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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 化学兵器禁止条約,実施及び検証に関する附属書(「検証附属書」)第七部

[場所] パリ
[年月日] 1993年1月13日
[出典] 外務省条約局,条約集(多数国間条約)平成9年,303−311頁.
[備考] 
[全文]

実施及び検証に関する附属書(「検証附属書」)

第七部 第六条に規定するこの条約によって禁止されていない活動(表2の化学物質及びこれに関係する施設のための制度)
申告
国内の集計された資料の申告

第六条の7及び8の規定に従って締約国が行う冒頭申告及び年次申告には、前暦年における表2の化学物質の生産量、加工量、消費量、輸入量及び輸出量に関する国内の集計された資料並びに相手国ごとの輸入量及び輸出量の明示を含める。

締約国は、次の申告を行う。

(a) この条約が自国について効力を生じた後三十日以内に1の規定に従って行う冒頭申告

(b) 冒頭申告を行った年の翌暦年から開始する年次申告(前暦年の終了の後九十日以内に行う。)

表2の化学物質を生産し、加工し又は消費する事業所の申告

冒頭申告及び年次申告については、次に掲げるいずれかの量を超える化学物質を、前三暦年のいずれかの年において生産し、加工し若しくは消費した一若しくは二以上の工場又は翌暦年において生産し、加工し若しくは消費することが予想される一若しくは二以上の工場を有するすべての事業所について必要とする。

(a) 化学物質に関する附属書の表2Aにおいて(*)が付されている化学物質については一キログラム

(b) 化学物質に関する附属書の表2Aに掲げる化学物質((*)が付されているものを除く。)については百キログラム

(c) 化学物質に関する附属書の表2Bに掲げる化学物質については一トン

締約国は、次の(a)の申告並びに当該申告を行った年の翌暦年から開始する(b)及び(c)の申告を行う。

(a) この条約が自国について効力を生じた後三十日以内に3の規定に従って行う冒頭申告

(b) 前暦年の終了の後告九十日以内に行う過去の活動に関する年次申

(c) 予想される活動に関する年次申告(翌暦年の開始の遅くとも六十日前までに行う。)。当該年次申告を行った後に新たに計画する活動については、当該活動の開始の遅くとも五日前までに申告する。

3の規定に基づく申告は、表2の化学物質を低濃度で含有する混合物については、一般的に必要とされない。当該申告は、指針に従い、当該混合物からの表2の化学物質の分離が容易であること及び当該化学物質の総量が、この条約の趣旨及び目的に対し危険をもたらすと認められる場合にのみ、必要とされる。当該指針については、第八条21(i)の規定に従って会議が検討し及び承認する。

3の規定に基づく事業所の申告には、次の事項を含める。

(a) 当該事業所の名称、その所有者の名称及び当該事業所を運営する会社又は企業の名称

(b) 当該事業所の正確な所在地(住所を含む。)

(c) 当該事業所内の工場であって第八部の規定に従って申告するものの数

3の規定に基づく事業所の申告には、当該事業所内に所在し、かつ、3に定める要件を満たす各工場についての次の事項に関する情報を含める。

(a) 当該工場の名称、その所有者の名称及び当該工場を運営する会社又は企業の名称

(b) 当該工場の事業所内の正確な位置(建物又は工作物の具体的な番号がある場合には、これを含む。)

(c) 当該工場の主要な活動

(d) 当該工場が、

(i) 申告する表2の化学物質の生産、加工又は消費のいずれを行っているか。

(ii) (i)に規定する活動のみを行っているか又は当該活動以外の活動も行っているか。

(iii) 申告する表2の化学物質に関して(i)に規定する活動以外の活動を行っているか。否行っている場合には、その活動(例えば、貯蔵)を特定する。

(e) 申告する表2の各化学物質についての当該工場の生産能力

申告に関する基準を超える表2の各化学物質についての3の規定に基づく事業所の申告には、次の事項に関する情報を含める。

(a) 化学名、施設において使用されている一般名又は商品名、構造式及びCAS登録番号が付されている場合には当該番号

(b) 冒頭申告については、前三暦年の各年における事業所の生産、加工、消費、輸入及び輸出の総量

(c) 過去の活動に関する年次申告については、前暦年における事業所の生産、加工、消費、輸入及び輸出の総量

(d) 予想される活動に関する年次申告については、翌暦年における事業所の生産、加工又は消費の予想される総量(生産、加工又は消費が行われることが予想される期間を含む。)

