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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 化学兵器禁止条約,秘密情報の保護に関する附属書(「秘密扱いに関する附属書」)

[場所] パリ
[年月日] 1993年1月13日
[出典] 外務省条約局,条約集(多数国間条約)平成9年,336−341頁.
[備考] 
[全文]

秘密情報の保護に関する附属書(「秘密扱いに関する附属書」)

秘密情報の取扱いに関する一般原則

秘密情報を保護する義務は、非軍事上及び軍事上の活動及び施設の検証について適用する。機関は、第八条に規定する一般的な義務に従って次のことを行う。

(a) この条約に基づく機関の責任を適時、かつ、効果的に果たすために必要な最小限度の量の情報及び資料のみを要請すること。

(b) 査察員及び技術事務局のその他の職員が最高水準の能率、能力及び誠実性を満たすことを確保するために必要な措置をとること。

(c) この条約を実施するために協定及び規則を作成し並びに締約国により機関に対してアクセスが認められる情報をできる限り正確に明示すること。

事務局長は、秘密情報の保護を確保することについて主要な責任を負う。事務局長は、次の指針に従って、技術事務局による秘密情報の取扱いを規律する厳重な制度を確立する。

(a) 情報は、次のいずれかの場合には、秘密情報と認める。

(i) 当該情報を提供した締約国であって当該情報に関係するものが秘密情報として指定する場合

(ii) 認められていない情報の開示が、当該情報に関係する締約国又はこの条約の実施の枠組みに対し、損害を引き起こすことが合理的に予想されると事務局長が判断する場合

(b) 技術事務局が取得したすべての資料及び文書については、秘密情報を含むか否かを判断するため、技術事務局の適当な組織が評価する。締約国が他の締約国によるこの条約の継続的な遵守を確認するために必要であるとして要請する資料については、定期的に当該締約国に提供する。当該資料は、次のものを含む。

(i) 第三条から第六条までの規定及び検証附属書に従って締約国が行う冒頭報告、冒頭申告、年次報告及び年次申告

(ii) 検証活動の結果及びその実効性についての一般的な報告

(iii) この条約に従ってすべての締約国に提供される情報

(c) この条約の実施に関連して機関が取得したいかなる情報も、次のいずれかに該当する場合を除くほか、公表してはならず、又はその他の方法で提供してはならない。

(i) この条約の実施に関する一般的な情報については、会議又は執行理事会の決定に従い、取りまとめ、公開することができる。

(ii) いかなる情報も、当該情報に関係する締約国の明示の同意を得て提供することができる。

(iii) 秘密情報として分類された情報については、当該情報がこの条約の必要とするところに完全に一致する場合に限って提供されることを確保する手続によってのみ、機関が提供する。当該手続については、第八条21(i)の規定に従って会議が検討し及び承認する。

(d) 秘密の資料又は文書に係る機微の水準については、当該資料又は文書の適切な取扱い及び保護を確保するために一律に適用される基準に基づいて定める。このため、この条約の作成過程における関連する作業を考慮して、情報を秘密の程度に関する適当な区分に分類すること及び情報の秘密性が維持される正当な期間を定めることを確保するための明確な基準を有する分類制度を導入する。当該分類制度は、その実施に当たって必要な柔軟性を維持しつつ、秘密情報を提供する締約国の権利を保護するものとする。当該分類制度については、第八条21(i)の規定に従って会議が検討し及び承認する。

(e) 秘密情報は、機関の構内で確実に保管する。資料又は文書の一部は局、締約国の国内当に保管することもできる。具体的な施設の査察のためにのみ必要となる機微に係る情報
(特に、写真、図面その他の文書)については、当該施設において施錠の上、保管することができる。

(f) 情報については、技術事務局が、この条約の検証に関する規定の効果的な実施に最大限度適合するようにしつつ、当該情報が関係する施設を直接特定することができない方法で取り扱い及び保管する。

(g) 施設から持ち出す秘密情報の量については、この条約の検証に関する規定の適時のか、つ、効果的な実施のために必要な最小限度に保つ。

(h) 秘密情報へのアクセスについては、当該秘密情報の分類に従って規律する。機関内の秘密情報の配布については、知る必要がある場合にのみ配布するとの基準に厳重に従う。

事務局長は、技術事務局による秘密情報の取扱いを規律する制度の実施状況について、毎年、会議に報告する。

締約国は、機関から受領する情報をその情報に関して定められた秘密の水準に従って取り扱う。締約国は、要請に応じ、機関が締約国に提供する情報の取扱いの詳細を提供する。

技術事務局の職員の雇用及び行為

職員の雇用条件については、秘密情報へのアクセス及び秘密情報の取扱いがAの規定に従って事務局長が定める手続に適合することを確保するようなものとする。

技術事務局における職務上の地位に基づき秘密情報へのアクセスが必要である場合には、当該地位については、アクセスが認められる範囲を明示した正式の職務規則によって規律する。

