データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 諸国家の経済権利義務憲章

[場所] 
[年月日] 1974年12月12日
[出典] 外務省,外交青書19号,124-134頁
[備考] 第29回国連総会採択,仮訳
[全文]

 前文

 国連総会は,

 国連の基本目的,特に,国際の平和と安全の維持,国家間の友好関係の発展,及び経済的及び社会的分野における国際問題解決のための国際協力の達成を再確認し,

 これらの分野での国際協力を強化する必要性を確認し,

 更に開発のための国際協力の必要を再確認し,経済的及び社会的体制の相違を問わず,すべての国の間における公正,主権平等,相互依存,共通利益及び協力の基礎の上にたって,新国際経済秩序の樹立を促進することが本憲章の基本目的であることを宣言し,

 次に述べる諸事項のための条件の創出に寄与することを熱望し,

(a) すべての国におけるより広い繁栄とすべての国民のためのより高い生活水準の達成

(b) 国際社会全般によるすべての国,特に開発途上国の経済的及び社会的進歩の促進

(c) 本憲章の条項を進んで実施しようとするすべての平和愛好国のための互恵及び衡平な利益を基礎として,政治,経済,社会的体制を問わない経済,通商,科学及び技術分野における協力の助長

(d) 開発途上国の経済発展の過程における主たる障害の克服

(e) 開発途上国,先進国間の経済格差を縮小するための開発途上国の経済成長の促進

(f) 環境の保護,維持及び質の高度化

 次の諸事項を通じ公正及び衡平な経済社会秩序を樹立及び維持する必要に留意し,

(a) より合理的かつ衡平な国際経済関係の達成,及び世界経済における構造的変革の助長

(b) すべての国家間の貿易の一層の拡大及び経済協力の強化を可能にする諸条件の創出

(c) 開発途上国の経済的独立の強化

(d) 開発途上国の発展段階に関する合意された差異及びその特別の必要性を考慮に入れての国際経済関係の樹立及び促進

 各国の主権平等を厳格に尊重しかつ国際社会全般の協力を通じ,とくに開発途上国における開発のための集団経済安全保障を促進することを決意し,

 国際経済問題に関する統一的考慮及び協調的行動に基づく真の国家間協力が,世界のすべての地域の公正かつ合理的開発を達成するとの国際社会の共通の願望を充足するために不可欠であることを考慮し,

 社会経済制度の相異を問わず,すべての国家間の通常の経済関係の処理及びすべての国民の利益のための平和の強化の手段としての国際経済協力の機構強化のみならず,すべての国民の諸権利を十分に尊重するための適当な条件を確保する重要性を強調し,

 すべての国家の主権平等,相互的かつ衡平な利益及びすべての国の諸利益の密接な相互関係に基づいて国際経済関係に関する制度を発展させる必要を確信し,

 各国の開発のための責任は,第一義的に当該国に存するも,それに附随する効果的国際協力は各国自身の開発目標を完全に達成するための本質的な要素であることを再度強調し,

 国際経済関係の実質的な改善を促進するための緊急な必要をかたく確信し,

 この諸国家間の経済権利義務憲章を厳粛に採択する。

   第1章

  国際経済関係の基礎

 諸国家間の経済,政治及びその他の諸関係は,就中次の諸原則により規律される。

(a)諸国家の主権,領土保全及び政治的独立

(b)すべての国家の主権平等

(c)不侵略

(d)不干渉

(e)相互的かつ衡平な利益

(f)平和共存

(g)諸国民の平等な権利及び自決権

(h)紛争の平和的解決

(i)武力によってもたらされ,国家からその通常の発展に必要な自然の手段をうばう不正の除去

(j)国際的義務の誠実な履行

(k)人権と基本的諸自由の尊重

(l)覇権及び勢力圏追求を試みないこと

(m)国際的な社会正義の促進

(n)開発のための国際協力

(o)上記諸原則の範囲内における内陸国の海への及び海からの自由なアクセス

   第2章

  経済的権利及び義務

 

第1条 〔経済社会体制を自由に選択する権利〕

 いかなる国家も,どのような形であれ,外部からの干渉,強制及び脅迫を受けることなく,その国民の意志に従い,その政治的,社会的及び文化的のみならず経済的体制を選択する主権的かつ不可譲の権利を有する。

