舶を同条約第三章の規定に実質的に適合させることを確保するためとるべき措置を考慮する。もつとも、この章の第二十七規則(b)(i)ただし書の規定は、この(c)にいう現存船について、次の条件を満たす場合にのみ、適用することができる。

 (i) 当該現存船がこの章の第四規則、第八規則、第十四規則、第十八規則、第十九規則並びに第二十七規則(a)及び(b)の規定に適合していること。

 (ii) この章の第二十七規則(b)の規定により積載される救命いかだがこの章の第十五規則又は第十六規則の規定及び第十七規則の規定に適合するものであること。

 (iii) 次の規定に完全に適合する場合を除くほか、救命いかだを積載することによつて総乗船者数を増加させないこと。

  (1) 第二−一章B部の規定

  (2) 前章第二十一規則(a)(iii)及び(ⅳ)又は第四十八規則(a)(iii)の規定

  (3) この章の第二十九規則(a)、(b)、(e)及び(f)の規定

  A部 総則

 (この部の規定は、旅客船及び貨物船に適用する。)

   第二規則 定義

 この章の規定の適用上、

(a) 「短国際航海」とは、航海中船舶が旅客及び乗組員を安全な状態に保つことができる港又は場所から常に二百海里以内にある国際航海であつて、航海を開始する国における最後の寄港地から最終の到着港までの距離が六百海里を超えないものをいう。

(b) 「救命いかだ」とは、この章の第十五規則又は第十六規則の規定に適合する救命いかだをいう。

(c) 「承認された進水装置」とは、主管庁の承認する装置であつて、収容することを認められた数の人及び艤装品を満載した救命いかだを乗込み場所から進水させる能力を有するものをいう。

(d) 「資格のある救命艇手」とは、この章の第三十二規則の規定に基づいて発給される適任証書を有する乗組員をいう。

(e) 「救命浮器」とは、水中にある一定数の人員を支えるように設計され、かつ、その形状及び性能を保つ構造を有する浮器(救命艇、救命いかだ、救命浮環及び救命胴衣を除く。)をいう。

   第三規則 免除

(a) 主管庁は、保護された航海の性質及び状況によりこの章のすべての規定を適用することが不合理又は不必要であると認める場合には、その程度に応じて、最も近い陸地から二十海里以内を航行する個々の船舶又は船舶の種類について、当該規定の適用を免除することができる。

(b) 主管庁は、巡礼者運送のような特殊な運送において多数の旅客の運送に使用される自国の旅客船については、この章の規定に適合させることが実行不可能であると認める場合には、次の規則に従うことを条件として、当該規定の適用を免除することができる。

 (i) 千九百七十一年の特殊運送旅客船協定に附属する規則

 (ii) 千九百七十三年の特殊運送旅客船についての場所の要件に関する議定書(効力を生じている場合)に附属する規則

   第四規則 救命艇、救命いかだ及び救命浮器の迅速な利用

(a) この章の規定の適用を受ける船舶における救命艇、救命いかだ及び救命浮器の備付けを規律する一般原則は、非常の場合にこれらが迅速に利用されるものでなければならないということである。

(b) 救命艇、救命いかだ及び救命浮器は、迅速に利用することができるためには、次の条件を満たすものでなければならない。

 (i) 船舶が縦傾斜しかつ十五度横傾斜している不利な状態において救命艇、救命いかだ及び救命浮器を安全かつ迅速に水上に降ろすことができること。

 (ii) 救命艇及び救命いかだに迅速にかつ秩序よく乗り込ませることができること。

 (iii) 各救命艇、救命いかだ及び救命浮器の配置が他の端艇、救命いかだ及び救命浮器の操作を妨げないものであること。

(c) 救命設備は、船舶の出港前に及び航海中常に、良好な状態にし、直ちに使用することができるようにしておく。

   第五規則 救命艇の構造

(a) 救命艇は、適正に造るものとし、海上において十分な復原性を有し並びに人及び艤装品を満載した場合に十分なフリーボードを有する形状及び寸法比のものでなければならない。救命艇は、人及び艤装品を満載して海水に洗われる場合に、正の復原力を有するものでなければならない。

(b)(i) 救命艇は、固定舷側及び内部浮体のみを有するものでなければならない。 主管庁は、固定覆いを有する救命艇を承認することができる。ただし、その固定覆いが、救命艇の内外から容易に開けることができるものであり、かつ、救命艇への迅速な乗降又は救命艇の進水及び取扱いを妨げないものであることを条件とする。

 (ii) 発動機付救命艇には、主管庁の認めるところにより、船首からの水の浸入を防ぐ装置を取り付けることができる。

 (iii) 救命艇の長さは、七・三メートル(二十四フィート)以上とする。ただし、この長さの救命艇の積載が船舶の大きさその他の理由によつて不合理又は実行不可能であると主管庁が認める場合は、この限りでない。いかなる船舶においても、救命艇の長さは、四・九メートル(十六フィート) 未満であつてはならない。

(c) 人及び艤装品を満載した場合に重量が二万三百キログラム(二十ロング・トン)を超える救命艇又はこの章の第七規則の規定に従つて計算される収容能力が百五十人を超える救命艇は、承認してはならない。

(d) 六十人を超え百人以下の人員の収容を認められる救命艇は、この章の第九規則の規定に適合する発動機付救命艇又はこの章の第十規則の規定に適合する承認された機械推進装置付きの救命艇とする。百人を超える人員の収容を認められる救命艇は、この章の第九規則の規定に適合する発動機付救命拠とする。

(e) 救命艇は、人及び艤装品を満載したまま水上に安全に降ろすために十分な強さのものでなければならない。救命艇は、二十五パーセントの過荷重を受けた場合に残留たわみを生じないような強さのものでなければならない。

(f) 救命艇は、少なくともその長さの四パーセントに相当する平均高の舷弧を有するものでなければならない。舷弧は、おおむね放物線の形状でなければならない。

(g) 百人以上の人員の収容を認められる救命艇については、浮体の容積は、主管庁の認める容積まで増加させる。

(h) 救命艇は、固有の浮揚性を有するものとするか又は浸水して海水に洗われている場合に艇及び艤装品を浮かすために十分な水密空気箱若しくはこれと同等の油若しくは油製品によつて影響を受けない耐食性浮力材を取り付ける。更に、救命艇の容積の少なくとも十分の一に相当する容積の追加の水密空気箱又はこれと同等の油若しくは油製品によつて影響を受けない耐食性浮力材を取り付ける。主管庁は、油又は油製品によつて影響を受けない耐食性浮力材を水密空気箱に詰めることを認めることができる。

(i) 救命艇のスオート及びサイド・シートは、実行可能な限り低い位置に取り付ける。

(j) 木板製救命艇以外の救命艇についてこの章の第六規則の規定に従つて決定される容積の方形係数は、 〇・六四以上とする。もつとも、人及び艤装品を満載した場合に十分なメタセンタ高さ及びフリーボードを有すると主管庁が認める場合には、方形係数を〇・六四未満とすることができる。

   第六規則 救命艇の容積

(a) 救命艇の容積は、シンプソン法則(スターリング法則)又はこれと同等の精度を得ることができる他の方法によつて決定する。方形船尾を有する救命艇の容積は、その救命艇がとがつた船尾を有するものとして計算する。

(b) 例えば、シンプソン法則によつて計算する救命艇の立方メ ートル(立方フィート)で表した容積は、次の式によつて得られる。

{数式と数式の説明は削除}

(c) その両端から救命艇の長さのそれぞれ四分の一の箇所において測つた舷端の舷弧の高さが救命艇の長さの一パーセントに相当する長さを超える場合には、横断面積A又はCの計算に用いる深さは、救命艇の長さの中央における深さに救命艇の長さの一パーセントに相当する長さを加えたものとする。

(d) 救命艇の長さの中央において深さが幅の四十五パーセントに相当する長さを超える場合には、中央における横断面積Bの計算に用いる深さは、当該幅の四十五パーセントに相当する長さのものとし、また、その両端から救命艇の長さのそれぞれ四分の一の箇所における横断面積A及びCの計算に用いる深さは、当該幅の四十五パーセントに相当する長さに救命艇の長さの一パーセントに相当する長さを加えて求める。ただし、いかなる場合にも、計算に用いる深さは、当該箇所における実際の深さを超えてはならない。

(e) 救命艇の深さが一・二二メートル(四フィート)を超える場合には、シンプソン法則の適用によつて得られる人数は、その数の人が救命胴衣を着用して乗艇した救命艇を浮かべる試験で満足な結果が得られるまでの間、一・一一二メートル(四フィート)と実際の深さとの比率に応じて減少させる。

(f) 主管庁は、非常にやせた船首尾を有する救命艇及び非常に肥えた形状の救命艇について認める人数に関しては、適当な方式により制限を加える。

(g) 主管庁は、救命艇の長さ、幅及び深さの相乗積に〇・六を乗じた容積が前記の方法によつて得られる容積より大きくないことが明らかである場合には、その容積を木板製救命艇の容積として指定することができる。この場合において、救命艇の寸法は、次の方法で測る。

  長さ 外板の外面と船首材との交点から、外板の外面と船尾材との交点まで又は、方形船尾の救命艇の場合には、船尾横板の後面まで測る。

  幅 救命艇の幅が最大である箇所において外板の外面から測る。

  深さ 長さの中央において外板の内面におけるキールから舷端の高さまで測る。ただし、容積の計算に用いる深さは、いかなる場合にも幅の四十五パーセントに相当する長さを超えてはならない。

  いかなる場合にも、船舶所有者は、救命艇の容積を正確な計測により決定することを要求する権利を有する。

(h) 発動機付救命艇又は他の推進装置付きの救命艇の容積は、発動機及びその附属品又は他の推進装置の装置箱の占める容積並びに無線電信設備及び探照燈並びにこれらの附属品の占める容積を、当該救命艇の総容積から控除して求める。

   第七規則 救命艇の収容能力

 救命艇に収容することを認められる人数は、立方メートル(立方フィート)で表した容積を次に定める数で除して得た最大整数に相当する数とする。

  長さ七・三メートル( 二十四フィート)以上の救命艇の場合  〇・二八三(立方フィーとの場合には十)

  長さ四・九メートル(十六フィート)の救命艇の場合  〇・三九六(立方フィートの場合には十四)

  長さ四・九メートル(十六フィート)を超え七・三メートル(二十四フィート)未満の救命艇の場合  〇・三九六と〇・二八三との間(立方フィートの場合には十四と十との間)の数であつて補間法によつて求めるもの

ただし、この人数は、いかなる場合にも、オールの使用又は他の推進装置の操作を妨げることなく着席することができる救命胴衣を着用した成人の数を超えてはならない。

   第八規則 積載すべき発動機付救命艇の数

(a) 旅客船には、この章の第九規則の規定に適合する少なくとも一の発動機付救命艇を各舷に積載する。

もつとも、運送を認められる人数及び乗組員の数の合計が三十人を超えない旅客船については、一の発動機付救命艇のみを要求される。

(b) 総トン数千六百トン以上の貨物船(タンカー、鯨工船として使用される船舶、魚類加工船又はかん詰工船として使用される船舶及び捕鯨、魚類加工又はかん詰加工に従事する者を運送する船舶を除く。)には、この章の第九規則の規定に適合する少なくとも一の発動機付救命艇を積載する。

(c) 総トン数千六百トン以上のタンカー、鯨工船として使用される船舶、魚類加工船又はかん詰工船として使用される船舶及び捕鯨、魚類加工又はかん詰加工に従事する者を運送する船舶には、この章の第九規則の規定に適合する少なくとも一の発動機付救命艇を各舷に積載する。

   第九規則 発動機付救命艇の仕様

(a) 発動機付救命艇は、次の条件を満たすものでなければならない。

 (i) 圧縮点火機関を取り付け、これをいつでも使用することができるようにしておく。いかなる状態においても容易に発進することができるものでなければならない。(a)(iii)に定める速力による二十四時間の連続運転に十分な燃料を備える。

 (ii) 荒天状態における操作を確保するため機関及び附属品を適当に閉囲し、機関のケーシングを耐火性のものにする。後進のための装置を取り付ける。

 (iii) 人及び艤装品を満載した場合の平水における前進速力は、次のとおりとする。

  (1) 旅客船、タンカー、鯨工船として使用される船舶、魚類加工船又はかん詰工船として使用される船舶及び捕鯨、魚類加工又はかん詰加工に従事する者を運送する船舶に積載することをこの章の第八規則の規定により要求される発動機付救命艇については、少なくとも六ノット

  (2) (a)(iii)(1)にいう発動機付救命艇以外の発動機付救命艇については、少なくとも四ノット

(b) 発動機付救命艇の内部浮体の容積は、機関及びその附属品並びに探照燈及び無線電信設備並びにこれらの附属品を支えるために必要な内部浮体の容積が、機関及びその附属品並びに探照燈及び無線電信設備並びにこれらの附属品を取り去つた場合にこの救命艇に収容することができる追加の人員を支えるため一人当たり〇・〇二八三立方メートル (一立方フィート)の割合で必要とされる内部浮体の容積を超えるときは、その超える量を、この章の第五規則の規定により要求される容積に加えたものとする。

   第十規則 発動機付救命艇以外の機械推進装置付救命艇の仕様

 発動機付救命艇以外の機械推進装置付救命艇は、次の条件を満たすものでなければならない。

(a) 機械推進装置は、承認された型式のものでなければならず、また、水上に降ろされたときに救命艇が船側から迅速に離れること及び荒天状態において針路を保つことを可能にするために十分な能力を有するものでなければならない。この装置は、人力で作動させる場合には、使用に慣れない者でも操作することができるものでなければならず、また、救命艇が浸水した場合にも操作することができるものでなければならない。

(b) 機械推進装置には、その作動中舵手がいつでも救命艇を後進させることができる装置を取り付ける。

(c) 発動機付救命艇以外の機械推進装置付救命艇の内部浮体の容積は、機械推進装置の重量を支えるために増加させる。

   第十一規則 救命艇の艤装品

(a) 救命艇の標準艤装品は、次の物から成る。

 (i) 浮き得る一組の単槽式オール、浮き得る二の予備オール、浮き得る一のかじ取りオール、索又は鎖によつて救命艇に取り付けた一組半のトール・ピン又はクラッチ及び一のボート・フック

 (ii) 各栓孔につき索又は鎖によつて救命艇に取り付けた二の栓(適当な自動弁を取り付ける場合には、栓を要しない。)、一のあかくみ及び承認された材料の二のバケツ

 (iii) 救命艇に取り付けた一のかじ及び一のチラー

 (ⅳ) 救命艇の両端に、それぞれ一の手おの

 (v) 十二時間分の油を有する一のランプ及び水密容器に入れた適当な二箱のマッチ

 (vi) めつきした鋼線支索及び帆(オレンジ色のもの)を備える一又は二以上のマスト

 (vii) ピナクルに入れた効果的な一のコンパスであつて夜光のもの又は適当な照明装置を取り付けたもの

 (viii) 救命艇の外周に取り付けた一の救命索

 (ix) 承認された大きさの一のシー・アンカー

 (x) 十分な長さの二のもやい綱。その一は、救命艇の前端に環索及び留め木で取り付け、解き放すことができるようにしておくものとし、他の一は、救命艇の船首材に確実に取り付け、直ちに使用することができるようにしておく。

 (xi) 植物油、魚油又は動物油四・五リットル(一ガロン)を入れた一の容器。この容器は、水面に油を容易に散布し得るように造り、かつ、シー・アンカーに取り付けることができるようにしておく。

 (xii) 救命艇に収容することを認められる各人のための食糧であつて主管庁が決定するもの。この食糧は、水密容器に収納された気密容器に入れておく。

 (xiii) 救命艇に収容することを認められる人員一人当たり三リットル(六ペイント)の清水を入れた水密容器又は一人当たり二リットル(四パイント)の清水を入れた水密容器及び一人当たり一リットル(二パイント)の飲料水を供給し得る承認された海水脱塩装置並びに索付きのさびない一のひしやく及びさびない一の目盛付コップ

 (xⅳ) 高空で明るい赤色光を発する承認された型式の四の落下さん付信号及び明るい赤色光を発する承認された型式の六の手用信号炎

 (xv) オレンジ色の煙を多量に発する承認された型式の二の発煙浮信号 (昼間用)

(xvi)救命艇が転覆した場合に人が救命艇にすがりつくための承認された装置であつてビルジ・キール若しくはキール・レールを形成するもの及びキールの下方を通して舷端から舷端に取り付けたつかみ網又は他の承認された設備

 (xvii) 水密容器に収納した承認された一式の応急医療具

 (xviii) モールス符号の発信に適した一の水密電気燈並びに水密容器に収納した一組の予備電池及び一の予備電球

 (xix) 承認された型式の一の日光信号鏡

 (xx) 索によつて救命艇に取り付けた一のかん切り付きジャック・ナイフ

 (xxi) 浮き得る二の軽い投げ索

 (xxii) 承認された型式の一の手動ポンプ

 (xxiii) 小型艤装品を収納するための適当な一の箱

 (xxⅳ) 一の笛又はこれと同等の一の音響信号器

 (xxv) 一式の釣道具

 (xxvi) 乗艇者を風雨等にさらされることにより生ずる危害から保護し得る極めて見やすい色の承認された一の覆い

 (xxvii) 第五章第十六規則に定める救命信号の一の説明表

(b) 主管庁が(a)(vi)、(xii)、(xix)、(xx)及び(xxv)に掲げる品目を不必要と認める程度の短期間の航海に従事する船舶については、主管庁は、これらの品目を省略することを認めることができる。

(c) (a)の規定にかかわらず、発動機付救命艇又は他の承認された機械推進装置付救命艇には、マスト、帆及び(a)に定める定数の半数を超えるオールを備えることを要しない。もつとも、二のボート・フックは、備えなければならない。

(d) 救命艇には、水中にある人が救命艇によじ登るための適当な装置を取り付ける。

(e) 発動機付救命艇には、あわその他の油火災の消火に適した物質を放出し得る承認された型式の持運び式消火器を備える。

   第十二規則 救命艇の艤装品の定着

 救命艇の艤装品は、防舷に用いるために定着させないボート・フックを除くほか、救命艇内に適当に定着させる。縛付けは、艤装品の定着を確保するような方法で行うものとし、つりかぎの機能及び迅速な乗艇を妨げることがないようにする。救命艇の艤装品は、できる限り小型のかつ軽量なものでなければならず、かさばらない適当な形にまとめる。

   第十三規則 救命用の端艇及びいかだのための持運び式無線裝置

(a) この章の第十四規則及び次章第十三規則の規定に適合する無線電信設備を取り付けた発動機付救命艇を各舷に積載する船舶を除くほか、船舶には、同章第十四規則の規定に適合する救命用の端艇及びいかだのための承認された持運び式無線装置を備える。この装置は、非常の際にいずれかの救命艇に運ぶことができるように海図室その他の適当な場所にまとめて保管する。ただし、救命艇を船舶の中央部及び船尾部に積載している総トン数三千トン以上のタンカーにおいては、 舶の主送信機から最も離れた救命艇の近くの適当な場所に保管する。

(b) 主管庁が救命用の端艇及びいかだのための持運び式無線装置を不必要と認める程度の短期間の航海に従事する船舶については、主管庁は、この装置の備付けを省略することを認めることができる。

   第十四規則 発動機付救命艇の無線電信設備及び探照燈

(a)(i) 短国際航海以外の国際航海に従事する旅客船、鯨工船として使用される船舶、魚類加工船又はかん詰工船として使用される船舶及び捕鯨、魚類加工又はかん詰加工に従事する者を運送する船舶について総乗船者数が百九十九人を超え千五百人未満である場合には、この第十四規則及び次章第十三規則の規定に適合する無線電信設備を、この章の第八規則の規定によりその船舶に積載することを要求される発動機付救命艇の少なくと一に取り付ける。

 (ii) (a)(i)に規定する船舶について総乗船者数が千五百人以上である場合には、(a)(i)にいう無線電信設備を、この章の第八規則の規定によりその船舶に積載することを要求されるすべての発動機付救命艇に取り付ける。

(b) 無線電信設備は、その無線電信設備及び使用者の双方を収容するために十分な大きさのキャビンに取り付ける。

(c) 電池が充電中であるかどうかを問わず、送信機及び受信機の効果的な操作が作動中の機関によつて妨害されることがないように措置をとる。

(d) 無線用電池は、機関始動用電動機又は点火装置への電力の供給に使用してはならない。

(e) 発動機付救命艇の機関には、無線用電池に再充電するため及び他の用途に供するための発電機を取り付ける。

(f) 旅客船についてこの章の第八規則(a)の規定により積載することを要求される各発動機付救命艇並びに鯨工船、魚類加工船又はかん詰工船として使用される船舶及び捕鯨、魚類加工又はかん詰加工に従事する者を運送する船舶について同規則の(c)規定により積載することを要求される各発動機付救命艇には、探照燈を取り付ける。

(g) 探照燈には、少なくとも八十ワットの電球、効果的な反射鏡及び電源を含める。電源は、救命艇から百八十メートル(二百ヤード)離れた幅約十八メートル(六十フィート)の明るい色の物体を合計六時間有効に照明することができ、かつ、少なくとも三時間連続して使用することができるものでなければならない。

   第十五規則 膨脹式救命いかだの要件

(a) 膨脹式救命いかだは、完全に膨脹して天幕を上にして浮いている場合に海上において安定性を有するように造る。

(b) 膨脹式救命いかだは、十八メートル(六十フィート)の高さから水上に投下した場合にいかだ及びその艤装品が損傷しないように造る。膨張式救命いかだは、水面の上方十八メートル(六十フィート)を超える高さに積み付けられる場合には、少なくともそれが積み付けられる位置の高さと同一の高さからの投下試験において満足な結果が得られた型式のものでなければならない。

(c) 膨脹式救命いかだの構造には、いかだが膨張したときに自動的に展張する天幕を含める。この天幕は、乗員を風雨等にさらされることにより生ずる危害から保護することができるものでなければならず、また、これに雨水を集めるための装置を取り付ける。天幕の頂部には、海水電池を電源とする燈を取り付けるものとし、いかだの内部にも、同様の燈を取り付ける。この天幕は、極めて見やすい色のものでなければならない。

(d) 膨脹式救命いかだには、もやい綱を取り付けるものとし、その外周に救命索を確実に取り付ける。救命索は、いかだの内周にも取り付ける。

(e) 膨脹式救命いかだは、上下が逆さに膨展した場合に一人で容易に反転させることができるものでなければならない。

(f) 膨脹式救命いかだには、水中にある人がよじ登るための効果的な装置を各入口に取り付ける。

(g) 膨脹式救命いかだは、海上における激しい摩損に耐え得るように造られた袋その他の容器に格納する。袋その他の容器内にある膨張式救命いかだは、そのままの状態でも浮揚性を有するものでなければならない。

(h) 膨脹式救命いかだの浮力については、偶数の独立した気室(救命いかだに収容することを認められる人員を半数の気室で水面上に支えることができるもの)に区画することにより、又は他の同等に効果的な方法により、いかだが損傷した場合又はその一部が膨脹しない場合にも適度の浮力の余裕を確保するように措置をとる。

(i) 膨脹式救命いかだ、その袋その他の容器及び艤装品の総重量は、百八十キログラム(四百ポンド)を超えてはならない。

(j) 膨脹式救命いかだに収容することを認められる人数は、次の数のいずれか小さい方の数とする。

 (i) 膨脹したときに主気室(支柱及びスオートを含まない。)の立方デシメートル(立方フィート)で表した容積を九十六(立方フィートの場合には三・四)で除して得た最大整数

