[文書名] 化学兵器禁止条約,実施及び検証に関する附属書(「検証附属書」)第十部
実施及び検証に関する附属書(「検証附属書」)
1
第九条の規定に基づく申立てによる査察は、この任務のために特別に指名される査察員及び査察補のみによって行われる。事務局長は、同条の規定に基づく申立てによる査察のための査察員及び査察補を指名するため、通常の査察活動のための査察員及び査察補の中から査察員及び査察補を選定することにより、提案する査察員及び査察補の名簿を作成する。当該名簿は、査察員及び査察補の利用可能性並びにこれらの者の交替が必要であることを考慮して、査察員の選定を柔軟に行うことができるように必要な資格、経験、技術及び訓練を有する十分な数の査察員及び査察補によって構成する。できる限り広範な地理的基礎に基づいて査察員及び査察補を選定することが重要であることについても、十分な考慮を払う。査察員及び査察補の指名については、第二部Aに規定する手続に従う。
2
事務局長は、具体的な要請の事情を考慮して、査察団の規模を決定し、及びその構成員を選定する。査察団の規模については、査察命令を適正に遂行するために必要な最小限度に保つ。要請締約国又は被査察締約国の国民は、査察団の構成員となることはできない。
3
締約国は、申立てによる査察のための査察の要請を行う前に、技術事務局が当該要請に応じて直ちに措置をとることができることの確認を事務局長に求めることができる。事務局長は、当該確認を直ちに与えることができない場合には、確認を求められた順序に従ってできる限り早い機会に当該確認を行う。事務局長は、また、当該要請に応じて直ちに措置をとることができる時期についての見込みを当該締約国に常時通報する。事務局長は、要請に応じて適時の措置をとることができないとの結論に達する場合には、将来において事態を改善するための適当な措置をとるよう執行理事会に求めることができる。
4
執行理事会及び事務局長に対して行う申立てによる査察の要請には、少なくとも、次の事項に関する情報を含める。
(a)
査察が行われる締約国及び適当な場合には接受国
(b)
使用される入国地点
(c)
査察施設の規模及び種類
(d)
この条約の違反の可能性についての懸念(当該懸念に関係するこの条約の規定の明示、可能性のある違反の性質及び状況の明示並びに当該懸念を引き起こす基礎となったすべての適当な情報を含む。)
(e)
要請締約国のオブザーバーの氏名
要請締約国は、必要と認める追加の情報を提出することができる。
5
事務局長は、一時間以内に要請締約国に対しその要請の受領を確認する。
6
要請締約国は、査察団の入国地点への到着予定時刻の少なくとも十二時間前までに事務局長が被査察締約国に対し査察施設の所在地に関する情報を提供することができるように、適当な時に査察施設の所在地を事務局長に通報する。
7
査察施設については、地理上の座標(可能な場合には最も近い秒を明示する。)を付した施設の図面を提供することにより、要請締約国ができる限り具体的に指定する。要請締約国は、また、可能な場合には、査察施設の概略を付した地図及び査察施設の要請外縁をできる限り正確に明示する図面を提供する。
8
要請外縁は、
(a)
建物又はその他の工作物から外側に少なくとも十メートルの距離を置くものとする。
(b)
既存の警備用の囲いを横切ってはならない。
(c)
要請締約国が要請外縁の中に含めることを意図する既存の警備用の囲いから外側に少なくとも十メートルの距離を置くものとする。
9
要請外縁が8の規定に適合しない場合には、当該要請外縁については、8の規定に適合するように査察団が変更する。
10
事務局長は、査察団の入国地点への到着予定時刻の少なくとも十二時間前までに、7に規定する査察施設の所在地について執行理事会に通報する。
11
事務局長は、10の規定に従って執行理事会に通報すると同時に、査察の要請(7に規定する査察施設の所在地を含む。)を被査察締約国に伝達する。この通告には、第二部32に規定する情報も含める。
12
査察団の入国地点への到着の時に、被査察締約国は、査察団により査察命令について通報を受ける。
13
事務局長は、第九条の13から18までの規定に従い、査察の要請を受領した後できる限り速やかに査察団を派遺する。査察団は、10及び11の規定に適合して、かつ、最小限度の時間内に、査察の要請に明示される入国地点に到着する。
14