事務局長及び査察員その他の職員は、その職を退いた後も、その公的任務の遂行に際して知るに至った秘密情報を権限のない者に開示してはならない。事務局長及び査察員その他の職員は、いずれかの締約国に関係する自己の活動に関連してアクセスが認められた情報を、いかなる国若しくは団体に対しても又は技術事務局外のいかなる個人に対しても提供してはならない。

査察員は、その任務を遂行するに当たり、その査察命令を遂行するために必要な情報及び資料のみを要請する。査察員は、随伴的に収集した情報であって、この条約の遵守についての検証に関係しないものの記録は作成しない。

職員は、個々に、その雇用期間中及び雇用期間の終了の後五年間に適用される秘密の保護に関する契約を技術事務局と締結する。

10 査察員その他の職員は、不当な開示を避けるため、警備上考慮すべきことにつき適切に助言を受け、及び不当に開示した場合に課される制裁につき適切に注意を喚起される。

11 締約国の領域内又はその管轄若しくは管理の下にあるその他の場所における活動に関する秘密情報へのアクセスが職員に対して認められる少なくとも三十日前までに、当該締約国は、当該職員に対して認められる予定のアクセスについて通報を受ける。ただし、査察員については、当該査察員の指名の提案のための通報をもって足りるものとする。

12 査察員その他の技術事務局の職員の任務の遂行を評価するに当たっては、秘密情報の保護に関する当該職員の記録について特別の注意を払う。

現地における検証活動を行うに際し機微に係る設備を保護し及び秘密の資料の開示を防止するための措置

13 締約国は、秘密を保護するために必要と認める措置をとることができる。ただし、この条約の本文及び検証附属書に従いこの条約を遵守していることを証明する義務を履行することを条件とする。締約国は、査察を受ける時に、査察団に対し、機微に係るものでありかつ査察の目的に関係しないと認める設備、文書又は場所を示すことができる。

14 査察団は、できる限り干渉の程度が低く、かつ、任務の効果的な及び適時の遂行に合致する方法で現地査察を行うとの原則を指針とする。査察団は、化学兵器に関係しない機微に係る設備又は情報の保護を確保するため、査察を受ける締約国が行う提案(査察のいかなる段階で行われるかを問わない。)を考慮する。

15 査察団は、査察の実施を規律するこの条約の本文及び附属書の規定を厳格に遵守する。査察団は、機微に係る設備を保護し及び秘密の資料の開示を防止するための手続を十分に尊重する。

16 検証に係る措置及び施設協定を作成するに当たり、秘密情報を保護する必要に十分な考慮を払う。個々の施設のための査察手続に関する協定には、施設において査察員がアクセスを認められる場所の確定、現地における秘密情報の保管、合意される区域における査察活動の範囲、試料の採取及びその分析、記録へのアクセス並びに機器及び継続的な監視のための設備の使用に関する具体的かつ詳細な措置を含める。

17 査察の後に作成する報告には、この条約の遵守に関連する事実のみを含める。当該報告については、機関が定める秘密情報の取扱いを規律する規則に従って取り扱う。必要な場合には、報告に含まれる情報については、技術事務局及び被査察締約国の外部に送付する前に、機微の程度の低いものとするための処理をする。

秘密の扱いに関する違反又は当該違反の疑いがある場合の手続

18 事務局長は、第八条21(i)の規定に従って会議が検討し及び承認する勧告を考慮して、秘密の扱いに関する違反又は当該違反の疑いがある場合にとられる必要な手続を定める。

19 事務局長は、秘密の保護に関する個々の契約の実施を監督する。事務局長は、秘密情報の保護に関する義務の違反が生じたとの十分な根拠があると判断する場合には、速やかに調査を開始する。事務局長は、締約国が秘密の扱いに関する違反を申し立てる場合にも、速やかに調査を開始する。

20 事務局長は、秘密情報を保護する義務に違反した職員に対し、適当な懲戒処分を行う。重大な違反の場合には、事務局長は、裁判権からの免除を放棄することができる。

21 締約国は、事務局長が秘密の扱いに関する違反又は当該違反の疑いを調査し及び違反が確かめられた場合に適当な措置をとるに当たり、可能な範囲内で協力し及び支援する。

22 機関は、技術事務局の構成員による秘密の扱いに関する違反について損害賠償責任を負わない。

23 締約国及び機関の双方に関係する違反については、会議の補助機関として設置する「秘密の扱いに関係する紛争の解決のための委員会」が検討する。同委員会は、会議が設置する。同委員会の構成及び運営手続を規律する規則については、第一回会期において会議が採択する。