 (ii) 膨張したときに床(スオートを含む。)の平方センチメートル(平方フィート)で表した面積を三千七百二十(平方フィートの場合には四)で除して得た最大整数

(k) 膨脹式救命いかだの床は、防水性のものでなければならず、また、冷温を十分にしや断するものでなければならない。

(l) 膨張式救命いかだは、乗員に無害な気体で膨脹するものでなければならず、また、索を引くことその他これと同様に簡単かつ効果的な方法によつて自動的に膨脹するものでなければならない。この章の第十七規則の規定により要求される充気ポンプ又はふいごを圧力の維持のために使用することができるように措置をとる。

(m) 膨脹式救命いかだは、承認された材料及び構造のものでなければならず、あらゆる海面状態において水上で三十日間風雨等にさらされることに耐え得るように造る。

(n) (j)の規定に従つて計算される収容能力が六人未満である膨脹式救命いかだは、認められない。(j)の規定に従つて計算される膨脹式救命いかだに収容することを認められる最大の人数は、主管庁が定める。もつとも、いかなる場合にも、二十五人を超えてはならない。

(o) 膨脹式救命いかだは、摂氏六十六度から摂氏零下三十度まで(華氏百五十度から華氏零下二十二度まで)の範囲の温度において使用することができるものでなければならない。

(p)(i) 膨脹式救命いかだは、非常の際に迅速に使用し得るように積み付ける。膨脹式救命いかだは、船舶の沈没の際に積付け場所から離脱して浮かび、膨脹し、かつ、船舶から離れることができるような方法で積み付ける。

 (ii) 縛付け装置を使用する場合には、主管庁の承認する水圧式又は主管庁の承認するこれと同等の方式の自動離脱装置を取り付ける。

 (iii) この章の第三十五規則(c)の規定により要求される膨脹式救命いかだは、確実に縛り付けることができる。

(q) 膨脹式救命いかだには、引くことを容易にするための装置を取り付ける。

   第十六規則 固型救命いかだの要件

(a) 固型救命いかだは、積付け場所から水上に投下した場合にいかだ及びその艤装品が損傷しないように造る。

(b) 固型救命いかだの甲板は、いかだの乗員を保護する部分の内部に設ける。甲板の面積は、いかだに収容することを認められる人員一人当たり少なくとも、〇・三七二〇平方メートル(四平方フィート)とする。甲板の性質は、実行可能な限り浸水を防ぐものでなればならず、また、乗員を水面上に有効に支えるものでなければならない。

(c) 固型救命いかだには、いかだがいずれの面を上にして浮いている場合にも乗員を風雨等にさらされることにより生ずる危害から保護し得る極めて見やすい色の天幕又はこれと同等の装置を取り付ける。

(d) 固型救命いかだの艤装品は、いかだがいずれの面を上にして浮いている場合にも容易に利用し得るように取り付ける。

(e) 旅客船に積載される固型救命いかだ及びその艤装品の総重量は、百八十キログラム(四百ポンド)を超えてはならない。貨物船に積載される固型救命いかだは、いかだを船舶の両舷から進水させることができる場合又はいかだを水上に投下する機械式装置が設けられている場合には、百八十キログラム(四百ポンド)を超えることができる。

(f) 固型救命いかだは、いかたがいずれの面を上にして浮いている場合にも、常に、役立つものでなければならず、また、安定性を有するものでなければならない。

(g) 固型救命いかだは、収容することを認められる人員一人当たり少なくとも九十六立方デシメートル(三・四立方フィート)の空気箱又はこれと同等の浮体を有するものでなければならず、これらは、できる限りいかだの外側の近くに配置する。

(h) 固型救命いかだには、もやい綱を取り付けるものとし、その外周に救命索を確実に取り付ける。救命索は、いかだの内周にも取り付ける。

(i) 固型救命いかだには、水中にある人がよじ登るための効果的な装置を各入口に取り付ける。

(j) 固型救命いかだは、油又は油製品によつて影響を受けないように造る。

(k) 固型救命いかだには、浮き得る電池式燈を索で取り付ける。

(l) 固型救命いかだには、引くことを容易にするための装置を取り付ける。

(m) 固型救命いかだは、船舶の沈没の際に離脱して浮くように積み付ける。

   第十七規則 膨脹式救命いかだ及び固型救命いかだの艤装品

(a) 救命いかだの標準艤装品は、次の物から成る。

 (i) 少なくとも三十メートル(百フィート)の長さの浮き得る索に結び付けられた一の浮輪

 (ii) 十二人以下の人員を収容することを認められる救命いかだには、一のナイフ及び一のあかくみ並びに十三人以上の人員を収容することを認められる救命いかだには、二のナイフ及び二のあかくみ

 (iii) 二のスポンジ

 (ⅳ) 二のシー・アンカー。その一は、恒久的に救命いかだに取り付けるものとし、他の一は、予備とする。

 (v) 二のかい

 (vi) 気室の破損を修理するための一式の修理用具

 (vii) この章の第十六規則の規定に適合する固型救命いかだの場合を除くほか、一の充気ポンプ又はふいご

 (viii) 三のかん切り

 (ix) 水密容器に収納した承認された一式の応急医療具

 (x) さびない一の目盛付コッブ

 (xi) モールス符号の発信に適した一の水密電気燈並びに水密容器に収納した一組の予備電池及び一の予備電球

 (xii) 一の日光信号鏡及び一の信号笛

 (xiii) 高空で明るい赤色光を発する承認された型式の二の落下さん付信号

 (xⅳ) 明るい赤色光を発する承認された型式の六の手用信号炎

 (xv) 一式の釣道具

 (xvi) 救命いかだに収容することを認められる各人のための食糧であつて主管庁が決定するもの

 (xvii) 救命いかだに収容することを認められる人員一人当たり一・五リットル(三パイント)の清水を入れた水密容器。このうち一人当たり〇・五リットル(一パイント)の清水は、同量の飲料水を供給し得る適当な海水脱塩装置をもつて代えることができる。

 (xviii) 救命いかだに収容することを認められる人員一人当たり六錠の船酔い薬

 (xix) 救命いかだ内で生存する方法を示す指導書

 (xx) 第五章第十六規則に定める救命信号の一の説明表

(b) 主管庁が(a)に掲げるすべての品目を備えることが不必要であると認める程度の短期間の短国際航海に従事する旅客船については、主管庁は、その旅客船に積載される救命いかだの数の六分の一以上の数の救命いかだに(a)(i)から(vii)までに掲げる艤装品のすべて並びに(a)(xi)及び(xix)に掲げる艤装品のすべて並びに(a)(xiii)及び(xⅳ)に掲げる艤装品の半数を備え、残りの救命いかだに(a)(i)から(vii)まで及び(xix)に掲げる艤装品を備えることを認めることができる。

   第十八規則 救命いかだの使用についての訓練

 主管庁は、合理的かつ実行可能である限り、救命いかだを積載している船舶の乗組員が救命いかだの進水及び使用の訓練をすることを確保するための措置をとる。

  第十九規則 救命艇及び救命いかだへの乗込み

(a) 救命艇への乗艇のため、次のことを含む適当な措置をとる。

 (i) 水上にある救命艇に乗り込むことができるように一組のダビットにつき一のはしごを備えること。もつとも、旅客船、鯨工船として使用される船舶、魚類加工船又はかん詰工船として使用される船舶及び捕鯨、魚類加工又はかん詰加工に従事する者を運送する船舶については、主管庁は、承認された装置をもつて当該はしごに代えることを、各舷に少なくとも一のはしごを備えることを条件として、認めることができる。

 (ii) 救命艇の進水準備中及び進水中、その救命艇及び進水装置を照明し、かつ、進水が完了するまで、救命艇が進水する水面を照明する装置を取り付けること。

 (iii) 船舶が正に放棄されようとしていることについて旅客及び乗組員に対し警報を発する装置を設けること。

 (ⅳ) 排水が救命艇に入ることを防ぐための措置をとること。

(b) 救命いかだへの乗込みのため、次のことを含む適当な措置をとる。

 (i) 水上にある救命いかだへの乗込みを容易にするために十分な数のはしごを備えること。もつとも、旅客船、鯨工船として使用される船舶、魚類加工船又はかん詰工船として使用される船舶及び捕鯨、魚類加工又はかん詰加工に従事する者を運送する船舶については、主管庁は、承認された装置をもつて当該はしごの一部又は全部に代えることを認めることができる。

 (ii) 救命いかだのための承認された進水装置が設けられている場合には、救命いかだの進水準備中及び進水中、その救命いかだ及び進水装置を照明し、かつ、進水が完了するまで、救命いかだが進水する水面を照明する装置を取り付けること。

 (iii) 救命いかだのための承認された進水装置が設けられていない場合には、救命いかだの積付け場所を照明する装置を取り付けること。

 (ⅳ) 船舶が正に放棄されようとしていることについて旅客及び乗組員に対し警報を発する装置を設けること。

 (v) 所定の進水場所にあるいかだ(承認された進水装置につり下げられた救命いかだを含む。)に排水が入ることを防ぐための措置をとること。

   第二十規則 救命艇、救命いかだ及び救命浮器の標示

(a) 救命艇には、その寸法及び収容することを認められる人数について明確なかつ消えない文字で標示をする。救命艇の属する船舶の船名及び船籍港を船首の両側に書き入れる。

(b) 救命浮器には、救命艇におけると同様の方法で定員の標示をする。

(c) 膨脹式救命いかだ及び膨脹式救命いかだを格納する袋又は容器には、救命艇におけると同様の方法で定員の標示をする。膨脹式救命いかだには、その所有者を確認することができるように、製造番号及び製造者名の標示をする。

(d) 固型救命いかだには、これを積載する船舶の船名及び船籍港並びにこれに収容することを認められる人数について標示をする。

(e) 救命艇、救命いかだ及び救命浮器には、この章に定める方法で得た数を超える人数の標示をしてはならない。

   第二十一規則 救命浮環の仕様

(a) 救命浮環は、次の要件を満たすものでなければならない。

 (i) 固形コルクその他これと同等の材料のものであること。

 (ii) 少なくとも十四・五キログラム(三十二ポンド)の鉄片を淡水中で二十四時間支えることができること。

 (iii) 油又は油製品によつて影響を受けないこと。

 (ⅳ) 極めて見やすい色のものであること。

 (v) 積載する船舶の船名及び船籍港についてブロック字体で標示をすること。

(b) 燈心草、コルクくず又は粒状コルクその他の散粒状物質を詰めた救命浮環及び膨張させることを要する気室によつて浮力を得る救命浮環は、禁止する。

(c) プラスチックその他の合成材料で造られた救命浮環は、海水又は油製品に接した場合においても、また、外洋航海中遭遇する温度又は天候の変化の下においても、その浮揚性及び耐久性を保つことができるものでなければならない。

(d) 救命浮環には、つかみ綱を確実に取り付ける。船舶の各舷の少なくとも一の救命浮環には、長さ二十七・五メートル(十五ひろ)以上の浮き得る救命索を取り付ける。

(e) 旅客船についてはその総数の二分の一以上の数(いかなる場合にも六以上とする。)の救命浮環に、貨物船についてはその総数の二分の一以上の数の救命浮環に、効果的な自己点火燈を備える。

(f) (e)の規定により要求される自己点火燈は、水によつて消えることのないものでなければならない。自己点火燈は、少なくとも四十五分間燃えるものでなければならず、また、上方のすべての方向に二カンデラ以上の光度を有するものでなければならない。自己点火燈は、それが取り付けられる救命浮環の近くに必要な連結用具とともに備える。タンカーに使用される自己点火燈は、承認された電池式のものでなければならない。(注)

   注 一定の大気状態において期待される自己点火燈の視認距離は、次のとおりとする。

大気の透過性気象学的視程(海里)自己点燈の視認距離(海里)
〇・三二・四〇・九六
〇・四三・三一・〇五
〇・五四・三一・一五
〇・六五・八一・二四
〇・七八・四一・三四
〇・八一三・四一・四五
〇・九二八・九一・五七

(g) 救命浮環は、乗船者が迅速に近づくことができるように配置する。(e)の規定により自己点火燈を備える救命浮環のうち少なくとも二は、極めて見やすい色の煙を少なくとも十五分間発する能力を有する効果的な自己発煙信号をも備えるものでなければならず、また、船橋から迅速に取り外すことができるものでなければならない。

(h) 救命浮環は、いつでも速やかに取り外すことができるようにしておくものとし、方法のいかんを問わず恒久的に定着させてはならない。

   第二十規則 救命胴衣

(a) 船舶には、各乗船者につき一の承認された型式の救命胴衣を備える。これらの救命胴衣が小児の使用に適しない場合には、更に、十分な数の小児用救命胴衣を備える。各救命胴衣には、主管庁がこれを承認したことを表す適当な標示をする。

(b) 旅客船には、(a)の規定により要求される救命胴衣のほかに、総乗船者数の五パーセントに相当する数の救命胴衣を備える。これらの救命胴衣は、甲板上の目につきやすい場所に収納しておく。

(c) 承認された救命胴衣は、次の要件を満たすものでなければならない。

 (i) 適正な工作方法及び材料で造ること。

 (ii) 誤つた方法による着用の可能性をできる限り無くすように造ること。ただし、裏返しに着用することができるようにすることについては、この限りでない。

 (iii) 極度の疲労状態又は無意識状態にある者の顔を水中から持ち上げ、その体を垂直より後方に傾けてその顔を水面上に保つことができること。

 (ⅳ) 水中において体をいかなる姿勢からも垂直より後方に傾いた安全な浮遊姿勢にすることができること。

 (v) 油又は油製品による影響を受けないこと。

 (vi) 極めて見やすい色のものであること。

 (vii) 承認された笛をひもで確実に取り付けること。

 (viii) (c)(iii)及び(ⅳ)に定める機能を果たすために必要な救命胴衣の浮力は、淡水中に二十四時間沈めた後に当初の浮力の五パーセントを超えて減少しないこと。

(d) 膨張によつて浮力が得られる救命胴衣は、次のことを条件として、旅客船及びタンカー以外の船舶の乗組員による使用を認めることができる。

 (i) 二の独立した膨脹可能な気室を有すること。

 (ii) 機械及び口のいずれによつても膨脹させることができること。

 (iii) いずれか一方の気室のみを膨張させた場合にも、(c)の要件を満たすこと。

(e) 救命胴衣は、迅速に近づき得る場所に備えるものとし、その位置について明確な標示をする。

   第二十三規則 救命索発射器

(a) 船舶には、承認された型式の救命索発射器を備える。

(b) (a)の救命索発射器は、索をほぼ正確に二百三十メートル(二百五十ヤード)以上運ぶことができるものでなければならず、また、四以上の発射体及び四以上の索を含むものでなければならない。

   第二十四規則 船舶の遭難信号

 船舶には、主管庁の認める昼間用及び夜間用の効果的な遭難信号(高空で明るい赤色光を発する十二以上の落下さん付信号を含む。)の装置を備える。

第二十五規則 非常配置表及び非常措置

(a) 非常の際に受け持つべき特別任務を各乗組員に割り当てる。

(b) 非常配置表には、すべての特別任務を掲げ、特に各乗組員が就くべき部署及び遂行すべき任務を示す。

(c) 旅客船の非常配置表は、主管庁の承認する様式のものでなければならない。

(d) 非常配置表は、船舶の出航前に作成する。その写しは、船内の数箇所に掲示するものとし、特に乗組員室に掲示する。

(e) 非常配置表には、次の事項につき各乗組員に割り当てる任務を掲げる。

 (i) 水密戸及び弁の閉鎖並びに排水管、灰捨て筒及び防火戸の閉鎖装置の閉鎖

 (ii) 救命艇の艤装(救命用の端艇及びいかだのための持運び式無線装置の積載を含む。)及び他の救命設備の艤装

 (iii) 救命艇の進水

 (ⅳ) 他の救命設備の一般的な準備

 (v) 旅客の招集

 (vi) 船舶の火災制御図を考慮して行う消火活動

 (f) 非常配置表には、非常の際に旅客に関して事務部員に割り当てる各種の任務を掲げる。この任務には、次の事項を含める。

 (i) 旅客に対する警報

 (ii) 旅客が適当に着衣したこと及び救命胴衣を正しく着用したことの確認

 (iii) 招集場所における旅客の整理

 (ⅳ) 通路及び階段における秩序の維持並びに旅客の行動の統制

 (v) 毛布が救命艇に持ち込まれることの確保

(g) (e)(vi)の消火活動に関して非常配置表に掲げる任務には、次の事項を含める。

 (i) 消火活動に従事する消火班の編成

 (ii) 消火のための器具及び装置の操作に関して割り当てる特別任務

(h) 非常配置表には、乗組員を端艇、救命いかだ及び消火部署に招集するための明確な信号を指定し、かつ、これらの信号の完全な詳細を明示する。これらの信号は、汽笛又はサイレンによつて行うものとし、また、短国際航海に従事する旅客船及び長さ四十五・七メートル(百五十フィート)未満の貨物船の場合を除くほか、電気式の他の信号によつてその補足をする。これらの信号は、船橋から操作することができるものでなければならない。

   第二十六規則 招集及び訓練

(a)(i) 旅客船においては、実行可能なときは、端艇訓練及び消火訓練のための乗組員の招集を一週間ごとに行うものとし、また、短国際航海以外の国際航海において最後の出航港を出港するに際し、この招集を行う。

 (ii) 貨物船においては、端艇訓練及び消火訓練のための乗組員の招集を一箇月を超えない間隔で行う。いずれかの港において総乗組員数の二十五パーセントに相当する数を超える数の乗組員が交代した場合には、端艇訓練及び消火訓練 のための乗組員の招集は、当該港を出港した後二十四時間以内に行う。

 (iii) 貨物船において招集を一箇月ごとに行う場合には、端艇の艤装品が完全であることを確保するため点検を行う。

 (ⅳ) 招集を行つた日及び船上で行つた消火訓練の詳細は、主管庁の定める航海日誌に記録する。いずれかの週(旅客船の場合)又はいずれかの月(貨物船の場合)に招集の全部又は一部が行われなかつた場合には、その事情及び行つた招集の程度について記録する。貨物船における端艇の艤装品の点検報告は、航海日誌に記録するものとし、救命艇を(c)の規定により振り出し及び降ろした場合には、その旨を記録する。

(b) 旅客船においては、短国際航海に従事する旅客船の場合を除くほか、旅客の招集を出港後二十四時間以内に行う。

(c) 順を追つて行われる端艇訓練においては、異なる組の救命艇を順番に使用するものとし、各救命艇は、少なくとも四箇月ごとに、振り出し、合理的かつ実行可能である場合には、降ろす。招集及び検査においては、乗組員がその遂行すべき任務を十分に理解しかつ習熟するようにするものとし、救命いかだを積載する場合には、その取扱い及び操作に関する指導をも行う。

(d) 旅客を招集場所に集めるための非常信号は、汽笛又はサイレンの連続する短音七回以上及びこれに続く長音一回から成るものとする。この信号は、旅客船においては、短国際航海に従事する旅客船の場合を除くほか、船内の全域にわたり、船橋から操作し得る電気式の他の信号によつてその補足をする。非常の際に旅客がとるべき行動についての明確な指示とともに、旅客に関係のある信号の意味は、キャビン及び他の旅客室の目につきやすい場所に掲げる掲示札に適当な言語で明記する。

  B部 旅客船

   第二十七規則 救命艇、救命いかだ及び救命浮器

(a) 旅客船には、非常の際に用いるため、ダビットに取り付けた二の端艇(各舷に一とする。)を積載する。これらの端艇は、承認された型式のものでなければならず、また、長さ八・五メートル(二十八フィート)以下のものでなければならない。これらの端艇は、この章の救命艇に関する規定に完全に適合する場合には、(b)及び(c)の規定の適用上救命艇と認めることができるものとし、更に、この章の第九規則及び第十四規則の規定に完全に適合する場合には、この章の第八規則の規定の適用上発動機付救命艇と認めることができる。これらの端艇は、船舶が海上にある間、直ちに使用することができるようにしておく。救命艇の舷側に取り付けた装置によりこの章の第二十九規則(h)の規定に適合している船舶については、この第二十七規則の規定により積載する二の端艇にこの装置を取り付けることを要しない。

(b) 短国際航海以外の国際航海に従事する旅客船には、次の物を積載する。

 (i) 各舷に、その収容能力の合計が総乗船者数の半数の乗船者を収容するために十分である救命艇。ただし、主管庁は、総乗船者数の三十七・五パーセントに相当する数の乗船者を収容するために十分である救命艇を各舷に積載することを条件として、救命艇の代わりに、その合計収容能力と同一の合計収容能力を有する救命いかだを積載することを認めることができる。

 (ii) その収容能力の合計が総乗船者数の二十五パーセントに相当する数の乗船者を収容するために十分である救命いかだ及び総乗船者数の三パーセントに相当する数の乗船者を支えるための救命浮器。ただし、区画係数が〇・三三以下である船舶には、これらの救命いかだ及び救命浮器の代わりに、総乗船者数の二十五パーセントに相当する数の乗船者を支えるための救命浮器を積載することを認められる。

(c)(i) 短国際航海に従事する旅客船には、船舶の長さに応じて、この章の第二十八規則の表のA欄に定める組数のダビットを設ける。各組のダビットには、一の救命艇を取り付けるものとし、これらの救命艇は、少なくとも、同規則の表のC欄において要求される最小容積又は総乗船者を収容するために必要な容積のいずれか小さい方の容積を有するものでなければならない。

 主管庁は、短国際航海に従事する旅客船にこの章の第二十八規則の表のA欄において要求される組数のダビットを設けることが不合理又は実行不可能であると認める場合には、例外的な状況において、一層少ない組数のダビットを設けることを許すことができる。ただし、この組数は、同現則の表のB欄に定める最少数より少なくてはならず、当該旅客船の救命艇の合計容積は、少なくとも、同規則の表のC 欄において要求される最小容積又は総乗船者を収容するために必要な容積のいずれか小さい力の容積と等しくする。

 (ii) (c)(i)の規定により積載する救命艇が総乗船者を収容するために十分でない場合には、ダビットに取り付けた追加の救命艇又は救命いかだを積載し、これらの救命艇及び救命いかだの合計収容能力が総乗船者を収容するために十分となるようにする。

 (iii) (c)(ii)の規定にかかわらず、短国際航海に従事する船舶については、乗船者数は、(c)(i)及び(ii)の規定により積載する救命艇の合計収容能力を超えてはならない。ただし、主管庁が交通量により必要と認める場合において当該船舶が第二−一章第一規則(d)の規定に適合しているときは、この限りでない。

 (ⅳ) 主管庁は、(c)(iii)の規定により救命艇の合計収容能力を超える数の乗船者の運送を認めた場合において、(c)(ii)の規定による追加の救命いかだを積載することが実行不可能であると認めるときは、救命艇の数を減ずることを許すことができる。ただし、次のことを条件とする。

  (1) 救命艇の数は、長さ五十八メートル(百九十フィート)以上の船舶については、四以上とし、各舷にそれぞれ二を積載するものとし、長さ五十八メートル(百九十フィート)未満の船舶については、二以上とし、各舷にそれぞれ一を積載する。

