[文書名] 化学兵器禁止条約,実施及び検証に関する附属書(「検証附属書」)第一部
実施及び検証に関する附属書(「検証附属書」)
1
「承認された装置」とは、査察団の任務の遂行に必要な装置及び機器であって、第二部27の規定によって技術事務局が作成する規則に従って技術事務局が認証したものをいう。承認された装置には、査察団が使用する運営用備品又は記録用資材を含めることができる。
2
第二条の化学兵器生産施設の定義に規定する「建物」は、特別な建物及び標準的な建物から成る。
(a)
「特別な建物」とは、次のものをいう。
(i)
生産又は充填{てんとルビ}のための特別な設備が配置されている建物(地下の工作物を含む。)
(ii)
この条約によって禁止されていない化学物質の生産又は充填{てんとルビ}のために通常使用される建物とは明確に異なる特徴を有する建物(地下の工作物を含む。)
(b)
「標準的な建物」とは、第二条8(a)(i)に規定する化学物質又は腐食性の化学物質を生産しない施設のための産業用の一般的な規格に従って建設される建物(地下の工作物を含む。)をいう。
3
「申立てによる査察」とは、第九条の8から25までの規定に基づく他の締約国の要請により、締約国の領域内又はその管轄若しくは管理の下にあるその他の場所における施設又は区域に対して行われる査察をいう。
4
「識別可能な有機化学物質」とは、炭素化合物(炭素の酸化物及び硫化物並びに金属炭酸塩を除く。)から成るすべての化学物質であって、化学名、構造式が判明している場合には当該構造式及びCAS登録番号が付されている場合には当該番号によって識別することができるものをいう。
5
第二条の化学兵器生産施設の定義に規定する「設備」は、特別な設備及び標準的な設備から成る。
(a)
「特別な設備」とは、次のものをいう。
(i)
一連の主要な生産設備(生成物の合成、分離又は精製のための反応器又は設備、技術の最終段階(例えば、反応工程、生成物の分離工程)において熱移転のために直接使用された設備及び同条8(a)(i)に規定する化学物質と接触していたか又は化学兵器生産施設が操業する場合に当該化学物質と接触することとなる他の設備を含む。)
(ii)
化学兵器の充填{てんとルビ}のための機器類
(iii)
化学兵器生産施設としての施設(同条8(a)(i)に規定する化学物質又は腐食性の化学物質を生産しない施設のための産業用の一般的な規格に従って建設される施設とは異なるもの)の操業のために特別に設計され、建造され又は設置された他の設備(例えば、高ニッケル合金又は他の特別な耐食性材料から作られた設備、廃棄物の管理若しくは処理、空気のろ過又は溶剤の回収のための特殊な設備、特別な隔離設備及び安全用遮蔽体{蔽にへいとルビ}、化学兵器のために毒性化学物質の分析に使用される標準的でない実験設備、特別に設計された工程制御盤、特別な設備のための専用の予備品)
(b)
「標準的な設備」とは、次のものをいう
(i)
化学産業において一般的に使用される生産設備であって、特別な設備の類型には含まれないもの
(ii)
化学産業において通常使用される他の設備(例えば、消火設備、警備及び安全監視設備医療施設、実験施設、通信設備)
6
第六条の規定において「施設」とは、次の産業施設(「事業所」、「工場」及び「設備単位」)のいずれかをいう。
(a)
「事所所」(例えば、工業所、製作所)とは、中間的な管理組織を有する一又は二以上の工場が地域的に統合されたものであって、単一の運営管理の下にあり、かつ、共通の基盤的施設(例えば、次の(i)から(viii)までに掲げるもの)を有するものをいう。
(i)
管理事務所その他の事務所
(ii)
修理及び保守のための作業場
(iii)
医療センター
(iv)
光熱・用水設備
(v)
中央分析実験施設
(vi)
研究開発実験施設
(vii)
排水及び廃棄物中央処理場
(viii)
貯蔵倉庫
(b)
「工場」(例えば、生産施設、作業所)とは、補助的な及び付随する基盤的施設(例えば、次の(i)から(vi)までに掲げるもの)を有する一又は二以上の設備単位を含む敷地、工作物又は建物であって相対的に独立したものをいう。
(i)
小規模な管理組織
(ii)
原料及び生成物の貯蔵及び取扱いのための場所
(iii)
排水又は廃棄物の取扱い及び処理のための場所
