[内閣名] 第9代第2次山縣（明31.11.8〜33.10.19）
[国会回次]（帝国）第13回（特別・通常会）
[演説者] 山縣有朋内閣総理大臣
[演説種別] 施政方針演説
[衆議院演説年月日] 1898/12/8
[貴族院演説年月日]
[全文]

諸君、本大臣は今囘再び大命を畏みまして重任を拜することに相成りました、茲に諸君に對して大政に關する意見を陳述致しますることは、誠に本大臣の光榮と致す所であります、御承知の如く内閣は議會召集の間際に於て更迭致しまして、本大臣等は拜命以來、必要の國務に就いて攻究致しまするに十分の間合もございませぬ、併ながら第九議會に於きまして經營の端を開きたる國家自衞のために必要なる國防竝に國運の進歩に伴ふ所の事業の計畫に至りましては、前内閣前々内閣より受繼來りまして今日は規定の目的となって居ります、故に唯其順序を追って進行致せば宜しいことでありまするが、奈何せん物價の騰貴竝に時勢の變遷に伴ひまして、經費は豫期の外に超出致しまするは、實に免かれざることであります、又此計畫に伴ひまして、新に著手する事項も間々ありまして、それぞれの財源を求めまして補足至さねばならぬことであります、故に第十一議會以來、當局者は種々の計畫を立てヽ提出いたしましたが、不幸にも議會の解散等のために成立致しませぬ、故に財政の基礎は遂に今日まで確立致しませぬ、是は上下舉げて實に遺憾と致す所であります、此事は當初以來此目的に協贊を致されたる所の諸君に於きましても、必ず御同感であらうと信じます、本大臣は就任日淺きにも拘らず、財政を鞏固にする宿題に就きましては、速に計畫を盡しまして當議會に提出致しました、尚ほ詳細のことに至りましては、大藏大臣より辯明致される筈であります、諸君、我帝國と締盟各國との交際は年を逐って親密を加へつヽあります、又東洋の局面も追々多事に赴きますけれども、列國との關係は至極圓滑に進行しつヽあります、是は諸君と共に誠に喜ぶべきことであります、併ながら時勢の進歩は一刻も停止致しませぬ、寸時も休息は致しませぬであります、此間に立って後れざるやうに致すためには、教育は勿論、殖産交通貿易等の奬勵發達は、日一日も緩うすることは出來ませぬ、即ち戰後經營の半途にして中止すべからざる譯合であります、本大臣等は計畫を盡して、先づ財政を鞏固にし、國家の信用を敦うし、一般經濟の融和を求めまして、漸次公私の事業の舉らんことを偏に望む次第であります、又我國民の多年宿望でありました條約改正は、遠からずして實施の期と相成り、我帝國の地位も大に高まることヽ存じます、是と同時に内外方法順序に於きましては、政府は十分なる愼重の調査を致しつヽあります、又實施の準備に於ては、手落のないやうに心懸けるは勿論でありまするが、諸君も亦一般國民と共に、茲に十分の注意を加へられんことを望みます、前條陳述致しましたる趣旨に基きまして、政務の執行を致すに就きましては、其最も緊急なる議案と認むるものより、當期議會に提出致します、幸に諸君の公平なる審議協贊に依りまして、國政の疎通發達に至らんことを本大臣が閣僚と共に切に國家のために望む所であります