  (2) 救命艇及び救命いかだの数は、常に総乗船者を収容するために十分なものでなければならない。

 (v) 短国際航海に従事する旅客船には、(c)(i)から(ⅳ)までの規定により要求される救命艇及び救命いかだのほかに、当該旅客船に積載される救命

 (vi) 短国際航海に従事する旅客船には、また、総乗船者数の少なくとも五パーセントに相当する数の乗船者を支えるための救命浮器を積載する。

 (vii) 主管庁は、短国際航海の証書を備える個々の船舶又は船舶の種類であつて、総乗船者数の七十五パーセントに相当する数の乗船者を収容する救命艇を積載しており、かつ、この(c)の規定に適合しており、また、第二−一章第一規則(d)の規定に適合しているものについては、六百海里を超え千二百海里以下の航海を行うことを認めることができる。

   第二十八規則 短国際航海に従事する船舶のダビット及び救命艇の容積に関する表

次の表は、船舶の長さに応じて次の事項を定める。

(A) 短国際航海に従事する船舶に設けるダビットであって、この章の第二十七規則の規定によりそれぞれ一の救命艇を取り付けるものの最少組数

(B) 短国際航海に従事する船舶に対しこの章の第二十七規則の規定により例外的に認められるダビットの一層少ない組数

(C) 短国際航海に従事する船舶に対して要求される救命艇の最小容積

{表は省略}

   第二十九規則 救命艇、救命いかだ及び救命浮器の積付け及び取扱い

(a) 救命艇及び救命いかだは、主管庁の認めるところにより、次の要件を満たす方法で積み付ける。

 (i) すべての救命艇及び救命いかだをできる限り短い時間で、いかなる場合にも、三十分以内に進水させることができること。

 (ii) 救命艇及び救命いかだが、他の救命艇、救命いかだ又は救命浮器の迅速な取扱い並びに進水場所における乗船者の整理及び乗込みを何ら妨害しないこと。

 (iii) 救命艇及び承認された進水装置を設けることを要求される救命いかだを、船舶が縦傾斜しかつ十五度横傾斜している不利な状態において、人及び艤装品を満載したまま水上に降ろすことができること。

 (ⅳ) 承認された進水装置を設けることを要求されない救命いかだ及び救命浮器を、船舶が縦傾斜しかつ十五度横傾斜している不利な状態において、水上に降ろすことができること。

(b) 救命艇は、それぞれ一組のダビットに取り付ける。

(c) 下層の甲板に積み付けられた救命艇が上層の甲板に積み付けられた救命艇によつて妨害されることのないように適当な措置がとられる場合にのみ、救命艇を二層以上の甲板に積み付けることができる。

(d) 救命艇及び承認された進水装置を設けることを要求される救命いかだは、船舶の船首部に積み付けてはならない。これらの救命艇及び救命いかだは、プロペラからの距離及び船尾の著しい突出部を特に考慮して、安全な進水が確保される位置に積み付ける。

(e) ダビットは、承認された設計によるものでなければならず、主管庁の認めるところにより適当な場所に設ける。ダビットは、これに取り付けられた救命艇を他のダビットの操作によつて妨害されることなく安全に降ろすことができるように、一又は二以上の甲板に配置する。

(f) ダビットは、次の型のものでなければならない。

 (i) 振出し状態において二千三百キログラム(二・二五ロング・トン)を超えない重量の救命艇の操作のためには、ラッフィング型又は重力型のもの

 (ii) 振出し状態において二千三百キログラム(二・二五ロング・トン)を超える重量の救命艇の操作のためには、重力型のもの

(g) ダビット、つり索、滑車その他の装置は、船舶が十五度横傾斜しかつ十度縦傾斜している場合にも、救命艇を、進水要員を配置して振り出し、人及び艤装品を満載して安全に降ろすことができる強さのものでなければならない。

(h) 船舶が十五度横傾斜している場合に救命艇を進水させることを容易にするため、スケートその他の適当な装置を取り付ける。

(i) 救命艇を船側に引き寄せ、人が安全に乗艇し得るように救命艇を保持するための装置を備える。

(j) 救命艇及びこの章の第二十七規則の規定により要求される非常端艇は、ワイヤ・ロープのつり索及び承認された型式のウインチによつて取り扱うものとし、このウィンチは、非常端艇については、迅速に揚収することができるものでなければならない。主管庁は、マニラ・ロープのつり索又は他の承認された材料のつり索で十分であると認める場合には、例外的に、ウインチを使用するものであるかどうかを問わず(ただし、非常端艇については、迅速に揚収し得るウインチによつて取り扱うことを要求される。)、マニラ・ロープのつり索又は他の承認された材料のつり索の使用を認めることができる。

(k) ダビット・スパンには、少なくとも二の救命索を取り付けるものとし、つり索及び救命索は、船舶が最小航海喫水においていずれの側に十五度横傾斜した場合にも水面に達するために十分な長さのものでなければならない。つり索の下部滑車には、承認された型式の離脱装置が取り付けられていない限り、つりかぎに取り付けるための適当な環又は長環を取り付ける。

(l) 救命艇の揚収のため動力機械装置を設ける場合には、効果的な手動装置をも取り付ける。ダビットが動力によるつり索の作用によつて揚収される場合には、ワイヤ・ロープのつり索又はダビットの過応力を避けるため、ダビットが停止位置に達する前に自動的に動力を止める安全装置を取り付ける。

(m) ダビットに取り付けた救命艇には、直ちに使用し得るつり索を連結するものとし、また、救命艇を各つり索から速やかに取り外す(同時である必要はない。) ための措置をとる。つり索を救命艇に連結する位置は、救命艇を降ろしている間安定性を確保するように、舷端より上方になければならない。

(n)(i) 短国際航海以外の国際航海に従事する旅客船であつてこの章の第二十七規則(b)(i)の規定により救命艇及び救命いかだを積載するものには、同規定によりすべての乗船者を収容するため救命艇とともに要求されるすべての救命いかだを、収容することを認められる人員を積載して、静穏な状態において三十分以内に水上に降ろすために十分であると主管庁が認める数の承認された進水装置を設ける。この装置は、実行可能な限り、船舶の各舷に同数を配置するものとし、いかなる場合にも、各舷に少なくとも一を取り付ける。もつとも、この装置は、同規則(b)(ii)の規定により総乗船者数の二十五パーセントに相当する数の乗船者を収容するために積載することを要求される追加の救命いかだにつ いては、設けることを要しないが、同規定により積載する救命いかたは、この装置が船舶に設けられている場合には、この装置によつて進水させることができる型式のものでなければならない。

 (ii) 短国際航海に従事する旅客船については、設けるべき承認された進水装置の数は、主管庁が決定する。設けられる各進水装置に割り当てられる救命いかだの数は、収容することを認められる人員を積載してこの装置により静穏な状 態において三十分以内に水上に降ろすことができると主管庁が認める数を超えてはならない。

   第三十規則 甲板、救命艇、救命いかだ等の照明

(a) 旅客船の各部分、特に救命艇及び救命いかだを積み付ける甲板における安全要件を満たすために十分な電気照明装置又はこれと同等の照明装置を取り付ける。第二−一章第二十五規則の規定により要求される自己起電の非常電源は、必要なときは、それらの電気照明装置並びにこの章の第十九規則(a)(ii)、(b)(ii)及び(b)(iii)の規定により要求される照明装置に給電することができるものでなければならない。

(b) 旅客又は乗組員が使用する主要区画室の出口は、非常燈によつて継続的に照明する。この非常燈用の電力は、主発電装置に故障を生じた場合に、(a)の非常電源から供給するようにしておく。

   第三十一規則 救命艇及び救命いかだへの人員の配置

(a) 各救命艇について、甲板部の職員又は資格のある救命艇手一人をその指揮者と定めるものとし、一人の副指揮者を指名する。指揮者は、救命艇の乗組員の名簿を所持するものとし、また、部下の者が各自の任務を熟知しているようにする。

(b) 発動機を操作することができる者一人を各発動機付救命艇に割り当てる。

(c) 無線設備及び探照燈設備を操作することができる者一人を、これらの設備を有する各救命艇に割り当てる。

(d) 救命いかだの取扱い及び操作に習熟した者一人を各救命いかだに割り当てる。ただし、短国際航海に従事する船舶について実行可能でないと主管庁が認める場合は、この限りでない。

   第三十二規則 資格のある救命艇手

(a) 旅客船には、この章の規定に適合するために積載する各救命艇について、少なくとも次の表に掲げる数の救命艇手を乗り組ませる。

   救命艇の定員  資格のある救命艇手の最少数

   四十一人未満 二

   四十一人以上六十一人以下 三

   六十二人以上八十五人以下 四

   八十五人を超えるとき 五

(b) 資格のある救命艇手の各救命艇に対する割当ては、船長の裁量による。

(c) 適任証書は、主管庁の権限において発給される。この証書の発給を受けるためには、申請者は、救命艇その他の救命設備の進水に関するすべての作業並びにオール及び推進装置の使用の訓練を受けていること、救命艇その他の救命設備の実際の取扱いに習熟していること並びにすべての種類の救命設備に関する命令を理解しかつこれに応ずることができることを証明しなければならない。

   第三十三規則 救命浮器

(a) いかなる型式の救命浮器も、次の要件を満たす場合を除くほか、承認されない。

 (i) 積み付けた場所から損傷を与えることなく水上に投下し得る大きさ及び強さのものであること。

 (ii) 重量が百八十キログラム(四百ポンド)を超えないこと。ただし、手で持ち上げることなく進水させることができる適当な装置であつて主管庁の認めるものが設けられている場合は、この限りでない。

 (iii) 承認された材料及び構造のものであること。

 (ⅳ) いずれの面を上にして浮いている場合にも有効なかつ安定性を有するものであること。

 (v) 空気箱又はこれと同等の浮体をできる限り救命浮器の外側の近くに配置すること。この浮体は、膨脹によるものであつてはならない。

 (vi) もやい綱を取り付けること及び救命索を外周に確実に取り付けること。

(b) 救命浮器について認められる人数は、次の数のいずれか小さい方の数とする。

 (i) 救命浮器が淡水中で支えることができる鉄片の重量をキログラム(ポンド)で表した数を十四・五 (ポンドの場合には三十二)で除して得た数

 (ii) 周囲の長さをミリメートル(フィート)で表した数を三百五(フィートの場合には一)で除して得た数

   第三十四規則 救命浮環の数


 旅客船に備える救命浮環の最少数は、次の表に定める。

<

船舶の長さ救命浮環の最少数
メートルフィート
六十一未満二百未満 
六十一以上百二十二未満二百以上四百未満十二
百二十二以上百八十三未満四百以上六百未満十八
百八十三以上二百四十四未満六百以上八百未満二十四
二百四十四以上八百以上三十

  C部 貨物船

    第三十五規則 救命艇及び救命いかだの数及び収容能力

(a)(i) 貨物船(鯨工船として使用される船舶、魚類加工船又はかん詰工船として使用される船舶及び捕鯨、魚類加工又はかん詰加工に従事する者を運送する船舶を除く。)には、その収容能力の合計が総乗船者を収容するために十分である救命艇を各舷に積載するものとし、更に、総乗船者数の半数の乗船者を収容するために十分な救命いかだを積載する。

もつとも、主管庁は、近隣の国の間の国際航海に従事する貨物船についてその国際航海の状況により救命いかだの積載が不合理かつ不必要であると認める場合には、その程度に応じて、個々の船舶又は船舶の種類について、この要件を免除することができる。

 (ii)(1) 総トン数三千トン以上のタンカーには、(a)(ii)(2)の規定が適用される場合を除くほか、四以上の救命艇を積載するものとし、そのうち、二は船尾部に、二は中央部に積み付ける。もつとも、中央部に船楼のないタンカーにおいては、すべての救命艇を船尾部に積み付ける。

  (2) 総トン数三千トン以上のタンカーであつて中央部に船楼のないものについては、主管庁は、次の条件が満たされる場合には、二の救命艇のみを積載することを認めることができる。

   (aa) 船尾部の各舷に一の救命艇を積み付けること。

   (bb) 救命艇の長さが八・五メートル(二十八フィート)を超えないこと。

   (cc) 救命艇を実行可能な限り前方に積み付けること。この場合において、救命艇の後端は、プロペラから前方へ少なくとも救命艇の長さの一・五倍に相当する距離にあるようにする。

    (dd) 救命艇を安全かつ実行可能な範囲において海面に近く積み付けること。

(b)(i) 鯨工船として使用される船舶、魚類加工船又はかん詰工船として使用される船舶及び捕鯨、魚類加工又はかん詰加工に従事する者を運送する船舶には、次の物を積載する。

  (1) 各舷に、その収容能力の合計が総乗船者数の半数の乗船者を収容するために十分である救命艇。もつとも、主管庁は、総乗船者数の三十七・五パーセントに相当する数の乗船者を収容するために十分な救命艇を各舷に積載することを条件として、救命艇の代わりに、その合計収容能力と同一の合計収容能力を有する救命いかだを積載することを認めることができる。

  (2) その収容能力の合計が総乗船者数の半数の乗船者を収容するために十分である救命いかだ

もつとも、魚類加工船又はかん詰工船として使用される船舶において、この章の規定に完全に適合する救命艇を積載することが実行不可能である場合には、主管庁は、その代わりに、この第三十五規則の規定により要求される収容能力を下回ることのない他の端艇であつて、少なくとも救命艇についてこの章の規定により要求される浮力及び艤装品を有するものを積載することを認めることができる。

 (ii) 鯨工船として使用される船舶、魚類加工船又はかん詰工船として使用される船舶及び捕鯨、魚類加工又はかん詰加工に従事する者を運送する船舶には、非常の際に用いるため、二の端艇 (各舷に一とする。) を積載する。 これらの端艇は、承認された型式のものでなければならず、また、長さ八・五メートル(二十八フィート)以下のものでなければならない。これらの端艇は、この章の救命艇に関する規定に完全に適合する場合には、この(b)の規定の適用上救命艇と認めることができるものとし、更に、この章の第九規則及び第十四規則の規定に適合する場合には、この章の第八規則の規定の適用上発動機付救命艇と認めることができる。これらの端艇は、船舶が海上にある間、直ちに使用することができるようにしておく。救命艇の舷側に取り付けた装置によりこの章の第三十六規則(g)の規定に適合している船舶については、この第三十五規則の規定により積載する二の端艇にこの装置を取り付けることを要しない。

(c) 登録長さ百五十メートル(四百九十二フィート)以上の貨物船であつて中央部に船楼のないものには、(a)(i)の規定により要求される救命いかだのほかに、少なくとも六人を収容し得る救命いかだを積載するものとし、これを合理的かつ実行可能である限り前方に積み付ける。

   第三十六規則 ダビット及び進水装置

(a) 貨物船においては、救命艇及び救命いかだは、主管庁の認めるところにより積み付ける。

(b) 救命艇は、それぞれ一組のダビットに取り付ける。

(c) 救命艇及び承認された進水装置を設けることを要求される救命いかだは、居住区域及び業務区域にできる限り近い位置に積み付ける。これらの救命艇及び救命いかだは、船舶の垂直な舷側に沿つて進水し得ることを実行可能な限り確保するため、プロペラからの距離及び船体の著しい突出部を特に考慮して、安全な進水が確保される位置に積み付ける。船舶の前方に配置する場合には、船首隔壁の後方の保護された位置に積み付けるものとし、この場合には、主管庁は、ダビットの強度について特別の考慮を払う。

(d) ダビットは、承認された設計によるものでなければならず、主管庁の認めるところにより適当な場所に設ける。

(e) 総トン数千六百トン以上のタンカー、鯨工船として使用される船舶、魚類加工船又はかん詰工船として使用される船舶及び捕鯨、魚類加工又はかん詰加工に従事する者を運送する船舶については、ダビットは、重力型のものでなければならず、その他の船舶については、ダビットは、次の型のものでなければならない。

 (i) 振出し状態において二千三百キログラム(二・二五ロング・トン)を超えない重量の救命艇の操作のためには、ラッフィング型又は重力型のもの

 (ii) 振出し状態において二千三百キログラム(二・二五ロング・トン)を超える重量の救命艇の操作のためには、重力型のもの

(f) ダビット、つり索、滑車その他の装置は、船舶が十五度横傾斜しかつ十度縦傾斜している場合にも、救命艇を、進水要員を配置して振り出し、人及び艤装品を満載して安全に降ろすことができる強さのものなければならない。

(g) 船舶が十五度横傾斜している場合に救命艇を進水させることを容易にするため、スケートその他の適当な装置を取り付ける。

(h) 救命艇を船側に引き寄せ、人が安全に乗艇し得るように救命艇を保持するための装置を備える。

(i) 救命艇及びこの章の第三十五規則(b)(ii)の規定により要求される非常端艇は、ワイヤ・ロープのつり索及び承認された型式のウインチによつて取り扱うものとし、このウィンチは、非常端艇については、迅速に揚収することができるものでなければならない。主管庁は、マニラ・ロープのつり索又は他の承認された材料のつり索で十分であると認める場合には、例外的に、ウインチを使用するものであるかどうかを問わず(ただし、非常端艇については、迅速に揚収し得るウインチによつて取り扱うことを要求される。)、マニラ・ロープのつり索又は他の承認された材料のつり索の使用を認めることができる。

(j) ダビット・スパンには、少なくとも二の救命索を取り付けるものとし、つり索及び救命索は、船舶が最小航海喫水においていずれの側に十五度横傾斜した場合にも水面に達するために十分な長さのものでなければならない。つり索の下部滑車には、承認された型式の離脱装置が取り付けられていない限り、つりかぎに取り付けるための適当な環又は長環を取付ける。

(k) 救命艇の揚収のため動力機械装置を設ける場合には、効果的な手動装置をも取り付ける。ダビットが動力によるつり索の作用によつて揚収される場合には、ワイヤ・ロープのつり索又はダビットの過応力を避けるため、ダビットが停止位置に達する前に自動的に動力を止める安全装置を取り付ける。

(l) 救命艇には、直ちに使用し得るつり索を連結するものとし、また、救命艇を各つり索から速やかに取り外す(同時である必要はない。) ための措置をとる。つり索を救命艇に連結する位置は、救命艇を降ろしている間安定性を確保するように、舷端より上方になければならない。

(m) 鯨工船として使用される船舶、無類加工船又はかん詰工船として使用される船舶及び捕鯨、魚類加工又はかん詰加工に従事する者を運送する船舶であつてこの章の第三十五規則(b)(i)の規定により救命艇及び救命いかだを積載するものには、同規則(b)(i)(2)の救命いかだのためには承認された進水装置を設けることを要しないが、同規則(b)(i)(1)の救命いかだのためには承認された進水装置を設けるものとし、この装置の数は、これらの救命いかだを、これに収容することを認められる人員を積載して、静穏な状態において三十分以内に水上に降ろすために十分であると主管庁が認めるものでなければならない。この装置は、実行可能な限り船舶の各舷に同数を配置する。この装置を設けることを要求される船舶に積載する救命いかだは、この装置によつて進水させることができる型式のものでなければならない。

   第三十七規則 救命浮環の数

 この章の第二十一規則の要件を満たす型式の少なくとも八の救命浮環を備える。

   第三十八規則 非常照明

 この章の第十九規則(a)(ii)、(b)(ii)及び(b)(iii)の規定により要求される照明装置は、第二−一章第二十六規則の規定により要求される非常電源によつて少なくとも三時間給電することができるものでなければならない。総トン数千六百トン以上の貨物船については、主管庁は、通路、階段及び出口の照明が、すべての乗船者が救命艇及び救命いかだの進水場所及び積付け位置に近づくことの妨げにならないものであることを確保する。

 第四章 無線電信及び無線電話

  A部 適用及び定義

   第一規則 適用

(a) この章の規定は、別段の明文の規定がない限り、この規則が適用されるすべての船舶に適用する。

(b) この章の規定は、船舶が北アメリカの大湖並びにこれらに接続し及び附属する水域(カナダのケベック州モントリオールのセント・ランバート・ロックの下流側出口を東端とする。) を航行する間は、その船舶が他の水域においてはこの規則の適用を受けるものであつても、その船舶には、適用しない。(注)

  注 このような船舶は、カナダとアメリカ合衆国との間の該当する協定に含まれる安全のための無線通信に関する特別規定に従う。

(c) この章の規定は、遭難した船舶又は救命用の端艇及びいかだが、注意を喚起し、その位置を知らせ及び救助を求めるために用いることのできるいかなる手段を利用することも妨げるものではない。

   第二規則 用語及び定義

 この章の規定の適用上、次の用語は、以下に定義する意味を有する。この章において使用するその他の用語であつて無線通信規則において定義するものは、無線通信規則において定義する意味と同一の意味を有する。

(a) 「無線通信規則」とは、その時に効力を有する最新の国際電気通信条約に附属し又は附属するとみなされる無線通信規則をいう。

(b) 「無線電信自動警急機」とは、無線電信警急信号に応ずる承認された自動警急受信装置をいう。

(c) 「無線電話自動警急機」とは、無線電話警急信号に応ずる承認された自動警急受信装置をいう。

(d) 「無線電話局」、「無線電話設備」及び「聴守(無線電話)」は、別段の明文の規定がない限り、MF帯のものとする。

(e) 「無線通信士」とは、少なくとも、無線通信規則に適合する第一級若しくは第二級の無線電信通信士証明書又は海上移動業務のための無線通信士一般証明書を有する者であつて、 この章の第三規則又は第四規則の規定により無線電信局を設ける船舶の無線電信局に勤務する者をいう。

(f) 「無線電話通信士」とは、無線通信規則に適合する適正な証明書を有する者をいう。

(g)「現存設備」とは、次の設備をいう。

 (i) 各主管庁についてこの条約が効力を生ずる日のいかんを問わず、この条約の効力発生の日前に船舶に設けられた設備

 (ii) その一部がこの条約の効力発生の日前に船舶に設けられ、残りの部分が、該当する部品に代えて取り付けられた部品又はこの章の規定に適合する部品で構成される設備

(h) 「新設備」とは、現存設備でない設備をいう。

   第三規則 無線電信局

 旅客船 (大きさのいかんを問わない。)及び総トン数千六百トン以上の貨物船には、この章の第九規則及び第十規則の規定に適合する無線電信局を設ける。ただし、この章の第五規則の規定により免除される場合は、この限りでない。

   第四規則 無線電話局

 総トン数三百トン以上千六百トン未満の貨物船には、この章の第九規則及び第十規則の規定に適合する無線電信局を設けない場合には、この章の十五規則及び第十六規則の規定に適合する無線電話局を設ける。ただし、この章の第五規則の規定により免除される場合は、この限りでない。

   第五規則 第三規則及び第四規則の免除

(a) 締約政府はこの章の第三規則及び第四規則の規定の適用から逸脱しないことが極めて望ましいと認めるが、主管庁は、個々の旅客船又は貨物船に対し、この章の第三規則又は第四規則の規定の適用の部分的若しくは条件付きの免除又は全面的免除を認めることができる。

(b) (a)の規定による免除は、海岸から船舶までの最大距離、航海の長さ、一般的な航行上の危険がないこと及び安全に関するその他の条件がこの章の第三規則又は第四規則の規定を全面的に適用することを不合理又は不必要とする航海に従事する船舶にのみ認められる。主管庁は、個々の船舶に免除を認めるかどうかを決定するに当たり、すべての船舶の安全のため、その免除が遭難救助業務の一般的実効性に及ぼす影響を考慮する。主管庁は、この章の第三規則の規定の適用を免除する船舶に対し、免除の条件として、この章の第十五規則及び第十六規則の規定に適合する無線電話局の設置を要求することが望ましいことに留意する。

