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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 1994年4月15日のマラケシュ宣言

[場所] マラケシュ
[年月日] 1994年4月15日
[出典] 外交青書38号,192−193頁.
[備考] 仮訳
[全文]

1994年4月15日のマラケシュ宣言

ウルグァイ・ラウンド多角的貿易交渉に参加した{124の}政府及び欧州共同体を代表する閣僚は、1994年4月12日から15日までのモロッコのマラケシュで閣僚級で開催された貿易交渉委員会の最終会合の機会に、

1986年9月20日にウルグァイのプンタ・デル・エステでウルグァイ・ラウンド多角的貿易交渉を開始するために採択された閣僚宣言を想起し、

1988年にカナダのモントリオール、1990年にベルギーのブラッセルでそれぞれ行われた閣僚会合で達成された進捗を想起し、

交渉が1993年12月15日に実質的に妥結したことに留意し、

開放的かつ市場指向的な政策、並びにウルグァイ・ラウンドの諸協定及び決定に盛り込まれた約束に基づいて自国の経済が世界の貿易体制に参加することを通じ、ウルグァイ・ラウンドの成功を更に進展させるよう決意して、

本日次のとおり採択した。

宣言

閣僚は、ラウンドの終結に代表される歴史的業績に敬意を表し、これが世界経済を強化し、全世界的な貿易、投資、雇用、及び所得成長の増加につながることを確信する。特に、閣僚は、以下を歓迎する。

−閣僚が採択した、国際貿易のより強力かつ明確な法的枠組み(より効果的かつ信頼のできる紛争解決のメカニズムを含む。)
−世界的規模での物品の関税の40%引下げ、及び物品の市場をより広く開放するとの諸協定、並びに関税譲許の範囲の大幅な拡大に代表される予見可能性及び確実性の向上
−サービスの貿易及び貿易に関連する知的所有権の保護のための規律の多角的枠組みの設立、並びに農業及び繊維・衣類についての多角的貿易条項の強化

閣僚は、世界貿易機関(WTO)の設立が、自国の国民の利益と福祉のためにより公正かつ開かれた多角的貿易体制の中で活動したいとの広範な希望を反映しており、世界的規模での経済協調の新たな時代の幕開けとなることを確認する。閣僚は、あらゆる種類の保護主義圧力に抵抗するとの決意を表明する。閣僚は、ウルグァイ・ラウンドで達成された貿易の自由化及びルールの強化が、漸進的に世界の貿易環境の一層の開放につながることを確信する。閣僚は、今後直ちにかつWTOの発効まで、ウルグァイ・ラウンド交渉の結果又はその実施を損ない、又はそれらに悪影響を与えるようないかなる貿易上の措置もとらないことを約束する。

閣僚は、貿易、金融及び財政の各分野における世界的な政策の整合性の一層の向上(WTO、IMF、世界銀行の間のこの目的のための強力を含む。)に向けて努力するとの決意を確認する。

閣僚は、ウルグァイ・ラウンドへの参加国の範囲が従来の多角的貿易交渉に比べて相当広がったこと、特に、開発途上国が注目すべき積極的な役割を果たしたことを歓迎する。これは、よりバランスのとれたかつ統合された世界的な貿易パートナーシップに向けた歴史的な一歩である。閣僚は、これらの交渉が行われていた間、多くの開発途上国及び旧中央統制経済国家において、経済改革及び貿易の自主的な自由化の重要な措置が実施されたことに留意する。

閣僚は、交渉の結果が、開発途上国に対して異なったかつより好意的な取扱い(後発開発途上国の特定の状況に対して特別の注意を払うことを含む。)を与えるという条項を含んでいることを想起する。閣僚は、後発開発途上国にとってのこれらの条項の実施の重要性を認識し、後発開発途上国の貿易と投資の機会の拡大を引き続き支援しかつ促進するとの意図を宣言する。閣僚は後発開発途上国及び食糧純輸入開発途上国の開発目的の達成を可能とするような積極的な措置を助長する観点から、ラウンドの結果がこれらの国に対してもたらす影響を、WTOの閣僚会議及び適当な機関によって定期的に検討することに同意する。閣僚は、ガット及びWTOがそれぞれ能力を有する分野で技術的支援を増加する能力、特に後発開発途上国に対する技術的支援を実質的に増大させる能力を強化する必要性を認識する。

閣僚は、「ウルグァイ・ラウンド多角的貿易交渉の結果を収録する最終文書」の署名及び関連閣僚決定の採択によって、ガットからWTOへの移行が開始されることを宣言する。閣僚は、特に、WTO協定の発効のための地ならしをするために準備委員会を設立した。閣僚は、また、同協定が1995年1月1日までに、又は、その後できる限り早く効力を発生することができるよう、同協定の批准のために必要なすべての措置を完了するよう努めることを約束する。閣僚は、さらに、貿易と環境に関する決定を採択した。

閣僚は、ハッサン2世国王陛下が今次閣僚会合の成功のために行った個人的な貢献、並びにモロッコ政府及び国民が示した温かいもてなし及び素晴らしい会議運営に対して深甚なる謝意を表明する。ウルグァイ・ラウンドのこの最終閣僚会合がマラケシュで開催されたという事実は、開かれた世界貿易体制及びモロッコの世界経済への完全な統合に向けたモロッコの決意を改めて示すものである。

閣僚は、最終文書の採択及び署名、WTO協定の受諾のための開放によって、貿易交渉委員会の作業が完結し、ウルグァイ・ラウンドが正式に終了することを宣言する。