データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[内閣名] 第11代第1次桂(明34.6.2〜39.1.7)
[国会回次](帝国)第16回(通常会)
[演説者] 桂太郎内閣総理大臣
[演説種別] 清国償金の件に關する演説
[衆議院演説年月日] 1901/12/26
[貴族院演説年月日]
[全文]

諸君、本大臣は過日來本院の問題と相成居りまする、清國償金の事に關しまして、政府の所見を陳述致して併て諸君の御參考に供せんと考へます、抑々清國償金を豫算の財源以外に置き、特別會計を設定せんとする法案に對しましては、遺憾ながら政府の同意を表することは出來ませぬ、諸君の清國償金を豫算の財源と爲すに同意致されませぬ所の趣意は、主として該償金は未だ確定せざるものと爲すに在るが如し、曩に大藏大臣より其理由のある所を辯明を致し、又豫算委員會に於きまして、外務大臣より右償金の確定不動なるの理由を辯明致しましたにも拘らず、不幸にして未だ諸君の諒認せられる所と爲りませぬのであります、既に外務大臣より説明を致しましたるが如く、清國償金は十一箇國の共同要求に對しまして、清國より損害賠償として、四億五千万兩の債券を交付致しました、此債券は確定不動のものでございます、各國より清國に對して要求致しましたる金額は、國家の損害と個人の損害とに對する、二種の賠償より成立って居ります、其國家の損害に對しまする軍費の賠償金額は、既に確定して將來何等の異動を來すことではござりませぬ、個人に對する賠償額も目下調整中にござりまして、未だ確定には至りませぬけれども、大抵四億五千万兩の範圍の内に於きまして、仕佛ひ得べき見込みでござります、萬一此金額の範圍以外に出でまして、按分比例に依って各國に分配せらるヽ事と致しまするも、是は個人の賠償額に對しまして、減少を來すことでござりまして、既に確定致し居ります處の軍費の賠償額には、何等の異動を生ずるものではござりませぬ、故に假に按分比例に依って削減を受けるものと致しまするも、其部分は個人の要求額に屬するものでござりまして、從って其金額未だ確定に至りませぬでも、軍費に屬しまする處の要求額に至りましては、之がために毫も影響を受けませぬのでございます、今囘帝國政府が受取りまする金額四千七百六十万圓の清國債券は、即ち此軍費の賠償に係りまして、確定不動のものでございまする、依って當然豫算に組入れまして、一定の支出目的に供することを得るものでございます、右の理由なるに依って、政府は財政の基礎を鞏固にし其信用を確立するがために、之を財源に組入るヽは、最も必要のことヽ信ずるのでござります