(c) 主管庁は、(a)及び(b)の規定により前暦年中に認めた免除及びその理由を示す報告書を、毎年一月一日後、できる限り速やかに機関に提出する。

  B部 聴守

   第六規則 聴守(無線電信)

(a) この章の第三規則又は第四規則に規定する無線電信局を設ける船舶は、海上にある間、少なくとも一人の無線通信士を乗り組ませるものとし、また、無線電信自動警急機を備えない場合には、(d)の規定が適用される場合を除くほか、頭掛け受話器又は拡声器を使用する無線通信士により無線電信遭難周波数で無休聴守をする。

(b) この章の第三規則の規定により無線電信局を設ける旅客船は、無線電信自動警急機を備える場合には、海上にある間、(d)の規定が適用される場合を除くほか、頭掛け受話器又は拡声器を使用する無線通信士により無線電信遭難周波数で次の聴守をする。

 (i) 二百五十人以下の旅客を運送し又は運送することを認められる場合には、一日に少なくとも合計八時間の聴守

 (ii) 二百五十人を超える旅客を運送し又は運送することを認められる場合において、相次ぐ二港間における十六時間を超える航海に従事するときは、一日に少なくとも合計十六時間の聴守。この場合には、船舶は、少なくとも二人の無線通信士を乗り組ませる。

 (iii) 二百五十人を超える旅客を運送し又は運送することを認められる場合において、相次ぐ二港間における十六時間未満の航海に従事するときは、一日に少なくとも合計八時間の聴守

(c)(i) この章の第三規則の規定により無線電信局を設ける貨物船は、無線電信自動巻急機を備える場合には、海上にある間、(d)の規定が適用される場合を除くほか、頭掛け受話器又は拡声器を使用する無線通信士により無線電信遭難周波数で一日に少なくとも合計八時間の聴守をする。

 (ii) この章の第四規則に規定する無線電信局を設ける総トン数三百トン以上千六百トン未満の貨物船は、無線電信自動警急機を備える場合には、海上にある間、(d)の規定が適用される場合を除くほか、頭掛け受話器又は拡声器を使用する無線通信士により無線電信遭難周波数で主管庁が定める 時間の聴守をする。主管庁は、一日に少なくとも合計八時間の聴守を実行可能なときはいつでも要求することが望ましいことに留意する。

(d)(i) 無線通信士は、この第六規則の規定により無線電信遭難周波数で聴守をすることを要求される時間中において、他の周波数で通信を行つている間又は他の重要な無線通信業務を行つている間、スプリット頭掛け受話器又は拡声器によつて聴守をすることが実行不可能である場合にのみ、聴守を中断することができる。聴守は、無線通信規則において定める沈黙時間中常に、頭掛け受話器又は拡声器を使用する無線通信士によつて維持する。

この(d)(i)にいう「重要な無線通信業務」とは、次の設備の緊急の修理を含む。

  (1) 安全のために用いる無線通信設備

  (2) 無線航行設備(船長の命令による。)

 (ii) 複数の無線通信士を有する旅客船以外の船舶においては、無線通信士は、(d)(i)の規定のほかに、例外的な場合、すなわち、スプリット頭掛け受話器又は拡声器によつて聴守をすることが実行不可能である場合には、次の設備の切迫した機能低下を防止するために必要な保守を行うため、 船長の命令により聴守を中断することができる。

安全のために用いる無線通信設備

無線航行設備

その他の電子航行設備(その修理を含む。)

ただし、次のことを条件とする。

  (1) 無線通信士がこれらの任務を遂行するための適切な資格を有することを主管庁が認めること。

  (2) 船舶が無線通信規則に適合する受信選択装置を備えること。

 (3) 聴守が、無線通信規則において定める沈黙時間中常に、頭掛け受話器又は拡声器を使用する無線通信士によつて維持されること。

(e) 無線電信自動繁急機を備える船舶においては、無線電信自動警急機は、船舶が海上にある間、(b)から(d)までのいずれかの規定による聴守をしていない場合及び方向探知業務を行つている間において実行可能な場合には、常に作動させておく。

(f) この規則で定める聴守時間(主管庁の決定するものを含む。)は、無線通信規則において定める無線電信業務のための時間中維持することが望ましい。

   第七規則 聴守(無線電話)

(a) この章の第四規則の規定により無線電話局を設ける船舶は、安全の目的のため少なくとも一人の無線電話通信士 (無線電話に関する証明書を有する船長、職員又は乗組員でもよい。)を乗り組ませるものとし、 また、海上にある間、通常操船する場所において、拡声器、ろ波器付拡声器又は無線電話自動警急機を使用する無線電話遭難周波数聴守受信機により、無線電話遭難周波数で無休聴守をする。

(b) この章の第三規則又は第四規則に規定する無線電信局を設ける船舶は、海上にある間、主管庁の定める場所において、拡声器、ろ波器付拡声器又は無線電話自動警急機を使用する無線電話遭難周波数聴守受信機により、無線電話遭難周波数で無休聴守をする。

   第八規則 聴守(VHF無線電話)

 次章第十八規則に規定するVHF無線電話局を設ける船舶は、同規則にいう締約政府の要求する時間中及びその要求する通信路で、船橋において聴守をする。

  C部 技術的要件

   第九規則 無線電信局

(a) 無線電信局は、無線信号の適正な受信に対し外部の機械的雑音その他の雑音による妨害を受けない位置に設ける。無線電信局は、できる限り高度の安全性を確保するように、船舶の実行可能な限り高い位置に設ける。

(b) 無線電信室は、主無線電信設備及び補助無線電信設備を有効に操作することができるように、十分な大きさを有するとともに通風が適当にあるものでなければならず、また、無線電信局の運用を妨害することのあるいかなる目的にも使用してはならない。

(c) 少なくとも一人の無線通信士のための睡眠場所は、実行可能な限り無線電信室に近接して設ける。新船においては、この睡眠場所は、無線電信室内に設けてはならない。

(d) 無線電信室と船橋との間及び、他の操船場所がある場合には、無線電信室と操船場所の一との間に、効果的な相互式の呼出し及び通話の装置であつて船内の主通信系統から独立したものを取り付ける。

(e) 無線電信設備は、水又は極端な高温若しくは低温による影響から保護される位置に設ける。無線電信設備は、遭難の際に直ちに使用するため又は修理するために容易に近づくことができるものでなければならない。

(f) 径十二・五センチメートル(五インチ)以上の文字板及び同心の秒針を有し、かつ、無線電信業務について無線通信規則において定める沈黙時間の表示のある正確な時計を備える。この時計は、無線通信士が無線電信操作位置及び無線電信自動警急機の試験位置から容易にかつ正確に文字板全体を見ることができる無線電信室内の位置に、確実に取り付ける。

(g) 無線電信室には、主無線電信設備及び補助無線電信設備の操作装置並びに(f)の規定により要求される時計を十分に照明するように恒久的に取り付けた電燈から成る確実に機能する非常燈を備える。新設備については、非常燈は、この章の第十規則(a)(iii)の規定により要求される補助電源から給電される場合には、無線電信室の配置上不適当であると認められない限り、無線電信室の主入口の近くの位置及び無線電信操作位置に取り付けた双方の位置で操作し得るスイッチによつて操作する。スイッチには、その目的について明確な標示をする。

(h) この章の第十規則(a)(iii)の規定により要求される補助電源から給電される電気検査燈であつて十分な長さの柔軟な導線を取り付けたもの又は懐中電燈のいずれかを無線電信室に備える。

(i) 無線電信局には、船舶が海上にある間無線電信設備を効果的な使用状態に維持するための予備品、工具及び試験器具を備える。試験器具には、交流電圧、直流電圧及び抵抗を測定するための器具を含める。

(j) 別個の非常用の無線電信室がある場合には、(d)から(h)までの規定をこれに適用する。

   第十規則 無線電信設備

(a) この第十規則に別段の明文の規定がある場合を除くほか、

 (i) 無線電信局には、電気的に分離しかつ独立した主設備及び補助設備を含める。

 (ii) 主設備には、主送信機、主受信機、無線電話遭難周波数聴守受信機及び主電源を含める。

 (iii) 補助設備には、補助送信機、補助受信機及び補助電源を含める。

 (ⅳ) 主空中線及び補助空中線を取り付ける。もつとも、主管庁は、いずれの船舶に対しても、補助空中線の取付けが不合理又は実行不可能であると認める場合には、この補助空中線の取付けを省略することを認めることができるが、この場合には、直ちに取り付け得るように完全に組み立てた適当な予備の空中線を備える。更に、いかなる場合にも、適当な空中線を張ることができるように、十分な空中線の線条及び絶縁物を備える。主空中線は、振動することのある支持物の間に張られる場合には、破断しないように適当に保護する。

(b) 貨物船の無線電信設備(千九百五十二年十一月十九日以後に設けられた総トン数千六百トン以上の貨物船の設備を除く。)については、 主送信機が補助送信機に関するすべての要件を満たす場合には、補助送信機の備付けは、義務的ではない。

(c)(i) 主送信機及び補助送信機は、主空中線及び、補助空中線が取り付けられている場合には、補助空中線に速やかに接続し、かつ、同調することができるものでなければならない。

 (ii) 主受信機及び補助受信機は、使用する必要のある空中線に速やかに接続することができるものでなければならない。

(d) 補助設備のすべての部分は、できる限り高度の安全性を確保するように、船舶の実行可能な限り高い位置に設ける。

(e) 主送信機及び補助送信機は、無線電信遭難周波数で、無線通信規則により同周波数について割り当てられた発射の種別を使用して送信することができるものでなければならない。更に、主送信機は、四百五キロヘルツと五百三十五キロヘルツとの間の許可周波数帯にある少なくとも二の通信周波数で、無線通信規則によりこれらの周波数について割り当てられた発射の種別を使用して送信することができるものでなければならない。補助送信機は、無線通信規則において定義されかつ使用を制限された船舶の非常送信機で構成することができる。

(f) 主送信機及び補助送信機は、無線通信規則において変調発射をすることを定めている場合には、七十パーセント以上の変調の深さ及び四百五十ヘルツと千三百五十へルとの間の変調周波数を有するものでなければならない。

(g) 主送信機及び補助送信機は、主空中線に接続した場合に、次に定める最小通常通達距離を有するものでなければならない。すなわち、昼間において、通常の状態及び状況の下で、明確に認識し得る信号を所定の通達距離にわたつて船舶から船舶に送信することができるものでなければならない。(受信機における電界強度の実効値が少なくとも毎メートル五十マイクロボルトである場合に、通常、明確に認識し得る信号が受信される。) (注)

        海里で表した最小通常通達距離
主送信機補助送信機
すべての旅客船及び総トン数千六百トン以上の貨物船一五〇一〇〇
総トン数千六百トン未満の貨物船一〇〇七五

注 電界強度を直接に測定しない場合には、通常通達距離を近似的なもので決定するための手引として次の資料を用いることができる。



海里で表した通常通達距離メートル・アンペア(注一)全空中線電力(ワット)(注二)
二〇〇一二八二〇〇
一七五一〇二一二五
一五〇七六七一
一二五五八四一
一〇〇四五二五
七五三四一四


 注一 この第二欄の数値は、最高満載喫水線からのメートルで表した最大空中線高さとアンペアで表した空中線電流(実効値)との積を表す。

  この第二欄の数値は、次の比の平均値に対応する。

   有効空中線高さ/最大空中線高さ=0.47

  この比は、空中線の局部的状態に応じておおむねの〇・三と〇・七との間で変化する。

 注二 この第三欄の数値は、次の比の平均値に対応する。

  輻射空中線電力/全空中線電力=0.08

  この比は、有効空中線高さ及び空中線抵抗に応じてかなり変化する。

(h)(i) 主受信機及び補助受信機は、無線電信遭難周波数で、無線通信規則により同周波数について割り当てられた発射の種別を受信することができるものでなければならない。

 (ii) 主受信機は、報時信号、気象通報及び主管庁が航行の安全に関して必要と認める他の通報の送信に使用される周波数でその周波数について割り当てられた発射の種別を受信することができるものでなければならない。

 (iii) 無線電話遭難周波数聴守受信機は、あらかじめ無線電話遭難周波数に同調させておく。拡声器が船橋にある場合には、無線電話繁急信号がない間その拡声器を作動させないためのろ波装置その他の装置をこの受信機に取り付ける。この装置は、スイッチを容易に開閉することができるものでなければならず、聴守の維持が船舶の安全な航行を妨げる状態にあると船長が認める場合に使用することができる。

 (ⅳ)(1) 無線電話送信機を備える場合には、誤つて作動させることを防止するように設計された無線電話警急信号自動発生装置であつてこの章の第十六規則(e)の規定に適合するものを取り付ける。この装置は、遭難通報を直ちに送信し得るようにいつでも作動を停止することができるものでなければならない。

  (2) 適当な擬似空中線を使用して、無線電話遭難周波数以外の周波数で、無線電話警急信号自動発生装置が正常に機能するかどうかを定期的に点検するための措置をとる。

(i) 主受信機は、受信機入力が五十マイクロボルト程度の低いものである場合において、頭掛け受話器に信号を起こすため又は拡声器によつて信号を起こすために十分な感度を有するものでなければならない。補助受信機は、受信機入力が百マイクロボルト程度の低いものである場合において信号を起こすために十分な感度を有するものでなければならない。

(j) 船舶が海上にある間、(g)の規定により要求される通常通達距離にわたつて主設備を操作するため及び無線電信局の一部を形成する電池に充電するために十分な電力を常に供給することができるようにしておく。主設備に対する供給電圧は、新船については、定格電圧の正負十パーセントの範囲内に維持するものとし、現存船については、できる限り定格電圧に近い電圧に維持するものとし、実行可能なときは正負十パーセントの範囲内に維持する。

(k) 補助設備には、船舶の推進動力及び船舶の電気系統から独立した電源を備える。

(l)(i) 補助電源は、なるべく船舶の電気系統から充電し得る蓄電池で構成するものとし、いかなる状況においても速やかに給電を開始することができ、かつ、補助送信機及び補助受信機を通常の使用状態において連続して六時間以上操作することができるものでなければならず、また、(m)及び(n)に掲げるいずれの追加の負荷に対しても給電することができるものでなければならない。(注)

   注 補助電源が給電する電気的負荷を決定するため、次の式が手引として推奨される。

    キーダウン(マーク)の送信機電流消費量の1/2+キーアップ(スペース)の送信機電流消費量の1/2+補助電源に接統する受信機及び追加回路の電流消費量

 (ii)  VHF設備を設ける場合には、補助電源は、補助送信機及びVHF設備を六時間以上同時に操作するために十分な容量のものでなければならない。ただし、交互にのみ操作することを確保する開閉装置を取り付ける場合は、この限りでない。補助電源のVHFへの使用は、遭難通信、緊急通信及び安全通信の場合に限る。この措置に代えて、VHF設備のため別個の補助電源を備えることができる。

(m) 補助電源は、補助設備及び(r)に定める警急信号自動電鍵装置(電動である場合)に給電するために使用する。

 補助電源は、また、次の物に給電するために使用することができる。

 (i) 無線電信自動警急機

 (ii) この章の第九規則(g)に規定する非常燈

 (iii) 方向探知機

 (ⅳ) VHF設備

 (v) 無線電話警急信号自動発生装置

 (vi) 送信から受信に及び受信から送信に切り換えるための無線通信規則において定める装置

補助電源は、(n)の規定が適用される場合を除くほか、この(m)に定める目的以外の目的に使用してはならない。

(n) (m)の規定にかかわらず、主管庁は、貨物船については、必要なときは迅速に接続を断ち得ること及び電源が追加の負荷に対して給電するために十分な容量を有することを条件として、端艇甲板上の非常照明等全体が船舶の上部にある少数の低電力の非常回路に補助電源を使用することを認めることができる。

(o) 補助電源及びその配電盤は、実行可能な限り船舶の高い位置に設けるものとし、無線通信士が容易に近づくことができるものでなければならない。配電盤は、可能なときは無線窒内に取り付けるものとし、無線室内に取り付けない場合には、照明することができるものでなければならない。

(p) 船舶が海上にある間、蓄電池は、主設備の一部であるか補助設備の一部であるかを問わず、毎日完全充電の正常な状態にしておく。

(q) 船内の電気設備その他の設備からの無線妨害の原因をできる限り除去するための及びこれらの無線妨害を抑制するための措置をとる。必要なときは、放送受信機に接続する空中線が無線電信設備の効果的かつ正確な作動に対する妨害とならないことを確保するための措置をとる。新船の設計に当たつては、この要件に特別の注意を払う。

(r) 無線電信管急信号を手送する装置のほかに、無線電信警急信号を送信するため主設備及び補助設備を電鍵操作し得る警急信号自動電鍵装置を取り付ける。この装置は、送信機を直ちに手動操作し得るようにいつでも電鍵操作を停止することができるものでなければならない。この装置は、電動である場合には、補助電源によつて操作することができるものでなければならない。

(s) 船舶が海上にある間、補助送信機は、通信に使用しない場合には、適当な擬似空中線を使用して毎日試験するものとし、また、補助空中線が取り付けられている場合には、これを使用して各航海中に少なくとも一回試験する。補助電源も、また、毎日試験する。

(t) 無線電信設備の部分を形成する装置は、信頼度の高いものでなければならず、維持のため容易に近づくことができるように造る。

(u) この章の第四規則の規定にかかわらず、主管庁は、総トン数千六百トン未満の貨物船については、この章の第九規則及びこの第十規則に定める要件を緩和することができる。ただし、無線電信局について適用される規準は、無線電話局についてこの章の第十五規則及び第十六規則に定める規準を適用し得る限り、少なくともこれと同等のものでなければならない。特に、総トン数三百トン以上五百トン未満の貨物船については、主管庁は、次のものを要求することを要しない。

 (i) 補助受信機

 (ii) 現存設備における補助電源

 (iii) 振動による破断を防くための主空中線の保護

 (ⅳ) 主通信系統から独立して無線電信局と船橋との間にある通信装置

 (v) 七十五海里を超える送信機の通達距離

   第十一規則 無線電信自動警急機

(a) 千九百六十五年五月二十六日後に備える無線電信自動警急機は、少なくとも次の要件を満たすものでなければならない。

 (i) 受信機入力における信号の強さが百マイクロボルトを超え一ボルト未満である場合においていかなる種類の妨害もないときに、手動調整によることなく、無線通信規則に従つて操作する海岸局送信機、船舶の非常送信機又は救命用の端艇及びいかだの送信機により無線電信遭難周波数で送信される無線電信警急信号によつて作動することができるものでなければならない。

 (ii) いかなる種類の妨害もない場合には、三又は四の連続する線であつて、その一の長さが三・五秒から六秒近くまでにあり、一の間隔の長さが一・五秒から実行可能な最小値(なるべく十ミリ秒以下)までにあるものによつて作動する ことができるものでなければならない。

 (iii) 空電によつて、又は無線電信警急信号以外の信号であつて(a)(ii)に規定する許容限界内にないものによつて作動するものであつてはならない。

 (ⅳ) 無線電信自動警急機の選択度は、無線電信遭難周波数から各側に四キロヘルツ以上八キロヘルツ以下にわたる周波数帯において実質的に一様な感度を有するものでなければならず、また、最良の技術的手段によつてこの周波数帯外 においてできる限り速やかに減衰する感度を有するものでなければならない。

 (v) 実行可能なときは、空電又は妨害信号がある場合において合理的な短時間で無線電信警急信号を容易に識別し得る状態になるように、自動的に調整を行うものでなければならない。

 (vi) 無線電信警急信号で作動する場合又は故障の場合に、無線電信室、無線通信士の睡眠場所及び船橋において連続可聴警報を発するものでなければならない。この警報は、実行可能なときは、全警急受信系統のいずれの部分の故障の場合にも発するものでなければならない。この警報を停止させるためのスイッチは、一のみとし、無線電信室に取り付ける。

 (vii) 無線電信自動警急機を定期的に試験するため、無線電信遭難周波数にあらかじめ同調させた発振器及び電鍵装置であつて(a)(i)に規定する最小の強さの無線電信警急信号を発生させるものを取り付ける。また、無線電信自動警急機で受信した信号を聴く目的で頭掛け受話器を接続するための装置を取り付ける。

 (viii) 海上において船舶で経験する悪条件と同等の振動、湿気及び温度変化に耐えることができるものでなければならず、そのような条件においてなお作動することができるものでなければならない。

(b) 主管庁は、新型式の無線電信自動警機を承認するに先立ち、実際の作動状態と同等の作動状態の下で行う実地試験により、この警急機が(a)に定める要件を満たしていることを確認する。

(c) 無線電信自動警急機を備える船舶については、無線通信士は、海上にある間、少なくとも二十四時間に一回その機能を試験する。無線電信自動警急機が可動状態にない場合には、無線通信士は、その事実を船長又は船橋の当直職員に報告する。

(d) 無線通信士は、無線電信自動警急機がその通常の空中線に接続した状態において正常に機能するかどうかを、信号を聴守することにより及びその信号と主設備によつて無線電信遭難周波数で受信した類似の信号とを比較することにより、定期的に点検する。

(e) 無線電信自動警急機は、実行可能な限り、空中線に接続したときに方向探知機の精度に影響を及ぼすものであつてはならない。

   第十二規則 方向探知機

(a)(i) 次章第十二規則の規定により要求される方向探知機は、高性能のものでなければならず、最小限の受信機雑音において信号を受信すること並びに真方位及び真方向を決定するための方位を測定することができるものでなければならない。

 (ii) 方向探知機は、遭難通信用、方向探知用及び海上無線標識用として無線通信規則により割り当てられた無線電信周波数で信号を受信することができるものでなければならない。

 (iii) 方向探知機は、妨害がない場合には、毎メートル五十マイクロボルト程度の低い電界強度の信号で正確な方位を測定するために十分な感度を有するものでなければならない。

 (ⅳ) 方向探知機は、実行可能な限り、機械的雑音その他の雑音により方位の正確な測定に対して生ずる妨害をできる限り少なくする位置に設ける。

 (v) 方向探知用空中線系は、実行可能な限り、他の空中線、デリック、鋼索その他の大きな金属体が近接していることにより方位の正確な測定に対して生ずる妨害をできる限り少なくするように取り付ける。

 (vi) 方向探知機のある場所と船橋との間には、効果的な相互式の呼出し及び通話の装置を取り付ける。

 (vi) 方向探知機は、最初に設ける時に、主管庁の認めるところにより較正する。空中線の位置又は甲板上の構造物の位置に変化があつた場合において、その変化が方向探知機の精度に対して感知し得る程度の影響を及ぼすときは、較正は、方位の照合又は追加の較正によつて確かめる。較正についての詳細は、一年ごとに、又はできる限りこれに近い間隔で点検する。較正及びその精度について行う点検は、記録しておく。

(b)(i) 無線電話遭難周波数でホーミングをするための無線設備は、この周波数で、船首からいずれの側にも三十度の円弧の範囲内において、センスの不明確さなしに方向探知を行うことができるものでなければならない。

 (ii) (b)(i)の無線設備の設置及び試験に当たつては、これに関連する国際無線通信諮問委員会(CCIR)の勧告に妥当な考慮を払う。

 (iii) (b)の規定により要求されるホーミング能力を確保するため、適当な措置をとる。技術上の困難のためこのホーミング能力を確保することができない場合には、主管庁は、個々の船舶につき、(b)の要件を免除することができる。