第2条 〔天然資源の恒久主権,民間投資,多国籍企業〕

 第1項; いかなる国家も,そのすべての富,天然資源及び経済活動に対し,それらを所有,使用及び処分することを含む完全な恒久主権を有し,かつそれを自由に行使する権利を有する。

 第2項; いかなる国家も次の権利を有する。

  (a) 自国の法令に基づき,また自国の国家的目的と政策の優先順位に従い,自国の国家管轄権及び範囲内で,外国投資を規制し,それに対し権限を行使すること。いかなる国家も外国投資に対し特権的待遇を与えることを強制されない。

  (b) 自国の国家管轄権及び範囲内で,多国籍企業の活動を規制,監督し,また右活動がその国家の法令及び規則を遵守し,かつ自国の経済社会政策に合致することを確保するための措置をとること。多国籍企業は受け入れ国の内政に干渉してはならない。いかなる国家も,その主権を十分に尊重しつつ,本項に定める権利を行使するにあたっては,他の国家と協力すべきである。

  (c) 外国人資産を国有化し,収用し,又はその所有権を移転すること。但し,その場合には,自国の適切な法令及び自国が適当と認めるすべての事情を考慮して,妥当な補償を支払わねばならない。補償問題で紛争が生じた場合はいつでも,その紛争は,国有化した国の国内法にもとづき,かつその法廷において解決されなければならない。但し,すべての関係国が諸国家間の主権平等の基礎の上にたち,かつ手段の選択の自由の原則に従い,他の平和的手段を追求することにつき自由にかつ相互間で合意した場合はこの限りではない。

第3条 〔共有天然資源〕

 二つもしくはそれ以上の数の国家により共有されている天然資源の開発にあたっては,いかなる国も,他の国家の正当な利益を害することなく,同資源の最適な利用を実現するために,情報及び事前協議システムに基づく協力を行わなければならない。

第4条 〔貿易上の無差別原則〕

 いかなる国家も,政治的,経済的及び社会的体制の相違を問わず,国際貿易及びその他の経済協力を行う権利を有する。いかなる国家もそのような差異のみに基づくいかなる種類の差別をも課せられることはない。いかなる国家も国際貿易及びその他の経済協力を遂行する上で,自由に,外国との経済関係の組織形態を選択し,かつその国際的義務及び国際経済協力の必要に従った二国間もしくは多国間協定に入るものとする。

第5条 〔生産者カルテル〕

 全ての国家は,開発のための安定した資金手当を充足して,それぞれの国民経済を発展させるために,また,世界経済の着実な成長促進を助長するとの,なかんずく開発途上国の開発を加速するとの目的を遂行するために,一次産品生産国機構に参画する権利を有する。これに対応してすべての国家は,かかる権利を制限する経済的,政治的措置をとることを慎むことによりこの権利を尊重する義務を有する。

第6条 〔商品協定,供給保証〕

 適当な場合には特に取極及び,長期多角的商品協定の締結等により,また生産国及び消費国の利益を勘案しつつ,国際商品貿易の発展に寄与することはすべての国家の義務である。すべての国家は,安定し採算のとれる衡平な価格で交易されるすべての商品の規則正しい流れとアクセスを促進し,とくに開発途上国の利益を勘案した世界経済の衡平な発展に資する責任を分つものである。

第7条 〔国内資源の動員〕

 いかなる国家も,自国民の経済的,社会的,文化的発展を促進する第一義的責任を有する。このため,いかなる国も,その開発の手段と目標を選択し,その資源を十分に動員かつ利用し,進歩的な経済的,社会的改革を実施し,自国民をして開発の段階および利益に十分参加せしめることを確保する権利と責任を有する。すべての国家は,個別かつ集団的に,かかる動員と利用を妨げる障害を除去するため協力する義務を有する。

第8条 〔公正な国際経済関係〕

 諸国家はより合理的かつ衡平な国際経済関係を促進するため,及びすべての国家とくに開発途上国の必要と利益に調和した均衡のとれた世界経済における構造的変革を助長するために協力すべきであり,このための適当な措置をとるべきである。

第9条 〔開発途上国の開発に対する協力〕

 すべての国家は,経済,社会,文化,科学,技術の諸分野において,世界全体とくに開発途上国の経済的,社会的進歩の促進のため協力する責任を有する。

第10条 〔国際経済決定過程への参加〕

 すべての国家は,法律上平等であり,国際社会の平等な構成員として,世界的な経済,財政及び金融上の諸問題の解決,とりわけ現行及び発展中の規則に従いつつ,適当な国際機関を通じての解決のための国際的な決定過程に十分かつ効果的に参加し,それから生ずる利益を衡平に共有する権利を有する。

