データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 実施及び検証に関する附属書(「検証附属書」)第二部

[場所] パリ
[年月日] 1993年1月13日
[出典] 外務省条約局,条約集(多数国間条約)平成9年,243−255頁.
[備考] 
[全文]

実施及び検証に関する附属書(「検証附属書」)

第二部 検証の一般規則
査察員及び査察補の指名

技術事務局は、この条約が効力を生じた後三十日以内に、すべての締約国に対し、指名のために提案する査察員及び査察補の氏名、国籍、地位、資格及び職業上の経験を書面によって通報する。

締約国は、自国に対して指名のために提案された査察員及び査察補の名簿の受領を直ちに確認するものとし、当該名簿の受領の確認の後三十日以内に、技術事務局に対し、各査察員及び査察補の受入れを書面によって通報する。締約国が当該名簿の受領の確認の後三十日以内に書面により受け入れない旨を宣言する場合を除くほか、当該名簿に含まれる査察員及び査察補は、指名されたものとみなす。締約国は、その反対する理由を当該宣言に含めることができる。
受け入れられない場合には、提案された査察員又は査察補は、受け入れない旨を宣言した締約国の領域内又はその管轄若しくは管理の下にあるその他の場所において、検証活動に従事せず又は参加しない。技術事務局は、必要な場合には、当初の名簿に追加して更に提案を行う。

この条約に基づく検証活動は、指名された査察員及び査察補のみによって行われる。

締約国は、いつでも、既に指名されている査察員又は査察補の受入れに反対する権利を有する。ただし、5の規定が適用される場合は、この限りでない。当該締約国は、書面により、受入れに反対する旨を技術事務局に通報するものとし、反対する理由をその通報に含めることができる。当該締約国による反対は、技術事務局による通報の受領の後三十日で効力を生ずる。技術事務局は、査察員又は査察補の指名の撤回を当該締約国に直ちに通報する。

査察の通告を受けた締約国は、当該査察のための査察団の名簿に掲げられている指名された査察員又は査察補を当該査察団から除外することを求めてはならない。

締約国により受け入れられ、当該締約国について指名される査察員又は査察補の数は、適切な数の査察員及び査察補の利用及び交替を可能にするのに十分なものでなければならない。

事務局長は、提案した査察員又は査察補が受け入れられないことにより、十分な数の査察員又は査察補の指名が妨げられる等技術事務局の任務の効果的な遂行が阻害されると認める場合には、この問題を執行理事会に送付する。

査察員及び査察補の名簿の修正が必要であるか又は要請される場合にはいつでも、当初の名簿について定められた方法と同様の方法で代替の査察員及び査察補を指名する。

他の締約国の領域内に存在する締約国の施設の査察を行う査察団の構成員については、被査察締約国及び接受国である締約国(以下「接受締約国」という。)の双方にこの附属書に定める手続を適用して指名する。

特権及び免除

10 締約国は、査察員及び査察補の名簿又はその変更の通報の受領を確認した後三十日以内に、各査察員又は査察補が査察活動を行う目的で自国の領域内に入国し及び滞在することができるように数次の出入国査証又は通過査証その他の文書を提供する。これらの文書は、技術事務局に提供した後少なくとも二年間は有効なものとする。

11 査察員及び査察補は、その任務を効果的に遂行するため、次の(a)(i)から(i)までに規定する特権及び免除を与えられる。特権及び免除は、この条約のために査察団の構成員に対して与えられるものであり、当該構成員の個人の一身上の便宜のために与えられるものではない。特権及び免除は、被査察締約国又は接受国の領域内に到着してから当該領域を出発するまでの全期間にわたって当該構成員に対して与えられ、その後は、当該構成員の公の任務の遂行に当たって既に行われた行為に関して与えられる。

(a) 査察団の構成員は、千九百六十一年四月十八日の外交関係に関するウィーン条約第二十九条の規定に基づいて外交官が享受する不可侵を与えられる。

(b) この条約に基づいて査察活動を行う査察団の住居内及び事務所の構内は、外交関係に関するウィーン条約第三十条1の規定に基づいて外交官の住居に与えられる不可侵及び保護を与えられる。