   第十三規則 発動機付救命艇に取り付ける無線電信設備

(a) 前章第十四規則の規定により要求される無線電信設備には、送信機、受信機及び電源を含める。この無線電信設備は、非常の際に熟練者でない者でも使用し得るように設計する。

(b) 送信機は、無線電信遭難周波数で、無線通信規則により同周波数について割り当てられた発射の種別を使用して送信することができるものでなければならない。送信機は、また、四千キロヘルツと二万七千五百キロヘルツとの間の周波数帯において救命用の端艇及びいかだのために無線通信規則により割り当てられた周波数で、無線通信規則によりこの周波数について割り当てられた発射の種別を使用して送信することができるものでなければならない。

(c) 送信機は、無線通信規則において変調発射をすることを定めている場合には、七十パーセント以上の変調の深さ及び四百五十ヘルツと千三百五十ヘルツとの間の変調周波数を有するものでなければならない。

(d) 送信機には、手送用電鍵のほかに、無線電信警急信号及び無線電信遭難信号の送信のための自動電鍵装置を取り付ける。

(e) 送信機は、無線電信遭難周波数において、固定した空中線に接続した場合に二十五海里の最小通常通達距離(この章の第十規則(g)に定める。)を有するものでなければならない。 (注)

   注 電界強度を測定しない場合には、喫水線からの空中線高さと空中線電流(実効値)との積が十メートル・アンペアであるときにこの通達距離が得られるとみなすことができる。

(f) 受信機は、無線電信遭難周波数で、無線通信規則により同周波数について割り当てられた発射の種別を受信することができるものでなければならない。

(g) 電源は、通常の使用状態において連続して四時間送信機に給電するために十分な容量の蓄電池で構成する。蓄電池が充電を必要とする型式のものである場合には、船舶の電源から充電するための装置を取り付ける。更に、救命艇の進水後に蓄電池に充電するための装置を取り付ける。

(h) 前章第十四規則の規定により要求される無線電信設備及び探照燈のための電力を同一の電池から供給する場合には、その電池は、探照燈の追加の負荷に対しても給電するために十分な容量を有するものでなければならない。

(i) 固定型の空中線は、実行可能な最も高い位置に支持するための装置とともに備える。更に、実行可能なときは、たこ又は気球によつて支持する空中線を備える。

(j) 無線通信士は、船舶が海上にある間、一週間ごとに、適当な擬似空中線を使用して送信機の試験をするものとし、また、電池が充電を必要とする型式のものである場合には、完全に充電する。

   第十四規則 救命用の端艇及びいかだのための持運び式無線装置

(a) 前章第十三規則の規定により要求される装置には、送信機、受信機、空中線及び電源を含める。この装置は、非常の際に熟練者でない者でも使用し得るように設計する。

(b) 装置は、容易に持ち運ぶことができ、水密なものであり、海水に浮くことができ、かつ、損傷を与えることなく海上に投下することができるものでなければならない。新装置は、実行可能な限り軽量かつ小型のものでなければならず、また、救命艇及び救命いかだの双方に使用することができるものであることが望ましい。

(c) 送信機は、無線電信遭難周波数で、無線通信規則により同周波数について割り当てられた発射の種別を使用して送信することができるものでなければならず、また、四千キロヘルツと二万七千五百キロヘルツとの間の周波数帯において救命用の端艇及びいかだのために無線通信規則により割り当てられた無線電信周波数で、無線通信規則によりこの周波数について割り当てられた発射の種別を使用して送信することができるものでなければならない。もつとも、主管庁は、送信機を、四千キロヘルツと二万七千五百キロヘルツとの間の周波数帯において救命用の端艇及びいかだのために無線通信規則により割り当てられた無線電信周波数での送信に代えて又は当該送信に加えて、無線電話遭難周波数で、無線通信規則により同周波数について割り当てられた発射の種別を使用して送信することができるものとすることを認めることができる。

(d) 送信機は、無線通信規則において変調発射をすることを定めている場合には、七十パーセント以上の変調の深さを有するものでなければならず、また、電信発射の場合には、四百五十ヘルツと千三百五十へルツとの間の変調周波数を有するものでなければならない。

(e) 送信機には、手送用電鍵のほかに、無線電信警急信号及び無線電信遭難信号の送信のための自動電鍵装置を取り付ける。送信機が無線電話遭難周波数で送信し得るものである場合には、送信機には、無線電話警急信号を送信するため、この章の第十六規則(e)の規定に適合する無線電話警急信号自動発生装置を取り付ける。

(f) 受信機は、無線電信遭難周波数で、無線通信規則により同周波数について割り当てられた発射の種別を受信することができるものでなければならない。送信機が無線電話遭難周波数で送信し得るものである場合には、受信機は、また、同周波数で、無線通信規則により同周波数について割り当てられた発射の種別を受信することができるものでなければならない。

(g) 空中線は、自立型の空中線又は救命艇のマストによつて実行可能な最も高い位置に支持し得る空中線とする。更に、実行可能なときは、たこ又は気球によつて支持する空中線を備えることが望ましい。

(h) 送信機は、(a)の規定により要求される空中線に十分な無線周波数出力(注)を供給するものでなければならず、手動発電機から給電することが望ましい。電池から給電する場合には、電池は、耐久型のものでかつ十分な容量のものであることを確保するために主管庁が定める条件を満たすものでなければならない。

   注 次の性能は、この第十四規則の規定に適合するものとみなすことができる。

   最終段の陽極に少なくとも十ワットの入力又は十五オームの有効な抵抗と100 × 10^-12 ファラッドの容量とを直列にした擬似空中線において五百キロヘルツで少なくとも二・〇ワット(A二発射)の無線周波数出力。変調の深さは、少なくとも七十パーセントとする。

(i) 無線通信士又は、該当する場合には、無線電話通信士は、船舶が海上にある間、一週間ごとに、適当な擬似空中線を使用して送信機の試験をするものとし、また、電池が充電を必要とする型式のものである場合には、完全に充電する。

(j) この第十四規則の規定の適用上、「新装置」とは、この条約の効力発生の日の後に船舶に備える装置をいう。

   第十五規則 無線電話局

(a) 無線電話局は、船舶の上部に設けるものとし、通報及び信号の正確な受信を妨げるおそれのある雑音からできる限り保護される位置になければならない。

(b) 無線電話局と船橋との間には、効果的な通信手段がなければならない。

(c) 正確な時計を、無線電話操作位置から容易に文字板全体を見ることができる位置に、確実に取り付ける。

(d) 無線電話設備の通常の照明用に給電する系統から独立した確実に機能する非常燈を備えるものとし、無線電話設備の操作装置、(c)の規定により要求される時計及び(f)の規定により要求される指示表を十分に照明するようにこれを恒久的に取り付ける。

(e) 電源が電池である場合には、無線電話局には、充電状態を計測する装置を備える。

(f) 無線電話による遭難通信のための手続について明確にまとめた指示表を、無線電話操作位置からその全体を見ることができるように掲げる。

   第十六規則 無線電話設備

(a) 無線電話設備には、送信及び受信の設備並びに適当な電源(以下「送信機」、「受信機」、「無線電話遭難周波数聴守受信機」又は「電源」という。)を含める。

(b) 送信機は、無線電話遭難周波数及び千六百五キロヘルツと二千八百五十キロヘルツとの間の周波数帯にある他の少なくとも一の周波数で、無線通信規則によりこれらの周波数について割り当てられた発射の種別を使用して送信することができるものでなければならない。通常の操作において、両側波帯送信又は全搬送波の単側波帯送信 (A三H)は、尖頭の強さで少なくとも七十パーセントの変調の深さを有するものでなければならない。低滅搬送波又は抑圧搬送波の単側波帯送信 (A三A又はA三J)の変調は、相互変調積が無線通信規則において定める値を超えてはならない。

(c)(i) 総トン数五百トン以上千六百トン未満の貨物船については、送信機は、百五十海里の最小通常通達距離を有するものでなければならない。すなわち、昼間において、通常の状態及び状況の下で、明確に認識し得る信号をこの通達距離にわたつて船舶から船舶に送信することができるものでなければならない。(変調しない搬送波により受信機において生ずる電界強度の実効値が少なくとも毎メートル二十五マイクロボルトである場合に、通常、明確に認識し得る信号が受信される。)(注)

   注 電界強度を測定しない場合には、十五ワットの空中線電力(変調しない搬送波)及び二十七パーセントの空中線能率によつてこの通達距離が得られるとみなすことができる。

 (ii) 総トン数三百トン以上五百トン未満の貨物船について

  (1) 現存設備については、送信機は、少なくとも七十五海 里の最小通常通達距離を有するものでなければならない。

  (2) 新設備については、送信機は、少なくとも十五ワットの空中線電力(変調しない搬送波)を供給するものでなければならない。

(d) 送信機には、誤つて作動させることを防止するように設計された無線電話警急信号自動発生装置を取り付けるこの装置は、遭難通報を直ちに送信し得るようにいつでも作動を停止することができるものでなければならない。適当な擬似空中線を使用して、無線電話遭難周波数以外の周波数で、この装置が正常に機能するかどうかを定期的に点検するための措置をとる。

(e) (d)の規定により要求される無線電話警急信号自動発生装置は、次の要件を満たすものでなければならない。

 (i) 信号音の周波数の許容偏差は、正負一・五パーセントとする。

 (ii) 信号音の長さの許容偏差は、正負五十ミリ秒とする。

 (iii) 連続する信号音の間隔の長さは、五十ミリ秒を超えてはならない。

 (ⅳ) 強信号音の振幅の弱信号音の振幅に対する比率は、一から一・二までの範囲内のものでなければならない。

(f) (a)の規定により要求される受信機は、無線電話遭難周波数及び千六百五キロヘルツと二千八百五十キロヘルツとの間の周波数帯にある海上無線電話局が利用し得る他の少なくとも一の周波数で、無線通信規則によりこれらの周波数について割り当てられた発射の種別を受信することができるものでなければならない。更に、受信機は、気象通報その他主管庁が航行の安全に関して必要と認める通報の無線電話による送信に使用する他の周波数で、無線通信規則によりこの周波数について割り当てられた発射の種別を受信することができるも のでなければならない。受信機は、受信機入力が五十マイクロボルト程度の低いものである場合において、拡声器によつて信号を起こすために十分な感度を有するものでなければならない。

(g) 無線電話遭難周波数聴守受信機は、あらかじめ無線電話遭難周波数に同調させておく。無線電話警急信号がない間拡声器を作動させないためのろ波装置その他の装置をこの受信機に取り付ける。この装置は、スイッチを容易に開閉することができるものでなければならず、聴守の維持が船舶の安全な航行を妨げる状態にあると船長が認める場合に使用することができる。

(h) 手動切換えを使用する場合に送信から受信に迅速に切り換えることができるように、実行可能なときは、切換装置の操作部をマイクロホン又は送受話器に取り付ける。

(i) 船舶が海上にある間、(c)の規定により要求される通常通達距離にわたつて無線電話設備を操作するために十分な主電源を常に利用することができるようにしておく。電池を備える場合には、電池は、送信機及び受信機を通常の使用状態において連続して六時間以上操作するために十分な容量をあらゆる状況において有するものでなければならない。(注)千九百五十二年十一月十九日以後に設けられた総トン数五百トン以上千六百トン未満の貨物船の無線電話設備については、主電源が船舶の上部にない限り、補助電源を船舶の上部に備える。

   注 六時間の保有容量を要求される電池によつて給電する電気的負荷を決定するため、次の式が手引として推奨される。

   言語送信に必要な電流消費量のち1/2+受信機の電流消費量+遭難又は非常の際にその電池が給電することがある追加の負荷の電流消費量

(j) 補助電源は、備える場合には、次の物に給電するためにのみ使用することができる。

 (i) 無線電話設備

 (ii) この章の第十五規則(d)の規定により要求される非常燈

 (iii) (d)の規定により要求される無線電話警急信号自動発生装置

 (ⅳ) VHF設備

(k) 補助電源を備える場合には、(j)の規定にかかわらず、主管庁は、追加の負荷を迅速に断ち得ること及び電源が追加の負荷に対して給電するために十分な容量を有することを条件として、方向探知機に及び端艇甲板上の非常照明等全体が船舶の上部にある少数の低電力の非常回路に補助電源を使用することを認めることができる。

(l) 船舶が海上にある間、備えるいずれの電池も、(i)の規定に適合するように充電しておく。

(m) 空中線を取り付けるものとし、また、総トン数五百トン以上千六百トン未満の貨物船については、空中線が振動することのある支持物の間に張られる場合には、破断しないように保護する。更に、直ちに取り付け得るように完全に組み立てた予備の空中線を備えるものとし、実行不可能な場合には、予備の空中線を張ることができるように、十分な空中線の線条及び絶縁物を備える。また、空中線を張るために必要な工具を備える。

   第十七規則 VHF無線電話局

(a) 次章第十八規則に規定するVHF無線電話局を設ける場合には、船舶の上部に設けるものとし、これに、この第十七規則の規定に適合するVHF無線電話設備を含める。このVHF無線電話設備は、送信機及び受信機並びにこれらを定格電力で作動させ得る電源並びに運用周波数における信号の有効な輻射及び受信に適した空中線から成る。

(b) このVHF設備は、VHF海上移動無線電話業務に用いる設備について無線通信規則において定める要件を満たすものでなければならず、また、無線通信規則において定める通信路で、次章第十八規則の締約政府の要求するところにより運用することができるものでなければならない。

(c) 締約政府は、送信機の無線周波数搬送波の出力が十ワットを超えることを要求してはならない。空中線は、実行可能な限り、全方向に障害物のない位置に取り付ける。(注)

   注 例えば、水面上九・一五メートル(三十フィート)の高さにある一の垂直偏波の単一利得の空中線、十ワットの無線局波数出力を有する送信機及び二十デシベルの信号対雑音比に対し入力端子において二マイクロボルトの感度を有する受信機を船船に備えることが考えられる。

(d) 航行の安全のために要求されるVHF通信路の制御器は、操舵を指揮する場所に近い船橋内の位置において直ちに使用することができるようにしておくものとし、また、必要な場合には、船橋の両翼から無線通信を行うことを可能にする設備を設ける。

   第十八規則 無線電話自動警急機

(a) 無線電話自動贅急機は、少なくとも次の要件を満たすものでなければならない。

 (i) 同調回路その他の信号音選択装置の最大応答周波数については、許容偏差は、正負一・五パーセントとし、また、その応答は、最大応答周波数の三パーセント以内の周波数について最大応答の五十パーセントを下回ってはならない。

 (ii) 雑音及び妨害がない場合において、警急信号が四秒以上六秒以内継続したときに作動することができるものでなければならない。

 (iii) 空電によつて及び警急信号以外の強力な信号によつて引き起こされる断続的な妨害状態において、無線電話自動警急機によつて聴守が維持されている間なるべく手動調整を行うことなく、警急信号に応ずるものでなければならない。

 (ⅳ) 空電によつて又は警急信号以外の強力な信号によつて作動するものであつてはならない。

 (v) 会話を確実に送信し得る距離以遠に有効なものでなければならない。

 (vi) 海上において船舶で経験する悪条件と同等の振動、湿気、温度変化及び電源電圧の変動に耐えることができるものでなければならず、そのような条件においてなお作動することができるものでなければならない。

 (vii) 実行可能な限り、聴守時間中無線電話自動警急機が正常に機能することを妨げるような故障について、警報を発するものでなければならない。

(b) 主管庁は、新型式の無線電話自動警急機を承認するに先立ち、実際の作動状態と同等の作動状態の下で行う実地試験により、この警急機が(a)に定める要件を満たしていることを確認する。

  D部 無線日誌

   第十九規則 無線日誌

(a) この章の第三規則又は第四規則に規定する無線電信局を設ける船舶に対し無線通信規則により要求される無線日誌(無線業務日誌)は、航海中無線電信室に備えておく。無線通信士は、氏名、聴守を開始し及び終了した時刻並びに聴守中に生じた無線業務に関連する事件であつて海上における人命の安全にとつて重要であると認められるものについて無線日誌に記録する。更に、次の事項についても、無線日誌に記録する。

 (i) 無線通信規則により要求される記録事項

 (ii) 主管庁の定める形式で記録する保守の詳細(電池の充電の記録を含む。)

 (iii) この章の第十規則(p)の要件が満たされたことについての毎日の記録

 (ⅳ) この章の第十規則(s)の規定により行われた補助送信機及び補助電源の試験の詳細

 (v) 無線電信自動繁急機を備える船舶について、この章の第十一規則(c)の規定により行われた試験の詳細

 (vi) 発動機付救命艇に取り付ける送信機について、電池の維持の詳細(この章の第十三規則(j)の規定により要求される充電が行われた場合には、その記録を含む。)及び同規定により要求される試験の詳細

 (vii) 救命用の端艇及びいかだのための持運び式無線装置について、電池の維持の詳細(この章の第十四規則(i)の規定により要求される充電が行われた場合には、その記録を含む)及び同規定により要求される試験の詳細

 (viii) この章の第六規則(d)の規定により聴守を中断した時刻及びその理由並びに聴守を再開した時刻

(b) この章の第四規則の規定により無線電話局を設ける船舶について無線通信規則により要求される無線日誌(無線業務日誌)は、聴守を維持する場所に備えておく。資格のある通信士及びこの章の第七規則の規定により聴守を行う船長、職員又は乗組員は、それぞれ、氏名及び聴守中に生じた無線業務に関連する事件であつて海上における人命の安全にとつて重要と認められるものの詳細を無線日誌に記録する。更に、次の事項についても、無線日誌に記録する。

 (i) 無線通信規則により要求される記録事項

 (ii) 船舶の出港時における聴守の開始時刻及び船舶の入港時における聴守の終了時刻

 (iii) 何らかの理由により聴守を中断した時刻及びその理由並びに聴守を再開した時刻

 (ⅳ) 電池を備える場合にはその維持の詳細(この章の第十六規則(l)の規定により要求される充電の記録を含む。)

 (v) 救命用の端艇及びいかだのための持運び式無線装置について、電池の維持の詳細(この章の第十四規則(i)の規定により要求される充電がされた場合には、その記録を含む。)及び同規定により要求される試験の詳細

(c) 無線日誌は、主管庁によつて検査の権限を与えられた職員が検査することができるようにしておく。

  第五章 航行の安全

   第一規則 適用

 この章の規定は、別段の明文の規定がない限り、軍艦並びに専ら北アメリカの大湖並びにこれらに接続し及び附属する水域(カナダのケベック州モントリオールのセント・ランバート・ロックの下流側出口を東端とする。)を航行する船舶を除くほか、あらゆる航海に従事するすべての船舶に適用する。

   第二規則 危険通報

(a) 氷、遺棄物その他の航行に対する直接の危険若しくは熱帯性暴風雨に遭遇し、強風を伴い上部構造物に激しい着氷をもたらす氷結気温に遭遇し又は暴風雨警報を受けていないビューフォート風力階級十以上の風に遭遇した船舶の船長は、利用し得るあらゆる手段によつて、付近の船舶に対し、及び通信可能な最初の海岸地点にある権限のある当局に対し、危険通報を送信する。危険通報を送信する形式は、任意とする。危険通報は、普通語 (英語が望ましい。)又は国際信号書に定める信号のいずれによつても送信することができる。危険通報は、付近のすべての船舶に対し放送すべきであり、また、通信可能な最初の海岸地点に向け送信して、適当な当局に転送することを要請すべきである。

(b) 締約政府は、(a)に規定する危険通報を受けた場合に直ちにこれを関係者に知らせ、かつ、他の関係政府に連絡することを確保するため、必要な措置をとる。

(c) (a)に規定する危険通報の送信は、関係船舶について無料とする。

(d) (a)の規定により発せられる無線によるすべての危険通報には、前章第二規則に定義する無線通信規則において定める手続に従い、安全信号を前置する。

   第三規則 危険通報に必要な情報

 危険通報には、次の情報が要求される。

(a) 氷、遺棄物その他の航行に対する直接の危険

 (i) 観測した氷、遺棄物又は危険の種類

 (ii) 最後に観測した時における氷、遺棄物又は危険の位置

 (iii) 危険を最後に観測した日時(グリニッジ平時)

(b) 熱帯性暴風雨(西インド諸島のハリケーン、東シナ海及び南シナ海の台風、インド洋のサイクローン並びに他の海域のこれらに類似する性格の暴風雨)

 (i) 熱帯性暴風雨に遭遇した旨の情報。この情報の送信義務は、広く解釈するものとし、付近に熱帯性暴風雨が発達しつつあり又は存在すると船長が信ずる十分な理由があるときはいつでも、危険通報を送信する。

 (ii) 観測を行つた日時(グリニッジ平時)及びその時における船舶の位置

 (iii) 通報には、次の情報をできる限り多く含める。

なるべく補正された気圧(ミリバール、ミリメートル又はインチのいずれによつているか及び補正したかを示す。)

    気圧傾向(観測時直前の三時間の気圧変化)

    真風向

    風力(ビューフォート風力階級)

    海面の状態(滑らかであること、かなり波があること、高い波があること又は荒れていること。)

    うねり(低いうねり、やや高いうねり又は高いうねり)及びその真方向。うねりの周期又は波長(短いこと、中程度であること又は長いこと。)も有用である。

    船舶の真針路及び速力

(c) その後の観測

船長が熱帯性暴風雨その他の危険な暴風雨について危険通報を送信した場合には、その後も、船舶が当該暴風雨の影響の下にある限り、実行可能なときは一時間ごとに、いかなる場合にも三時間を超えない間隔で、観測を実施しかつこれを送信することが望ましい。もつとも、これは、義務的ではない。

(d) 暴風雨警報を受けていないビューフォート風力階級十以上の風

この情報は、(b)に規定する熱帯性暴風雨以外の暴風雨を対象とする。このような暴風雨に遭遇した場合には、危険通報には、海面及びうねりに関する詳細を除くほか、(b)に掲げる情報と同様の情報を含める。

(e) 強風を伴い上部構造物に激しい着氷をもたらす氷結気温

 (i) 日時(グリニッジ平時)

 (ii) 気温

 (iii) 海水温度(実行可能な場合)

 (ⅳ) 風力及び風向

  TTT 氷。大きい氷山を見た。四六〇五N、四四一〇W、五月十五日○八○○GMT。

遺棄物

  TTT 遺棄物。ほとんど沈んだ遺棄物を見た。四○○六N、一二四三W、四月二十一日一六三〇GMT。

航行に対する危険

  TTT 航行。某燈船は、正常の位置にない。一月三日一八○○GMT。

熱帯性暴風雨

  TTT 暴風雨。八月十八日〇〇三〇GMT。二〇〇四N、一一三五四E。気圧計補正九九四ミリバール、傾向六ミリバール下降。北西の風、風力九、強いスコール。東の高いうねり。針路〇六七、五ノット。

  TTT 暴風雨。ハリケーンの接近の兆候がある。九月十四日一三〇〇GMT。 二二〇〇N、七二三六W。気圧計補正二九・六四インチ、傾向〇・〇一五インチ下降。北東の風、風力八、ひんぱんな雨を伴うスコール。針路○三五、九ノット。

  TTT 暴風雨。強いサイクローンが発生した模様である。五月四日○二○○GMT。一六二〇N、九二〇三 E。気圧計無補正七五三ミリメートル、傾向五ミリメートル下降。南微西の風、風力五。針路三〇〇、八ノット。

