[文書名] 世界貿易機関を設立するマラケシュ協定
世界貿易機関を設立するマラケシュ協定
この協定の締約国は、
貿易及び経済の分野における締約国間の関係が、生活水準を高め、完全雇用並びに高水準の実質所得及び有効需要並びにこれらの着実な増加を確保し並びに物品及びサービスの生産及び貿易を拡大する方向に向けられるべきであることを認め、他方において、経済開発の水準が異なるそれぞれの締約国のニーズ及び関心に沿って環境を保護し及び保全し並びにそのための手段を拡充することに努めつつ、持続可能な開発の目的に従って世界の資源を最も適当な形で利用することを考慮し、
更に、成長する国際貿易において開発途上国特に後発開発途上国がその経済開発の二ーズに応じた貿易量を確保することを保証するため、積極的に努力する必要があることを認め、
関税その他の貿易障害を実質的に軽減し及び国際貿易関係における差別待遇を廃止するための相互的かつ互恵的な取極を締結することにより、前記の目的の達成に寄与することを希望し、
よって、関税及び貿易に関する一般協定、過去の貿易自由化の努力の結果及びウルグアイ・ラウンドの多角的貿易交渉のすべての結果に立脚する統合された一層永続性のある多角的貿易体制を発展させることを決意し、
この多角的貿易体制の基礎を成す基本原則を維持し及び同体制の基本目的を達成することを決意して、
次のとおり協定する。
第一条 機関の設立
この協定により世界貿易機関(WTO)を設立する。
第二条 世界貿易機関の権限
1
世界貿易機関は、附属書に含まれている協定及び関係文書に関する事項について、加盟国間の貿易関係を規律する共通の制度上の枠組みを提供する。
2
附属書一、附属書二及び附属書三に含まれている協定及び関係文書(以下「多角的貿易協定」という。)は、この協定の不可分の一部を成し、すべての加盟国を拘束する。
3
附属書4に含まれている協定及び関係文書(以下「複数国間貿易協定」という。)は、これらを受諾した加盟国についてはこの協定の一部を成し、当該加盟国を拘束する。複数国間貿易協定は、これらを受諾していない加盟国の義務又は権利を創設することはない。
4
附属書一Aの千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定(以下「千九百九十四年のガット」という。)は、国際連合貿易雇用会議準備委員会第二会期の終了の時に採択された最終議定書に附属する千九百四十七年十月三十日付けの関税及び貿易に関する一般協定がその後訂正され、改正され又は修正されたもの(以下「千九百四十七年のガット」という。)と法的に別個のものである。
第三条 世界貿易機関の任務
1
世界貿易機関は、この協定及び多角的貿易協定の実施及び運用を円滑にし並びにこれらの協定の目的を達成するものとし、また、複数国間貿易協定の実施及び運用のための枠組みを提供する。
2
世界貿易機関は、附属書に含まれている協定で取り扱われる事項に係る多角的貿易関係に関する加盟国間の交渉のための場を提供する。同機関は、また、閣僚会議の決定するところに従い、多角的貿易関係に関する加盟国間の追加的な交渉のための場及びこれらの交渉の結果を実施するための枠組みを提供することができる。
3
世界貿易機関は、附属書二の紛争解決に係る規則及び手続に関する了解(以下「紛争解決了解」という。)を運用する。
4
世界貿易機関は、附属書三の貿易政策検討制度を運用する。
5
世界貿易機関は、世界的な経済政策の策定が一層統一のとれたものとなるようにするため、適当な場合には、国際通貨基金並びに国際復興開発銀行及び同銀行の関連機関と協力する。
第四条 世界貿易機関の構成
1
すべての加盟国の代表で構成する閣僚会識を設置するものとし、同会議は、少なくとも二年に一回会合する。閣僚会議は、世界貿易機関の任務を遂行し、そのために必要な措置をとる。閣僚会議は、加盟国から要請がある場合には、意思決定につきこの協定及び関連する多角的貿易協定に特に定めるところに従い、多角的貿易協定に関するすべての事項について決定を行う権限を有する。
