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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 宇宙空間に打ち上げられた物体の登録に関する条約(宇宙物体登録条約)

[場所] ニューヨーク
[年月日] 1975年1月14日作成,1976年9月15日効力発生,1983年5月13日国会承認
[出典] 外務省条約局,条約集(多数国間条約)昭和58年,217−225頁.
[備考] 
[全文]

宇宙空間に打ち上げられた物体の登録に関する条約

昭和五十年一月十四日 ニュー・ヨークで作成
昭和五十一年九月十五日 効力発生
昭和五十八年五月十三日 国会承認
昭和五十八年六月七日 加入の閣議決定
昭和五十八年六月二十日 加入書寄託
昭和五十八年六月二十日 公布及び告示(条約第七号及び外務省告示第一九三号)
昭和五十八年六月二十日 我が国について効力発生

この条約の締約国は、

平和的目的のために宇宙空間を探査し及びその利用を推進することが全人類の共同の利益であることを認識し、

千九百六十七年一月二十七日の月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約が、宇宙空間における活動についての国の国際的責任を確認していること及び宇宙空間に打ち上げられた物体が登録されている国に言及していることを想起し、

また、千九百六十八年四月二十二日の宇宙飛行士の救助及び送還並びに宇宙空間に打ち上げられた物体の返還に関する協定が、宇宙空間に打ち上げられた物体であつて打上げ機関の領域外で発見されたものの返還に先立ち、要請に応じ、打上げ機関が当該物体の識別のための資料を提供することを定めていることを想起し、

更に、千九百七十二年三月二十九日の宇宙物体により引き起こされる損害についての国際的責任に関する条約が宇宙物体により引き起こされる損害についての打上げ国の責任に関する国際的な規則及び手続を定めていることを想起し、

月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約に照らして、宇宙空間に打ち上げられた宇宙物体の打上げ国による国内登録に関する規定を定めることを希望し、

更に、宇宙空間に打ち上げられた物体を義務として登録するための中央登録簿が、国際連合事務総長により設置され及び保管されることを希望し、

また、宇宙物体の識別に資する追加の手段及び手続を締約国に提供することを希望し、

宇宙空間に打ち上げられた物体の義務的な登録の制度が、特にそれらの物体の識別に資すること並びに宇宙空間の探査及び利用を律する国際法の適用を容易にし及びその発展に寄与することを確信して、

次のとおり協定した。

第一条

この条約の適用上、

(a) 「打上げ国」とは、次の国をいう。

(i) 宇宙物体の打上げを行い、又は行わせる国

(ii) 宇宙物体が、その領域又は施設から打ち上げられる国

(b) 「宇宙物体」には、宇宙物体の構成部分並びに宇宙物体の打上げ機及びその部品を含む。

(c) 「登録国」とは、次条の規定により宇宙物体が登録されている打上げ国をいう。

第二条

宇宙物体が地球を回る軌道に又は地球を回る軌道の外に打ち上げられたときは、打上げ国は、その保管する適当な登録簿に記入することにより当該宇宙物体を登録する。打上げ国は、国際連合事務総長に登録簿の設置を通報する。

地球を回る軌道に又は地球を回る軌道の外に打ち上げられた宇宙物体について打上げ国が二以上ある場合には、これらの打上げ国は、月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約第八条の規定に留意し、宇宙物体及びその乗員に対する管轄権及び管理の権限に関して当該打上げ国の間で既に締結された又は将来締結される適当な取極の適用を妨げることなく、1の規定により当該宇宙物体を登録するいずれか一の国を共同して決定する。

登録簿の内容及び保管の条件は、登録国が決定する。

第三条

国際連合事務総長は、次条の規定により提供される情報を記録する登録簿を保管する。

1の登録簿に記載されているすべての情報は、公開される。

第四条

登録国は、登録したそれぞれの宇宙物体に関し、できる限り速やかに国際連合事務総長に次の情報を提供する。

(a) 打上げ国の国名

(b) 宇宙物体の適当な標識又は登録番号

(c) 打上げの行われた日及び領域又は場所

(d) 次の事項を含む基本的な軌道要素

(i) 周期

(ii) 傾斜角

(iii) 遠地点

(iv) 近地点

(e) 宇宙物体の一般的機能

登録国は、登録した宇宙物体に関する追加の情報を随時国際連合事務総長に提供することができる。

登録国は、従前に情報を提供した宇宙物体であつて地球を回る軌道に存在しなくなつたものについて、実行可能な最大限度においてかつできる限り速やかに、国際連合事務総長に通報する。

