データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[内閣名] 第11代第1次桂(明34.6.2〜39.1.7)
[国会回次](帝国)第20回(臨時会)
[演説者] 桂太郎内閣総理大臣
[演説種別] 施政方針演説
[衆議院演説年月日] 1904/3/23
[貴族院演説年月日]
[全文]

諸君、本大臣は此振古未曾有の時機に召集致されました、當議會に於きまして、諸君と共に聖謨を翼贊し奉るべき責任を有しまするを、誠に光榮と存じます、抑も締盟列國との交誼を厚ふし、列國の正當なる利權を尊重致しまして、東洋の平和を永遠に保持し、帝國の地位を鞏固に致しますることは、帝國の國是とうる所でございます、然るに露國の滿洲及韓國に於きまする施設行動は、實に此國是と相容れざるものでございまするを以て、政府は 聖旨を奉じまして、昨年七月以來露國と交渉を重ねました、然るに露國は誠意を以て我交渉を迎へざるのみならず、益々我國權を侵害するの行動に出でヽ憚る所がなかったのでございます、是に於て帝國は自衛上交渉を 斷絶致しまして、自由行動を取るの已むを得ざるに至りましたが、我政府が此交渉を爲すに當りまして、戰爭の社會に及ぶべき結果の非常なるものであると云ふ事を思ひ、切に平和の終局を見んと欲しまして、守持致しました所の正義と忍耐と申しまするものは、既に孰れの國民にも十分了解せられて居ることヽ信じます、諸君、今日の場合に於きましては、舉國一致 聖旨を奉戴致しまして、交戰の目的を達し、勝を全局に制しまして、速に平和の克復に努めますることは、實に帝國臣民皆其志を同じうする所であることは疑ひませぬ、政府は茲に軍國の必要に應じまするため、財政の計畫を定めまして、豫算及法律案は、既に勅旨を奉じまして當議會に提出致しました、尚外交の經過及財政の計畫に就きましては、主務大臣より陳述致しまするが、諸君が公平なる審議を盡されまして、速に協贊を與へられんことを、切に希望致しまする次第でござりまする、諸君、開戰以來忠勇なる軍人が萬艱を冒しまして、著々大功を奏しましたことの報に接しましたのは、諸君と共に稱賀致しまする所でござります、諸君は既に此議會に列せられ、優渥なる聖詔を奉ぜられましたが、本大臣等は諸君と共に、一に軍國の大事を翼贊し、聖旨の厚きに酬ひ奉らんことを期しまする次第でござります