被査察締約国が要請外縁を受け入れることができる場合には、要請外縁は、できる限り速やかに、いかなる場合にも査察団の入国地点への到着の後二十四時間以内に、最終外縁として指定される。被査察締約国は、査察団を査察施設の最終外縁に輸送する。被査察締約国が必要と認める場合には、その輸送の開始の時刻については、最終外縁の指定のためにこの14に定める期限の十二時間前を限度として早めることができる。その輸送については、いかなる場合にも査察団の入国地点への到着の後三十六時間以内に完了する。
15
すべての申告された施設については、次の(a)及び(b)の手続を適用する(この部の規定の適用上、「申告された施設」とは、第三条から第五条までの規定に従って申告されたすべての施設をいう。第六条の規定に関しては、「申告された施設」とは、第六部の規定に従って申告された施設並びに第七部の7及び10(c)の規定並びに第八部の7及び10(c)規定による申告によって明示された工場のみをいう。)。
(a)
要請外縁が申告外縁に含まれ又は一致する場合には、申告外縁を最終外縁と認める。ただし、最終外縁は、被査察締約国が合意する場合には、要請締約国の要請する外縁に一致するように縮小することができる。
(b)
被査察締約国は、実行可能な限り速やかに最終外縁に査察団を輸送するものとし、いかなる場合にも査察団の入国地点への到着の後二十四時間以内に当該査察団が最終外縁に到着することを確保する。
16
被査察締約国は、要請外縁を受け入れることができない場合には、入国地点において、できる限り速やかに、いかなる場合にも査察団の入国地点への到着の後二十四時間以内に、代替外縁を提案する。意見の相違がある場合には、被査察締約国及び査察団は、最終外縁に関して合意に達するために交渉を行う。
17
代替外縁は、8の規定に従ってできる限り具体的に指定されるべきである。代替外縁は、要請外縁の全体を包含するものとし、自然の地形の特徴及び人工の境界を考慮して、原則として要請外縁と密接な関係を有するものとすべきである。代替外縁については、周囲に警備用障壁が存在する場合には、通常、これに近接するものとすべきである。被査察締約国は、次に掲げる要件のうち少なくとも二のものを満たすことにより、これらの外縁の間にこの17に定める関係を確立することに努めるべきである。
(a)
代替外縁を要請外縁の区域より著しく大きい区域に拡大しないこと。
(b)
代替外縁を要請外縁から短い一様の距離に保つこと。
(c)
要請外縁の少なくとも一部が代替外縁から目で見えるものとすること。
18
査察団が代替外縁を受け入れることができる場合には、代替外縁は、最終外縁となるものとし、査察団は、入国地点から最終外縁に輸送される。被査察締約国が必要と認める場合には、その輸送の開始の時刻については、代替外縁の提案のために16に定める期限の十二時間前を限度として早めることができる。その輸送については、いかなる場合にも査察団の入国地点への到着の後三十六時間以内に完了する。
19
最終外縁について合意されない場合には、外縁についての交渉は、できる限り速やかに完了するものとし、いかなる場合にも査察団の入国地点への到着の後二十四時間を超えて継続してはならない。合意に達しない場合には、被査察締約国は、査察団を代替外縁上の地点に輸送する。当該被査察締約国が必要と認める場合には、その輸送の開始の時刻については、代替外縁の提案のために16に定める期限の十二時間前を限度として早めることができる。その輸送については、いかなる場合にも査察団の入国地点への到着の後三十六時間以内に完了する。
20
19の代替外縁上の地点への到着の後、被査察締約国は、最終外縁についての交渉及び合意並びに最終外縁内へのアクセスを促進するため、代替外縁への速やかなアクセスを査察団に認める。
21
19の代替外縁上の地点への査察団の到着の後七十二時間以内に合意に達しない場合には、当該代替外縁が最終外縁として指定される。
22
査察団は、査察団が輪送された査察施設が要請締約国の指定する査察施設に一致することを確かめるため、所在地の確認のための装置であって承認されたものを使用し及び自己の指示により当該装置を設置させる権利を有する。査察団は、地図上において識別される地域的な目標によって査察施設の所在地を検証することができる。被査察締約国は、この作業において査察団を援助する。
23
被査察締約国は、査察団の入国地点への到着の後十二時間以内に、要請外縁のすべての出口(陸路、空路及び水路を利用するすべての輸送機関のためのもの)からのすべての輸送機関による退去について事実関係の情報の収集を開始する。被査察締約国は、査察団が代替外縁又は最終外縁のうち最初に到着する外縁への到着の時に査察団に対しこの情報を提供する。
24