第11条 〔国際経済機関の効率改善〕

 すべての国家は,すべての国家特に開発途上国の一般的な経済発展を活発化させる諸措置を実施するために,諸国際機関の効率を強化し,それを継続的に改善するよう協力すべきであり,従って,適当な場合には,すべての国家は国際経済協力の変化する必要に対し上記諸措置を適応するよう協力すべきである。

第12条 〔地域協力機構〕

 第1項; 諸国家は,当事国の合意に従い,経済的,社会的進展のために小地域的,地域的及び地域間協力に参加する権利を有する。このような協力を行うすべての国家は,その属している諸グループの政策が,憲章の諸条項に適応し,それが外向的であり,かつその国際的義務及び国際的経済協力の必要に合致し,かつ第三国特に開発途上国の正当な利益を充分尊重するよう確保する義務を有する。

 第2項; 関係諸国が本憲章の範囲内の諸事項に関し,ある一定の権限を移譲し又は移譲できるグループの場合には,本憲章の諸条項は,上記諸事項に関し当該グループの構成員としての諸国家の責任に従い,当該グループにも適用されねばならない。

    上記諸国は,当該グループが本憲章の諸条項を遵守するように協力しなければならない。

第13条 〔科学技術の移転〕

 第1項; いかなる国家も,その経済的,社会的発展促進のため科学技術の進歩,発展からの恩恵を受ける権利を有する。

 第2項; すべでの国家は,とりわけ技術の所有者,供給者及び受益者の権利義務を含むすべての正当な利益に適切な配慮を払いつつ,国際的科学技術協力,及び技術移転を促進すべきである。特に,すべての国家は,開発途上国の経済及び必要に見合った形式と手続に従い,開発途上国の利益のために,開発途上国の近代科学技術の成果へのアクセス,技術移転及び,開発途上国個有の技術の創造を容易ならしめるべきである。

 第3項; 従って,先進国は,開発途上国の経済を拡大し変革するため,その科学及び技術的基盤の樹立,強化,発展,及びその科学研究と技術活動のために,開発途上国と協力すべきである。

 第4項; すべでの国家は,開発途上国の利益を充分考慮し,国際的に受諾された技術移転のための指針乃至規則を更に発展させるために検討するよう協力すべきである。

第14条 〔世界貿易における公平なシェア〕

 いかなる国家も,世界貿易の確実かつ一層の拡大及び自由化,及びすべての国民とくに開発途上国の国民の福祉と生活水準の改善を促進するために協力する義務を有する。従って,すべての国家は,とりわけ貿易障害の漸進的な撤廃及び世界貿易を律するための国際的な枠組の改善の方向で協力すべきであり,これらの諸目的のために協調的な努力が開発途上国の特別な貿易問題を考慮しつつ,すべての国の貿易問題を衡平な方法によって解決するために,払わねばならない。これとの関連において,諸国家は開発途上国の外貨収入の実質的な増大,その輸出の多様化,開発途上国の開発の必要を考慮し,その貿易成長率の上昇,世界貿易の拡大にこれら諸国が参加する可能性の改善,及びこの貿易拡大から生ずる利益分配にあたり,開発途上国にとってより有利なバランスを達成できるよう可能な最大限において,開発途上国の関心産品の市場進出条件の実質的改善及び適当な場合にはいつも一次産品の安定的な衡平なかつ採算のとれる価格を達成するための諸措置を通じ,開発途上国の国際貿易における追加的利益の確保を目ざした諸措置をとるものとする。

第15条 〔軍縮による余剰資源を開発に向ける義務〕

 すべての国家は,有効な国際的管理の下に一般的かつ完全な軍縮を促進し,開発途上国の開発の必要のための追加的手段として,有効な軍縮措置により解放された資源の相当部分を配分しつつ,同資源を諸国家の経済・社会開発に利用する義務を有する。