(c) 査察団の書類及び通信(記録を含む。)は、外交関係に関するウィーン条約第三十条2の規定に基づいて外交官のすべての書類及び通信に与えられる不可侵を享受する。査察団は、技術事務局と通信するために暗号を使用する権利を有する。

(d) 査察団の構成員が携行する試料及び承認された装置は、この条約に定めるところに従って不可侵とし、及びすべての関税を免除される。有害な試料は、関連規則に従って輸送する。

(e) 査察団の構成員は、外交関係に関するウィーン条約第三十一条の1から3までの規定に基づいて外交官に与えられる免除を与えられる。

(f) この条約に基づく活動を行う査察団の構成員は、外交関係に関するウィーン条約第三十四条の規定に基づいて外交官に与えられる賦課金及び租税の免除を与えられる。

(g) 査察団の構成員は、いかなる関税又は関係する課徴金も支払うことなく、個人的な使用のための物品を被査察締約国又は接受締約国の領域内に持ち込むことを許可される。ただし、輸出入が法律によって禁止されており又は検疫規則によって規制されている物品を除く。

(h) 査察団の構成員は、一時的な公の任務を有する外国政府の代表者に与えられる通貨及び為替に関する便益と同一の便益を与えられる。

(i) 査察団の構成員は、被査察締約国又は接受国の領域内で個人的な利得を目的とするいかなる職業活動又は商業活動にも従事してはならない。

12 査察団の構成員は、被査察締約国でない締約国の領域を通過する場合には、外交関係に関するウィーン条約第四十条1の規定に基づいて外交官が享受する特権及び免除を与えられる。当該査察団の構成員が携行する書類及び通信(記録を含む。)、試料並びに承認された装置に関しては、11の(c)及び(d)に規定する特権及び免除が与えられる。

13 査察団の構成員は、その特権及び免除を害されることなく、被査察締約国又は接受国の法令を尊重する義務を負い、及び査察命令と両立する限度においてこれらの国の国内問題に介入しない義務を負う。被査察締約国又は接受締約国がこの附属書に規定する特権及び免除の濫用があったと認める場合には、濫用があったか否かを決定するため、及び濫用があったと決定するときはこれが繰り返されることを防止するため、当該被査察締約国又は接受締約国と事務局長との間で協議を行う。

14 事務局長は、査察団の構成員に対する裁判権からの免除が正義の実現を阻害するものであり、かつ、この条約の実施を害することなくこれを放棄することができると認める場合には、当該免除を放棄することができる。放棄は、常に明示的に行われなければならない。

15 オブザーバーは、このBの規定に基づいて査察員に対して与えられる特権及び免除と同一の特権及び免除を与えられる。ただし、11(d)の規定に基づいて与えられる特権及び免除は、この限りでない。

共通の措置
入国地点

16 締約国は、この条約が自国について効力を生じた後三十日以内に入国地点を指定し、及び技術事務局に対し必要な情報を提供する。当該入国地点については、査察団が少なくともいずれかの入国地点からいかなる査察施設へも十二時間以内に到着することができるようなものとする。技術事務局は、すべての締約国に対し入国地点の所在地に関する情報を提供する。

17 締約国は、技術事務局に通報することにより、入国地点を変更することができる。その変更は、すべての締約国に対し適切な通報が行われるようにするため、技術事務局が変更の通報を受領した後三十日で効力を生ずる。

18 技術事務局は、入国地点の数が査察の適時の実施のために不十分であり又は締約国が提案する入国地点の変更の結果査察の適時の実施が妨げられると認める場合には、このような問題を解決するために当該締約国と協議を行う。

19 被査察締約国の施設若しくは区域が接受締約国の領域内に存在する場合又は入国地点から査察の対象となる施設若しくは区域へのアクセスが認められるために他の締約国の領域を通過することが必要となる場合には、当該被査察締約国は、この附属書に従って、当該査察に関する権利を行使し及び義務を履行する。当該接受締約国は、これらの施設又は区域の査察を容易にし、及び査察団がその任務を適時のかつ効果的な方法で遂行することができるようにするため必要な援助を提供する。被査察締約国の施設又は区域の査察を行うためにその領域を通過することが必要とされる締約国は、その通過を容易にする。