23に規定する義務については、輸送の記録、写真撮影若しくはビデオ録画又は査察団が退去を監視するために提供する化学的証拠の検知用装置によって得られる資料によって事実関係の情報を収集することにより、履行することができる。これに代えて、被査察締約国は、査察団の一又は二以上の構成員が独自に、輸送の記録を作成し、写真を撮影し、退去のための輸送のビデオ録画を作成し若しくは化学的証拠の検知用装置を使用すること又は当該被査察締約国と査察団との間で合意する他の活動を行うことを認めることによっても、当該義務を履行することができる。
25
査察団が代替外縁又は最終外縁のうち最初に到着する外縁への到着の時に、査察施設の保全(査察団による退去の監視の手続)を開始する。
26
25の手続は、査察団による輸送機関のための出口の特定並びに、当該出口及びそれを利用する輸送に関し、査察団による記録の作成、写真撮影及びビデオ録画の作成を行うことを含むものとする。査察団は、査察施設から退去するための輸送が他に行われないことを点検するため同行員を伴い外縁の他のいかなる場所にも赴く権利を有する。
27
退去の監視のための追加的な手続であって査察団及び被査察締約国が合意するものには、特に、次の事項を含めることができる。
(a)
感知器の使用
(b)
無作為の選定によるアクセス
(c)
試料の分析
28
査察施設の保全及び退去の監視は、すべて、外縁から外側五十メートルを超えない幅の地帯内で行う。
29
査察団は、管理されたアクセスの範囲内で、査察施設からの輸送機関による退去について査察を行う権利を有する。被査察締約国は、査察の対象となる輸送機関であって査察団が十分なアクセスを認められないものが、査察の要請において提起されたこの条約の違反の可能性についての懸念と関係する目的のために使用されていないことを査察団に対して証明するため、あらゆる合理的な努力を払う。
30
査察施設に入る施設の要員及び輸送機関並びに査察施設を退去する施設の要員及び個人の乗用の輸送機関は、査察の対象とならない。
31
退去の監視の手続については、査察が行われている間継続することができる。ただし、査察施設の正常な操業を不当に妨げ又は遅滞させてはならない。
32
査察のための計画の作成を容易にするため、被査察締約国は、査察団にアクセスを認めるのに先立ち、安全上の措置及び受入れに関する措置についての説明を当該査察団に対して行う。
33
査察の事前の説明は、第二部37の規定に従って行う。被査察締約国は、査察の事前の説明において、査察団に対し、機微に係るものでありかつ申立てによる査察の目的に関係しないと認める設備、文書又は場所を示すことができる。更に、査察施設について責任を有する要員は、当該査察施設の物理的な配置及び他の特徴について査察団に説明する。査察団は、当該査察施設のすべての工作物及び主要な地理的な特徴を示す縮尺された地図又は略図の提供を受ける。査察団は、また、施設の要員及び記録の利用可能性について説明を受ける。
34
査察団は、査察の事前の説明の後、自己にとって利用可能かつ適当な情報に基づき、自己が行う活動(査察施設においてアクセスを望む具体的な場所を含む。)を明示する査察のための最初の計画を作成する。当該計画は、また、査察団を小集団に分割するか否かを明示する。当該計画については、被査察締約国及び査察施設の代表者に提供する。当該計画の実施は、Cの規定(アクセス及び活動に関する規定を含む。)に適合したものとする。
35
査察団は、最終外縁又は代替外縁のうち最初に到着する外縁への到着の時に、このBに規定する手続に従って直ちに外縁における活動を開始し及び申立てによる査察が完了するまでこれらの活動を継続する権利を有する。
36
査察団は、外縁における活動を行うに当たり、次のことを行う権利を有する。
(a)
第二部の27から30までの規定に従って監視のための機器を使用すること。
(b)
ふき取りにより試料を採取すること及び空気、土壌又は排水の試料を採取すること。
(c)
自己と被査察締約国との間で合意する追加的な活動を行うこと。
37
査察団の外縁における活動は、外縁から外側五十メートルを限度とする幅の地帯内で行うことができる。査察団は、また、被査察締約国が合意する場合には、当該地帯内の建物又は工作物に対するアクセスを認められる。すべての指向性を有する監視については、外縁の内側に向ける。申告された施設については、被査察締約国の裁量により、当該地帯は、申告外縁の内側、外側又は双方の側に設けることができる。
38
被査察締約国は、要請外縁内又は要請外縁が最終外縁と異なる場合には最終外縁内でのアクセスを認める。これらの外縁内での具体的な場所へのアクセスの程度及び性質については、管理されたアクセスを基礎として査察団と被査察締約国との間で交渉を行う。