(e) 次に掲げるもののうちいずれのものを目的として、化学物質の生産、加工又は消費が行われたか又は行われるか。

(i) 現地における加工及び消費(該当する場合には生成物の種類の明示を含む。)

(ii) 締約国の領域内における又はその管轄若しくは管理の下にあるその他の場所への販売又は移譲(該当する場合には他の産業、販売業者又はその他の仕向先のいずれに対する販売又は移譲であるかの明示及び可能な場合には最終生成物の種類の明示を含む。)

(iii) 直接の輸出(該当する場合には関係国の明示を含む。)

(iv) その他の目的(該当する場合には目的の明示を含む。)

化学兵器のための過去における表2の化学物質の生産に関する申告

締約国は、この条約が自国について効力を生じた後三十日以内に、千九百四十六年一月一日以降のいずれかの時に化学兵器のために表2の化学物質を生産した工場を有するすべての事業所を申告する。

10 9の規定に基づく事業所の申告には、次の事項を含める。

(a) 当該事業所の名称、その所有者の名称及び当該事業所を運営する会社又は企業の名称

(b) 当該事業所の正確な所在地(住所を含む。)

(c) 当該事業所内に所在し、かつ、9に定める要件を満たす各工場については7の(a)から(e)までに規定する事項に関する情報

(d) 化学兵器のために生産された表2の各化学物質については、

(i) 化学名、事業所において化学兵器の生産のために使用された一般名又は商品名、構造式及びCAS登録番号が付されている場合には当該番号

(ii) 化学物質が生産された日及び生産量

(iii) 化学物質が送られた場所及び判明している場合には当該場所において生産された最終生成物

締約国に対する情報

11 このAの規定に従って申告された事業所の一覧表については、6、7(a)、7(c)、7(d)(i)、7(d)(iii)、8(a)及び10の規定に従って提供された情報と共に、要請に応じ、締約国に対し技術事務局が送付する。

検証
総則

12 第六条4に規定する検証については、申告された事業所であって、次に掲げるいずれかの量を超える化学物質を、前三暦年のいずれかの年において生産し、加工し若しくは消費した一若しくは二以上の工場又は翌暦年において生産し、加工し若しくは消費することが予想される一若しくは二以上の工場を有するものにおいて、現地査察を通じて行う。

(a) 化学物質に関する附属書の表2Aにおいて(*)が付されている化学物質については
十キログラム

(b) 化学物質に関する附属書の表2Aに掲げる化学物質((*)が付されているものを除く。)については一トン

(c) 化学物質に関する附属書の表2Bに掲げる化学物質については十トン

13 第八条21(a)の規定に従って会議が採択する機関の計画及び予算には、このBの規に基づく検証のための計画及び予算を別個の項目として含める。第六条の規定に基づく検証のために利用可能な資金の割当てに当たり、技術事務局は、この条約が効力を生じた後の三年間においては、Aの規定に従って申告される事業所の冒頭査察を優先する。その後、資金の割当てについては、得られた経験を基礎として検討する。

14 技術事務局は、15から22までの規定に従って冒頭査察及びその後の査察を行う。

査察の目的

15 査察は、活動がこの条約に基づく義務に従っていること及び申告において提供された情報に合致していることを検証することを一般的な目的とする。Aの規定に従って申告された事業所における査察は、特に次のことを検証することを目的とする。

(a) 第六部の規定に従う場合を除くほか表1の化学物質が存在しないこと(特にその生産が行われていないこと。)。

(b) 表2の化学物質の生産、加工又は消費の水準が申告に合致していること。

(c) 表2の化学物質がこの条約によって禁止されている活動のために転用されていないこと

冒頭査察

16 12の規定に従って査察が行われる事業所については、この条約が効力を生じた後できる限り速やかに、望ましくは三年以内に冒頭査察を行う。この期間が経過した後に申告される事業所については、生産、加工又は消費が最初に申告された後一年以内に冒頭査察を行う。冒頭査察のための事業所の選定については、事業所の査察が行われる正確な時期が予知されることのないように技術事務局が行う。

17 冒頭査察に際しては、被査察締約国及び技術事務局が必要としないことを合意する場合を除くほか、事業所に関する施設協定案を作成する。

18 査察員は、冒頭査察に際して、その後の査察の頻度及び程度に関連して、特に次の基準を考慮して、化学物質、事業所の性質及び当該事業所において行われる活動の性質がこの条約の趣旨及び目的に対してもたらす危険を評価する。