20 被査察締約国の施設又は区域がこの条約の締約国でない国の領域内に存在する場合には、当該被査察締約国は、これらの施設又は区域の査察がこの附属書に従って行われることを確保するために必要なすべての措置をとる。締約国は、この条約の締約国でない国の領域内に一又は二以上の施設又は区域を有する場合には、自国について指名された査察員及び査察補の受入れがその接受国によって行われることを確保するために必要なすべての措置をとる。被査察締約国がアクセスを確保することができない場合には、当該被査察締約国は、アクセスを確保するために必要なすべての措置をとったことを証明する。

21 査察の対象となる施設又は区域が、締約国の領域内であり、かつ、この条約の締約国でない国の管轄又は管理の下にある場所に存在する場合には、当該締約国は、これらの施設又は区域の査察がこの附属書に従って行われることを確保するため、被査察締約国及び接受締約国に対して求められることとなる必要なすべての措置をとる。当該締約国は、これらの施設又は区域へのアクセスを確保することができない場合には、アクセスを確保するために必要なすべての措置をとったことを証明する。この21の規定は、当該査察の対象となる施設又は区域が当該締約国の施設又は区域である場合には、適用しない。

不定期飛行に使用する航空機の利用に関する措置

22 査察団は、定期の商業上の輸送を利用することによって適時に移動することができない場合には、第九条の規定に基づく査察その他の査察のため、技術事務局が所有し又は借り上げる航空機を利用することを必要とすることがある。締約国は、この条約が自国について効力を生じた後三十日以内に、査察施設が存在する領域へ及び当該領域から査察団及び査察に必要な装置を輸送する不定期飛行に使用する航空機のために常に有効な外交上の許可番号を技術事務局に通報する。指定される入国地点への往復の航空路は、外交上の許可を与えるための基礎として締約国と技術事務局との間で合意した確立された国際航空路に沿うものとする。

23 技術事務局は、不定期飛行に使用する航空機を利用する場合には、査察施設が存在する国の空域に入る前の最終の飛行場から入国地点までの当該航空機の飛行計画を、当該飛行場からの出発予定時刻の少なくとも六時間前までに、国内当局を通じて被査察締約国に提出する。当該飛行計画は、民間航空機について適用される国際民間航空機関の手続に従って提出する。技術事務局は、その所有し又は借り上げる航空機に関し、各飛行計画の備考欄に常に有効な外交上の許可番号及びその航空機が査察のための航空機であることを示す適当な注釈を含める。

24 被査察締約国又は接受締約国は、査察団が到着予定時刻までに入国地点に到着することができるようにするため、査察が行われる国の空域に入る前の最終の飛行場からの当該査察団の出発予定時刻の少なくとも三時間前までに、23の規定に従って提出される飛行計画が承認されることを確保する。

25 被査察締約国は、技術事務局が査察国の利用する航空機を所有し又は借り上げる場合には、入国地点において、技術事務局が要請する当該航空機のための駐機場、警備上の保護、役務及び燃料を提供する。当該航空機は、着陸料、出国税及びこれらに類する課徴金を免除される。技術事務局は、このような燃料、警備上の保護及び役務の費用を負担する。

管理上の措置

26 被査察締約国は、査察団が必要とする便宜(例えば、通信手段、面談その他の任務の遂行のために必要な範囲内の通訳、輸送、作業場所、宿泊、食事、医療)を提供し又はそのための措置をとる。この点に関し、被査察締約国が査察団のために負担した費用については、機関が償還する。

承認された装置

27 29の規定が適用される場合を除くほか、被査察締約国は、28の規定に従って承認された装置であって、技術事務局が査察を行うために必要であると決定したものを査察団が査察施設に持ち込むことにつき、いかなる制限も課してはならない。技術事務局は、このような目的のために必要とされる承認された装置の一覧表及びこれらの装置を規律する規則であってこの附属書に適合するものを作成し及び、必要に応じ、改定する。技術事務局は、承認された装置の一覧表及び当該規則を作成するに当たり、承認された装置が使用される可能性のあるすべての種類の施設の安全が十分に考慮されることを確保する。承認された装置の一覧表については、第八条21(i)の規定に従って会議が検討し及び承認する。

