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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 過度に傷害を与え又は無差別に効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器の使用の禁止又は制限に関する条約(特定通常兵器使用禁止制限条約)

[場所] ジュネーヴ
[年月日] 1980年10月10日作成,1981年9月22日署名,1983年12月2日効力発生
[出典] 外務省条約局,条約集(多数国間条約)昭和58年,547−561頁.
[備考] 
[全文]

過度に傷害を与え又は無差別に効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器の使用の禁止又は制限に関する条約

昭和五十五年十月十日 ジュネーヴで作成
昭和五十八年十二月二日 効力発生
昭和五十六年九月二十二日 署名
昭和五十七年六月四日 国会承認
昭和五十七年六月四日 受諾の閣議決定
昭和五十七年六月九日 受諾書寄託
昭和五十八年九月十六日 公布及び告示(条約第十二号及び外務省告示第二九八号)
昭和五十八年十二月二日 我が国について効力発生

締約国は、

国際連合憲章に基づき、各国が、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の主権、領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎む義務を負つていることを想起し、

敵対行為の及ぼす影響から文民たる住民を保護するという一般原則を想起し、

武力紛争の当事者が戦闘の方法及び手段を選ぶ権利は無制限ではないという国際法の原則並びに武力紛争においてその性質上過度の傷害又は無用の苦痛を与える兵器、投射物及び物質並びに戦闘の方法を用いることは禁止されているという原則に立脚し、

自然環境に対して広範な、長期的なかつ深刻な損害を与えることを目的とする又は与えることが予想される戦闘の方法及び手段を用いることは禁止されていることを想起し、

文民たる住民及び戦闘員は、この条約及びこの条約の附属議定書又は他の国際取極がその対象としていない場合においても、確立された慣習、人道の諸原則及び公共の良心に由来する国際法の原則に基づく保護並びにこのような国際法の原則の支配の下に常に置かれるべきであるとの決意を確認し、

国際間の緊張の緩和、軍備競争の終止及び諸国間の信頼の醸成に貢献し、もつて、平和のうちに生活することに対するすべての人民の願望の実現に貢献することを希望し、

厳重かつ効果的な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小への進展に貢献するためにあらゆる努力を継続することの重要性を認識し、

武力紛争の際に適用される国際法の諸規則の法典化及び漸進的発達を引き続き図ることの必要性を再確認し、

ある種の通常兵器の使用の禁止又は制限を促進することを希望し、その使用の禁止又は制限の分野において達成される成果が、当該兵器の生産、貯蔵及び拡散の終止を目的とする軍備縮小についての主要な討議を容易にすることができるものと信じ、

すべての国、特に軍事面で主要な国がこの条約及びこの条約の附属議定書の締約国となることが望ましいことを強調し、

国際連合総会及び国際連合軍縮委員会(the United Nations Disarmament Commission)が、この条約及びこの条約の附属議定書に規定する禁止及び制限の範囲を拡大する可能性について検討することができることを決定することができることに留意し、

軍縮委員会(the Committee on Disarmament)が、ある種の通常兵器の使用の禁止又は制限ための新たな措置の採択について審議することを決定することができることに留意して、

次のとおり協定した。

第一条 適用範囲

この条約及びこの条約の附属議定書は、戦争犠牲者の保護に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約のそれぞれの第二条に共通して規定する事態(ジュネーヴ諸条約の追加議定書I第一条4に規定する事態を含む。)について適用する。

第二条 他の国際取極との関係

この条約又はこの条約の附属議定書のいかなる規定も、武力紛争の際に適用される国際人道法により締約国に課される他の義務を軽減するものと解してはならない。

第三条 署名

この条約は、千九百八十一年四月十日から十二箇月の間、ニュー・ヨークにある国際連合本部において、すべての国による署名のために開放しておく。

第四条 批准、受諾、承認又は加入

この条約は、署名国によつて批准され、受諾され又は承認されなければならない。この条約に署名しなかつたいずれの国も、この条約に加入することができる。

批准書、受諾書、承認書又は加入書は、寄託者に寄託する。

各国は、この条約のいずれの附属議定書に拘束されることに同意するかを選択することができるものとし、この条約の批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託に際し、この条約の二以上の附属議定書に拘束されることに同意する旨を寄託者に通告しなければならない。

締約国は、この条約の批准書、受諾書、承認書又は加入書を寄託した後いつでも、自国が拘束されていないこの条約の附属議定書に拘束されることに同意する旨を寄託者に通告することができる。