2
すべての加盟国の代表で構成する一般理事会を設置するものとし、同理事会は、適当な場合に会合する。閣僚会議の会合から会合までの間においては、その任務は、一般理事会が遂行する。一般理事会は、また、この協定によって自己に与えられる任務を遂行する。一般理事会は、その手続規則を定め、及び7に規定する委員会の手続規則を承認する。
3
一般理事会は、紛争解決了解に定める紛争解決機関としての任務を遂行するため、適当な場合に会合する。紛争解決機関に、議長を置くことができるものとし、同機関は、その任務を遂行するために必要と認める手続規則を定める。
4
一般理事会は、貿易政策検討制度に定める貿易政策検討機関としての任務を遂行するため、適当な場合に会合する。貿易政策検討機関に、議長を置くことができるものとし、同機関は、その任務を遂行するために必要と認める手続規則を定める。
5
物品の貿易に関する理事会、サービスの貿易に関する理事会及び知的所有権の貿易関連の側面に関する理事会(以下「貿易関連知的所有権理事会」という。)を設置するものとし、これらの理事会は、一般理事会の一般的な指針に基づいて活動する。物品の貿易に関する理事会は、附属書一Aの多角的貿易協定の実施に関することをつかさどる。サービスの貿易に関する理事会は、サービスの貿易に関する一般協定(以下「サービス貿易一般協定」という。)の実施に関することをつかさどる。貿易関連知的所有権理事会は、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(以下「貿易関連知的所有権協定」という。)の実施に関することをつかさどる。これらの理事会は、それぞれの協定及び一般理事会によって与えられる任務を遂行する。これらの理事会は、一般理事会の承認を条件として、それぞれの手続規則を定める。これらの理事会の構成員の地位は、すべての加盟国の代表に開放する。これらの理事会は、その任務を遂行するため、必要に応じて会合する。
6
物品の貿易に関する理事会、サービスの貿易に関する理事会及び貿易関連知的所有権理事会は、必要に応じて補助機関を設置する。これらの補助機関は、それぞれの理事会の承認を条件として、それぞれの手続規則を定める。
7
閣僚会議は、貿易及び開発に関する委員会、国際収支上の目的のための制限に関する委員会及び予算、財政及び運営に関する委員会を設置する。これらの委員会は、この協定及び多角的貿易協定によって与えられる任務並びに一般理事会によって与えられる追加的な任務を遂行する。また、閣僚会議は、適当と認める任務を有する追加的な委員会を設置することができる。貿易及び開発に関する委員会は、その任務の一部として、定期的に、多角的貿易協定の後発開発途上加盟国のための特別な規定を検討し、適当な措置について一般理事会に報告する。これらの委員会の構成員の地位は、すべての加盟国の代表に開放する。
8
複数国間貿易協定に定める機関は、これらの協定によって与えられる任務を遂行するものとし、世界貿易機関の制度上の枠組みの中で活動する。これらの機関は、その活動について一般理事会に定期的に通報する。
第五条 他の機関との関係
1
一般理事会は、世界貿易機関の任務と関連する任務を有する他の政府間機関との効果的な協力のために、適当な取決めを行う。
2
一般理事会は、世界貿易機関の取り扱う事項に関係のある非政府機関との協議及び協力のために、適当な取決めを行うことができる。
第六条 事務局
1
事務局長を長とする世界貿易機関事務局(以下「事務局」という。)を設置する。
2
閣僚会議は・事務局長を任命し、並びに事務局長の権限、任携、勤務条件及び任期を定める規則を採択する。
3
事務局長は閣僚会議が採択する規則に従い、事携局員を任命し、並びにその任務及び勤務条件を決定する。
4