  TTT 暴風雨。南東に台風。六月十二日〇三〇〇GMT。一八一二N、一二六〇五E。気圧計が急速に下降しつつある。北の風が強まりつつある。

  TTT 暴風雨。風力一一、暴風雨警報を受けていない。五月四日、〇三〇〇GMT。四八三〇N、 三〇W。 気圧計補正九八三ミリバール、傾向四ミリバール下降。南西の風、風力一一、順転。針路二六〇、六ノット。

氷結

  TTT 激しく着氷しつつある。三月二日一四〇〇GMT。六九N、一〇W。気温一八。海水温度二九。北東の風、風力八。

   第四規則 気象業務

(a) 締約政府は、海上における船舶による気象資料の収集を奨励すること並びに航行を援助するために最も適当な方法によつてこれらの資料の解析、通報及び交換を行うことを約束する。主管庁は、精度の高い測器の使用を奨励するものとし、また、要請に応じてこれらの測器の検査が容易に行われるようにする。

(b) 締約政府は、特に、実行可能な限り気象に関する次の措置をとるために協力することを約束する。

 (i) 強風、暴風雨及び熱帯性暴風雨につき、無線による通報の送信及び沿岸地点における適当な信号の表示により、船舶に警報すること。

 (ii) 航海に適した気象報(天候、波及び氷に関する情報、予報並びに実行可能なときは簡単な天気図を海上において作成するために十分な追加の情報を含む。)を無線通信によつて毎日発表すること及び適当な天気図模写送信を奨励すること。

 (iii) 海上における気象業務の効果的な実施のために必要な出版物を作成しかつ発行すること並びに、実行可能なときは、出港する船舶に対する情報として毎日の天気図を刊行するための及びこれを利用に供するための措置をとること。

 (ⅳ) 特定の船舶に対し、公の気象業務における使用の検定を受けた測器(例えば、気圧計、自記気圧計、湿度計及び海水温度を測定する適当な装置)を備えさせるための及び地上シノプチック観測の主標準時に(状況が許すときは、一日に四回以上) 気象観測を行わせるための措置をとること並びに、その他の船舶に対し、特に船舶の交通量が少ない海域にある場合に簡略な形式で観測を行うよう奨励すること。これらの船舶は、各種の公の気象業務のため無線通信によつてその観測の結果を通報するものとし、また、付近の船舶のためその情報を繰り返す。これらの船舶は、熱帯性暴風雨又は熱帯性暴風雨と推測されるものの付近にある場合に、船舶の職員の暴風雨中における航行上の優先職務に留意した上で、実行可能なときは一層ひんぱんに観測を行うよう、及びその結果を通報するよう奨励される。

 (v) 海岸無線局が気象通報について船舶からの受信及び船舶への送信を行うための措置をとること。海岸と直接に通信することができない船舶に対しては、その気象通報を海洋気象観測船又は海岸と連絡のあるその他の船舶を中継して 送信するよう奨励する。

 (vi) 船長に対し、五十ノット(ビューフォート風力階級十)以上の風に遭遇した場合に付近の船舶及び海岸局に通報するよう奨励すること。

 (vii) (a)及び(b)に規定する国際的な気象業務について画一的な手続を採用するよう努力すること並びに実行可能な限り世界気象機関の技術規則及び勧告に従うよう努力すること。締約政府は、この条約の実施に当たつて生ずることのある気象上の問題を研究及び助言のため同機関に付託することができる。

(c) この第四規則に規定する気象報は、無線通信規則において定める送信の形式で提供するものとし、無線通信規則において定める優先順位により送信する。気象の情報、予報及び警報が「各局あて」に送信されている間は、船舶局は、無線通信規則に従う。

(d) 予報、警報、実況報その他の船舶のための気象報は、関係締約政府相互間の取極に従い、各種の区域を担当するため最も適した位置にある国の機関が発表する。

   第五規則 氷の監視の業務

(a) 締約政府は、北大西洋における氷の監視の業務並びに氷の状態の調査及び観測を継続することを約束する。ニューファウンドランドのグランド・バンクス付近の氷山区域の南東、南及び南西の境界は、この危険区域の範囲を通過船舶に通報すること、氷の全般的状態を調査すること並びに監視船の作業区域内で援助を必要とする船舶及び乗組員に援助を与えることを目的として、氷の季節の全期間監視する。その他の季節においては、氷の状態の調査及び観測は、必要に応じて維持する。

(b) 氷の監視の業務並びに氷の状態の調査及び観測に使用される船舶及び航空機に対しては、この業務を管理する政府は、当該船舶及び航空機の本来の目的を妨げないこと及びこの業務の経費を増加させないことを条件として、他の任務を割り当てることができる。

   第六規則 氷の監視機関(管理及び経費)

(a) アメリカ合衆国政府は、氷の監視機関の管理並びに氷の状態の調査及び観測(これらの調査及び観測から得た情報の通報を含む。)を継続することに同意する。この監視機関の業務に特別の関心を有する締約政府は、この業務の維持及び遂行のための経費を分担することを約束するものとし、分担金は、氷の監視機関の監視する氷山区域を通航する各分担政府の船舶の合計総トン数を基礎として算定する。この業務に特別の関心を有する締約政府は、特に、この業務の維持及び遂行のための経費として、氷の監視機関の監視する氷山区域を氷の季節中に通航する自国の船舶の合計総トン数が氷の監視機関の監視する氷山区域を氷の季節中に通過するすべての分担政府の船舶の総合計総トン数に対して占める比率によつて算定される額を毎年分担することを約束する。この業務に特別の関心を有する非締約政府は、同一の算定基準により、この業務の維持及び遂行のための経費を分担することができる。管理政府は、毎年、各分担政府に対し、この業務の維持及び遂行のための総経費並びに各分担政府の分担金の明細書を提供する。

(b) 分担政府は、その分担金の額を変更し又はその支払を中止する権利を有し、また、関心を有する他の政府は、経費を分担することを約束することができる。当該権利を行使する分担政府は、その分担金の額を変更し又はその支払を中止する意思を通告した日の後の最初の九月一日まで、引き続き現行の経費の分担を引き受ける義務を負う。当該権利を行使するためには、当該分担政府は、前記の九月一日より少なくとも六箇月前に、管理政府に通告しなければならない。

(c) いずれかの時に、アメリカ合衆国政府が氷の監視機関の管理の業務を中止することを希望する場合、いずれかの分担政府が分担金の支払の義務を免れること若しくはその分担金の額を変更することについて希望を表明する場合又は他の締約政府が経費の分担を引き受けることを希望する場合には、分担政府は、相互の利益となるようにこの問題を解決する。

(d) 分担政府は、この章の第五規則及びこの第六規則の規定に関し、合意により、望ましいと認められる変更を随時加える権利を有する。

(e) この第六規則において分担政府間の合意により措置をとることができることが規定されている事項については、その措置をとるためいずれかの締約政府が行う提案は、管理政府に通報するものとし、管理政府は、他の分担政府に対しこの提案を受諾するかどうかを確かめるため照会し、照会の結果を他の分担政府及び提案を行つた締約政府に送付する。特に、業務の経費の分担については、三年を超えない間隔で分担政府が検討する。管理政府は、このために必要な措置をとる。

   第七規則 氷の付近における速力

 船舶の船長は、針路又はその付近に氷があるとの報告を受けた場合には、夜間においては、適度の速力で航行し、又は危険な区域を確実に避けるように針路を変更する。

   第八規則 航路指定

(a) 特に、船舶が集中する海域において、通航の分離を目的として採択された航路又は安全でない状態を避けることを目的として採択された航路に従うこと(船舶又は特定の種類の船舶が避けるべき区域として指定された区域の通航を避けることを含む。)は、航行の安全に貢献するものであり、すべての関係船舶に対しこれを実行するよう推奨する。

(b) 機関は、航路指定について及び船舶又は特定の種類の船舶が避けるべき区域について国際的な措置を決定しかつ採択するための唯一の国際機関として認められる。機関は、関連情報を収集し、締約政府に送付する。

(c) 航路を選定すること、航路に関する措置をとること及び船舶が集中する海域の範囲を画定することは、本来、関係政府の責任である。関係政府は、国際水域に及ぶ航路指定の方式又は機関によつて採択されることを希望する他の航路指定の方式の作成に当たつては、機関の公表する関連情報に妥当な考慮を払う。

(d) 締約政府は、採択された航路の適切な利用を確保するためその影響力を行使し、また、船舶の航路指定に関連して機関が採択した措置の遵守を確保するためその権限の範囲であらゆる努力を払う。

(e) 締約政府は、また、ニューファウンドランドのグランド・バンクスの付近を航行する船舶に対し、実行可能な限り北緯四十三度以北のニューファウンドランド漁場を避けるよう、並びに氷のため危険であると知られている区域及び信じられている区域の外を航行するよう勧奨する。

   第九規則 遭難信号の濫用

 船舶及び航空機に対し、国際遭難信号を船舶又は航空機が遭難していることを示す目的以外の目的に使用すること及び国際遭難信号と混同されることのある信号を使用することを禁止する。

   第十規則 遭難通報(義務及び措置)

(a) 海上にある船舶の船長は、発信源のいかんを問わず船舶若しくは航空機又はその救命用の端艇若しくはいかだが遭難しているとの信号を受けた場合には、全速力で遭難者の救助に赴かなければならず、可能なときは、その旨を遭難者に通報する。救助に赴くことが不可能である場合又は特殊の事情により不合理若しくは不必要であると認める場合には、船長は、遭難者の救助に赴かなかつた理由を航海日誌に記録する。

(b) 遭難船舶の船長は、救助の求めに応答した船舶の船長と可能なときは協議を行つた後、それらの船舶のうち救助を与えるため最も適当と認める一又は二以上の船舶を招集する権利を有するものとし、招集を受けた船舶の船長は、遭難者の救助のため全速力で航行して招集に応ずる義務を負う。

(c) 船舶の船長は、自己の指揮する船舶以外の船舶が招集を受けて救助に赴いたことを知つた場合には、(a)の規定による義務を解除される。

(d) 船舶の船長は、遭難者から又は遭難者の所在に到達した他の船舶の船長から救助の必要がなくなつた旨の通報を受けた場合には、(a)の規定による義務を解除されるものとし、また、自己の指揮する船舶が招集を受けたものであるときは、(b)の規定による義務を解除される。

(e) この第十規則の規定は、千九百十年九月二十三日にブラッセルで署名された海難における救援救助についての規定の統一に関する国際条約、特に同条約第十一条の規定による救助義務に影響を及ぼすものではない。

   第十一規則 信号燈

 国際航海に従事する総トン数百五十トンを超える船舶には、効果的な昼間信号燈を備えるものとし、この信号燈は、船舶の主電源のみに依存するものであつてはならない。

   第十二規則 船舶に備える航行設備

(a) 総トン数千六百トン以上の船舶には、主管庁の承認する型式のレーダーを設ける。レーダーの表示のプロッティングをするための設備を船橋に備える。

(b) 国際航海に従事する総トン数千六百トン以上の船舶には、前章第十二規則の規定に適合する方向探知機を設ける。主管庁は、この装置を設けることが不合理又は不必要であると認める海域においては、総トン数五千トン未満の船舶について、この装置が、航海用具としても、また、船舶、航空機又は救命用の端艇若しくはいかだの位置を探知する手段としても有用である事実に妥当な考慮を払つた上で、この要件を免除することができる。

(c) 国際航海に従事する総トン数千六百トン以上の船舶には、磁気コンパス及びジャイロ・コンパスを備える。主管庁は、総トン数五千トン未満の船舶については、ジャイロ・コンパスを要求することが不合理又は不必要であると認める場合には、この要件を免除することができる。

(d) 国際航海に従事する総トン数五百トン以上の新船には、音響測深装置を設ける。

(e) 装置を良好な状態に維持するため、あらゆる合理的な措置をとる。もつとも、レーダー、ジャイロ・コンパス又は音響測深装置が十分に機能しないことをもつて、船舶の航行を不可能にする理由又は修繕のための施設を容易に利用することができない港に停泊中の船舶の出港を遅らす理由としてはならない。

(f) 国際航海に従事する総トン数千六百トン以上の新船には、前章第十二規則(b)の規定に適合する無線電話遭難周波数でホーミングをするための無線設備を設ける。

   第十三規則 人員の配置

 締約政府は、海上における人命の安全の見地から、自国の船船について、十分かつ有効な人員の配置を確保すること又は必要に応じそのための措置をとることを約束する。

   第十四規則 航行援助施設

 締約政府は、交通量及び危険の程度によつて必要とされると認める航行援助施設(無線標識及び電子援助施設を含む。)を設け及びこれらの援助施設を維持するため、並びにこれらの援助施設に関する情報を関係者の利用に供するため、措置をとることを約束する。

   第十五規則 捜索及び救助

(a) 締約政府は、沿岸の監視のため及び沿岸水域における遭難者の救助のため必要な措置がとられることを確保することを約束する。これらの措置は、海上交通の密度及び航行上の危険を考慮した上で実行可能かつ必要と認められる海上安全施設の設置、運営及び維持を含むものでなければならず、また、可能な限り遭難者の位置の探知及び救助のために十分な手段を提供するものでなければならない。

(b) 締約政府は、現存の救助施設及びその変更の計画に関する情報を利用に供することを約束する。

   第十六規則 救命信号

 次の信号は、救命施設及び海上救助隊が遭難船舶又は遭難者と通信するとき、並びに遭難船舶又は遭難者が救命施設及び海上救助隊と通信するときに使用する。捜索及び救助業務に従事する航空機が船舶を誘導するために使用する信号は、(d)に示す。次の信号についての説明表は、この章の規定が適用される船舶の当直職員が直ちに利用することができるようにしておく。

(a) 船舶又は人が発した遭難信号に対する救命施設又は海上救助隊の応答

信号    意味    
昼間 オレンジ色発煙信号又は約一分の間隔で発射される三の単信号で構成する光と音響の組合せ信号(サンダーライト)

夜間 約一分の間隔で発射される三の単信号で構成する白色星火口ケット

「認めた。至急救助する。」 (この信号の繰返しは、同じ意味を表す。)
必要なときは、昼間信号を夜間に、夜間信号を昼間に使用することができる。


(b) 遭難船員又は遭難者を乗せた小艇を誘導するための上陸地信号

信号    意味    
昼間 白旗若しくは両腕の上下運動、緑色星火信号の発射又は発光信号装置若しくは音響信号装置による信号符字「K」(−・−)の信号

夜間白色の燈火若しくは炎火の上下運動、緑色星火信号の発射又は発光信号装置若しくは音響信号装置による信号符字「K」(−・−)の信号。方向(方向指示)は、安定した白色の燈火又は炎火を低く、観察者と直線上にあるように置くことによつて示すことができる。

「ここが上陸に最適の地点である」

昼間 白旗若しくは水平に伸ばした両腕の水平運動、赤色星火信号の発射又は 発光信号装置若しくは音響信号装置による信号符字「S」(・・・)の信号

夜間 白色の燈火若しくは炎火の水平運動、赤色星火信号の発射又は発光信号装置若しくは音響信号装置による信号符字「S」(・・・)の信号

「ここに上陸するのは、非常に危険である。」

昼間 白旗を水平に動かし、次いでその白旗を地上に置き、上陸好適地の方向に他の白旗を持つて行くこと、赤色星火信号を垂直に発射し、次いで上陸好適地の方向に白色星火信号を発射すること、又は信号符字「S」(・・・)を信号し、次いで、遭難舟艇のための上陸好適地がその接近方向より右側にある場合には信号符字「R」(・-・)を、遭難舟艇のための上陸好適地がその接近方向より左側にある場合には信号符字「L」(・−・・) を信号すること。

夜間 白色の燈火若しくは炎火を水平に動かし、次いでその白色の燈火若しくは炎火を地上に置き、上陸好適地の方向に他の白色の燈火若しくは炎火を持つて行くこと、赤色星火信号を垂直に発射し、次いで上陸好適地の方向に白色星火信号を発射すること、又は信号符字「S」(・・・)を信号し、次いで、遭難舟艇のための上陸好適地がその接近方向より右側にある場合には信号符字「R」(・ー・)を、遭難舟艇のための上陸好適地がその接近方向より左側にある場合には信号符字「L」(・−・・)を信号すること。

「ここに上陸するのは、非常に危険である。上陸に適した地点は、示す方向にある。」


(c) 沿岸の救命設備の使用に関連して用いる信号

信号    意味    

昼間 白旗若しくは両腕の上下運動又は緑色星火信号の発射

夜間 白色の燈火若しくは炎火の上下運動又は緑色星火信号の発射

一般に、「よろしい」 特に、「ロケット索をとつた。」「テール・ブーロックをしつかり縛つた。」「索をしつかり縛つた。」「救命袋に人を入れた。」「引け」

昼間 白旗若しくは水平に伸ばした両腕の水平運動又は赤色星火信号の発射

夜間 白色の燈火若しくは炎火の水平運動又は赤色星火信号の発射

一般に、「いけない。」特に、「緩めよ。」「「引くのをやめよ。」

(d) 捜索及び救助に従事する航空機が遭難航空機、遭難船舶又は遭難者の方へ船舶を誘導するために使用する信号(注)

注 これらの信号の変更についての予告は、必要に応じて機関が行う。

 (i) 航空機が順次行う次の動作は、遭難航空機又は遭難船舶の方へ船舶を誘導していることを意味する。

  (1) 船舶の上空を少なくとも一回旋回すること。

  (2) 船舶のすぐ前方でその針路を低空で横切り、かつ、スロットルを開閉し又はプロペラ・ピッチを変化させること。

  (3) 船舶を誘導する方向に機首を向けること。

    これらの動作の繰返しは、同じ意味を表す。

 (ii) 航空機が行う次の動作は、信号が向けられる船舶による救助の必要がなくなつたことを意味する。

   船舶のすぐ後方でその航跡を低空で横切り、かつ、スロットルを開閉し又はプロペラ・ピッチを変化させること。

   第十七規則 水先人用のはしご及び昇降機

 水先人を使用することがある航海に従事する船舶は、次の規定に適合するものとする。

(a) 水先人用はしご

(i) 水先人用はしごは、水先人が安全に乗船し及び下船することができるものでなければならず、清潔かつ良好な状態に整備しておく。水先人用はしごは、また、船舶の入港又は出港の際に関係当局の職員その他の者が使用することが できる。

 (ii) 水先人用はしごは、船舶のいずれの排水口からも離れ、各踏段が船側に確実に接し、また、船舶の細線から実行可能な限り離れることとなるような位置にあつて、かつ、水先人が一・五メートル(五フィート)以上九メートル(三十フィート)以下の高さまで登つた後に安全かつ容易に船舶に乗り込むことができる位置に取り付ける。船舶への出入りのための位置から水面に到達することができる単一のはしごを使用する。水先人用はしごを備えるに当たつては、船舶のあらゆる載貨状態、縦傾斜のあらゆる状態及び反対方向への十五度の横傾斜を考慮に入れる。海面から船舶への出入りのための位置までの距離が九メートル(三十フィート)を超える場合には、水先人用はしごから船舶への出入りは、舷側はしご又はこれと同等に安全なかつ利用しやすい他の手段による。

 (iii) 水先人用はしごの踏段は、次の要件を満たすものでなければならない。

  (1) 容易に表面が滑らない節のない一枚板であつて堅い木又はこれと同等の性質を有する他の材料のもので造ること。最下段から四段目までの踏段は、十分な強度及び剛性を有するゴム又はこれと同等の性質を有する他の適当な材料で造ることができる。

  (2) 長さ四百八十ミリメートル(十九インチ)以上、幅百十五ミリメートル(四・五インチ)以上及び厚さ二十五ミリメートル(一インチ)以上(滑り止めを除く。)のものであること。

  (3) 三百ミリメートル(十二インチ)以上三百八十ミリメートル(十五インチ)以下の等間隔で水平状態を保持するように取り付けること。

 (ⅳ) 水先人用はしごは、その元の構造に用いた方法とは異なる方法で取り付けた三以上の取替踏段を有してはならず、当該異なる方法で取り付けた踏段は、実行可能な限り速やかに、元の構造に用いられた方法で取り付ける踏段と取り 替える。取替踏段を踏段の側部のみぞによつてはしごのサイド・ロープに固定する場合には、みぞは、踏段の長辺に設ける。

 (v) 水先人用はしごの両側のサイド・ロープ は、それぞれ、周囲六十ミリメートル(二・二五インチ)以上の被覆しない二のマニラ・ロープで構成する。サイド・ロープは、最上部階段の下方で接合箇所のない連続したものでなければ ならない。船舶に適正に取り付けた周囲六十五ミリメートル(二・五インチ)以上の二のマン・ロープ及び一の安全索を必要なときに直ちに使用し得るようにはしごの近くに備えておく。

 (vi) 長さ一・八〇メートル(五フィート十インチ)以上の一枚板であつて堅い木又はこれと同等の性質を有する他の材料のもので造る当て木を、水先人用はしごのねじれを防止するような間隔で取り付ける。最下部の当て木は、はしごの下から五段目の踏段に取り付けるものとし、当て木の間隔は、九段を超えてはならない。

 (vii) 水先人用はしご、舷側はしごその他の設備の頂部から船舶への安全かつ容易な出入りを確保するための手段を備える。手すり又はブルワークに設ける出入口による出入りの場合には、適当なハンドホールドを取り付ける。ブルワークはしごによる出入りの場合には、ブルワークはしごは、ブルワーク・レール又はブルワーク台に確実に取り付けるものとし、二のハンドホールドを、〇・七〇メートル(二フィート三インチ)以上〇・八〇メートル(二フィート七インチ)以下の間隔で船舶の乗降位置に取り付ける。その二のハンドホールドは、その底部又はその付近及びこれより上方の位置で船舶の構造物に堅固に固定したもので、直径四十ミリメートル(一・五インチ)以上のもので、また、ブルワークの頂部から上方に一・二〇メートル(三フィート十一インチ)以上の高さのものでなければならない。

 (viii) 夜間には、舷側にある水先人用はしご及び水先人が船舶に乗り込む位置が十分に明るくなるように照明する。自己点火燈を備える救命浮環を、直ちに使用し得るように備えておく。投げ索を、必要に応じて直ちに使用し得るように備えておく。

 (ix) 水先人用はしごを船舶の両側で使用し得るようにするための措置をとる。

 (x) 水先人用はしごの取付け及び水先人の乗降は、船舶の責任のある職員が監督する。

 (xi) 防舷帯等の船舶構造上の特徴によつて(a)の規定の実施が妨げられる場合には、人が安全に乗降し得ることを確保するため、主管庁の認める特別の措置をとる。

(b) 水先人用昇降機

 (i) 水先人用昇降機を備える場合には、水先人用昇降機及びその附属設備は、主管庁の承認する型式のものでなければならない。水先人用昇降機は、水先人が安全な方法で乗降し得ること(水先人用昇降機から甲板に及び甲板から水先人用昇降機に安全に乗り移ることを含む。)を確保するような設計及び構造のものでなければならない。

 (ii) (a)の規定に適合する水先人用はしごを水先人用昇降機に隣接して甲板上に備えるものとし、直ちに使用することができるようにしておく。

   第十八規則 VHF無線電話局

 締約政府が、その主権の下にある海域を航行する船舶に対し、航行の安全の促進のために設定する制度に関連して用いるVHF無線電話局の設置を要求する場合には、当該VHF無線電話局は、前章第十七規則の規定に適合するものでなければならず、同章第八規則の規定により運用する。

