データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[内閣名] 第11代第1次桂(明34.6.2〜39.1.7)
[国会回次](帝国)第16回(通常会)
[演説者] 桂太郎内閣総理大臣
[演説種別] 施政方針演説
[衆議院演説年月日] 19011212
[貴族院演説年月日]
[全文]

諸君、本大臣は曩に大命を奉じ、重責を擔ふに至りましたが、今日此議場に於きまして、諸君と相見ゆるを得ましたるのは、本大臣の特に光榮と至す所でございます、維新の宏謨に遵ひ、憲法の條章に則り、内國家の基礎を鞏固にし、外列國との交誼を敦う致しまするのは、帝國の國是でございまして、本大臣等の日夕勤て報效を圖る所以のものも、一に此に存するのでございます、帝國と締盟各國との交際は幸に益々親厚を加へまして、彼の北清事件に就きましても、帝國政府は又列國と協同し、專ら秩序の囘復に努めまして、其交渉も著々歩武を進め、本年九月七日最終の議定書の調印を了りまして、茲に其一段落を告ぐるに至りました、帝國政府は此不幸なる事變の起るに遭遇致しまするや,其初より常に列國協同の主義を恪守致しまして、以て事局の終結を勗めました、其後尚ほ列國との交際を一層輯睦ならしめんことを期すると共に、特に東洋の大局に鑑みまして、我帝國の權利及利益を護持することに關しましては、深く注意を致しました、財政に關しましては,三十四年度の歳計施行上、公債問題に於きましては、終に意の如くなるを得ざりしは、遺憾とする所でございます、本大臣は事業の繰延べることを得べきものは、緩急其宜しきに從ひまして、勉て之を繰延べ、經費の節約すべきものは黽て之を節約致しまして、一方に於きましては金融界の緩和を計ると同時に、一方に於きましては歳計上に差障なからしむることを得ました、來年度の豫算は旨を奉じまして、過日本院に提出を致しましたるが故に、其大體に於きましては、諸君の既に知悉せらるヽ所でござりませう、政府は其編制に當りまして、國防、教育、交通、産業等、國運の擴張に必要なる事業に附きましては、緩急を度りまして、其完成を期し、各般政務の改善と相俟って、財政と經濟との状況を平順ならしむることに務めました、諸君、現在及將來に於きまする所の政務の概要は、今茲に陳述を致しました通りでござります、諸君、本大臣は諸君の公平なる審議協贊に依りまして、國務の進行圓滑なるを得、以て國家の進運をして、益々堅實ならしめんことを、切に希望致しまする次第でござります