39
被査察締約国は、査察の要請において提起されたこの条約の違反の可能性についての懸念を解消するため、できる限り速やかに、いかなる場合にも査察団の入国地点への到着の後百八時間以内に、要請外縁内でのアクセスを認める。
40
被査察締約国は、査察団の要請に応じ、査察施設への空中からのアクセスを認めることができる。
41
被査察締約国は、38に規定するアクセスを認めるに当たり、財産権又は捜索及び押収に関して当該被査察締約国が有する憲法上の義務を考慮して、最大限度のアクセスを認める義務を負う。被査察締約国は、管理されたアクセスにより、国家の安全保障を保護するために必要な措置をとる権利を有する。この41の規定は、この条約によって禁止されている活動を行ってはならないとの義務の回避を隠すために被査察締約国が援用することはできない。
42
被査察締約国は、場所、活動又は情報への十分なアクセスを認めない場合には、申立てによる査察を引き起こしたこの条約の違反の可能性についての懸念を解消するための代替的な手段を提供するため、あらゆる合理的な努力を払う義務を負う。
43
第四条から第六条までの規定に従って申告された施設の最終外縁への到着の後、査察の事前の説明及び査察のための計画についての討議に引き続いてアクセスが認められる。この場合において、当該説明及び討議は、必要な最小限度に限られるものとし、いかなる場合にも三時間を超えてはならない。第三条1(b)の規定に従って申告された施設については、最終外縁への到着の後十二時間以内に、交渉を行い、及び管理されたアクセスを開始する。
44
査察団は、査察の要請に従って申立てによる査察を行うに当たり、この条約の違反の可能性についての懸念を解消するのに十分な関連する事実を提供するために必要な方法のみを使用するものとし、当該懸念の解消に関連しない活動を慎む。査察団は、被査察締約国によるこの条約の違反の可能性に関係する事実を収集し及び記録するものとし、被査察締約国が明示的に要請する場合を除くほか、明らかに関係のない情報を求め又は記録してはならない。収集された資料であって収集後に関連しないことが判明したものについては、保有してはならない。
45
査察団は、できる限り干渉の程度が低く、かつ、任務の効果的な及び適時の遂行に合致する方法で申立てによる査察を行うとの原則を指針とする。査察団は、できる限り、自己が受入れ可能と認める手続のうち最も干渉の程度が低い手続からとるものとし、自己が必要と認める場合にのみ、より干渉の程度が高い手続に移行する。
46
査察団は、化学兵器に関係しない機微に係る設備、情報又は場所の保護を確保するため、被査察締約国が行う査察のための計画の変更の提案その他の提案(事前の説明の段階を含め査察のいかなる段階で行われるかを問わない。)を考慮する。
47
被査察締約国は、アクセスのために使用される外縁に出入りするための地点を指定する。査察団及び被査察締約国は、48の規定による最終外縁内及び要請外縁内の具体的な場所へのアクセスの程度、査察団が行う具体的な査察活動(試料の採取を含む。)、被査察締約国による具体的な活動の実施並びに被査察締約国による具体的な情報の提供について交渉する。
48
被査察締約国は、秘密扱いに関する附属書の規定に従い、化学兵器に関係しない機微に係る設備を保護し並びに化学兵器に関係しない秘密の情報及び資料の開示を防止するための措置をとる権利を有する。当該措置には、特に、次のことを含めることができる。
(a)
機微に係る文書を事務所内から撤去すること。
(b)
機微に係る表示、貯蔵品及び設備を覆うこと。
(c)
設備の機微に係る部品(例えば、コンピュータ又は電子系統)を覆うこと。
(d)
コンピュータ・システムのオンライン接続を終了し及びデータ表示装置の使用を終了すること。
(e)
化学物質に関する附属書の表1から表3までに掲げる化学物質又は適当な分解生成物が存在するか否かについての試料の分析を制限すること。
(f)
無作為の選定に基づくアクセスの方法を採用すること。当該方法を採用する場合には、査察員は、査察を行う特定の割合又は数の建物を任意に選定することを要請される。同様の方法は、機微に係る建物の内部及び当該建物内にある物について適用することができる。
(g)
例外的な場合には、査察施設の特定の場所へのアクセスを個々の査察員にのみ与えること。
49
被査察締約国は、査察団が十分なアクセスを認められず又は48の規定に従って保護された物件、建物、工作物、容器又は輸送機関が、査察の要請において提起されたこの条約の違反の可能性についての懸念と関係する目的のために使用されていないことを査察団に対して証明するため、あらゆる合理的な努力を払う。