第五条

地球を回る軌道に又は地球を回る軌道の外に打ち上げられた宇宙物体に前条1(b)の標識若しくは登録番号又はその双方が表示されている場合には、登録国は、同条の規定により宇宙物体に関する情報を提供する際に、国際連合事務総長にその旨を通知する。通知を受けた場合には、同事務総長は、登録簿に当該通知につき記録する。

第六条

いずれかの締約国が、自国又は自国の自然人若しくは法人に対して損害を与えた宇宙物体又は危険若しくは害をもたらすおそれのある宇宙物体を、この条約の規定を適用した場合においても識別することができないときは、他の締約国(特に、宇宙物体の監視及び追跡のための施設を有する国を含む。)は、公平かつ合理的な条件で、当該締約国により又は当該締約国のために国際連合事務総長を通じて行われる当該宇宙物体の識別についての援助の要請に実行可能な最大限度において応ずる。その要請を行う締約国は、要請を行う契機となつた事件について、時刻、性質及び状況に関する情報を実行可能な最大限度において提供する。援助の態様は、関係当時国間の合意により定める。

第七条

この条約において国に言及している規定は、次条から第十二条までの規定を除くほか、宇宙活動を行ういずれの国際的な政府間機関にも適用があるものとする。ただし、当該政府間機関がこの条約の定める権利及び義務の受諾を宣言し、かつ、当該政府間機関の加盟国の過半数がこの条約及び月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約の締約国である場合に限る。

この条約の締約国であつて1の政府間機関の加盟国であるものは、当該政府間機関が1の規定による宣言を行うことを確保するため、すべての適当な措置をとる。

第八条

この条約は、ニュー・ヨークにある国際連合本部においてすべての国による署名のために開放しておく。3の規定に基づくこの条約の効力発生前にこの条約に署名しなかつた国は、いつでもこの条約に加入することができる。

この条約は、署名国によつて批准されなければならない。批准書及び加入書は、国際連合事務総長に寄託する。

この条約は、五番目の批准書が国際連合事務総長に寄託された時に、批准書を寄託した国の間で効力を生ずる。

この条約は、その効力発生の後に批准書又は加入書を寄託する国については、その批准書又は加入書の寄託の日に効力を生ずる。

国際連合事務総長は、すべての署名国及び加入国に対し、署名の日、この条約の批准書及び加入書の寄託の日、この条約の効力発生の日並びに他の事項を速やかに通報する。

第九条

いずれの締約国も、この条約の改正を提案することができる。改正は、締約国の過半数が改正を受諾した時に、受諾した締約国について効力を生ずるものとし、その後に改正を受諾する他の締約国については、その受諾の日に効力を生ずる。

第十条

この条約の効力発生の十年後に、この条約の過去における適用状況に照らしてこの条約の改正が必要であるかないかを審議するため、この条約の検討の問題を、国際連合総会の仮議事日程に含める。ただし、この条約の効力発生の後五年を経過した後はいつでも、締約国の三分の一以上の要請により、締約国の過半数の同意を得て、この条約を検討するための締約国の会議が招集される。検討に当たつては、宇宙物体の識別に関する技術その他の関連技術の進歩を特に考慮する。

第十一条

いずれの締約国も、この条約の効力発生の後一年を経過した後は、国際連合事務総長にあてた文書により、この条約からの脱退を通告することができる。脱退は、脱退を通告する文書の受領の日から一年で効力を生ずる。

第十二条

アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とするこの条約の原本は、国際連合事務総長に寄託する。同事務総長は、その認証謄本をすべての署名国及び加入国に送付する。

以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けて、千九百七十五年一月十四日にニュー・ヨークで署名のために開放されたこの条約に署名した。