28 技術事務局は、装置を保管し、指定し、検査し及び承認する。技術事務局は、可能な範囲内で、求められる査察の特定の種類に合わせて特別に設計された装置を選定する。指定され及び承認された装置については、許可なしに変更されることのないように特別に保護する。

29 被査察締約国は、定められた時間的な枠組みを害することなく、入国地点において査察団の構成員の立会いの下に、装置を検査する権利、すなわち、自国若しくは接受国の領域内に持ち込まれ又はこれらの領域から撤去される装置を識別するために点検する権利を有する。技術事務局は、その識別を容易にするため、当該装置が指定され及び承認されたものであることを認証する書類及び標識を添付する。また、装置の検査に当たっては、被査察締約国は、当該装置が特定の種類の査察のために承認された装置に適合することを十分確認する。被査察締約国は、承認された装置に適合しない装置又は認証のための書類及び標識が添付されていない装置を排除することができる。装置の検査のための手続は、第八条21(i)の規定に従って会議が検討し及び承認する。

30 査察団が、現地において入手可能な装置であって技術事務局に属しないものを使用することが必要であると認める場合において、当該装置を使用することができるよう被査察締約国に要請するときは、当該被査察締約国は、可能な範囲内でその要請に従う。

査察の事前の活動
通告

31 事務局長は、査察団の入国地点への予定される到着の前に及び定められた時間的な枠組みがある場合には当該時間的な枠組みの範囲内で、査察を行う意向を締約国に通告する。

32 事務局長が行う通告には、次の事項に関する情報を含める。

(a) 査察の種類

(b) 入国地点

(c) 入国地点への到着の日及び予定時刻

(d) 入国地点への到着の手段

(e) 査察を行う施設

(f) 査察員及び査察補の氏名

(g) 適当な場合には特別な飛行のための航空機の利用の許可

33 被査察締約国は、査察を行う意向についての技術事務局の通告の受領の後一時間以内に、当該通告の受領を確認する。

34 締約国の施設であって他の締約国の領域内に存在するものの査察を行う場合には、双方の締約国は、31及び32の規定に従って同時に通告を受ける。

被査察締約国又は接受国の領域への入国及び査察施設への移動

35 査察団の到着の通告を受けた被査察締約国又は接受締約国は、その領域への査察団の即時の入国を確保するものとし、国内の同行員を通じて又は他の手段により、入国地点から査察施設を経由して出国地点に至るまでの間、査察団並びにその装置及び備品の安全な移動を確保するため権限の範囲内で可能なすべてのことを行う。

36 被査察締約国又は接受締約国は、必要に応じ、入国地点への到着の後十二時間以内に査察団が査察施設に到着するよう援助する。

査察の手前の説明

37 査察団は、査察施設への到着に際して査察の開始の前に、当該査察施設の代表者から、適宜地図その他の文書を用いて、当該査察施設、当該査察施設において行われている活動、安全上の措置並びに査察のために必要な管理上の及び受入れに関する措置に関して説明を受ける。説明に費やす時間については、必要な最小限度に制限するものとし、いかなる場合にも三時間を超えてはならない。

査察の実施
一般規則

38 査察団の構成員は、この条約、事務局長が定める規則及び締約国と機関との間で締結する施設協定に従ってその任務を遂行する。

39 査察団は、事務局長の査察命令を厳格に遵守するものとし、この命令を逸脱する活動を慎む。

40 査察団の活動は、その任務の適時の、かつ、効果的な遂行を確保するよう並びに被査察締約国又は接受国にとっての不便及び査察を行う施設又は区域に対する障害ができる限り少なくなることを確保するように行う。査察団は、施設の操業を不必要に妨げ又は遅滞させること及び施設の安全に影響を及ぼすことを回避する。特に、査察団は、いかなる施設も稼働してはならない。査察員は、その査察命令を遂行するため施設において具体的な稼働が行われる必要があると認める場合には、査察を行う施設の指名された代表者に対し具体的な稼働を行うよう要請する。当該代表者は、可能な範囲内でその要請に応ずる。

