[内閣名] 第5代第2次伊藤(明25.8.8〜29.8.31)
[国会回次] (帝国)第5回(通常会)
[演説者] 伊藤博文内閣総理大臣
[演説種別] 施政方針演説
[衆議院演説年月日] 1893/12/2
[貴族院演説年月日]
[全文]
各議員諸君、本日は政府案の議場に現るヽに先ちまして、本年即ち第五囘の議會に於て諸君に此議場に御面會申すは、本大臣の職務上に於て幸榮と感する所であります、既に本年の議會の終に臨みまして大詔喚發の結果と致して、行政の整理に著手致しました、行政整理の結果は既に諸君の御熟知の如く、各官制に於いて現れ、而して諸君の前に既に提出致したる所の豫算に於いて列舉してありまするに因りて、故らに此細密に渉っては述べませぬであります、昨年の八月八日本大臣等職を奉じた以來、則ち第四議會に於て諸君と協議を盡し、諸君の協贊を經て經費の節減を企てました以來、本年の春季の議會の終に於きまして、四十九万圓の金額を節減を致し而して行政整理に著手致して、文武官吏の俸給、或は廳費其他に於て百七十万圓許の金額を減削致したのであります、之に加ふるに詔勅の結果によって、文武官吏の俸給一割を六箇年を期して彼の海軍擴張のために減削致しましたのと併せますると云ふと、三百五十万圓許の概略減額に相成って居ります、而して全體政府の歳出入豫算上に於きましては、八百有餘万圓の剰餘金と相成るのでありますが、國運の伸張國歩の發達によりまして、且又法律の結果或は事務の伸張等によって、此節の豫算に於ては餘程の増加を致して居りまする、其増加せざるを得ざる所以は、或は恩給令等の結果であるとか、或は遞信事業の發達であるとか、或は物價の騰貴に因りて兵食の價が増加致すとか、凡そ是等の事情に因りて止むことを得ず金額の増加せざるを得ざるものが、其中には餘程含んでをるのであります、而して又事業上の上に就いては水利土功の如き、又或は航路擴張等の如き、或は北海道の經費に於て拓地殖民の上よりして増加せざるを得ざる金額である等のことで、遂に差引剰餘になる所のものヽ金額は、其半ばを減じて居るのでございます、是等は悉く豫算の上に明記してありまするに依りて、無論諸君の御熟覽を乞ひ、又協議を盡さるヽことヽ存じますで、政府は此行政の整理をするに於ては、國政の上に於て事情の許す限り、又本大臣等の力の及ぶ限の整理を致したのであります、全體其上に政府の方針に至っては、昨年本大臣負傷中に臨時總理大臣をして諸君の前に陳述せしめて置きましたことヽ、一も變はることはございませぬに依りて、殊更に政府の方針としては述べませぬ、大略政府の力の及ぶ限を盡し、今日の事情に照し、整理の出來る丈のことは致したと云ふ積であります、是丈のことを陳述に及んで置きます