第16条 〔植民地主義,アパルトヘイト〕

 第1項; 開発のための前提条件として,すべての国家は植民地主義,アパルトヘイト,人種差別,新植民地主義,あらゆる形態の対外侵略,占領,支配,及びこれから生ずる経済的・社会的結果を,個別的及び,集団的に排除する権利及び義務を有する。このような強制的な政策を遂行する国家は,その影響を受けた諸国,地域,及び国民に対して,これら諸国,地域,及び国民が有する天然資源,その他の資源の搾取・涸渇及び損害に対する返還及び十分な補償を行う経済的責任を有する。これら諸国,地域,及び国民への援助を拡大することはすべての国家の義務である。

 第2項; いかなる国家も,武力によって占領された地域の解放の障害となるような投資を促進あるいは助長する権利を有しない。

第17条 〔開発のための国際協力〕

 開発のための国際的協力は,すべての国の共通の目的であり義務である。いかなる国家も,開発途上国の必要と諸目的に従い,諸国家の主権平等を厳守し,かつその主権を侵害するいかなる条件にも拘束されることなく,開発途上国に有利な外的条件を付与し,また積極的な援助を拡大していくことにより,その経済,社会発展を促進するために協力すべきである。

第18条 〔特恵の拡大〕

 先進国は,権限を有する国際機関の枠内において本件に関して採択された関連合意,及び関連決定に従い,開発途上国に対し一般非互恵的かつ無差別的特恵関税制度を供与,改善及び拡大すべきである。先進国は,開発途上国の貿易及び開発の必要をみたすため,可能かつ適当な分野において,特別かつより有利な待遇を与えることのできる方法で,その他の差別的優遇措置を採択することに真剣な考慮を払うべきである。国際経済関係を処理する上で,先進国は,一般特恵及び開発途上国に有利なその他の一般的に合意された異なった措置を与えたことにより促進されるような開発途上国の国民経済の発展に否定的な効果を与える措置をとることを避けるために努力すべきである。

第19条 〔全分野への特恵拡大〕

 開発途上国の経済成長を促進し,先進国と開発途上国間の経済格差を縮小するために,可能な場合には先進国は,国際経済協力の分野において,開発途上国に対し,一般特恵的,非互恵的かつ無差別的待遇を与えるべきである。

第20条 〔開発途上国と社会主義諸国間の貿易拡大〕

 開発途上国は,その全般的な貿易増大の努力を行うにあたり,先進市場経済諸国に対し通常供与しているものよりも不利でない貿易上の条件を供与することにより,社会主義諸国との貿易拡大の可能性に妥当な注意を払うべきである。

第21条 〔開発途上国間特恵〕

 開発途上国は,相互間の貿易拡大を促進する努力をすべきであり,その目的のために,一般的な貿易の自由化及び拡大の障害にならないことを条件として適用可能な現行及び形成中の国際協定の規定及び手続に従い,かつ先進国に当該特恵を供与することを義務付けられることなく,他の開発途上国に貿易上の特恵を与えることが出来る。

第22条 〔資金援助〕

 第1項; すべての国家は,開発途上国の経済的及び社会的発展を促進するための努力を補強するために,関係諸国によって約束された義務及びコミットメントを考慮しつつ,すべての資金源からの開発途上国への実物資源の純移転を拡大,促進することにより,一般的に認識され,相互間で合意された開発途上国の開発の必要と諸目的に応ずるべきである。

 第2項; これとの関連で,前記の諸目的に従い,かつ本分野において約束されたすべての義務及びコミットメントを考慮しつつ,開発途上国に対し政府資金源よりの資金援助の純額を増加し,かつその条件を改善することを先進国の努力とすべきである。

 第3項; 開発援助資金の移転には,経済技術援助を含むべきである。

第23条 〔開発途上国間協力〕

 開発途上国自身の資源を一層効果的に動員するために,開発途上国は経済社会開発を促進するために経済協力を強化し相互貿易を拡大すべきである。すべての国家,特に先進国は,自国が加盟しており,かつ権限を有する諸国際機関を通じるとともに,個別にも,適切かつ効果的な支援と協力を行うべきである。

第24条 〔第三国への配慮〕

 すべての国家は,他国の利益を考慮に入れつつ相互の経済関係を処理する義務を有する。特に,すべての国家は開発途上国の利益を阻害することを避けるべきである。

第25条 〔後発開発途上国,内陸国,島国〕

 世界経済の発展を促進するために,国際社会,特に先進国は,後発開発途上国,開発途上内陸国及び開発途上島嶼国がその特有の困難を克服し,もってその経済社会開発に貢献するのを援助するために,それらの国々の特有の諸問題に特別な配慮を払うべきである。