事務局長及び事務局員の責任は、専ら国際的な性質のものとする。事務局長及び事務局員は、その任務の遂行に当たって、いかなる政府からも又は世界貿易機関外のいかなる当局からも指示を求め又は受けてはならない。事務局長及び事務局員は、国際公務員としての立場を損なうおそれのあるいかなる行動も慎まなければならない。同機関の加盟国は、事務局長及び事務局員の責任の国際的な性質を尊重するものとし、これらの者が任務を遂行するに当たってこれらの者を左右しようとしてはならない。
第七条 予算及び分担金
1
事務局長は、予算、財政及び運営に関する委員会に対し世界貿易機関の年次予算見積り及び会計報告を提出する。予算、財政及び運営に関する委員会は、事務局長が提出した年次予算見積り及び会計報告を審査し、一般理事会に対しこれらに関する勧告を行う。年次予算見積りについては、一般理事会の承認を得なければならない。
2
予算、財政及び運営にかんする委員会は次の事項に関する規定を含む財政規則を一般理事会に提案する。財政規則は、実行可能な限り千九百四十七年のガットの規則及び慣行に基づくものでなければならない。
(a)
世界貿易機関の経費を加盟国間で割り当てるための分担率
(b)
分担金を滞納している加盟国についてとる措置
3
一般理事会は、過半数の加盟国を含む三分の二以上の多数による議決で財政規則及び年次予算見積りを採択する。
4
各加盟国は、一般理事会が採択した財政規則に従い、世界貿易機関の経費に係る自国の分担金を速やかに同機関に支払う。
第八条 世界貿易機関の地位
1
世界貿易機関は、法人格を有するものとし、その任務の遂行のために必要な法律上の能力を各加盟国によって与えられる。
2
世界貿易機関は、その任務の遂行のために必要な特権及び免除を各加盟国によって与えられる。
3
2と同様に、世界貿易機関の職員及び加盟国の代表は、同機関に関連する自己の任務を独立に遂行するために必要な特権及び免除を各加盟国によって与えられる。
4
世界貿易機関、その職員及びその加盟国の代表に対して加盟国が与える特権及び免除は、千九百四十七年十一月二十一日に国際連合総会が採択した専門機関の特権及び免除に関する条約に定める特権及び免除と同様のものとする。
5
世界貿易機関は、本部協定を締結することができる。
第九条 意思決定
1
世界貿易機関は、千九百四十七年のガットの下でのコンセンサス方式による意思決定の慣行(注1)を維持する。コンセンサス方式によって決定することができない場合には、問題となっている事項は、別段の定めがある場合を除くほか、投票によって決定する。世界貿易機関の各加盟国は、閣僚会議及び一般理事会の会合において一の票を有する。欧州共同体が投票権を行使する場合には、同共同体は、世界貿易機関の加盟国であるその構成国の数と同数の票を有する(注2)。閣僚会議及び一般理事会の決定は、この協定又は関連する多角的貿易協定に別段の定めがある場合を除くほか、投じられた票の過半数による議決で行う。(注3)
注1 いずれかの内部機関がその審議のために拠出された事項について決定を行う時にその会合に出席しているいずれの加盟囲もその決定案に正式に反対しない場合には、当該内部機関は当該事項についてコンセンサス方式によって決定したものとみなす。
注2 欧州共同体及びその構成国の育する票数は、いかなる場合にも同共同体の構成国の数を超えないものとする。
注3 一般理事会が紛争解決機関として会合する場合には、その決定は、紛争解決了解第二条4の規定にのみ従って行う。
2
閣僚会議及び一般理事会は、この協定及び多角的貿易協定の解釈を採択する排他的権限を有する。附属書一の多角的貿易協定の解釈については、閣僚会議及び一般理事会は、当該協定の実施に関することをつかさどる理事会の勧告に基いてその権限を行使する。解釈を採択する決定は、加盟国の四分の三以上の多数による議決で行う。この2の規定は、改正に関する次条の規定を害するように用いてはならない。
3
閣僚会議は、例外的な場合には、この協定又はいずれかの多角的貿易協定によって加盟国に課される義務を免除することを決定することができる。その決定は、この3に別段の定めがない限り、加盟国の四分の三(注)による議決で行う。
(a)