   第十九規則 自動操舵装置の使用

(a) 交通の過密な海域において及び視界が制限された状態その他の危険な航行状態において自動操舵装置が使用される場合には、船舶の操舵を直ちに手で制御することができるようにする。

(b) (a)にいう場合においては、いつでも操舵制御を引き継ぐ用意のある適任の操舵員を当直航海士が速やかに用いることができるようにする。

(c) 自動操舵から手動操舵への及び手動操舵から自動操舵への切換えは、責任のある航海士により又はその監督の下に行われる。

   第二十規則 航海用刊行物

 船舶には、適当なかつ最新の海図、水路誌、燈台表、水路通報、潮汐表その他の予定された航海に必要な航海用刊行物を備える。

   第二十一規則 国際信号書

 この条約により無線電信設備又は無線電話設備を設けることを要求される船舶には、国際信号書を備える。国際信号書は、使用の必要があると主管庁が認める他の船舶にも備える。

 第六章 穀類の運送

  A部 一般規定

   第一規則 適用

 この章のA部からC部までの規定は、別段の明文の規定がない限り、この規則が適用される船舶による穀類の運送に適用する。

   第二規則 定義

(a) 「穀類」とは、小麦、とうもろこし、えん麦、ライ麦、大麦、米、豆及び種子並びにこれらの加工されたものであつてその性状が当該穀類の加工前の性状に類似しているものをいう。

(b) 「満載区画室」とは、区画室であつて、ばら積み穀類が積載されかつこの章の第三規則の規定の要求するところにより荷繰りをされ、可能な限り高く積載されているものをいう。

(c) 「部分積載区画室」とは、区画室であつてばら積み穀類が(b)に規定する状態で積載されていないものをいう。

(d) 「浸水角(θ1)」とは、船体、船楼又は甲板室の開口であつて風雨密に閉鎖することのできないものが水に没することとなる船舶の傾斜角をいう。この定義の適用上、小さい開口であつてその開口から浸水が広がることのないものは、開口として扱うことを要しない。

   第三規則 穀類の荷繰り

 ばら積み穀類の自由表面を平らにするため、及びばら積み穀類の移動による影響を最小にするため、必要かつ合理的な荷繰りをする。

(a) 満載区画室においては、ばら積み穀類は、甲板及びハッチ・カバーの下方の空間を可能な最大限度まで満たすように荷繰りをする。

(b) 部分積載区画室におけるばら積み穀類の自由表面は、積載後に平らにする。

(c) 承認の文書を発給する主管庁は、フィーディング・ダクト若しくは甲板における流人口又はこれらに類する設備を設ける区画室への穀類の自由流入によつて生ずる甲板下の空間の形状が空間深さの計算上満足すべきものであると認める場合には、この章の第九規則の規定により荷繰りを免除することができる。

   第四規則 非損傷時復原性の要件

(a) この第四規則の規定により要求される計算は、第二十一章第十九規則の規定により提供される復原性資料又はこの章の第十規則の規定に基づいて承認の文書を発給する主管庁の定める条件に従つて提供される復原性資料を基礎として行う。

(b) ばら積み穀類を運送する船舶の非損傷時復原性は、この章のB部に規定する方法によりばら積み穀類の移動による傾斜モーメントを考慮した上で、全航海を通じて少なくとも次の規準に適合することが証明されなければならない。

 (i) ばら積み穀類の移動による船舶の傾斜角は、十二度を超えてはならない。この章の第十規則の規定に基づいて承認を与える主管庁は、経験上必要と判断する場合には、一層小さい傾斜角を要求することができる。(注)

注 例えば、許容傾斜角は、静水中において暴露甲板の縁が水に没することとなる傾斜角に制限されることもある。

 (ii) 静復原力曲線図において、傾斜てこ曲線及び復原てこ曲線で囲まれる部分のうち、この二の曲線の縦座標の差が最大となる角度、四十度又は浸水角(θ1)のいずれか最小の角度までの部分の面積は、いかなる載貨状態においても、〇・ 〇七五メートル・ラジアン以上とする。

 (iii) タンク内の液体の自由表面による影響を補正した後の初期メタセンタ高さは、〇・三〇メートル以上とする。

(c) 船長は、締約政府である船積み港の国の政府から要求された場合には、ばら積み穀類の積載に先立ち、この章の第十規則及び第十一規則の規定により承認されかつ発給された資料を用いて、船舶が航海のすべての段階において(b)の規定により要求される復原性規準に適合する能力を有することを証明する。

(d) 船長は、穀類の積載後、船船が航行の開始に先立ち直立状態にあることを確保する。

   第五規則 縦通仕切り及び皿型積載

(a) 満載区画室及び部分積載区画室のいずれにおいても、ばら積み穀類の移動による不利な傾斜影響を滅ずる手段として、又はばら積み穀類の自由表面の移動を防止するために使用される上積み貨物の高さを制限する手段として、縦通仕切りを設けることができる。縦通仕切りは、穀類が漏れないように設けるものとし、この章のC部第一節の規定により造る。

(b) 満載区画室においてばら積み穀類の移動による不利な傾斜影響を減ずるために設ける縦通仕切りは、次の条件を満たすものでなければならない。

 (i) 甲板間区画室においては、甲板から甲板まで達すること。

 (ii) 船倉においては、甲板又はハッチ・カバーの下面から下方へこの章のB部第二節に規定する位置まで達すること。もつとも、亜麻種子その他これに類する性状を有する種子を積載する場合を除くほか、ハッチの直下に縦通仕切りを設けることに代えて、この章のC部第一節に規定する方法により皿型積載をすることができる。

(c) 部分積載区画室に設ける縦通仕切りは、穀類表面の上方のこの区画室の最大幅の八分の一に相当する高さの位置から穀類表面の下方のこれに相当する深さの位置まで達するものでなければならない。中心線仕切りは、上積み貨物の高さを制限するために使用する場合には、穀類表面の上方〇・六メートル以上の高さのものでなければならない。

(d) ばら積み穀類の移動による不利な傾斜影響は、区画室の両翼部及び両端部に袋入り穀類その他の移動することの少ない貨物を密に積み付けることによつて減ずることができる。

   第六規則 固定

(a) 部分積載区両室のばら積み穀類の自由表面は、この章の規定によりばら積み穀類の移動による不利な傾斜影響について考慮が払われている場合を除くほか、平らにし、かつ、穀類表面からその最大幅の十六分の一に相当する高さ又は一・二メールのいずれか大きい方の高さ以上の高さまで達する密に積み付けた袋入り穀類で押さえる。袋入り穀類に代えて、少なくともこれと等しい圧力を与える他の適当な貨物を使用することができる。

(b)  (a)にいう袋入り穀類その他の適当な貨物は、この章のC部第二節に定める方法で固定する。ばら積み穀類の自由表面は、また、同節に定める緊縛方法によつて固定することができる。

   第七規則 フィーダー及びトランク

 フィーダー及びトランクを設ける場合には、この章のB部第三節に規定する傾斜モーメントの計算に当たり、当該フィーダー及びトランクの効果について妥当な考慮を払う。当該フィーダーの境界を形成する仕切りの強度は、この章のC部第一節の規定に適合するものでなければならない。

   第八規則 共通積載

 下部船倉及びその上方の甲板間区域には、横傾斜モーメントの計算に当たり上方の場所から下方の場所への穀類の流入について妥当な考慮を払うことを条件として、一の区画室としてばら積み穀類を積載することができる。

   第九規則 B部及びC部の規定の適用

 主管庁又は主管庁に代わる締約政府は、この章の第四規則(b)の復原性規準に適合することを条件として、積載又は構造に関する措置を考慮した上で妥当と判断する場合には、この章のB 部及びC部の仮定に関する規定からの逸脱を認めることができる。この第九規則の規定によりこの逸脱を認める場合には、承認の文書又は穀類積載資料にその詳細を記載する。

   第十規則 承認

(a) 承認の文書は、主管庁、主管庁の認定する機関又は主管庁に代わる締約政府のいずれかにより、この章の規定に適合する方法で積載をする船舶に対して発給される。承認の文書は、船舶がこの章の規定に適合する能力を有することの証拠として認容される。

(b) 承認の文書には、船長がこの章の第四規則(c)の規定に従うことができるように提供された穀類積載復原性に関する小冊子を添付するものとし、また、その旨を記載する。この小冊子は、この章の第十一規則の規定に適合するものでなければならない。

(c) 承認の文書、穀類積載復原性資料及び関連図面は、承認の文書を発給する国の公用語で作成することができる。使用する言語が英語又はフランス語のいずれでもない場合には、そのいずれかの言語による訳文をこれらに含める。

(d) 承認の文書、穀類積載復原性資料及び関連図面は、船長が締約政府である船積み港の国の政府による検査のため要求に応じて提示することができるように、各一部を船内に備える。

(e) 承認の文書を備えない船舶は、その予定された積載状態がこの章の規定に適合するものであることを船長が証明し、主管庁又は締約政府である船積み港の国の政府であつて主管庁に代わるものが認めるまでは、穀類を積載してはならない。

   第十一規則 穀類積載資料 

穀類積載資料は、適当なあらゆる積載状態について、この章のB部の規定に従つて計算するばら積み穀類の移動による傾斜モーメントを船長が決定するために十分なものでなければならない。この資料には、次のものを含める。

(a) 主管庁又は主管庁に代わる締約政府の承認する資料

 (i) 満載、部分積載又は共通積載についての区画室ごとのばら積み穀類の傾斜モーメント(臨時の積付け設備による影響を含む。)の曲線図及び表

 (ii) 最大許容傾斜モーメントの表又はこの章の第四規則(c)の要件を満たしていることを船長が証明するために十分な他の資料

 (iii) 臨時の積付け設備の寸法の明細及び、該当する場合には、この章のC部第一節(E)の規定に適合するために必要な設備の明細

 (ⅳ) 出入港時における典型的な積載状態及び、必要なときは、航海中における最悪の積載状態

 (v) 船長の手引とするための計算例

 (vi) この章の要件を要約した積載要領書

(b) 主管庁又は主管庁に代わる締約政府の認める資料

 (i) 船舶の要目

 (ii) 軽荷時の排水量及び型基線と船体中央部横断面との交点から重心までの垂直距離(KG)

 (iii) 自由表面による影響についての補正表

 (ⅳ) 載貨の量及び重心位置

   第十二規則 同等物

 第一章第五規則の規定により主管庁が認める同等物を用いる場合には、承認の文書又は穀類積載資料にその詳細を記載する。

   第十三規則 特定の航海に対する免除

 主管庁又は主管庁に代わる締約政府は、保護された航海の性質及び状況によりこの章の第三規則から第十二規則までに定めるいずれかの要件を適用することが不合理又は不必要であると認める場合には、個々の船舶又は船舶の種類について、当該要件の適用を免除することができる。

   B部 仮定傾斜モーメントの計算

第一節 仮定空間の意義及び非損傷時復原性の計算方法

第二節 満載区画室の仮定容積傾斜モーメント

第三節 フィーダー及びトランクの仮定容積傾斜モーメント

第四節 部分積載区画室の仮定容積傾斜モーメント

第五節 現存船の代替的積載方法


   第一節 仮定空間の意義及び非損傷時復原性の計算方法

 (A) 総則

(a) ばら積み穀類を運送する船舶における穀類の自由表面の移動による不利な傾斜モーメントの計算上、次のとおり仮定する。

 (i) この章の第三規則の規定により荷繰りをされた満載区画室においては、水平面に対して三十度未満の傾斜を有するすべての境界面の下方に空間が存在し、その空間に面するばら積み穀類の自由表面は、この境界面と平行であると仮定し、その空間の平均深さは、次の式で計算される。

{数式と数式の説明は削除}

{第1表  削除}


 (ii) この章の第三規則の規定による荷繰りがされていない満載区画室においては、その境界面が水平面に対して三十度未満の傾斜を有する場合には、積載後のばら積み穀類の自由表面は、水平面に対して三十度の傾斜を有すると仮定する。

 (iii) 満載区画室のハッチ部分には、ハッチ・カバーの内側の開放空間のほかに、ハッチ・カバーの最下部又はハッチサイド・コーミングの頂部のいずれか低い方から下方に測りばら積み穀類の自由表面までの平均深さが百五十ミリメート ルの空間があると仮定する。

(b) 部分積載区画室において仮定されるばら積み穀類の自由表面の性状の基本型は、この部の第四節に示す。

(c) この章の第四規則(b)に規定する復原性規準に適合することを証明するに当たり(第一図参照)、船舶の復原性の計算は、通常、満載区画室におけるばら積み穀類の重心がそのばら積み穀類の積載場所全体の容積の中心にあるという仮定に基づいて行う。主管庁が満載区画室におけるばら積み穀類の垂直方向の重心位置に対する甲板下の仮定空間の影響を考慮することを認める場合には、ばら積み穀類の自由表面の垂直方向の移動による不利な影響を、横方向の移動による仮定傾斜モーメントを次の式のとおり増加させることによつて、補正することを要する。

  全傾斜モーメント=1.06×計算傾斜モーメント

 満載区画室の穀類の重量は、いかなる場合にも、その穀類の積載場所全体の容積を積付け率で除した値とする。

{表は削除}

(d) 部分積載区画室におけるばら積み穀類の自由表面の垂直方向の移動による不利な影響は、次のとおり計算することによつて補正する。

全傾斜モーメント = 1.12 × 計算傾斜モーメント

(e) (c)及び(d)において要求される補正を行うため、他の同等に有効な方法を採用することができる。

  第二節 満載区画室の仮定容積傾斜モーメント

   (A) 総則

(a) ばら積み穀類の自由表面の移動の基本型は、当該満載区画室の各部分の横断面に関連するものであり、当該各部分の全容積傾斜モーメントを得るためには、ばら積み穀類の自由表面の移動の結果生ずる傾斜モーメントに当該各部分の長さを乗ずる。

(b) ばら積み穀類の移動による仮定容積傾斜モーメントは、穀類が高い側から低い側に移動した後における空間の形状及び位置の最終的変化の結果生ずるものである。

(c) 移動の結果生ずるばら積み穀類の自由表面は、水平面に対して十五度の傾斜を有すると仮定する。

(d) 縦通構造部材に面して形成される最大空間断面積を計算するに当たつては、縦通構造部材の水平表面の影響、例えば、フランジ又はフェイスバーの影響は無視する。

(e) 移動の前後における空間の総断面積は、等しいものとみなす。

(f) 不連続縦通仕切りは、その全長にわたつて有効なものとみなす。

   (B) 仮定

 (a)及び(b)において、一の満載区画室の全容積傾斜モーメントは、(a)及び(b)の部分について個々に検討した結果を合計することによつて得られると仮定する。

(a) ハッチの前方及び後方の部分

 (i) 一の区画室が二以上の積込み用主ハッチを有する場合には、これらのハッチの間の部分の甲板下空間の深さは、ハッチ間の中間点までの距離を用いて計算する。

 (ii) ばら積み穀類の仮定された移動の後における最終空間の基本型は、第二図に示すとおりとする。

{表は削除}

   (C) 共通積載区画室

 (a)から(c)までにおいては、共通積載区画室について仮定される空間の状態の基本型を示す。

(a) 中心線仕切りがない場合

 (i) 上甲板の下部  一層甲板についてこの部の第二節(B)に規定する仮定と同一とする。

 (ii) 第二甲板の下部 低い側から移行する空間面積、すなわち、初期空間面積からハッチサイド・ガーダに面する最大空間面積を減じた空間面積は、次のとおり移行すると仮定する。

   上甲板のハッチ部分の最終空間面積に二分の一が移行し、上甲板の下部及び第二甲板の下部の高い側の最終空間面積にそれぞれ四分の一が移行する。

 (iii) 第三甲板及びその下方の甲板の下部 これらの甲板の低い側から移行する空間面積は、高い側における当該甲板及びその上方のすべての甲板の下部の最終空間面積並びに上甲板のハッチ部分の最終空間面積に均等に移行すると仮定

する。

(b) 上甲板のハッチ・カバーの下面まで達する中心線仕切りがある場合

 (i) 中心線仕切りの底部と同一の高さの位置及びこれより高い位置にある甲板において低い側から移行する空間面積は、上甲板のハッチ部分の低い側に形成される最終空間面積に移行すると仮定する。

 (ii) 中心線仕切りの底部の下方にある最上層の甲板において低い側から移行する空間面積は、次のとおり移行すると仮定する。

   上甲板のハッチ部分の低い側に形成される最終空間面積に二分の一が移行し、残りの空間面積は、高い側における当該甲板及びその上方のすべての甲板の下部の最終空間面積に均等に移行する。

 (iii) (b)(i)及び(ii)に規定する甲板より下方にある甲板において低い側から移行する空間面積は、上甲板のハッチ部分の低い側及び高い側に形成される最終空間面積並びに高い側における当該甲板及びその上方のすべての甲板の下部の最終空間面積に均等に移行すると仮定する。

(c) 上甲板のハッチ・カバーの下面まで達しない中心線仕切りがある場合

 中心線仕切りの頂部と底部との間の高さの位置にある甲板においては空間面積の水平方向の移行は生じないと仮定することができるので、当該位置において低い側から移行する空間面積は、(a)及び(b)の原則に従い、中心線仕切りの頂部を越えて高い側の最終空間面積に移行すると仮定する。


  第三節 フィーダー及びトランクの仮定容積傾斜モーメント

   (A) 適正に設けられた両翼部のフィーダー(第五図参照)

 甲板下空間は、船舶の動揺により船舶の縦方向の一対のフィーダーからばら積み穀類が流入することによつて実質的に満たされると仮定することができる。ただし、次のことを条件とする。

(a) フィーダーが当該甲板の全長にわたつて設けられていること及び流入口が適当な開隔で設けられていること。

(b) フィーダーの容積が、ハッチサイド・ガーダ及びその延長部の外側の甲板下空間の容積に等しいこと。

{表は削除}

   (B) 主ハッチの上方のトランク

 ばら積み穀類の仮定された移動の後における最終空間の基本型は、第六図に示すとおりとする。

{表は削除}


  第四節 部分積載区画室の仮定容積傾斜モーメント

   (A) 総則

 ばら積み穀類の自由表面がこの章の第六規則の規定による固定をされていない場合には、移動後の穀類表面は、水平面に対して二十五度の傾斜を有すると仮定する。

   (B) 不連続縦通仕切り

 縦通仕切りがその前後の横方向境界の間で不連続となつている区画室において、穀類表面の全幅にわたる移動を防止するための手段として有効とされる縦通仕切りの長さは、この仕切りの実際長から、この仕切りとこれに隣接する仕切り又は船側との間の横方向距離のうち大きい方の距離の七分の二に相当する長さを減じた長さとする。

 この補正は、共通積載区画室の下部区画室については、上部区画室が満載区画室又は部分積載区画室である場合には、適用しない。

  第五節 現存船の代替的積載方法

   (A) 総則

 (B)又は(C)のいずれかの規定による積付けをする船舶は、少なくともこの章の第四規則(b)に定める要件と同等の非損傷時復原性を有するとみなす。この積付けを認める承認の文書は、この章の第十規則(e)の規定により認容される。

この部の規定の適用上、「現存船」とは、この章の効力発生の日前にキールが据え付けられた船舶をいう。

   (B) 特にばら積み穀類の運送に適した船舶への積付け

(a) この部の他の規定にかかわらず、ばら積み穀類の横方向の移動の影響を減ずるため適当に配置された垂直の又は傾斜した二以上の縦通仕切りを穀類が漏れないように設けた船舶は、次のことを条件として、ばら積み穀類を運送することができる。

 (i) できる限り多数の船倉及び区画室を満載にしかつ十分に荷繰りをすること。

 (ii) 船舶が、次の場合に、航海のいずれの段階においても予定されている積付け配置において五度を超えて傾斜しないこと。

  (1) 十分な荷繰りがされた船倉又は区画室において、ばら積み穀類の自由表面が、水平面に対して三十度未満の傾斜を有する境界面の下方において、初期表面から容積で二バーセント沈下し、かつ、初期表面に対して十二度の角度まで移動する場合

  (2) 部分積載の船倉又は区画室において、ばら積み穀類の自由表面が、(a)(ii)(1)の規定による沈下をし、かつ、同規定による移動又は主管庁若しくは主管庁に代わる締約政府が必要と認める一層大きい角度までの移動をする場合及びこの章の第五規則の規定による上積みをされている場合においてばら積み穀類の自由表面が平らにした初期表面に対して八度の角度まで移動するとき。

この(a)(ii)の規定の適用上、荷止め板は、取り付けられている場合には、穀類表面の横方向の移動を制限するとみなされる。

 (iii) 予定されている積付け配置に関する穀類積載図及び復原性に関する小冊子であつて、主管庁又は主管庁に代わる締約政府によつて承認されており、かつ、(a)(ii)の計算の基礎となる復原性の条件を示すものを船長に提供すること。

(b) 主管庁又は主管庁に代わる締約政府は、(a)の規定により設計された船舶であつて(a)(ii)及び(iii)の要件を満たすものについて、予定されている積付け配置以外の積載状態におけるばら積み穀類の移動に対してとるべき予防措置を定める。

   (C) 承認の文書を備えない船舶

 この章の第四規則及び第十規則の規定に基づいて発給される承認の文書を備えない船舶は、(B)に定める要件を満たすことを条件として、又は次のことを条件として、ばら積み穀類を積載することを認められる。

(a) 満載区画室には、その全長にわたり、甲板の下面又はハッチ・カバーの下面から甲板線の下方への少なくともその満載区画室の最大幅の八分の一に相当する距離又は二・四メートルのいずれか大きい方の距離まで達する中心線仕切りを設けること。もつとも、ハッチ部分及びハッチの直下に中心線仕切りを設けることに代えて、この章のC部第二節の規定による皿形積載をすることを認容することができる。

(b) 満載区画室に通ずるすべてのハッチを閉鎖し、かつ、これに確実に覆いをすること。

(c) 部分積載区画室のばら積み穀類の自由表面については、平らになるように荷繰りをし、かつ、この章のC部第二節の規定による固定をすること。

(d) 全航海を通じて、タンク内の液体の自由表面による影響を補正した後のメタセンタ高さが、〇・三メートル又は次の式によつて得られる値のいずれか大きい方の値となること。

{数式と数式の説明は削除}

   C部 穀類の積付け設備及び固定

第一節 穀類積付け設備の強度

(A) 総則(使用応力を含む。)

(B) 両側に積載がされる仕切り

(C) 片側にのみ積載がされる仕切り

(D) 皿形積載

(E) ばら積み穀類のバンドリング

(F) 満載区画室のハッチ・カバーの定着

第二節 部分積載区画室における穀類の固定

(A) 緊縛

(B) 上積み

(C) 袋入り穀類


  第一節 穀類積付け設備の強度

   (A) 総則

(a) 木材

穀類積付け設備に使用される木材は、良質のものでなければならず、また、この用途に適していることが証明された種類及び等級のものでなければならない。木材の仕上がり寸法は、この部に定める寸法に適合するものでなければならない。防水性の接着剤で接着された外装用合板であつて表層面の木目の方向が支柱又はバインダーに垂直になるように取り付けるものは、規定寸法の単一の木材と同等の強度を有することを条件として、使用することができる。

