[内閣名] 第12代第1次西園寺(明39.1.7〜41.7.14)
[国会回次](帝国)第24回(通常会)
[演説者] 西園寺公望内閣総理大臣
[演説種別] 施政方針演説
[衆議院演説年月日] 1908/1/23
[貴族院演説年月日] 1908/1/23
[全文]
諸君、此席に於て三度政府の所見を陳述いたしますのは、本大臣の光榮とするところでございます、帝國と列國との交誼は極めて親厚でありまして、殊に英國との同盟は益々鞏固でありますのは、本大臣の諸君と共に欣ぶ次第でございます、政府は東洋に於ける平和の保障を一層鞏固ならしむるため、曩に聖旨を奉じまして、佛國及び露國とも協約を締結致しました、又通商漁業兩條約、樺太境界の劃定、日露鐵道聯絡等平和條約に基き、諸般の主要の問題は露國と協議を盡しまして、總て滿足なる解決を得ました、尚韓國に付ての指導監督の任を全とうするがため、更に協約を重ねまして、彼我の結合を一層鞏固に致しました、然るに獨り清國との交渉の付きまして、尚懸案中に屬するものががざいます、併し政府に於きましては鄰邦の交誼を顧みて、妥協の精神を以て折衝を重ねまして、速に其解決に至らんことを希望して居ります、政府は又第二囘平和會議に委員を特派致しまして、重要なる諸般の問題を討究せしめ、之に貢献したる次第でございます、桑港及晩香坡に於て本邦勞働者に關し不快の出來事を發生するに至りましたのは、彼我政府の遺憾とするところでございすます、政府は曩に加奈太政府より特派致しましたる委員と、友好的に意見を交換致しまして、既に其協調を遂げましてございます、又北米合衆國に對しましても、等しく商議を重ねて居る次第でございます、惟ふに互に國交を重んじまして、日露間に存する歴史的親善の關係を増進致しますことは、兩國政府に於いての全然其希望を一にして居りますから、遠からず圓滿なる解決を見るべきことは、政府の信じて疑はないのでございます、諸君、世界の進運に應じまして、帝國將來の計畫を定むるに當りましては、財政の基礎を鞏固に致しますことが現下の急務と考へます、而して財政の鞏固は歳出入の均衡を得ることにありますことは申迄もござりませぬが、軍備の復舊充實は一日も之を忽せにすることは出來ませぬ、又教育の施設、交通機關の整備、殖産工業の奬勵、港灣修築等の如き、苟も人文を開發し、産業を振作し、國力の發展に資すべきものヽ如きは、又之を緩慢に付することを許さぬのであります、而して政府は前に述べました如く、財政の鞏固を圖るを最も緊急の事柄と考へましたが故に、努めて歳出に節約を施しまして、其既定に屬しますのも、其計畫を變更せざる限りに於て、是が年割額に變更を加へましたのでございます、尚其上に増税等に依りまして、歳計の均衡を保つことにして、財政の計畫を定めた次第でございます、諸君、明治四十一年度豫算案及租税に關する法律案は、勅を奉じまして議會に提出致しました、其詳細の項目竝に其他の議案に付ては、本大臣又は主務大臣に於きまして随時是が説明を致します、諸君に於ても幸に本大臣の誠意のある所を諒せられまして、愼重に審議せられ、御協贊あらんことを本大臣は切に希望致します