(iv)
制御及び分析のための実験施設
(v)
救急医療及び関係する医療組織
(vi)
申告された化学物質及びその原料又は当該化学物質から生成される生成物の当該工場への、当該工場の周辺における及び当該工場からの移動に関する記録
(c)
「設備単位」(例えば、生産の設備単位、加工の設備単位)とは、化学物質の生産、加工又は消費に必要な設備の組合せ(槽及び槽に付随する設備を含む。)をいう。
7
「施設協定」とは、第四条から第六条までの規定に従って現地検証の対象となる特定の施設に関する締約国と機関との間の協定又は取決めをいう。
8
「接受国」とは、この条約に従って査察の対象となる他の締約国の施設又は区域が自国の領域内にある国をいう。
9
「国内の同行員」とは、査察団の国内滞在期間中、当該査察団に同行し及び当該査察団を援助するために、被査察締約国が希望するとき及び適当な場合において接受国が希望するときに、これらの国によって指定される個人をいう。
10
「国内滞在期間」とは、査察団が入国地点に到着してから入国地点から出国するまでの期間をいう。
11
「冒頭査察」とは、第三条から第六条までの規定及びこの附属書に従って行われる申告を検証するために施設に対して行われる最初の現地査察をいう。
12
「被査察締約国」とは、自国の領域内若しくはその管轄若しくは管理の下にあるその他の場所においてこの条約に基づいて査察が行われる締約国又は接受国の領域内にある自国の施設若しくは区域が査察の対象となる締約国をいう。ただし、第二部21に規定する締約国を含まない。
13
「査察補」とは、査察又は訪問に当たって査察員を補佐するため、第二部Aの規定に従って技術事務局が指名する個人(例えば、医療、警備及び管理のための要員、通訳)をいう。
14
「査察命令」とは、個別の査察の実施のために事務局長が査察団に対して与える指示をいう。
15
「査察手引書」とは、技術事務局が作成する査察の実施のための追加的な手続を取りまとめたものをいう。
16
「査察施設」とは、査察が行われる施設又は区域であって、それぞれの施設協定、査察の要請(代替外縁又は最終外縁によって拡大されたものを含む。)又は査察命令において具体的に定められるものをいう。
17
「査察団」とは、個別の査察を行うために事務局長が選任する査察員及び査察補の集団をいう。
18
「査察員」とは、この条約に基づいて査察又は訪問を行うため、第二部Aに規定する手続に従って技術事務局が指名する個人をいう。
19
「モデル協定」とは、この附属書の検証に関する規定を実施するため、締約国と機関との間で締締する協定のための一般的な形式及び内容を定める文書をいう。
20
「オブザーバー」とは、申立てによる査察に立ち会う要請締約国又は第三の締約国の代表者をいう。
21
「外縁」とは、申立てによる査察について、地理上の座標又は地図上の記述のいずれかによって定められる査察施設の外側の境界をいう。
(a)
「要請外縁」とは、第十部8の規定に従って指定される査察施設の外縁をいう。
(b)
「代替外縁」とは、要請外縁に代えて被査察締約国が指定する査察施設の外縁をいう。代替外縁については、第十部17に定める要件を満たすものとする。
(c)
「最終外縁」とは、第十部の16から21までの規定に従って査察団と被査察締約国の間の交渉において合意される最終の査察施設の外縁をいう。
(d)
「申告外縁」とは、第三条から第六条までの規定に従って申告された施設の外側の境界をいう。
22
第九条の規定の適用上、「査察期間」とは、査察団が査察施設へのアクセスを認められてから当該査察施設を出発するまでの期間をいう。ただし、検証活動の事前又は事後に行われる説明のための時間を除く。
23
第四条から第六条までの規定の適用上、「査察期間」とは、査察団が査察施設に到着してから当該査察施設を出発するまでの期間をいう。ただし、検証活動の事前又は事後に行われる説明のための時間を除く。
24
「入国地点」又は「出国地点」とは、この条約に基づく査察のために査察団が国内に到着し又はその任務の完了の後出国するために指定された場所をいう。
25
「要請締約国」とは、第九条の規定に基づいて申立てによる査察を要請した締約国をいう。
26
「トン」とは、メートル・トン、すなわち、千キログラムをいう。