41 査察団の構成員は、被査察締約国又は接受国の領域内でその任務を遂行するに当たり、当該被査察締約国が要請する場合には、当該被査察締約国の代表者の同行を受け入れる。ただし、そのために査察団の任務の遂行が遅滞させられ又は妨げられてはならない。

42 査察の実施のための詳細な手続については、第八条21(i)の規定に従って会議が検討し及び承認する指針を考慮して、技術事務局が作成し、査察手引書に記載する。

安全

43 査察員及び査察補は、その活動を行うに当たり、査察施設において定められている安全に関する規則(施設内の管理区域の保護及び人の安全のための規則を含む。)を遵守する。この義務の履行のため、会議は、第八条21(i)の規定に従って適当な詳細な手続を検討し及び承認する。

通信

44 査察員は、国内滞在期間中、技術事務局の本部と通信する権利を有する。このため、査察員は、自己の所有する承認された装置であって正当な認証を受けたものを使用することができるものとし、被査察締約国又は接受締約国に対し他の電気通信手段へのアクセスを認めるよう要請することができる。査察団は、外縁を巡視する要員と査察団の他の構成員との間で自己の所有する双方向の無線通信システムを使用する権利を有する。

査察団及び被査察締約国の権利

45 査察団は、この条約の関連する本文及び附属書、施設協定並びに査察手引書に定める手続に従い、阻害されることなく査察施設へのアクセスが認められる権利を有する。査察を行う物件は、査察員が選定する。

46 査察員は、関連する事実を確認するため被査察締約国の代表者の立会いの下に施設の要員と面談する権利を有する。査察員は、査察の実施のために必要な情報及び資料のみを要請するものとし、被査察締約国は、要請に応じて情報を提供する。施設の要員に対する質問が査察に関連のないものと認められる場合には、被査察締約国は、当該質問に対し異議を申し立てる権利を有する。査察団長が更にこれに異議を申し立て及び査察に関連のあることを表明する場合には、当該質問については、回答を得るため書面により被査察締約国に提出する。査察団は、査察の報告の被査察締約国の協力についての記述において、面談又は質問への回答が許可されなかったこと及び行われた説明について注記することができる。

47 査察員は、その任務の遂行に関連すると認める文書及び記録を検査する権利を有する。

48 査察員は、その要請により被査察締約国又は査察を行う施設の代表者に写真を撮影させる権利を有する。瞬間現像による写真の撮影が認められる。査察団は、写真が要請したものに合致するか否かを決定するものとし、合致しない場合には、再度写真を撮影させる。査察団及び被査察締約国は、すべての写真の写しを1枚ずつ保有する。

49 被査察締約国の代表者は、査察団が行うすべての検証活動に立ち会う権利を有する。

50 被査察締約国は、その要請に基づいて、技術事務局が自国の施設について収集した情報及び資料の写しを受領する。

51 査察員は、査察が行われている間に生ずるあいまいな点に関し、説明を要請する権利を有する。その要請については、被査察締約国の代表者を通じて速やかに行う。被査察締約国の代表者は、査察が行われている間に、あいまいな点を解消するために査察団に対し必要な説明を行う。査察施設内に存在する物体又は建物に関する問題が解決されない場合において、要請があるときは、当該物体又は建物の性質及び機能を明らかにするために当該物体又は建物の写真の撮影が行われる。査察が行われている間にあいまいな点を解消することができない場合には、査察員は、直ちに技術事務局に通報する。査察員は、このような解決されなかった問題、関連する説明及び撮影された写真の写しの一枚を査察報告に含める。

試料の採取、取扱い及び分析

52 被査察締約国又は査察が行われる施設の代表者は、査察団の要請により、査察員の立会いの下に、試料を採取する。被査察締約国又は査察が行われる施設の代表者との間で事前に合意がある場合には、査察団は、自ら試料を採取することができる。