50
49の規定については、特に、覆い又は環境を保護するための遮蔽物{蔽にへいとルビ}を被査察締約国の裁量により部分的に撤去する方法、囲われている場所の入口からその内部を目視によって査察する方法その他の方法により、達成することができる。
51
第四条から第六条までの規定に従って申告された施設については、次の規定を適用する。
(a)
施設協定を締結した施設については、最終外縁内のアクセス及び活動は、当該施設協定によって定められる境界内において阻害されない。
(b)
施設協定を締結していない施設については、アクセス及び活動についての交渉は、この条約に定める査察のための一般的な指針によって規律される。
(c)
第四条から第六条までの規定に基づく査察のために認められるアクセスを超えるアクセスは、このCに定める手続に従って管理される。
52
第三条1(d)の規定に従って申告された施設については、被査察締約国は、47及び48に規定する手続により、化学兵器に関係しない場所又は工作物への十分なアクセスを認めなかった場合には、当該場所又は工作物が査察の要請において提起されたこの条約の違反の可能性についての懸念と関係する目的のために使用されていないことを査察団に対して証明するため、あらゆる合理的な努力を払う。
53
要請締約国は、申立てによる査察におけるオブザーバーの参加に関する第九条12の規定に従い、オブザーバーが査察団の到着の時から合理的な期間内に査察団と同一の入国地点に到着するよう調整するため、技術事務局と連絡を保つ。
54
オブザーバーは、査察期間中、被査察締約国若しくは接受国に所在する要請締約国の大使館又は大使館が存在しない場合には要請締約国と連絡を取る権利を有する。被査察締約国は、オブザーバーに対し通信手段を提供する。
55
オブザーバーは、査察施設の代替外縁又は最終外縁のうち査察団が最初に到着する外縁に到着する権利及び被査察締約国により当該査察施設へのアクセスが認められる権利を有する。オブザーバーは、査察団に対し勧告を行う権利を有するものとし、査察団は、適当と認める範囲内でその勧告を考慮する。査察団は、査察が行われている間を通じて査察の実施及び調査結果についてオブザーバーに常時通報する。
56
国内滞在期間を通じて、被査察締約国は、オブザーバーが必要とする便宜(例えば、通信手段、通訳、輸送、作業場所、宿泊、食事、医療)を提供し又はそのための措置をとる。被査察締約国又は接受国の領域内におけるオブザーバーの滞在に係るすべての費用については、要請締約国が負担する。
57
査察期間は、被査察締約国との合意により延長する場合を除くほか、八十四時間を超えてはならない。
58
査察団及び要請締約国のオブザーバーは、査察施設における査察の事後の手続が完了した後速やかに入国地点に赴くものとし、最小限度の時間内に被査察締約国の領域から退去する。
59
査察の報告については、査察団が行った活動及び査察団による事実関係の調査結果(特に、申立てによる査察の要請において示されたこの条約の違反の可能性についての懸念に関するもの)を概括的に要約するものとし、この条約に直接関係する情報のみを含める。当該報告には、また、査察員に対して認められたアクセス及び協力の程度及び性質並びに当該アクセス及び協力が査察団が査察命令を遂行することをどの程度可能にしたかについての当該査察団による評価を含める。申立てによる査察の要請において示されたこの条約の違反の可能性についての懸念に関係する詳細な情報は、最終報告の附属として提出され、及び機微に係る情報を保護するための適当な保護措置の下で技術事務局内で保有される。
60
査察団は、その主要な勤務地に戻った後七十二時間以内に、特に、秘密扱いに関する附属書17の規定を考慮し、査察のとりあえずの報告を事務局長に提出する。事務局長は、当該報告を要請締約国、被査察締約国及び執行理事会に速やかに送付する。
61
査察の最終報告案については、申立てによる査察の完了の後二十日以内に被査察締約国に提供する。被査察締約国は、化学兵器に関係しない情報及び資料であって、その秘密性のため技術事務局の外部に送付されるべきでないと認めるものを特定する権利を有する。技術事務局は、当該報告案の変更について被査察締約国が行う提案を検討し、及び裁量により、可能な限り当該提案を採用する。その後、査察の最終報告については、申立てによる査察の完了の後三十日以内に、第九条の21から25までの規定に従って行われる配布及び検討のため、事務局長に提出する。