いずれかの締約国を拘束するこの条約の附属議定書は、当該締約国について、この条約の不可分の一部を成す。

第五条 効力発生

この条約は、二十番目の批准書、受諾書、承認書又は加入書が寄託された日の後六箇月で効力を生ずる。

この条約は、二十番目の批准書、受諾書、承認書又は加入書が寄託された日の後に批准書、受諾書、承認書又は加入書が寄託する国については、当該国が批准書、受諾書、承認書又は加入書を寄託した日の後六箇月で効力を生ずる。

この条約の附属議定書は、前条3又は4の規定に基づいて二十の国が当該各附属議定書に拘束されることに同意する旨を通告した日の後六箇月で効力を生ずる。

二十の国がこの条約のいずれかの附属議定書に拘束されることに同意する旨を通告した日の後に当該各附属議定書に拘束されることに同意する旨を通告する国については、当該附属議定書は、当該国が拘束されることに同意する旨を通告した日の後六箇月で効力を生ずる。

第六条 周知

締約国は、武力紛争が生じているかいないかを問わず、自国において、できる限り広い範囲においてこの条約及び自国が拘束されるこの条約の附属議定書の周知を図ること並びに、特に、この条約及び当該附属議定書を自国の軍隊に周知させるため自国の軍隊の教育の課目にこの条約及び当該附属議定書についての学習を取り入れることを約束する。

第七条 この条約の効力発生の後の条約関係

いずれか一の紛争当事者がこの条約のいずれかの附属議定書に拘束されていない場合においても、この条約及び当該附属議定書に拘束される二以上の紛争当事者相互の関係においては、当該二以上の紛争当事者は、この条約及び当該附属議定書に拘束される。

締約国は、第一条に規定する事態において、この条約の締約国でない国又はこの条約のいずれかの附属議定書に拘束されていない国がこの条約又は当該附属議定書を受諾し、適用し、かつ、その旨を寄託者に通告する場合には、当該国との関係において、この条約及び当該附属議定書(自国について効力を生じていることを条件とする。)に拘束される。

寄託者は、2の規定により受領した通告を直ちに関係締約国に通報する。

千九百四十九年八月十二日の戦争犠牲者の保護に関するジュネーヴ諸条約の追加議定書I第一条4に規定する武力紛争であつてこの条約の締約国が当事者となつているものについては、この条約及び当該締約国が拘束されるこの条約の附属議定書は、次の場合に適用される。

(a) 当該締約国が追加議定書Iの締約国で、追加議定書I第九十六条3に規定する当局が、同条3の規定に基づいてジュネーヴ諸条約及び追加議定書Iの規定を適用することを約束しており、かつ、当該武力紛争に関しこの条約及び当該締約国が拘束されるこの条約の附属議定書を適用することを約束する場合

(b) 当該締約国が追加議定書Iの締約国ではなく、(a)に規定する当局が、当該武力紛争に関しジュネーヴ諸条約の義務並びにこの条約及び当該締約国が拘束されるこの条約の附属議定書の義務を受諾し、かつ、履行する場合。その受諾及び履行は、当該武力紛争に関し、次の効果を有する。

(i) ジュネーヴ諸条約並びにこの条約及び当該締約国が拘束されるこの条約の附属議定書は、紛争当事者について直ちに効力を生ずる。

(ii) (a)に規定する当局は、ジュネーヴ諸条約並びにこの条約及び当該締約国が拘束されるこの条約附属議定書の締約国の有する権利及び義務と同一の権利及び義務を有する。

(iii) ジュネーヴ諸条約並びにこの条約及び当該締約国が拘束されるこの条約の附属議定書は、すべての紛争当事者を平等に拘束する。

当該締約国及び当該当局は、相互主義に基づき、ジュネーヴ諸条約の追加議定書Iの義務を受諾し及び履行することを合意することができる。

第八条 検討及び改正

(a) いずれの締約国も、この条約の効力発生の後いつでも、この条約又は自国が拘束されるこの条約の附属議定書の改正を提案することができる。改正案は、寄託者に送付する。寄託者は、改正案をすべての締約国に通報するものとし、改正案を検討するために会議を招集するかしないかについて締約国の意見を求める。過半数の締約国(十八以上の締約国であることを条件とする。)が会議の招集に同意する場合には、寄託者は、速やかにすべての締約国を招請して会議を招集する。この条約の締約国でない国は、オブザーバーとして会議に招請される。