(a) 化学物質に関する附属書の表に掲げる化学物質の毒性及び当該化学物質を使用して生産される最終生成物がある場合には当該最終生成物の毒性

(b) 化学物質に関する附属書の表に掲げる化学物質であって査察が行われる事業所において一般に貯蔵されているものの量

(c) 化学物質に関する附属書の表に掲げる化学物質の原料となる化学物質であって査察が行われる事業所において一般に貯蔵されているものの量

(d) 表2の化学物質を扱う工場の生産能力

(e) 査察が行われる事業所において毒性化学物質の生産、貯蔵又は充填{てんとルビ}を開始するための能力及びそのための転換の可能性

査察

19 12の規定に従って査察が行われる事業所は、冒頭査察を受けた後、その後の査察の対象とする。

20 技術事務局は、査察のために具体的な事業所を選定し並びに査察の頻度及び程度を決定するに当たり、各施設協定並びに冒頭査察及びその後の査察の結果を踏まえて、化学物質、事業所の性質及び当該事業所において行われる活動の性質がこの条約の趣旨及び目的に対してもたらす危険に十分な考慮を払う。

21 技術事務局は、査察が行われる正確な時期が予知されることのないように査察を行う具体的な事業所を選定する。

22 いかなる事業所も、このBの規定による査察を一暦年に二回を超えて受けない。ただし、このことは、第九条の規定に基づく査察を制限するものではない。

査察手続

23 合意される指針、この附属書の他の関連規定及び秘密扱いに関する附属書のほか、24から30までの規定を適用する。

24 申告された事業所に関する施設協定は、被査察締約国及び技術事務局がこれを必要としないことを合意する場合を除くほか、冒頭査察の完了の後九十日以内に被査察締約国と機関との間で締結する。当該施設協定は、モデル協定に基づくものとし、申告された事業所における査察の実施について規律する。当該施設協定は、査察の頻度及び程度並びに25か29までの規定に適合する詳細な査察手続を明示する。

25 査察については、申告された事業所内の申告された工場であって表2の化学物質を扱うものを中心に行う。査察団が当該事業所の他の部分へのアクセスを認めることを要請する場合には、第二部51の規定に基づく説明を行う義務に従い及び施設協定又は施設協定がないときは第十部Cに規定する管理されたアクセスの規則に従い、当該他の部分へのアクセスを認める。

26 記録へのアクセスは、適当な場合には、申告された化学物質が転用されなかったこと及び生産が申告に合致していたことを保証するために認められる。

27 試料の採取及び分析は、化学物質に関する附属書の表に掲げる化学物質であって申告されていないものが存在しないことを点検するために行う。

28 査察が行われる区域には、次のものを含めることができる。

(a) 原料となる化学物質(反応体)を搬入し又は貯蔵する場所

(b) 反応器に注入する前に反応体に対し処理を施す場所

(c) 適当な場合には(a)又は(b)の場所から反応器へ通ずる仕込配管含(弁類、流量計等をむ。)

(d) 反応器の外面及び附属設備

(e) 反応器から、長期間若しくは短期間貯蔵するための場所又は申告された表2の化学物質を更に加工するための設備へ通ずる配管

(f) (a)から(e)までのいずれかに関連する制御設備

(g) 廃棄物及び排水の取扱いのための設備及び場所

(h) 規格外の化学物質の処分のための設備及び場所

29 査察期間は、九十六時間を超えてはならない。ただし、査察団と被査察締約国との間の合意により延長することができる。

査察の通告

30 締約国は、技術事務局により、査察が行われる事業所に査察団が到着する少なくとも四十八時間前までに査察の通告を受ける。

この条約の締約国でない国に対する移譲

31 表2の化学物質については、専ら、締約国に対して移譲し、又は締約国から受領する。このような義務は、この条約が効力を生じた後三年で効力を生ずる。

32 締約国は、31の三年の暫定的な期間中、この条約の締約国でない国に対する表2の化学物質の移譲について、以下に規定する最終用途に関する証明書を要請する。締約国は、当該移譲に関し、移譲する化学物質がこの条約によって禁止されていない目的のためにのみ使用されることを確保するため、必要な措置をとる。特に、締約国は、受領国に対し、移譲する化学物質について、次のことを表明する証明書を要請する。

(a) この条約によって禁止されていない目的のためにのみ使用すること。

(b) 再移譲しないこと。

(c) 種類及び量

(d) 最終用途

(e) 最終使用者の名称及び住所