第26条 〔最恵国待遇〕

 すべての国家は,政治的・経済的・社会的・文化的体制の相違を問わず寛容と平和のうちに共存し,異なる経済的・社会的体制を有する国家間の貿易を容易にする義務を有する。

 国際貿易は,互恵かつ衡平な利益及び最恵国待遇の交換に基づき,開発途上国に有利な一般的,無差別的かつ非互恵的な特恵を阻害することなく行われるべきである。

第27条 〔貿易外取引〕

 第1項; いかなる国家も,世界の貿易外取引の利益を十分享受し,かかる取引の拡大に関与する権利を有する。

 第2項; 効率性,相互かつ衡平な利率,世界経済の一層の拡大の基礎の上にたった貿易外取引はすべての国家の共通の目標である。世界的な貿易外取引の分野における開発途上国の役割は,上記の諸目的及び開発途上国の特別な必要性を特に配慮しつつ,高められ強化されるべきである。

 第3項; すべての国家は,各々の開発途上国の潜在力及び必要に従いかつ上記の諸目的に沿って,貿易外取引から得られる外貨獲得能力を向上させる開発途上国の努力に協力すべきである。

第28条 〔価格インデクゼーション〕

 すべての国家は,生産国にとって採算がとれ生産国と消費国にとり衡平な方法で,開発途上国にとって正当かつ衡平な交易条件を促進するために開発途上国の輸入品価格に対しての輸出品価格の調整を達成するために協力する義務を有する。

   第3章

  世界共同体の共同責任

第29条 〔海底資源開発〕

 国家管轄権の範囲をこえる海底,海床及びその下層土は,その地域の資源と同様に,人類の共有財産である。1970年12月17日に第25回国連総会で採択された決議第2749号の原則に基づき,すべての国家は,当該地域の探査及びその資源の開発が平和目的のためにのみ行われ,かつ,そこから得られる利益が開発途上国の特別な利益と必要性を考慮に入れつつすべての国家により衡平に分配されるよう確保しなければならない。当該地域及びその資源に適用される国際的な制度及びその規定を実施する適当な国際的機構は一般的に合意され普遍的性格を有する国際条約によって樹立されなければならない。

第30条 〔環境保全〕

 現在及び将来にわたる世代のために環境を保護,保存し改善することは,すべての国家の責任である。すべての国家は,かかる責任に従って自国の環境及び開発政策の樹立のため努力しなければならない。すべての国家の環境政策は,開発途上国の現在及び将来にわたる開発の潜在力を高めるべきであり,それを損なうべきでない。すべての国家は,自国の管轄,管理下における活動が,他国の又は国家管轄権の範囲外の地域の環境に損害を与えないよう確保する責任を有する。すべての国家は,環境の分野における国際的規範及び規則を発展させるために努力すべきである。

   第4章

  終章

第31条 〔相互依存〕

 すべての国家は,先進国の福祉と開発途上国の成長及び開発との間の密接な相互関係,及び国際社会全体の繁栄はその構成員の繁栄に依存していることを正当に考慮に入れつつ,世界経済のバランスのとれた拡大に貢献する義務を有する。

第32条 〔強制措置〕

 いかなる国家も,主権を行使するにあたって,他国の主権的権利の行使を従属せしめるために,経済的,政治的もしくはその他のいかなる態様の強制措置を使用し,もしくはその使用を奨励してはならない。

第33条 〔憲章の解釈〕

 第1項; 本憲章のいかなる条項も,国際連合憲章の規定もしくはそれに従って取られる行動を棄損し又は害するものと解してはならない。

 第2項; 本憲章の諸規定の解釈及び適用に当っては,各々の規定が相互に関連しており,そのいずれも他の規定との脈絡において解釈されるべきである。

第34条 〔レビュー〕

 国家間の経済権利義務憲章に関する議題は,第30回国連総会及びそれ以後5会期ごとの総会に掲上されなければならない。かかる方法によって,進捗状況及び必要となる規定の改善及び追加を含む本憲章の履行状況の検討が系統的かつ包括的に行われ,また適当な方策が勧告されることが望ましい。かかる検討においては,すべての経済的,社会的,法律的及び本憲章によってたっている諸原則及びその目的に関連する他の要素の動向を考慮に入れるべきである。