53 可能な場合には、試料の分析については、現地において実施する。査察団は、自己が持ち込んだ承認された装置を使用して現地における試料の分析を実施する権利を有する。被査察締約国は、査察団の要請により、合意される手続に従って現地における試料の分析のために援助を提供する。このことに代えて、査察団は、その立会いの下に現地における適当な分析が実施されるよう要請することができる。

54 被査察締約国は、採取されたすべての試料の一部又は採取された試料と同一のものを保有する権利及び現地において試料を分析する時に立ち会う権利を有する。

55 査察団は、必要と認める場合には、現地外における分析のために、機関が指定する実験施設に試料を移送する。

56 事務局長は、試料の警備、保全及び保存について並びに現地外における分析のために移送する試料の秘密を保護することを確保することについて主要な責任を負う。事務局長は、第八条21(i)の規定に従って会議が検討し及び承認する手続であって査察手引書に記載されるものによってこれを行う。事務局長は、次のことを行う。

(a) 試料の採取、取扱い、移送及び分析を規律する厳重な制度を確立すること。

(b) 指定される実験施設について、種々の分析を実施するための認証を行うこと。

(c) 指定される実験施設における設備及び手続の標準化並びに移動式の分析用装置及び関連する手続の標準化を監督し、並びにこれらの実験施設、移動式装置及び手続の認証について質の管理及び総合的な水準を監視すること。

(d) 指定される実験施設の中から、特定の調査に関係して分析を行い又はその他の役割を果たすものを選定すること。

57 現地外における分析を実施する場合には、試料は、少なくとも二の指定された実験施設において分析する。技術事務局は、分析の速やかな処理を確保する。試料については、技術事務局が責任を負うものとし、使用されなかった試料又はその一部は、技術事務局に返還される。

58 技術事務局は、実験施設における試料の分析の結果であってこの条約の遵守に関連するものを取りまとめ、これを査察の最終報告に含める。技術事務局は、指定された実験施設が使用した設備及び用いた方法に関する詳細な情報を査察の最終報告に含める。

査察期間の延長

59 査察期間は、被査察締約国の代表者との合意により延長することができる。

査察の事後の説明

60 査察団は、査察が完了した後、査察団のとりあえずの調査結果を検討し及びあいまいな点を解消するため、被査察締約国の代表者及び査察施設について責任を有する者と会合する。査察団は、被査察締約国の代表者に対し、試料の一覧表、収集した書面による情報の写し及び収集した資料の写し並びに現地外に持ち出すその他の資料を付してとりあえずの調査結果を書面により標準様式に従って提供する。この文書には、査察団長が署名する。被査察締約国の代表者は、その内容について知らされたことを示すため、当該文書に連署する。この会合については、査察の完了の後二十四時間以内に完了する。

出国

61 査察団は、査察の事後の手続が完了した後、被査察締約国又は接受国の領域からできる限り速やかに退去する。

報告

62 査察員は、査察の後十日以内に、自己の行った活動及び調査結果に基づく事実関係についての最終報告を作成する。最終報告には、査察命令に定めるところにより、この条約の遵守に関連する事実のみを含める。最終報告は、また、被査察締約国の査察団に対する協力の態様に関する情報を提供する。異なる見解を有する査察員がある場合には、当該見解を最終報告に添付することができる。最終報告は、秘密のものとして取り扱う。

63 最終報告は、被査察締約国に直ちに提出する。被査察締約国がその調査結果に関して直ちに書面による意見を表明する場合には当該意見を最終報告に添付する。最終報告は、被査察締約国が表明した意見を付して、査察の後三十日以内に事務局長に提出する。

64 最終報告が不確かな点を含む場合又は国内当局と査察員との間の協力が求められる水準に達していない場合には、事務局長は、関係締約国に対し説明を求める。

65 不確かな点が解消されない場合又は確認された事実がこの条約に基づく義務が履行されなかったことを示唆する場合には、事務局長は、遅滞なく執行理事会に通報する。

一般規則の適用

66 この部の規定は、この条約に基づいて行われるすべての査察について適用する。ただし、この部の規定が第三部から第十一部までにおいて特定の種類の査察について定める規定と異なる場合を除く。この場合には、当該特定の種類の査察について定める規定が優先する。