(b) (a)に規定する会議は、この条約及びこの条約の附属議定書の改正を合意することができる。改正は、この条約及びこの条約の附属議定書の場合と同様の方式により、採択され、効力を生ずる。もつとも、この条約の改正は、締約国のみにより採択されるものとし、この条約の附属議定書の改正は、当該附属議定書によつて拘束される締約国のみにより採択されるものとする。

(a) いずれの締約国も、この条約の効力発生の後いつでも、この条約の附属議定書の対象となつていない種類の通常兵器に関する追加の議定書を提案することができる。提案は、寄託者に送付するものとし、寄託者は、1(a)の規定によりすべての締約国に当該提案を通報する。過半数の締約国(十八以上の締約国であることを条件とする。)が会議の招集に同意する場合には、寄託者は、速やかにすべての国を招請して会議を招集する。

(b) (a)に規定する会議は、出席するすべての国の完全な参加を得て追加の議定書を合意することができる。追加の議定書は、この条約の採択と同様の方式により採択され、この条約の附属議定書となり、第五条3及び4の規定の例により効力を生ずる。

(a) この条約が効力を生じた日から十年の期間の満了の日までに1(a)又は2(a)規定のに基づき会議が招集されなかつた場合には、いずれの締約国も、寄託者に対し、この条約及びこの条約の附属議定書の適用範囲及び運用について検討するため並びにこの条約の改正案又はこの条約の附属議定書の改正案を検討するため、すべての締約国が招請される会議を招集するよう要請することができる。この条約の締約国でない国は、オブザーバーとして会議に招請される。会議は、この条約及びこの条約の附属議定書の改正を合意することができる。改正は、1(b)の定めるところにより、採択され、効力を生ずる。

(b) (a)に規定する会議においては、この条約の附属議定書の対象となつていない種類の通常兵器に関する追加の議定書の提案についても検討することができる。会議に出席するすべての国は、その検討に完全に参加することができる。追加の議定書は、この条約の採択と同様の方式により採択され、この条約の附属議定書となり、第五条3及び4の規定の例により効力を生ずる。

(c) (a)に規定する会議は、会議後(a)に定める期間と同様の期間が経過するまでに1(a)又は2(a)の規定に基づき会議が招集されない場合に締約国の要請に基づいて新たな会議を招集することの当否につき、検討することができる。

第九条 廃棄

いずれの締約国も、寄託者に廃棄の通告を行うことにより、この条約又はこの条約のいずれの附属議定書も廃棄することができる。

廃棄は、寄託者が廃棄の通告を受領した後1年で効力を生ずる。ただし、廃棄を行う締約国は、当該一年の期間の満了の時において第一条に規定する事態に巻き込まれている場合には、武力紛争又は占領の終了の時まで、及びいかなる場合においても、武力紛争の際に適用される国際法により保護されている者の最終的解放、送還又は居住地の設定に関連する業務の終了の時まで、この条約及びこの条約の附属議定書の義務に引き続き拘束される。関係地域において国際連合の軍隊又は使節団による平和維持、監視その他これらに類する任務の遂行がある事態において当該事態に関する規定を含むこの条約の附属議定書の廃棄を行う締約国は、これらの任務の終了の時まで、当該附属議定書の義務に引き続き拘束される。

この条約の廃棄を行う場合には、廃棄を行う締約国が拘束されているこの条約のすべての附属議定書についても廃棄を行うものとみなされる。

廃棄は、廃棄を行う締約国についてのみ効力を有する。

廃棄は、廃棄が有効となる前に行われた行為について、廃棄を行う締約国がこの条約及びこの条約の附属議定書に基づき負つている武力紛争を理由とする義務に影響を及ぼすものではない。

第十条 寄託

国際連合事務総長は、この条約及びこの条約の附属議定書の寄託者とする。

寄託者は、通常の任務を行うほか、すべての国に対し次の事項を通報する。

(a) 第三条の規定によるこの条約への署名

(b) 第四条の規定によるこの条約の批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託

(c) 第四条の規定によるこの条約の附属議定書に拘束されることに同意する旨の通告

(d) 第五条の規定に基づきこの条約及びこの条約の附属議定書が効力を生ずる日

(e) 前条の規定により受領した廃棄の通告及び当該廃棄が効力を生ずる日

第十一条 正文

アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とするこの条約及びこの条約の附属議定書の原本は、寄託者に寄託する。寄託者は、この条約及びこの条約の附属議定書の認証謄本をすべての国に送付する。