この協定に関する免除の要請は、審議(コンセンサス方式による意思決定の慣行に従う。)のため、閣僚会議に提出される。閣僚会議は、その要請を審議するために、九十日を超えない範囲でその期間を定める。その期間内にコンセンサスに達しない場合には、免除の決定は、加盟国の四分の三(注)による議決で行う。
(b)
附属書一A、附属書一B又は附属書一Cの多角的貿易協定及びこれらの協定の附属書に関する免除の要請は、審議(その期間は、九十日を超えないものとする。)のため、まず、物品の貿易に関する理事会、サービスの貿易に関する理事会又は貿易関連知的所有権理事会にそれぞれ提出する。当該理事会は、審議の期間の終了に当たって、閣僚会議に報告を提出する。
注 経過期間又は段階的な実施のための期間が設けられている義務であって、その免除を要請する加盟国が当該期間の終了までに履行しなかったものに関する免除の決定は、コンセンサス方式によってのみ行う。
4
閣僚会議による免除の決定には、その決定を正当化する例外的な事情、免除の適用に関する条件及び免除が終了する日を示すものとする。免除の期間が一年を超える場合には、当該免除の開始後一年以内に、及びその後は当該免除が終了するまで毎年、閣僚会議の審査を受ける。閣僚会議は、審査において、免除を正当化する例外的な事情が引き続き存在するかしないか及び免除に付された条件か満たされているかいないかを検討する。閣僚会議は、毎年の審査に基づき、免除を延長し、変更し又は終了させることができる。
5
複数国間貿易協定に関する決定(解釈及び免除に関する決定を含む。)については、当該協定の定めるところによる。
第十条 改正
1
世界貿易機関の加盟国は、この協定又は附属書一の多角的貿易協定を改正する提案を、閣僚会議に提出することによって行うことができる。第四条5に規定する理事会も、自己が実施に関することをつかさどる附属書一の多角的貿易協定を改正する提案を閣僚会議に提出することができる。改正案を加盟国に対し受諾のために送付することについての閣僚会議の決定は、同会議が一層長い期間を定めない限り、提案が正式に同会議に提出された後九十日の間にコンセンサス方式によって行う。2、5又は6の規定が適用される場合を除くほか、当該決定には、3又は4のいずれの規定が適用されるかを明示するものとする。コンセンサスに達した場合には、閣僚会議は、直ちに改正案を加盟国に対し受諾のために送付する。定められた期間内にコンセンサスに達しない場合には、閣僚会議は、加盟国の三分の二以上の多数による議決で、改正案を加盟国に対し受諾のために送付するかしないかを決定する。2、5又は6の規定が適用される場合を除くほか、3の規定が改正案について適用される。ただし、閣僚会議が加盟国の四分の三以上の多数による議決で4の規定が適用されると決定する場合は、この限りでない。
2
この条及び次に掲げる規定の改正は、すべての加盟国が受諾した時に効力を生ずる。
この協定の第九条
千九百九十四年のガットの第一条及び第二条
サービス貿易一般協定第二条1
貿易関連知的所有権協定第四条
3
この協定又は附属書一A及び附属書一Cの多角的貿易協定の改正(2及び6に掲げる規定の改正を除く。)であって、加盟国の権利及び義務を変更する性質のものは、加盟国の三分の二が受諾した時に当該改正を受諾した加盟国について効力を生じ、その後は、その他の各加盟国について、それぞれによる受諾の時に効力を生ずる。閣僚会議は、加盟国の四分の三以上の多数による議決で、この3の規定に基づいて効力を生じた改正が、それぞれの場合について閣僚会議の定める期間内に当該改正を受諾しなかった加盟国が世界貿易機関から脱退し又は閣僚会議の同意を得て加盟国としてとどまり得る性質のものである旨を決定することができる。
4
この協定又は附属書一A及び附属書1Cの多角的貿易協定の改正(2及び6に掲げる規定の改正を除く。)であって、加盟国の権利及び義務を変更しない性質のものは、加盟国の三分の二が受諾した時にすべての加盟国について効力を生ずる。
5