(b) 使用応力

その片側に積載がされる仕切りの寸法をC(a)及び(b)の表により計算するに当たり、次の使用応力を採用する。

  鋼製仕切り 毎平方センチメートル二千キログラム

  木製仕切り 毎平方センチメートル百六十キログラム

(c) 木材及び鋼以外の材料

木材及び鋼以外の材料は、その機械的性質に適当な考慮を払うことを条件として、その片側に積載がされる仕切りに用いることを承認することができる。

(d) 支柱

 (i) 支柱端がはめ込み部分から外れることを防止する措置がとられる場合を除くほか、そのはめ込み部分の深さは、七十五ミリメートル以上とする。支柱の上端が固定されていない場合には、支持棒又は支持索をできる限り上端に近い部分に取り付ける。

 (ii) 支柱を削つて荷止め板をはめ込む措置は、支柱の当該部分の局部応力を不当に大きくするものであつてはならない。

 (iii) その片側に積載がされる仕切りを支える支柱にかかる最大曲げモーメントは、通常、支柱端の支持が単純支持であると仮定して計算する。もつとも、支柱端の固定が有効にされていると主管庁が認める場合には、その固定の程度に応じて生ずる最大曲げモーメントの減少を考慮することができる。

(e) 合成部分

支柱、バインダーその他の強度部材が、二の独立した部分であつてそれぞれが仕切りの両側に取り付けられ、かつ、適当な間隔の貫通ボルトによつて相互に結合されるものから成る場合には、その有効断面係数は、これらの二の独立した部分の断面係数の和とする。

(f) 部分仕切り

仕切りが船倉の全深さにわたつていない場合には、当該仕切り及びその支柱は、船倉の全深さにわたるものと同等に有効となるように支持する。

   (B) 両側に積載がされる仕切り

(a) 荷止め板

 (i) 荷止め板は、五十ミリメートル以上の板厚のものでなければならず、また、穀類が漏れないように取り付け、必要なときは、支柱で支持する。

 (ii) 各種の板厚の荷止め板の最大無支持間隔は、次のとおりとする。

   板厚         最大無支持間隔

   五十ミリメートル    二・五メートル

   六十ミリメートル    三・〇メートル

   七十ミリメートル    三・五メートル

   八十ミリメートル    四・〇メートル

   八十ミリメートルを超える板厚については、最大無支持間隔は、板厚に比例して増大する。

 (iii) 荷止め板の端部は、確実にはめ込むものとし、はめ込み部分の深さは、七十五ミリメートル以上とする。

(b) 木材以外の材料

木材以外の材料を用いて形成される仕切りは、(a)に規定する荷止め板と同等の強度を有するものでなければならない。

(c) 支柱

 (i) その両側に積載がされる仕切りを支持するために使用される鋼製支柱は、次の式によつて得られる断面係数を有するものでなければならない。

{数式と数式の説明は削除}

 (ii) 木製支柱の断面係数は、鋼製支柱の断面係数に十二・五を乗じて算定する。他の材料の支柱が用いられる場合には、その断面係数は、少なくとも、鋼製支柱の断面係数を、当該他の材料の許容能力に対する鋼の許容応力の割合に比例して増加させた値とする。この場合において、たわみ量が過大とならないように、支柱の相対的な剛性についても注意を払う。

 (iii) 支柱間の水平距離は、荷止め板の無支持間隔が(a)(ii)に規定する最大無支持間隔を超えないものでなければならない。

(d) 支持棒

 (i) 木製支持棒は、用いる場合には、単一材のものでなければならず、また、両端を確実に固定するものとし、その一端を船舶の常設構造物に取り付ける。もつとも、船舶の船側外板に直接取り付けてはならない。

 (ii) (d)(iii)及び(ⅳ)の規定に従うことを条件として、木製支持棒の最小寸法は、次のとおりとする。

 メートルで表した支持棒の長さ 長方形断面(ミリメートル) 円形断面の直径(ミリメートル)

  三メートル以下 百五十 百 百四十

  三メートルを超え五メートル以下 百五十 百五十 百六十五

  五メートルを超え六メートル以下 百五十 百五十 百八十

  六メートルを超え七メートル以下 二百 百五十 百九十

  七メートルを超え八メートル以下 二百 百五十 二百

  八メートルを超えるもの 二百 百五十 二百十五

  七メートル以上の長さの支持棒は、その長さのほぼ中央において確実に支える。

 (iii) 支柱間の水平距離が四メートルと相当程度異なる場合には、支持棒の断面二次モーメントは、 支柱間の水平距離に比例して変えることができる。

 (ⅳ) 水平面に対する支持棒の角度が十度を超える場合には、(d)(ii)に規定する支持棒より一段階大きい寸法の支持棒を取り付ける。支持棒と水平面との角度は、いかなる場合にも、四十五度を超えてはならない。

(e) 支持索

その両側に積載がされる仕切りを支持するために使用する支持索は、水平に又は実行可能な限り水平に近く取り付け、両端を十分に固定するものとし、また、鋼索のものでなければならない。鋼索の寸法は、支持索が支持する仕切り及び支柱に一平方メートル当たり五百キログラムの荷重が一様にかかると仮定して算定する。この場合において、支持索の使用荷重は、その支持索の破断荷重の三分の一に相当する荷重を超えてはならない。

    (C) 片側にのみ積載がされる仕切り

(a) 縦通仕切り

 縦通仕切りの長さ一メートル当たりのキログラムで表した荷重は、第一表に示す。

{表は削除}

 その他のh又はBの値については、荷重は、必要に応じて一次補間法又は一次外挿法によつて算定する。

(b) 横置仕切り

 横置仕切りの長さ一メートル当たりのキログラムで表した荷重は、第二表に示す。

{表は削除}

 その他のh又はLの値については、荷重は必要に応じて一次補間法又は一次外挿法によつて算定する。

(c) 荷重の垂直方向の分布

第 一表及び第二表に示す仕切りの単位長さ当たりの荷重は、必要と認めるときは、垂直方向の台形分布と有すると仮定することができる。この場合において、垂直部材又は支柱の上端及び下端の反力は、等しくない。垂直部材又は支柱で支持される荷重に対する百分率で表した上端の反力は、第三表及び第四表に示す。

{表は削除}

 その他のh又はBの値については、反力は、必要に応じて一次補間法又は一次外挿法によつて算定する。

{表は削除}

 その他のh又はLの値については、反力は、必要に応じて一次補間法又は一次外挿法によつて算定する。

 垂直部材又は支柱の端部結合物の強度は、両端にかかると仮定する最大荷重を基礎として計算することができる。これらの最大荷重は、次のとおりとする。

  縦通仕切り

   上端の最大荷重 第一表から求められる全荷重の五十パーセントに相当する荷重

   下端の最大荷重  第一表から求められる全荷重の五十五パーセントに相当する荷重

  横置仕切り

   上端の最大荷重 第二表から求められる全荷重の四十五パーセントに相当する荷重

   下端の最大荷重 第二表から求められる全荷重の六十パーセントに相当する荷重

 木製の荷止め板の板厚は、第三表及び第四表に示す荷重の垂直方向の分布を考慮して、次の式によつても算定することができる。

{数式と数式の説明は削除}

(d) 支持索及び支持棒

 支持索及び支持棒の寸法は、(a)の第一表及び(b)の第二表から求められる荷重が破断荷重の三分の一に相当する荷重を超えないように決定する。

   (D) 皿型積載

 満載区画室のモーメントを減少させるため皿型積載をする場合には、甲板線から皿型部分の底部までの深さは、次のとおりとする。

  型幅九・一メートル以下の船舶については、一・二メートル以上とする。

  型幅十八・三メートル以上の船舶については、一・八メートル以上とする。

  型幅九・一メートルを超え十八・三メートル未満の船舶については、補間法によつて求められた深さ以上とする。

 皿型部分の頂部は、ハッチにおける構造物、すなわち、ハッチサイド・ガーダ、ハッチサイドコーミング及びハッチエンド・ビームによつて形成する。皿型部分及びその上部のハッチ部分は、袋入り穀類その他の貨物であつて、仕切り用の布又はこれと同等のものの上に積み重ね、かつ、隣接の構造物及び移動式ハッチ・ビームに対して密に積み付けるものによつて完全に満たす。

   (E) ばら積み穀類のバンドリング

 皿型部分を袋入り穀類その他の適当な貨物で満たす方法に代えて、次の要件を満たすことを条件として、ばら積み穀類のバンドリングの方法を用いることができる。

(a) 皿型部分を、幅五センチメートル当たり二百七十四キログラム以上の引張り強さを有する材料であつて主管庁の認めるもので包み込むものとし、その頂部において固定するための適当な手段を講ずる。

(b) 皿型部分が次のように形成される場合には、(a)の材料に代えて、幅五センチメートル当たり百三十七キログラム以上の引張り強さを有する材料であつて主管庁の認めるものを使用することができる。

   主管庁の認める船舶の横方向の緊縛用部材を、ばら積み穀類の皿型部分に二•四メートル以下の間隔で配置する。これらの緊縛用部材は、皿型部分の頂部で引き締め、かつ、固定するために十分な長さのものでなければならない。

   皿型部分を包み込むための材料の破損又は磨耗を防止するために、厚さ二十五ミリメートル以上の荷敷き又はこれと同等の強度を有する他の適当な材料であつて百五十ミリメートル以上三百ミリメートル以下の幅のものを船舶の縦方向にすべての緊縛用部材にわたつて配置する。

(c) 皿型部分は、ばら積み穀類で満たすものとし、その頂部において固定する。(b)に規定する承認された材料を使用する場合には、当該材料で包み込み、頂部に荷敷きを置いた後、緊縛用部材を引き締めることによつて皿型部分を固定する。

(d) 皿型部分を包み込むために二以上の材料を使用する場合には、当該二以上の材料を底部において縫い合わせ、又は重ね合わせる。

(e) 皿型部分の頂部は、ハッチ・ビームが所定の位置にある場合には、そのハッチ・ビームの底部に密に接していなければならず、また皿型部分の頂部の上部にあるハッチ・ビームの間には、適当な一般貨物又はばら積み穀類を積載することができる。

   (F) 満載区画室のハッチ・カバーの定着

 満載区画室の上方にばら積み穀類その他の貨物がない場合には、ハッチ・カバーは、その重量及び常設の定着装置を考慮して、承認された方法によつて定着する。

 この章の第十規則の規定に基づいて発給される承認の文書には、その文書を発給する主管庁が必要と認める定着方法について記載する。

  第二節 部分積載区画室における穀類の固定

    (A) 緊縛

(a) 部分積載区画室の傾斜モーメントを抑止するため緊縛の方法を用いる場合には、固定は、次のとおり行う。

 (i) ばら積み穀類は、平らになるまで荷繰りをし、荒い目の仕切り用の布若しくはターボリン又はこれらと同等のものによつて覆う。

 (ii) 仕切り用の布又はターボリンは、少なくとも一・八メートル重ね合わせる。

 (iii) 厚さ二十五ミリメートル幅百五十ミリメートル以上三百ミリメートル以下の板材で二のすき間のないフロアを造り、その一を船舶の縦方向の上部フロアとし、船舶の横方向の下部フロアとする他に一にこれをくぎ付けする。これに代えて、厚さ五十ミリメートルの板材で造る一の船舶の縦方向のすき間のないフロアを幅百五十ミリメートル以上厚さ五十ミリメートルの下部支持材にくぎ付けしたものを使用することができる。下部支持材は、区画室の全幅にわたるものでなければならず、下部支持材の間隔は、二・四メートル以下とする。他の材料を用いた設備であつて主管庁がこれらと同等と認めるものは、認容することができる。

 (ⅳ) 鋼索(直径十九ミリメートル又はこれと同等のもの)、二重の鋼製帯(幅五十ミリメートル厚さ一・三ミリメートルであつて破断荷重五千キログラム以上のもの)又はこれらと同等の強度を有する鎖であつて、三十二ミリメートルのターンバックルを用いて強く締めることができるものは、緊縛に使用することができる。鋼製帯を使用する場合には、必要に応じて引き締めるための適当なねじ回しを備えることを条件として、三十二ミリメートルのターンバックルに代えて、ロッキング・アームとともに使用される巻き上げ式締め具を使用することができる。鋼製帯を使用する場合には、その端部を固定するために三以上のクリンプ・シールを使用する。鋼索を使用する場合には、緊縛用部材に環状部を形成するために四以上の留め金具を使用する。

 (v) 緊縛用部材は、ばら積み穀類の積載の完了に先立ち、予想される穀類表面の約四百五十ミリメートル下方の位置に、二十五ミリメートルのシャックル又はこれと同等の強度を有するビーム用締め金具を用いて確実にフレームに取り付ける。

 (vi) 緊縛用部材は、二・四メートル以下の間隔で配置するものとし、船舶の縦方向のフロアの上部にくぎ付けされた支持材で支持する。この支持材は、厚さ二十五ミリメートル以上幅百五十ミリメートルの板材又はこれと同等のものでなければならず、また、区画室の全幅にわたるものでなければならない。

 (vii) 鋼製帯による緊縛については、航海中、定期的に点検するものとし、必要に応じて締め直す。

   (B) 上積み

 袋入り穀類その他の適当な貨物を部分積載区画室の固定のために用いる場合には、ばら積み穀類の自由表面は、仕切り用の布若しくはこれと同等のもの又は適当な敷台で覆いをする。この敷台は、一・二メートル以下の間隔で配置する支持材及び百ミリメートル以下の間隔で支持材の上部に配置する厚さ二十五ミリメートルの板材で造る。敷台は、主管庁が同等と認めることを条件として、他の材料で造ることができる。

   (C) 袋入りの穀類

 袋入り穀類は、状態の良好な袋に入れて積載するものとし、袋は、十分に満たし、確実に閉じる。


  第七章 危険物の運送

   第一規則 適用

(a) この章の規定は、別段の明文の規定がない限り、この規則が適用される船舶による危険物の運送に適用する。

(b) この章の規定は、船舶の貯蔵品及び艤装品並びにタンカー等その全体が特定の貨物を運送するために特に建造され又は改造された船舶に積載する特定の貨物には、適用しない。

(c) この章の規定による場合を除くほか、危険物の運送は、禁止する。

(d) 締約政府は、この章の規定を補うため、特定の危険物又は特定の種類の危険物についての安全な包装及び積付けに関する詳細な指示(他の貨物との関係において必要となる予防手段を含む。)を行い、又は行わせる。

   第二規則 分類

 危険物は、次のとおり分類する。

第一類 火薬類

第二類 ガス(圧縮ガス、液化ガス及び高圧溶解ガス)

第三類 引火性液体

第四類一 可燃性固体

第四類二 自然発火しやすい可燃性の固体その他の物質

第四類三 水と作用して引火性のガスを発生する可燃性の固体その他の物質

第五類一 酸化性物質

第五類二 有機過酸化物

第六類一 毒物

第六類二 病毒をうつしやすい物質

第七類 放射性物質

第八類 腐食性物質

第九類 その他の危険物(経験により、この章の規定を適用すべき危険物が明らかである物質又はそのような危険性の疑いがある物質)

   第三規則 包装

(a) 危険物の包装は、次の要件を満たすものでなければならない。

 (i) 良好な造りでかつ良好な状態にあること。

 (ii) その内面が接触するおそれのある運送物質によつて危険な影響を受けることのない性質のものであること。

 (iii) 取扱いに当たつて及び海上における運送において通常起こることがある危険に耐えることができること。

(b) 容器に入れた液体を包装する場合において吸収材又は緩衝材を使用することが通例であるときは、これらの吸収材及び緩衝材は、次の要件を満たすものでなければならない。

 (i) 液体が引き起こす危険を最少にすることができること。

 (ii) 容器の移動を防ぐようにかつ常に容器を覆つているように

 (iii) 可能な場合には、容器が破損したときに液体を吸収するのに十分な量のものであること。

(c) 危険な液体を入れる容器は、通常の運送における最高温度に耐えることができるように、充填時の温度において十分な空間を有するものでなければならない。

(d) 高圧ガス用のシリンダー又は容器は、適正に、造り、試験し、かつ、維持するものとし、また、正しく充填する。

(e) 危険物の運送に使用された空の容器は、それ自体を危険物として取り扱う。ただし、洗浄しかつ乾燥したもの又は充填されていた内容物の性質上閉じることが安全である場合に確実に閉じたものについては、この限りでない。

   第四規則 表示及び標識

 危険物を入れた容器には、正しい専門的名称(取引上の名称は、使用してはならない。)によつてその内容を表示するものとし、明確な標識を付してその危険性を明らかにする。この標識は、少量の化学薬品を入れた容器の場合並びに一口貨物としての積付け、取扱い及び識別が可能である大量の貨物の場合を除くほか、各容器に付する。

   第五規則 書類

(a) 危険物の海上における運送に関する書類において貨物の名称を示す場合には、正しい専門的名称(取引上の名称は、使用してはならない。)を使用するものとし、この章の第二規則に定める分類に従つて正しく記載する。

(b) 荷送人が作成する船積書類には、運送の申込みのあつた貨物が、適正に、包装され、表示され、標識を付されており、かつ、運送に適した状態にあることを示す証明書又は申告書を含め又は添付する。

(c) 危険物を運送する船舶には、この章の第二規則に定める分類に従つて船内にある危険物及びその位置を示す特別の一覧表又は積荷目録を備える。この特別の一覧表又は積荷目録に代えて、船内の危険物の分類を明らかにしかつその位置を示す詳細な積付け図を使用することができる。

   第六規則 積付けの要件

(a) 危険物は、その性質に応じて、安全かつ快適に積み付ける。その性質上相いれない貨物は、相互に隔離する。

(b) 高度の危険性を有する火薬類(弾薬を除く。)は、火薬庫に積み付けるものとし、火薬庫は、海上にある間、確実に閉鎖しておく。当該火薬類は、雷管から隔離する。火薬類を積載する区画室内の電気器具及びケーブルは、火災又は爆発の危険を最少にするように設計し、かつ、使用する。

(c) 危険な蒸気を発生する危険物は、通風の良好な場所又は甲板上に積み付ける。

(d) 引火性の液体又はガスを運送する船舶については、必要に応じて、火災又は爆発に対する特別の予防手段を講ずる。

(e) 自然発熱しやすい物質及び自然発火しやすい物質は、火災の発生を防止するため十分な予防手段を講じない限り、運送してはならない。

   第七規則 旅客船における火薬類

(a) 旅客船は、次の火薬類に限り、運送することができる。

 (i) 安全薬筒及び安全導火線

 (ii) 合計純重量九キログラム(二十ポンド)を超えない少量の火薬類

 (iii) 船舶又は航空機が使用する遭難信号であつて合計重量千十六キログラム(二千二百四十ポンド)を超えないもの

 (ⅳ) 激しい爆発を起こす可能性の小さい火工品(無寝床旅客を運送する船舶の場合を除く。)

(b) (a)の規定にかかわらず、主管庁の承認する特別の安全措置をとる旅客船は、追加の量及び種類の火薬類を運送することができる。


  第八章 原子力船

   第一規則 適用

 この章の規定は、軍艦以外のすべての原子力船に適用する。

   第二規則 他の章の規定の適用

 この条約の他の章の規定は、この章の規定により必要な修正を加えて、原子力に適用する。

   第三規則 免除

 原子力船は、いかなる場合にも、この条約のいずれの規則の規定の適用も免除されない。

   第四規則 原子炉装置の承認

 原子炉装置の設計、構造、検査基準及び組立て基準は、主管庁の承認するものでなければならず、また、放射線の存在によつて検査が制約を受けることを考慮に入れたものでなければならない。

   第五規則 原子炉装置の船舶における使用に対する適合性

 原子炉装置は、通常の及び例外的な航行状況における船舶での特殊な使用条件を考慮して設計する。

   第六規則 放射線に対する安全

 主管庁は、海上又は港において乗組員、旅客、公衆、水路、食料資源又は水資源に対して不当な放射線その他の原子核による危険が生じないことを確保するための措置をとる。

   第七規則 安全説明書

(a) 海上又は港において乗組員、旅客、公衆、木路、食料資源又は水資源に対して不当な放射線その他の危険が生じないことを確保するため、原子力施設及び船舶の安全性について評価することができるように安全説明書を作成する。主管庁は、適当と認めるときは、安全説明書を承認するものとし、安全説明書は、常に現状に合わせておく。

(b) 安全説明書は、原子力船が訪れようとする国の締約政府に対し、当該締約政府が原子力船の安全性について評価することができるように、十分な余裕をもつて事前に提供する。

   第八規則 操作手引書

 原子力施設の操作に関する事項及び安全に重要な関連を有する事項についての操作員の職務上の資料及び手引として、詳細な操作手引書を作成する。主管庁は、適当と認めるときは、操作手引書を承認するものとし、操作手引書は、船内に備えておく。操作手引書は、常に現状に合わせておく。

   第九規則 検査

 原子力船の検査は、放射線の存在によつて制約される場合を除くほか、第一章第七規則又は第八規則から第十規則までの該当要件に関する検査を含む。原子力船の検査は、また、安全説明書の特別要件に関する検査を含む。原子力船の検査は、同章第八規則及び第十規則の規定にかかわらず、いかなる場合にも、少なくとも一年に一回行う。

   第十規則 証書

(a) 第一章第十二規則(a)及び第十四規則の規定は、原子力船には、適用しない。

(b) 第二−一章から第四章まで及びこの章の規定その他この規則の関係規定に適合する原子力旅客船に対し、検査の後に原子力旅客船安全証書と称する証書を発給する。

(c) 貨物船の検査に関して第一章第十規則に定める要件を満たす原子力船であつて、第二−一章から第四章まで及びこの章の規定その他この規則の関係規定に適合するものに対し、検査の後に原子力貨物船安全証書と称する証書を発給する。

(d) 原子力旅客船安全証書及び原子力貨物船安全証書には、「原子力船であるこの船舶が、上記の条約第八章のすべての規定に適合しており、かつ、この船舶について承認された安全説明書に合致していること。」と記載する。

(e) 原子力旅客船安全証書及び原子力貨物船安全証書は、十二箇月を超えない期間について有効とする。

(f) 原子力旅客船安全証書及び原子力貨物船安全証書は、主管庁又は主管庁から正当に権限を与えられた者若しくは団体が発給する。いずれの場合においても、証書については、主管庁が全責任を負う。

第十一規則 特別の監督

 原子力船は、第一章第十九規則に規定する監督のほかに、締約政府の港に入る前に及びその港において、船内に有効な原子力船安全証書を備えていること並びに海上又は港において乗組員、旅客、公衆、水路、食料資源又は水資源に対して不当な放射線その他の危険が生じないことを確認するための特別の監督に服する。

第十二規則 海難

 原子力船の船長は、周辺に危険を及ぼすおそれのある事故の場合には、直ちに主管庁に通報する。船長は、また、損傷状態にある原子力船が位置する水域の又はこの原子力船が接近する水域の属する国の権限のある政府機関に対しても、直ちに通報する。

{付録は削除}


(参考)

この条約は、千九百六十年の海上における人命の安全のための国際条約を改正し、これに代えるために作成されたもので、海上における人命の安全を、政府間の合意により画一的な原則及び規則を設けることによって増進させることを目的としたものである。


{艤に ぎ とルビあり}

{舷に げん とルビあり}

{舵に だ とルビあり}

{栓に せん とルビあり}

{皿に さら とルビあり}

{斟に しん とルビあり}

{鎧に がい とルビあり}

{填に てん とルビあり}

{泡に ほう とルビあり}

{疇に ちゅう とルビあり}

{錨に びょう とルビあり}

{輻に ふく とルビあり}

{鍵に けん とルビあり}

{較に こう とルビあり}

{尖に せん とルビあり}

{汐に せき とルビあり}

{挿に そう とルビあり}