2の規定が適用される場合を除くほか、サービス貿易一般協定の第一部から第三部までの規定及び同協定の各附属書の改正は、加盟国の三分の二が受諾した時に当該改正を受諾した加盟国について効力を生じ、その後は、その他の加盟国について、それぞれによる受諾の時に効力を生ずる。閣僚会議は、加盟国の四分の三以上の多数による議決で、前段の規定に基づいて効力を生じた改正が、それぞれの場合について閣僚会議の定める期間内に当該改正を受諾しなかった加盟国が世界貿易機関から脱退し又は閣僚会議の同意を得て加盟国としてとどまり得る性質のものである旨を決定することができる。サービス貿易一般協定の第四部から第六部までの規定及び同協定の各附属書の改正は、加盟国の三分の二が受諾した時にすべての加盟国について効力を生ずる。
6
この条の他の規定にかかわらず、貿易関連知的所有権協定の改正であって同協定第七十一条2の要件を満たすものは、閣僚会議が採択することができるものとし、その後の正式な受諾の手続きを要しない。
7
この協定又は附属書一の多角的貿易協定の改正を受諾する加盟国は、閣僚会議が定める受諾の期間内に受諾書を世界貿易機関事務局長に寄託する。
8
世界貿易機関の加盟国は、附属書二及び附属書三の多角的貿易協定を改正する提案を、閣僚会議に提出することによって行うことができる。附属書二の多角的貿易協定の改正を承認する決定は、コンセンサス方式によって行うものとし、当該改正は、閣僚会議が承認した時にすべての加盟国について効力を生ずる。附属書三の多角的貿易協定の改正を承認する決定は、閣僚会議が承認した時にすべての加盟国について効力を生ずる。
9
閣僚会議は、いずれかの貿易協定の締約国である加盟国の要請に碁づき、当該協定を附属書四に追加することをコンセンサス方式によってのみ決定することができる。閣僚会議は、いずれかの複数国間貿易協定の締約国である加盟国の要請に基づき、当該協定を附属書四から削除することを決定することができる。
10
複数国間貿易協定の改正については、当該協定の定めるところによる。
第十一条 原加盟国
1
この協定が効力を生ずる日における千九百四十七年のガットの締約国及び欧州共同体であって、この協定及び多角的貿易協定を受諾し、かつ、千九百九十四年のガットに自己の譲許表が附属され及びサービス貿易一般協定に自己の特定の約束に係る表が附属されているものは、世界貿易機関の原加盟国となる。
2
国際連合が後発開発達上国として認める国は、個別の開発上、資金上及び貿易上のニーズ又は行政上及び制度上の可能性と両立する範囲において、約束及び譲許を行うことを要求される。
第十二条 加入
1
すべての国又は対外通商関係その他この協定及び多角的貿易協定に規定する事項の処理について完全な自治権を有する独立の関税地域は、自己と世界貿易機関との間において合意した条件によりこの協定に加入することができる。加入は、この協定及び多角的貿易協定の双方に係るものとする。
2
加入に関する決定は、閣僚会議が行う。閣僚会議は、世界貿易機関の加盟国の三分の二以上の多数による議決で、加入の条件に関する合意を承認する。
3
複数国間貿易協定への加入については、当該協定の定めるところによる。
第十三条 特定の加盟国の間における多角的貿易協定の不適用
1
いずれかの加盟国が加盟国となった時に、当該いずれかの加盟国又はその他のいずれかの加盟国が、これらの加盟国の間におけるこの協定並びに附属書一及び附属書二の多角的貿易協定の適用に同意しなかった場合には、これらの協定は、これらの加盟国の間においては適用されない。
2
1の規定は、千九百四十七年のガットの締約国であった世界貿易機関の原加盟国の間において適用することができる。ただし、千九百四十七年のガット第三十五条の規定が、当該締約国の間において、当該締約国についてこの協定の効力発生前に適用され、かつ、効力発生時に有効であった場合に限る。
3
1の規定は、いずれかの加盟国と前条の規定に従って加入したその他のいずれかの加盟国との間においては、加入の条件に関する合意が閣僚会議によって承認される前にこれらの加盟国のいずれかが同会議に対し1に規定する協定の適用に同意しない旨を通報した場合に限り、適用する。
4
閣僚会議は、加盟国の要請に基づいて、特定の事案におけるこの条の規定の運用を検討し、適当な勧告を行うことができる。
5
復数国間貿易協定の締約国の間における当該協定の不適用については、当該協定の定めるところによる。
第十四条 受諾、効力発生及び寄託
1
この協定は、第十一条の規定に基づき世界貿易機関の原加盟国となる資格を有する千九百四十七年のガットの締約国及び欧州共同体が署名その他の方法によって行う受諾のために開放しておく。受諾は、この協定及び多角的貿易協定の双方に係るものとする。この協定及び多角的貿易協定は、ウルグアイ・ラウンドの多角的貿易交渉の結果を収録する最終文書の3に従って閣僚が決定する日に効力を生ずるものとし、閣僚が別段の決定を行う場合を除くほか、効力を生じた日の後二年間受諾のために開放しておく。この協定が効力を生じた後の受諾は、受諾の日の後三十日目に効力を生ずる。
2
この協定が効力を生じた後にこの協定を受諾する加盟国は、この協定が効力を生じた日に受諾したならば実施すべき多角的貿易協定上の譲許及び義務(この協定が効力を生じた日に開始する期間に係るもの)を実施する。
3
この協定が効力を生ずるまでの間、この協定及び多角的貿易協定の原本は、千九百四十七年のガットの締約国団の事務局長に寄託する。同事務局長は、この協定を受諾した政府及び欧州共同体に対し、この協定及び多角的貿易協定の認証謄本並びにこの協定の受諾に関する通告書を速やかに送付する。この協定が効力を生じたときは、この協定及び多角的貿易協定並びにこれらの改正は、世界貿易機関事務局長に寄託する。
4
複数国間貿易協定の受諾及び効力発生については、当該協定の定めるところによる。複数国間貿易協定は、千九百四十七年のガットの締約国団の事務局長に寄託する。この協定が効力を生じたときは、複数国間貿易協定は、世界貿易機関事務局長に寄託する。
第十五条 脱退
1
加盟国は、この協定から脱退することができる。脱退は、この協定及び多角的貿易協定の双方に係るものとし、世界貿易機関事務局長が書面による脱退の通告を受領した日から六箇月を経過した時に、効力を生ずる。
2
複数国間貿易協定からの脱退については、当該協定の定めるところによる。
第十六条 雑則
1
世界貿易機関は、この協定又は多角的貿易協定に別段の定めがある場合を除くほか、千九百四十七年のガットの締約国団及び千九百四十七年のガットの枠組みの中で設置された機関が従う決定、手続及び慣行を指針とする。
2
実行可能な範囲において、千九百四十七年のガットの事務局は、世界貿易機関の事務局となるものとし、かつ、千九百四十七年のガットの締約国団の事務局長は、第六条2の規定に従って閣僚会議が事務局長を任命する時まで、世界貿易機関の事務局長としての職務を遂行する。
3
この協定の規定といずれかの多角的貿易協定の規定とが抵触する場合には、抵触する限りにおいて、この協定の規定が優先する。
4
加盟国は、自国の法令及び行政上の手続を附属書の協定に定める義務に適合したものとすることを確保する。
5
留保は、この協定のいかなる規定についても付することができない。多角的貿易協定の規定についての留保は、これらの協定に定めがある場合に限り、その限度において付することができる。複数国間貿易協定の規定についての留保は、当該協定の定めるところによる。
6
この協定は、国際連合憲章第百二条の規定に従って登録する。
千九百九十四年四月十五日にマラケシュで、ひとしく正文である英語、フランス語及びスペイン語により本書一通を作成した。
註釈
この協定及び多角的貿易協定において用いられる「国」には、世界貿易機関の加盟国である独立の関税地域を含む。この協定及び多角的貿易協定において「国」を含む表現(例えば、「国内制度」、「内国民待遇」)は、世界貿易機関の加盟国である独立の関税地域については、別段の定めがある場合を除くほか、当該関税地域に係るものとして読むものとする。